漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「夅コウ」<左右の足が上からおりる>と「降コウ」「隆リュウ」

2022年10月31日 | 漢字の音符
 窿リュウを追加しました。
 コウ  夂部

解字 左右の足が上から下向きにおりる形。上から降下する意を表す。篆文から下の足が横向きになっている。降コウの原字。チョクが階段や梯子(はしご)によってのぼる形と対極の字。 
※古代文字は、降の字から夅を抜き出して作成した。
意味 おりる
  
イメージ 
 「おりる」
(降・洚・隆・窿)
 「形声字」(絳)
音の変化  コウ:降・洚・絳  リュウ:隆・窿

おりる
 コウ・おりる・おろす・ふる・くだる  阝部こざと
解字 夅コウは、下向きの足を二つ描いた形で、下へくだることを示す。降は「阝(階段や梯子はしご)+夅(おりる)」の会意形声で、階段や梯子をおりる形。高いところからおりる意を表わす。
意味 (1)おりる(降りる)。高い所からおりる。おろす(降ろす)。「降下コウカ」「降格コウカク」「降臨コウリン」(神などが高いところからおりること) (2)くだる(降る)。敵に負けて従う。「降参コウサン」「降服コウフク」 (3)ふる(降る)。「降雨コウウ」「降雪コウセツ」 (4)のち。「以降イコウ
 コウ  氵部
解字 「氵(みず)+夅の旧字(おりる)」の会意形声。大量の水が天からおりること。洪水をいう。
意味 おおみず。洪水。「洚水コウズイ」(おおみず)
[隆] リュウ・たかい  阝部こざと

解字 篆文は「降(おりる)+生(草木が芽をだす)」の会意。降コウは、この字では、神が降りてくること。それに生がついた隆は、神が降り立った地に草木が芽生え、それが繁茂してさかえること。旧字は夂の下の足が「一」となって残り、生の上に付いたが、新字体ではこれも無くなった。
意味 (1)たかい(隆い)。盛りあがってたかい。「隆起リュウキ」「筋骨隆々キンコツリュウリュウ」  (2)さかん。さかえる。「隆盛リュウセイ」「隆昌リュウショウ」(勢いがさかん=隆盛)「隆隆リュウリュウ」(盛んなさま。盛り上がっているさま)
窿 リュウ・たかい  穴部
解字 「穴(横穴住居)+隆の旧字(たかい)」の会意形声。住居の屋根が弓のように盛り上がって高いこと。穹キュウ・ドーム形テント「(穴(住居)+弓(弓のような屋根)」と同じ構造の字。
意味 (1)まるく高い屋根。ドーム形テント。そら。「穹窿キュウリュウ」(①弓型天井の建物。②大空)「蒼窿ソウリュウ」(あおぞら) (2)ゆみなり。たかい。「窿然リュウゼン」(弓なりに高くおおきい)

形声字
 コウ・あか  糸部
解字 「糸(ぬの)+夅の旧字(コウ)」の形声。コウは紅コウ(あかい)に通じ、あかい色の絹をいう、転じて、あかい色の意。
意味 あか(絳)。あかい(絳い)。深い紅色。「絳英コウエイ」(あかい色の花。英は、はなの意)「絳裙コウクン」(①あかい色の裳裾もすそ。②芸妓)
<紫色は常用漢字>

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音符「厄ヤク」と「扼ヤク」「軛ヤク」「阨ヤク・アイ」

2022年10月28日 | 漢字の音符
 ヤク・わざわい  厂部             
① 
①轅(ながえ)の先の左右の軛(くびき)、②軛(くびき)をつけた車


馬車と馭者 https://www.sohu.com/a/451706403_120429368
解字 金文と秦(BC3世紀)は、馬の軛くびきの象形。軛くびきとは、車箱から前につき出た轅ながえの先についた横木の左右にとりつける馬の首もとを固定する道具。下の半円形に馬の首をいれ、上の T 字は轅の先と横木(衡)、途中の半円は馬の轡くつわからのびる手綱が横木からはずれないように通す金具と思われる(図①に描かれている)。この字形で軛くびき・横木・手綱通し金具の三つをまとめて描いた。篆文になると字形がまったく変化した厄になった。[説文解字]の許慎は「科厄カヤク、木の節也」とするが意味不明。この字は現在、「厂(がけ)+卩セツの変形⇒㔾(ひざまずいた人)」の会意。ガケに臨んで人が進退に窮したさまを示し、行きづまる・わざわい・苦しむ意と解釈されている。
意味 (1)行きどまる。つかえる。ふさがる。「厄塞ヤクソク」(ふさがる) (2)わざわい(厄)。苦しむ。「災厄サイヤク」「厄難ヤクナン」 (2)[国]やく(厄)。不吉なめぐりあわせ。「厄年ヤクどし」「大厄タイヤク

イメージ 
 「わざわい・ゆきどまる」(厄・阨)
 くびきの変化した形で「くびき」(扼・軛)
音の変化  ヤク:厄・扼・軛  ヤク・アイ:阨 

わざわい・ゆきどまる
 ヤク・アイ・ふさがる・せまい・くるしむ  阝部こざと
解字 「阝(おか)+厄(ゆきどまる)」の会意形声。阝(おか)に阻まれ、ゆきどまること。また、苦しむこと。なお、アイの発音で隘アイ(せまい。隘路アイロ)に通じ、阝(おか)の道がせまく、両側がけわしい意となる。
意味 (1)ヤクの発音。ふさがる(阨がる)。ふさぐ。けわしい地形。「阨塞ヤクソク」(地形が険しい要害の地) (2)くるしむ(阨しむ)。行きづまる。「窮阨キュウヤク」(動きがとれずくるしむ)「阨困ヤクコン」(くるしみ困る) (2)アイの発音。せまい(阨い)。せまく険しい。「狭阨キョウアイ」「嶮阨ケンアイ

くびき 
 ヤク・おさえる  扌部
解字 「扌(手)+厄(くびき)」の会意形声。くびきを手でつける意。馬にくびきをつけ、はずれないように左右両端の曲がったところで幅広の革ひもでしっかり固定すること。おさえる。しめつける意となる。
意味 おさえる(扼える)。しめつける。「扼喉ヤクコウ」(のどをしめつける。相手の急所をおさえること)「扼殺ヤクサツ」(のどをおさえてしめころす)「扼腕ヤクワン」(自分の腕をおさえて悔しがる)「切歯扼腕セッシヤクワン」(歯ぎしりし自分の腕をおさえて、悔しがること)
 ヤク・くびき  車部
解字 「車(くるま)+厄(くびき)」の会意形声。車のくびきをいう。馬のくび元にあてて車をひかせる道具。
意味 (1)くびき(軛)。頸木とも書く。車の轅(ながえ)の先に付け、馬のくびもとにあてて車をひかせる道具。牛車にも用いる。「車軛シャヤク」(車のくびき)「軛衡ヤクコウ」(くびきとくびきが固定されている横木)「金軛キンヤク」(褒美として賜わる金で飾ったくびき) (2)自由を束縛するもの。「軛から解き放たれる」
<紫色は常用漢字>
図版引用先 厄の①『中国古代車輿馬具』(丙申書房)の表紙の一部。 厄の②、中国ネットの検索サイトより(原サイトなし)。

    ヤク <厄の別体>
 ヤク・わざわい  戸部

解字 金文と秦(BC3世紀)は、馬の軛くびきの象形で厄の金文・秦と同じ、篆文の説文解字で「厄」の別体として「戸+乙」の戹ヤクが出現し現在につづく。この字体は金文・秦の字体と近く、本来ならこの字が厄の代わりとなる字だが、別体として扱われている。したがって、この字を音符とする以下の字もすべて別体となっている。
 ヤク・アイ・ふさがる・せまい・くるしむ <阨の別体>
 ヤク・おさえる <扼ヤクの別体>
 ヤク・くびき <軛ヤクの別体> 


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音符「危キ」 <あやうい> と「詭キ」「跪キ」「脆ゼイ」

2022年10月25日 | 漢字の音符
 キ・ギ(グイ)・あぶない・あやうい・あやぶむ  卩部ふしづくり  
           
解字 「厃(厂(がけ)の上にいる人が身をかがめている形)+ひざまずく人(㔾)」の形で、あぶない・あやうい意となる。この字は甲骨文からあるが、途中の変化が複雑であるため省略した。危は「厃セン+㔾セツ」の会意である。なお、キは慣用音であり、ギ(グイ)が元の音。
意味 (1)あやうい(危うい)。あぶない(危ない)。「危険キケン」「危害キガイ」「危機キキ」 (2)あやぶむ(危ぶむ)。「危疑キギ

イメージ 
 「あやうい」
(危・詭・脆・鮠) 
  崖の下で人が「ひざまずく」(跪)
音の変化  キ:危・詭・跪  ゼイ:脆  ガイ:鮠

あやうい
 キ・いつわる  言部
解字 「言(ことば)+危(あやうい)」 の会意形声。真偽のあやうい言葉をしゃべって人をいつわること。
意味 (1)いつわる(詭る)。あざむく。「詭計キケイ」(人をだます計略)「詭弁キベン」(人をあざむく弁論) (2)あやしい。普通でない。「詭怪キカイ」(あやしい)
 ゼイ・もろい  月部にく
解字 「月(からだ)+危(あやうい)」の会意形声。身体が弱くて危ういこと。身体だけでなく、器物・組織などが、もろくよわいことをいう。また、月は肉であり肉がやわらかい意ともなる。
意味 (1)もろい(脆い)。よわい。こわれやすい。「脆弱ゼイジャク」(もろくて弱い)「柔脆ジュウゼイ」(やわらかくもろい) (2)やわらかい。「脆美ゼイビ」(やわらかくうまい)
 ガイ・ゲ・はや  魚部
解字 「魚(さかな)+危(あぶない)」 の会意形声。中国ではイノシシギギをいう。大型でくちばしが尖ったナマズの仲間で、揚子江などに生息し体長1メートル近くになる。背鰭ひれと胸鰭は鋭く、刺されると強い毒がある。なお日本ではハヤとよばれるコイ科の淡水魚に当てており危険な魚ではない。
意味 (1)魚の名。中国ではギギ科の淡水魚。イノシシギギ。長江流域などに棲息する肉食魚。(2)[国](1)はや(鮠)。コイ科の淡水魚。はえ、はよ、とも呼ばれる。[広辞苑]は、はやを、①モツゴの地方名(霞ヶ浦)。②ウグイの地方名(東京地方)。③カワムツの地方名(関西)。とする。(2)おいかわ。コイ科の淡水産の硬骨魚。

ひざまずく
 キ・ひざまずく  足部
解字 「足(あし)+危(ひざまずく)」 の会意形声。足をまげてひざまずくこと。
意味 ひざまずく(跪く)。「跪座キザ」(ひざまずいて座る)「跪拝キハイ」(ひざまずいて拝む)「三跪九叩サンキキュウコウ」(三度ひざまずき、九度頭を地につけて拝礼する。清朝の敬礼法)
<紫色は常用漢字>

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音符「方ホウ」と「放ホウ」「訪ホウ」「芳ホウ」「坊ボウ」「防ボウ」「肪ボウ」

2022年10月22日 | 漢字の音符
  ホウの字源については諸説あり、[甲骨文字辞典]は首枷をつけた人の形の側面形とし、[字統]は横にわたした木に死者をつるした形とするが、私は耤セキ(スキで耕す)の甲骨文字に描かれたスキが「方」と似ていることからスキの意で解釈したい。方の字源をスキとする理由のもう一つは、首枷をつけた人の側面形や、横にわたした木に死者をつるした形では、音符イメージが出てこないためである。方は「左右に」「四角」「四方に」のイメージがあり、これらはスキで耕す意から導きやすい。
 錺かざりを追加しました。


 ホウ・かた  方部  

<参考>耤セキ(人がスキで耕す姿)の甲骨文
解字 甲骨文第一字は、踏むための柄が左右に張り出たスキの象形。耤セキの甲骨文に描かれているスキと似ている。甲骨文第二字は左右の柄の端を強調した形。金文以降の変化で最終的に「方」になった。意味は、スキの進む方向、スキを使うやりかた(方法)、スキを使う土地(地方)、スキでたがやした四角な土地(方形)などから出てくる。
意味 (1)かた(方)。むき。「方角ホウガク」「方向ホウコウ」 (2)分野。部分。「方面ホウメン」 (3)ある土地。「地方チホウ」 (4)四角。「方形ホウケイ」 (5)わざ。やりかた。「方法ホウホウ」「医方イホウ」 (6)[国]ころ・時分。「夕方ゆうがた」 (7)[国]かた(方)。他人をさす。「お乗りの方」「敵方てきがた
参考 方は部首「方ほう・ほうへん」になる。漢字の左右や下に付き、主に旗の意味を表す。旗は「方+𠂉+其」から成るが、「方+𠂉」の部分が古代文字では旗竿と吹き流しに当たる。[もう一つの部首 「㫃(方𠂉)エン」<旗がなびくさま>を参照]そこで旗の意味の字は、すべて方𠂉がつくから必然的に方部に属することになる。
 常用漢字で方ホウ・施・旅リョ・旋セン・族ゾク・旗の6字あるが、部首を除くとすべて方𠂉であることから旗に関する意味がある。約14,600字を収録する『新漢語林』は、28字を収録するが旁ボウ・於などを除くと、ほとんど方𠂉が含まれ旗の意味である。

並んでスキを使う「耦耕グウコウの図」(中国農業博物館の展示から)
https://new.qq.com/rain/a/20210822a07oc300
「商周の時期は井田(田を九等分し中央の田を公田とし、その他を私田とする方式)の耕作が連綿として続いた。男たちは三人が一緒に耕作した。人々はこのような耕作方式を協田と呼んだ。西周の時期に二人が一緒に耕作する耦耕となった。卜辞中、已にこの記載がある」(説明文の要旨):この説明に全て賛同するわけではないが、耦耕という言葉がある以上、存在したことは確かである。私は、耦耕は二人並んで田起こしするほうが横の人が起こしたひび割れを共有でき効率がいいから存在したと思う。牛に引かせるスキが普及するまで続いたのではないだろうか。(私見)

イメージ 
 並んでスキを使うことから「左右に」(方・房・防・紡・妨・仿・倣・彷・舫)
 意味(4)の「四角」(坊)
 「四方に」(芳・放・肪・訪)
音の変化  ホウ:方:仿・倣・彷・舫・芳・放・訪  ボウ:房・防・紡・妨・坊・肪

左右に
 ボウ・ふさ  戸部
解字 「戸(一枚とびら)+方(左右に)」 の会意形声。堂(母屋)の左右に張り出た一枚とびらの部屋「東房」など。大きな部屋に付属する小部屋が原義。のち、住まい・家の意。また、内部が小部屋状に分かれたものや、房(ふさ)の意味にもなる。
意味 (1)へや。ねま。小さな部屋。「独房ドクボウ」「女房ニョウボウ」(女官の部屋。婦人。妻) (2)寝屋。「房事ボウジ」 (3)いえ。すまい。「山房サンボウ」「房屋ボウオク」(家屋) (3)部屋のように区切られたもの。「心房シンボウ」「蜂房ホウボウ」(蜂の巣) (4)ふさ(房)。①たっぷりついた実が垂れさがってみえるもの。②糸を束ね、先を散らしたもの。「花房はなぶさ」「一房ひとふさ」 (5)星の名。「房宿ボウシュク」(二十八宿のひとつ。そいぼし)
 ボウ・ふせぐ  阝部
解字 「阝(土盛り)+方(左右に)」 の会意形声。左右に長くのびる堤。
意味 (1)つつみ。土手。「堤防テイボウ」 (2)ふせぐ(防ぐ)。そなえる。まもる。「予防ヨボウ」「防衛ボウエイ」「防空ボウクウ
 ボウ・つむぐ  糸部
解字 「糸+方(左右に)」 の会意形声。左右に繊維を入れかえて縒り合わせ、糸にする。
意味 つむぐ(紡ぐ)。繊維をより合わせて糸にする。「紡績ボウセキ」(糸をつむぐ)「紡織ボウショク」(糸を紡ぐことと織ること)「混紡コンボウ」(質の異なる糸を混ぜて紡ぐ)
 ボウ・さまたげる  女部
解字 「女+方(左右に)」 の会意形声。女が左右に手を広げて立ちはだかること。
意味 さまたげる(妨げる)。じゃまをする。「妨害ボウガイ」「妨遏ボウアツ」(さまたげとめる)
仿 ホウ
解字 「イ(人)+方(左右に)」の会意形声。左右の人と、にていること。
意味 (1)にている。「仿彿ホウフツ」(①よく似ているさま。②ありありと思い浮かぶさま) (2)(倣ホウに通じ)まねる。 (3)(彷ホウに通じ)さまよう。
 ホウ・ならう  イ部
解字 「仿(にている)+攵(動作)」の会意形声。仿は左右の人と似ていること。倣は似ようとする動作。 
意味 ならう(倣う)。まねる。「模倣モホウ
 ホウ・さまよう  彳部
解字 「彳(ゆく)+方(左右に)」 の会意形声。右や左にあてもなく歩くこと。
意味 (1)さまよう。「彷徨ホウコウ」 (2)(仿ホウに通じ)にかよう。ほのか。「彷彿ホウフツ
 ホウ・もやう  舟部
解字 「舟(ふね)+方(左右にならぶ)」 の会意形声。左右に並んだ舟。
意味 (1)舟。もやいぶね(舫)。「舫船もやいぶね」(二隻並べてつないだ舟)(2)もやう(舫う)。①舟と舟をつなぎあわせる。②杭などに船をつなぎとめる。

四角い
 ボウ・ボッ  土部
解字 「土+方(四角に)」 の会意形声。四角に区切った土地。
意味 (1)まち。市街。「条坊ジョウボウ」(都の大路・小路によって分けられた区画)「坊間ボウカン」(街のなか) (2)てら。寺院の内部も坊に分かれていた。僧侶のすまい。また、僧。「僧坊ソウボウ」「坊主ボウズ」 (3)[国]男児を親しんで呼ぶ語。「坊や」「坊ちゃん」

四方に
 ホウ・かんばしい  艸部
解字 「艸(草)+方(四方に)」 の会意形声。四方に草花のかおりが伝わること。
意味 (1)かんばしい(芳しい)。かぐわしい(芳しい)。よい香りがする。「芳香ホウコウ」「芳醇ホウジュン」(酒がかおり高く味のよいこと) (2)評判がよい。「芳名ホウメイ」 (3)他人の物事に対する敬称。「芳志ホウシ
<国字> かざり  金部

錺引手かざりひきて「錺屋」HPより
解字 「金(金属)+芳(はなやか)」の会意。芳は花が咲き乱れ香りが四方に伝わること。花が咲き乱れるようにはなやかな金属の細工物をいう。
意味 かざり(錺)。金属を加工して装飾をほどこしたもの。「錺金具かざりかなぐ」(襖ふすまの引手や、蝶番ちょうつがい、などの金具に装飾性をもたせたもの)「錺細工かざりさいく」「錺職かざりしょく」(錺を作る職人。錺師。)
 ボウ・あぶら  月部にく
解字 「月(からだ)+方(四方に)」 の会意形声。身体が太ってまわりについてくるあぶら。
意味 あぶら(肪)。動物の体内のあぶら。「脂肪シボウ
 ホウ・はなす・はなつ・はなれる・ほうる  攵部
解字 「攵(うつ)+方(四方に)」 の会意形声。四方に打ちはなつこと。
意味 (1)はなす(放す)。はなれる(放れる)。はなつ(放つ)。ときはなす。「放牧ホウボク」「解放カイホウ」「放棄ホウキ」 (2)ほうる(放る)。おいやる。「追放ツイホウ」 (3)発する。送り出す。「放送ホウソウ」「放射ホウシャ
 ホウ・おとずれる・たずねる  言部
解字 「言(はなす)+方(四方に)」 の会意形声。[説文解字]に「汎(ひろ)く謀(はかる)を訪と曰(い)う」とあり、ひろくあちこちに行き人と話をすること。転じて、訪れる意となった。
意味 (1)おとずれる(訪れる)。たずねる(訪ねる)。「訪問ホウモン」「来訪ライホウ」 (2)たずね求める。「探訪タンポウ」「歴訪レキホウ」 (3)はかる。「訪議ホウギ」(質問して相談する。はかりごとをする)
<紫色は常用漢字>

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音符「民ミン」<目を針でさされた人> と「眠ミン」「罠ビン」

2022年10月19日 | 漢字の音符
 緡ビン・愍ビンを追加しました。
 ミン・たみ  氏部

解字 甲骨文字と金文は、目を針状のものでさしている形の象形。目を針で突いてその視力を失わせることを示している。[甲骨文字辞典]によると、甲骨文字の意味は、①目を傷つけること。②傷病のある目。③祭祀名とし、戦争捕虜を奴隷にする際に目をつぶす意味にも用いられているという。戦争捕虜を奴隷にする場合、目を見えなくしたら奴隷の労働に差し支えるのではないかと思うが、中国の[漢字源流字典]には、「目の形は左目であり、左目を刺して奴隷とした」と記されており片目の視力を失わせたと思われる。
 金文もほぼ同じ形であるが、意味は一般的な庶民・百姓の意であり、奴隷を意味した民が庶民に変化したことが分る。この場合の「見えない」は文字が読めない意で用いたのだろうか。字形は篆文で目の形が大きく変化し、目をつく針も十のゆがんだ形となり、現代字はそれを受け継いだ民になった。民は現在「民主主義」という価値観を支える重要な字に変貌している。
意味 (1)たみ(民)。一般の人。「民衆ミンシュウ」「庶民ショミン」 (2)国家・社会を構成する人々。「国民コクミン」「人民ジンミン

イメージ  
 目を針で刺している形から「見えない」(民・眠・罠・泯・緡・愍)
音の変化  ミン:民・眠  ビン:罠・泯・緡・愍

みえない
 ミン・ねむる・ねむい  目部
解字 「目(め)+民(みえない)」 の会意形声。目が見えない状態、即ち、ねむること。
意味 (1)ねむる(眠る)。ねむい(眠い)。ねむり。「睡眠スイミン」「春眠シュンミン」「安眠アンミン」 (2)死ぬ。「永眠エイミン
 ビン・ミン・わな  罒部
解字 「罒(=网。あみ)+民(みえない)」の会意形声。見えない網にひっかかること。
意味 (1)わな(罠)。獣をさそい捕える仕掛け。他人を陥れる策略。「罠猟わなりょう」「罠にはまる」 (2)あみ。
 ビン・ミン  氵部
解字 「氵(みず)+民(みえない)」の会意形声。水が見えない、即ち水が尽きること。転じて、ほろびる意となる。また、紊ビン(みだれる)に通じ、みだれる意となる。
意味 (1)ほろびる(泯びる)。なくなる。つきる。「泯滅ビンメツ」(泯も滅も、ほろびる意)「泯没ビンボツ」(ほろんで没する。ほろびること)「泯然ビンゼン」(ほろびるさま) (2)みだれる。「泯乱ビンラン」(秩序・道徳が乱れる)
 ビン・ミン・コン  糸部

銭緡ぜにさしブログ「『千』の古銭箱」より)
解字 「糸(いと)+民(みえない)+日(ひ)」の形声。「民+日」は日(ひ)が見えない⇒暗い意だが、ここでは見えない意。見えないところに入れる糸。水の奥の見えないところに入れる釣り糸や、先の見えない穴(穴あき銭)にさす細い縄などをいう。また暗い意から、おろかの意ともなる。
意味 (1)つりいと。「緡綸ビンリン」(釣り糸) (2)さし(緡)。なわ。「銭緡ぜにさし」(銭の穴にさし通して一束とする細い縄)「緡銭ビンセン」(緡さしで通してひとまとめにした銭) (3)おろか。「緡緡ビンビン」(無知なさま)
 ビン・ミン・あわれむ・うれえる  心部
解字 「心(こころ)+民(みえない)+攵(うつ)」の形声。「民(みえない)+攵(うつ)」は、目をつぶされた奴隷を打つ形。それに心をつけた愍ビン・ミンは、打たれる奴隷を見て、あわれむ・うれえる意となる。
意味 (1)あわれむ(愍れむ)。「憐愍レンビン」(憐も愍も、あわれむ意。=憐憫レンビン)「愍傷ビンショウ」 (2)うれえる。「愍念ビンネン」(うれいおもう) (3)いたむ。「愍悼ビントウ」(いたむ)
<紫色は常用漢字>

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音符「台ダイ・タイ」と「胎タイ」「怠タイ」「始シ」「治チ」「冶ヤ」

2022年10月16日 | 漢字の音符
と台タイ・ダイの関係

 の甲骨文第一字は人が物を携えた形。下の第二字は人を略した形。意味は、①もたらす。物を持ってくる。②人や集団を「ひきいる」、③もって・そこで(接続の助辞)、などの意味で使われている[甲骨文字辞典]。金文は甲骨第二字の形が引き継がれ、篆文(秦)で人がついた形に戻り、隷書(漢)で「レ+人」と大きく形が変わった。現代字の以は「レ+ヽ(点)」が甲骨文字第2字および金文の携えた物を表しており、そこに人がついた以になった。現在の意味は、①~から。~より。②もって(以て)。③もちいる(=用)。④ひきいる(率いる)などになる。音符「以イ」
 一方、篆文の第二字(下段)は現代字の已イに変化したという説があるが、定説にはなっていない。
台イ・タイ・ダイとはどんな字か。
 台イ・タイ・ダイは金文から出現した。甲骨文の、人が物を携えた形の略体である「もたらされた物」に口がついた形である。この字はどんな意味をもつのか? まず台の字は、イ・タイ・ダイの3つの発音をもつ。イの発音は上部の以の発音なので形声字として続いている。さらにタイ・ダイの発音が生まれたことになる。
イの発音である台には、どんな意味があるのか
 [字統]によると、台の金文は後期の列国期から、もって(台って)の意味があるとする。すると、もって(以って)と同じであり、当初は台と以は同じ意味で用いられていた。また[説文解字]は「說(よろこぶ)也。口に従い㠯声。発音はイ。(與之切)」とする(㠯の正確な字は上の口⇒コで左が空くがパソコンで出ないので㠯を用いる)。[字統]は、戦国期以後に怡(よろこぶ)と一人称の台・われの意味が出たとする。
タイの発音
 タイの発音では星の名に当てる。おおぐま座は、北斗・文昌・三台に分かれ、三台サンタイは、熊のそれぞれのつまさきの星2つを結んで「三台」という星座になっている。

おおぐま座の主な星(ミマスの部屋)と「大熊座」(ウィキペディア)
 星座の星の意味から、三公(最高の地位にあって天子を補佐する三人)の意味になり、それぞれ、台衡タイコウ・台槐タイカイ・台臣タイシンと言った。また、三公に敬意を表す意味から、敬語ともなる。「台覧タイラン」(貴人が覧る)「台翰タイカン」(人の手紙の敬称)
その他の発音(チ・シ・ヤ)
 台には、このほかに治チ・始シ・冶ヤの発音があるが形声字であり、それぞれの字形で説明します。以上、前置きでした。

 タイ・イ    口部   
意味 (1)よろこぶ。「虞舜グシュン不台フイ(よろこばず)」(虞と舜はよろこばなかった。史記・太史公自序)(=怡イ) (2)われ(台)。「以輔台徳」(以(もっ)て台(わが)徳(とく)を輔(たす)く」(書経・説命) (3)星の名。「三台星サンタイセイ」(=三公。中国で最高の位にある三つの官職)
[臺] ダイ・タイ  口部                

解字 篆文は臺ダイ・タイで「高の変形の上部(高い)+至(いたる)」の会意。高い建物に至る、即ち、丘の上のうてな・高殿の意。新字体は、この字を発音が同じ「台」に置き換えた。
意味 (1)うてな。高い建物。「灯台トウダイ」「楼台ロウダイ」(たかどの) (2)高く平らな土地「台地ダイチ」「高台たかだい」 (3)物を乗せる道具。「鏡台キョウダイ」「寝台シンダイ」「舞台ブタイ」 (4)仕事などのもとになるもの。「台帳ダイチョウ」「台本ダイホン」 (5)すげ。草の名。 (6)地名。「台湾タイワン」(旧字は臺灣)

イメージ  臺の意味である「うてな・高殿」、以の甲骨文から続く意味である「もたらす」、その他に「会意形声字」がある。
 「うてな・高殿」(台[臺]・擡[抬]・薹)
 「もたらす」(胎・苔・颱・殆・怡・貽)
 「会意形声字」(怠・駘・冶・飴・始・治)
音の変化  ダイ・タイ:台  タイ:擡・薹・胎・殆・怠・駘・苔・颱  イ:怡・貽・飴  シ:始  チ・ジ:治  ヤ:冶 

うてな・高殿
擡[抬] タイ・もたげる  扌部
解字 「扌(て)+臺(意味③の物をのせる道具)」の会意形声。物をのせている台を手でもちあげること。抬タイは新字体に準じた字。
意味 もたげる(擡げる)。もちあげる。「擡頭タイトウ」(頭をもちあげる)「擡挙タイキョ」(①もちあげる。②人をひきあげる。)「擡眼タイガン」(眼をあげてみる。明確にする)
 タイ・ダイ・とう  艸部
ふきのとう(web雑記より)
解字 「艸(くさ)+(意味⑤。すげ)」の会意形声。艸をつけて、すげの意味を確認した字。また。野菜などの花をつける茎の伸び出たもの。アブラナやフキなどの花軸や花茎。
意味 (1)はますげ。かさすげ。カヤツリグサ科の多年草。 (2)とう()。野菜などの花をつける茎の伸び出たもの。「蕗の」(フキのとう)「とうが立つ」(①とうがのびる。固くて食べられなくなる。②さかりが過ぎる)「立ち」(花をつける茎が伸びること。)

もたらす
 タイ・はらむ  月部にく
解字 「月(からだ)+台(もたらす)」の会意形声。身体の中に赤子がもたらされること。みごもる・はらむ意。
意味 (1)はらむ(胎む)。みごもる。「受胎ジュタイ」「懐胎カイタイ」「胎児タイジ」「堕胎ダタイ」 (2)子の宿るところ。「胎盤タイバン」「母胎ボタイ
 タイ・こけ  艸部
篆文(説文解字)
解字 [説文解字]の字形は「艸(くさ)+治」の菭で「水衣・水青衣(同注)」とする。水青衣とは粋な解字だが、私は「艸(くさ)+氵(みず)+台(もたらす)」で、水(水分)がもたらす芽生えたばかりの草のような苔(こけ)と解字したい。現在の字形は氵がとれた苔になった。日本語の「こけ」は木毛に通じ、木に生えた毛のようなものの意。
意味 こけ(苔)。コケ類の総称。「蘚苔センタイ」(こけ類)「海苔のり」「苔茵タイイン」(こけのしとね)「苔径タイケイ」(苔の小道)
 タイ  風部
解字 「風(かぜ)+台(もたらす)」の会意形声。強い風をもたらす意で暴風雨をいう。現在は風を略した台を用いる。
意味 たいふう(颱風)。台風。海上に発生して島や陸地を襲う竜巻状の暴風雨。
 タイ・あやうい・ほとんど  歹部がつへん
解字 「歹(死)+台(もたらす)」の会意形声。死をもたらす恐れで、死のきざしがすること。
意味 (1)あやうい(殆うい)。危険。あやうくする。「危殆キタイ」(非常にあぶないこと)「疑殆ギタイ」(疑いおそれる) (2)ほとんど(殆ど)。おそらく。きっと。
 イ・よろこぶ  忄部
解字 「忄(心)+台(もたらす)」の会意形声。[説文解字]は「台は説(よろこ)ぶ也」とし、「史記」にも「諸呂(呂氏一族)台(よろこば)ず」(太子公自序)と、よろこぶ意味がある。しかし、よろこぶ意味は台の音符字では他にない。私は台の、もたらす意が転じ、もたらされた物をよろこぶ意味になったと解釈したい。こころがやわらぐこと。心がなごみ楽しむこと。
意味 よろこぶ(怡ぶ)。やわらぐ。「怡顔イガン」(やわらいだ顔つき)「怡怡イイ」(なごやかに楽しむさま)「怡悦イエツ」(楽しみ喜ぶ)
 イ・おくる・のこす  貝部
解字 「貝(財貨)+台(もたらす)」の会意形声。財貨をもたらすこと。おくる意と、おくったものが残る意とある。同音の遺と同じ構造の字。熟語は、のこす意がほとんど。
意味 (1)おくる(貽る)。人に財物をおくる。 (2)のこす(貽す)。「貽訓イクン」(先人の残したおしえ。遺訓)「貽範イハン」(手本をのこす)「貽悔イカイ」(悔いをのこす)
会意形声字
 タイ・おこたる・なまける  心部

解字 金文は「人が腰を掛けた形+以の古形+心」で、ゆったりと座っている心から、なまける意。篆文から、「台タイ+心」の怠タイになった。
意味 おこたる(怠る)。なまける(怠ける)。たるむ。「怠惰タイダ」(なまけてだらしない)「怠慢タイマン」「怠業タイギョウ」(ストライキ)「怠懈タイカイ」(精神がたるむ)
 タイ・ダイ  馬部
解字 「馬(うま)+台(=怠。なまける)」の会意形声。なまける馬で、うごきの鈍い馬をいう。
意味 (1)にぶい。のろい。駑馬ドバ。「駑駘ドタイ」(駑も駘も、にぶい意) (2)のどかである。ゆったりしている。「駘蕩タイトウ」(①駘はのどか、蕩はのびやかの意。②しまりがない)「春風駘蕩シュンプウタイトウ」(春風がふき、のどかでのびのびしたさま)
 ヤ  冫部

解字 金文の冶は非常に多く約30字あり、それぞれが異なる。代表的なものを3種挙げると、第一字(上)は、「刀+二(青銅の延べ棒2つ)+火(大とハ)」の会意。青銅の延べ棒2つを火で溶かして刀をつくること。第二字(下)は、「斜めの二(延べ棒2つ)+刀+牙口(牙邑=邪ヤの略体)」で、延べ棒2つで刀を作り発音がヤを表す。第三字(右下)は「刀+二(延べ棒2つ)+土(埜ヤの略体)」で、延べ棒2つで刀を作り発音がヤを表す。(第二・三字の解字は私見です。)
 篆文の[説文解字]は「銷(とかす)也。仌(冫)に従い台聲。発音は羊者切(ヨアyoa)とし、延べ棒二本を仌に変え、発音を台(yoa⇒ya)にした。台の発音でヤになるものは他になく、[説文解字]の強引な造字である。現代字は冶になった。金属を溶かして加工して製品を作る意味を表す。
意味 (1)とかす。いる。金属をとかす。「冶金ヤキン」(金属を溶かし精錬する)「冶鉄ヤテツ」「銷冶ショウヤ」(銷も冶も、とかす意)「陶冶トウヤ」(陶器を造り鋳物をいる。人材を養成すること)「冶者ヤシャ」(鋳物師) (2)とける⇒やわらかい意から、なよなよとしてなまめかしい意。「冶容ヤヨウ」(なまめかしい姿)「冶郎ヤロウ」(なまめかしい装いの男)(3)[日本]「鍛冶カジ」とは、かなうち(金打)の変音で金属を打ち鍛えて器物をつくること。「刀鍛冶かたなかじ」「鍛冶屋かじや
 イ・あめ  食部

飴あめ(麦芽糖)の作り方(中国のサイト)
https://haokan.baidu.com/v?pd=wisenatural&vid=7966165226623931526
①小麦の種子に水をやり発芽させる。
②発芽麦をミキサーに入れて粉々にする。
③水分を多めにいれたご飯を炊き、鍋にうつし②の麦芽片を入れて混ぜる。
④暖かい所に数時間置くと糖化し液が多く出るので、布の袋にいれて絞る。
⑤しぼり汁を鍋にいれて加熱すると飴ができる。

解字 金文第一字(上)は「食(たべもの)+皿(うつわ)+異の略体(異なる)」の会意形声。皿(うつわ)の中の以前と異なるものになった食品の飴。第二字は皿がなくなった「食(たべもの)+異の略体」。ここで異は異なる意と飴の発音を表す。篆文は「食(たべもの)+台(イ)」となり、イという名の食べ物であめをいう。飴の左辺は食と書いても可。異と飴は、上古音・中古音とも共通である。
意味 あめ(飴)。米・芋などの澱粉を麦芽で糖分にかえた食物であるアメ。「水飴みずあめ」「飴細工あめざいく」「飴煮あめに」「飴糖イトウ」(飴も糖も、あめの意。あまい)「飴蜜イミツ」(あめと、はちみつ。あまいこと)
 シ・はじめる・はじまる  女部

解字 金文第一・二字(上下)は、「女(おんな)+司シborder="0"> (口は離れている)」の形声。司は嗣(つぐ・よつぎ)に通じ女のよつぎで、最初に生まれた女の子・長女の意。第三字は「司の上部+以の古字+女」が使われている。篆文は「女+台」となり、説文解字は「女の初めなり」とし長女の意味とするが、清代になると[説文解字注]は「裁は皆衣の始めと為す」として裁縫で衣をつくり始める意とする。長女の意から、のちに物事のはじめ・はじまる意に転用され、始に意味の変化が起こった。字形は隷書を経て始になった。
意味 (1)はじめる(始める)。はじまる(始まる)。「開始カイシ」「始動シドウ」「年始ネンシ」 (2)物事のおこり。「始祖シソ
 チ・ジ・おさめる・おさまる・なおる・なおす  氵部
解字 「氵(水)+台(ジ・チ)」の形声。古くは山東省にあった川の名前。洪水で破損した堤つつみをなおしたことから、治チ・ジで水をおさめる意に仮借カシャ(当て字)され、さらに転じて、世の中をおさめる、病気をおさめる意ともなった。
意味 (1)おさめる(治める)。水をおさめる。「治水チスイ」「治山チサン」(洪水を防ぐために植林する) (2)おさめる。(治める)。おさまる(治まる)。乱れを正す。取り締まる。「治安チアン」 (3)国をおさめる。「政治セイジ」「統治トウチ」 (3)なおす(治す)。なおる(治る)。「治療チリョウ」「治癒チユ」(病気やけががなおる)「全治ゼンチ
 チ・むち  竹部
解字 「竹(たけ)+台チ(=治の略体)」の形声、チは治(おさめる。治安)に通じ、治安(取り締まる)のため、竹の細い棒で相手を打つ笞(むち)をいう。
意味 (1)むち(笞)。罪人などを打つ竹のむち。「笞撃チゲキ」(むちうつ)「笞杖チジョウ」(笞の刑とたたく棒の杖ジョウでうつ刑) (2)むちうつ(笞つ)。「笞刑チケイ」(むちを打つ刑罰)「笞辱チジョク」(笞で打ってはずかしめる)
<紫色は常用漢字>


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音符「百ヒャク」と「佰ハク」「陌ハク」「貊ハク」「弼ヒツ」

2022年10月13日 | 漢字の音符
 粨(100m)・瓸(100g)・竡(100L)を追加しました。
 ヒャク・ハク・もも  白部

  上段が白、下段が百
解字 白は親指の象形、ドングリの象形、頭蓋骨の象形など諸説があるが、はっきりとした定説はない。一方、百は白と発音が同じであったため文字を借りて、「一(ひとつ)+白(ヒャク・ハク)」で数の一百(100)を表した。
意味 (1)ひゃく(百)。数の名。もも(百)。「百人力ヒャクニンリキ」「百戦百勝ヒャクセンヒャクショウ」「百歳ももとせ」(百年。また、多くの年)「百歳ヒャクサイ」(年齢が百の人」 (2)多くの。もろもろの。「百貨ヒャッカ」「百般ヒャッパン

イメージ 
「数(かず)の百」(百・佰・粨・粨・瓸・竡)
「形声字」(貊)
「同体異字」(弼)

音の変化 ヒャク:百  ハク:佰・陌・貊  ヒツ:弼  
 ヘクトメートル:粨(100m)
 ヘクトグラム :瓸(100g)
 ヘクトリットル:竡(100L)
 
数の百
 ハク・ビャク・おさ  イ部
解字 「イ(ひと)+百(100)」の会意形声。100人の人。また、百人のかしらの意。
意味 (1)おさ(佰)。百人のかしら。「仟佰センバク」(①千人の長と百人の長。②千百の意。③田の畔道。南北の通りを仟といい東西を佰という) (2)百の大字。数の百。画数の少ない百の字の改ざんを防ぐために百の代わりに用いられる。「五佰ゴヒャク」(=五百) 
 ハク・バク・みち  阝部こざと
解字 「阝(うね)+百(ヒャク⇒ハク)」の形声。阝(こざと)は、ここで田のあいだの畝(うね)の道、百を横、千をタテと見なし、横の道をいう。タテの道を阡センという。
意味 (1)みち(陌)。あぜみち。「陌阡ハクセン」(田のあぜ道。東西を陌、南北を阡という)「陌上ハクジョウ」(あぜのほとり) (2)街路。「巷陌コウハク」(まちの道。ちまた)「陌頭ハクトウ」(みちばた。路上)「陌路ハクロ」(路上。路上の人。見知らぬ人)
<国字> ヘクトメートル  米部
解字 「米(メートル)+百(100)」の会意。100メートルの意。
意味 ヘクトメートル(粨)。英語でhectometre, 記号はhm。長さの単位。ヘクトはギリシャ語で100の意。1メートルの100倍。つまり100メートル。
<国字> ヘクトグラム  瓦部
解字 「瓦(グラム)+百(100)」の会意。100グラムの意。ヘクトはギリシャ語で100の意。
意味 ヘクトグラム(瓸)。100グラム。英語でhectogram, 記号はhg。重さの単位。
<国字> ヘクトリットル  立部
解字 「立(=立方体。リットル)+百(100)」の会意。100リットルの意。ヘクトはギリシャ語で100の意。
意味 ヘクトリットル(竡)。100リットル。英語でhectolitre, 記号はhl。容積の単位。
形声字
 ハク・えびす  豸部むじな
解字 「豸(けもの)+百(ハク)」の形声。豸むじな偏は、野生動物を表す部首。これに百(ハク)がついた貊ハクは、ハクという名のけもの。転じて、古代の中国東北地方に住んでいた未開民族をいう。未開民族を見下した漢字。
意味 (1)えびす(貊)。中国の黒龍江省西部・吉林省西部・遼寧省から北朝鮮にかけての地域に存在したとされる古代の種族。周代以降の記録に濊ワイ・貊ハクの名が見える。「濊貊ワイハク」(古代の中国東北地方に住んでいた未開民族の濊と貊)「貊族ハクゾク」「夷貊イハク」(東北方の異民族)「蛮貊バンパク」(南の蛮と北東の貊。野蛮な国)

同体異字
 ヒツ・たすける・すけ  弓部

解字 金文は「弓弓+敷物」の会意。弓二つは、一本の弓に、弓の型を当ててしっかり固定し、弓の曲がりを矯正している形。それに敷物(むしろ)がついた弼は、敷物の上で弓を、ためる(矯正キョウセイする)作業を表す。篆文は敷物が変形し、現代字は百になって弓のあいだに入った形。意味は、君主の政治が曲がるのを正す意から、君主の政治をたすける意となる。
意味 (1)ためる。矯正する。 (2)たすける(弼ける)。たすけ。「輔弼ホヒツ」(天子の政治をたすけること。また、その役) (3)[国]すけ(弼)。律令制の弾正台(警察)の次官。大弼ダイヒツとも言う。 (4)人名。「井伊直弼いいなおすけ」(彦根藩主。幕府の大老。安政の大獄が原因で、水戸・薩摩浪士らに桜田門外で殺害された)
<紫色は常用漢字>

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音符「胡コ」<表面をおおう>と「湖コ」「糊コ」「醐ゴ」「瑚ゴ」

2022年10月10日 | 漢字の音符
 餬コ・蝴コを追加しました。
 コ・ゴ・ウ・えびす・なんぞ  月部にく  

 老牛のあごから垂れるように続く肉。 
解字 「月(にく)+古(ふるい・年を経た)」の会意形声。老牛のあごの下から前足にかけて、垂れさがるように出てくる肉のこと(上の写真)。転じて、人のあご髭(ひげ)をさす。中国の北方・西方に住む異民族は、あご髭を生やす人が多いので、胡とよばれた。
意味 (1)あごひげ。「胡鬚コシュ」(ひげ。胡も鬚も、ひげの意) (2)えびす(胡)。中国の北方や西方に住む遊牧民族の総称。また、その産物。「胡人コジン」「胡瓜きゅうり」「胡弓コキュウ」「胡桃くるみ=山胡桃」「胡旋舞コセンブ」(胡人が踊る旋回する舞) (3)でたらめ。うたがわしいこと。(胡人の言葉や行動が漢民族と異なっていたことから)「胡散ウサン臭い」(何となく疑わしい)「胡論ウロン」(乱雑なこと。疑わしいこと) (4)なんぞ(胡ぞ)。なに。なんの。いずくんぞ。疑問・反語を表す助字。 (5)姓のひとつ。「胡錦涛コキントウ」(中国の第6代国家主席)

イメージ 
 あご髭の印象から「表面をおおう」(胡・湖・糊・餬・醐・瑚)
 「形声字」(蝴)
音の変化  コ:胡・湖・糊・餬・蝴  ゴ:醐・瑚

表面をおおう
 コ・みずうみ  氵部
解字 「氵(水)+胡(表面をおおう)」の会意形声。大地の表面を広くおおう水。水のうみ(海)。
意味 みずうみ(湖)。「湖畔コハン」「湖月コゲツ」「湖上コジョウ」「琵琶湖びわこ
 コ・のり  米部
解字 「米(こめ)+胡(表面をおおう)」の会意形声。ご飯をすりつぶしたものを表面にのばしてぬること。ぬる意が原義。「のり」の意味の場合は、通常、余ったご飯に水を多くいれて炊いた粥(かゆ)をすりつぶし、布で濾した汁をいう。障子紙などの接着に使う他、着物の洗い張りといって洗った着物の布地にのりをつけて板に貼り付けて乾かすのにも使う。この薄いのりを口にすすることを「糊口を凌ぐ」という。
意味 (1)ぬる。「糊塗コト」(糊も塗も、ぬる意。表面を塗ってごまかす。その場を取り繕うこと) (2)(表面をぬると)ぼんやりする。「模糊モコ」(ぼんやりしてよく見えない)「曖昧模糊アイマイモコ」 (3)のり(糊)。のりづけする。「糊代のりしろ」(糊をつける部分) (4)糊のような粥をすする。「糊口ココウを凌(しの)ぐ」(糊をすすってなんとか暮らす)
 コ・かゆ  食部
解字 「食(たべる)+糊の略体(のりのような粥)」の会意形声。糊には粥の意味があり、この意味を表すため、米の代わりに食偏をつけた字。
意味 かゆ(餬)。米にたっぷりの水をいれ、やわらかく煮たもの。「餬口ココウ」(①かゆを食べて生活する。②寄食する。居候いそうろうする。=糊口) (2)貧しくくらす。「餬口の計ケイ」(生活を維持するやりかた) (3)のり。=糊。「餬紙コシ」(紙貼り)
 ゴ  酉部
解字 「酉(発酵する)+胡(表面をおおう)」の会意形声。牛乳を温めて攪拌し、表層にでるバタークリームを熟成させたもの。
意味 「醍醐ダイゴ」に用いられる字。醍醐とは、発酵乳製品のうち最も美味なもの。仏教の最高真理に例えられる。「醍醐寺ダイゴジ」(京都にある真言宗醍醐派の総本山)「醍醐味ダイゴミ」(深い味わい。本当の面白さ)
 ゴ・コ  玉部
解字 「王(玉)+胡(表面をおおう)」の会意形声。表面がサンゴ虫の石灰質でおおわれた宝石。

珊瑚の置物(通販サイトから)
意味 (1)「珊瑚サンゴ」に使われる字。珊瑚とは、熱帯の海中に住むサンゴ虫の石灰質が集積して塊状をなしたもの。珊サンは「王(玉)+冊(=柵。さく)」で、木の柵のように生える枝状のサンゴの意。「珊瑚礁サンゴショウ」(サンゴ虫の群体が堆積してできた岩礁や島)「赤珊瑚あかサンゴ」(赤い色の宝石珊瑚) (2)瑚は、古代で穀物を盛って祖先の廟(みたまや)に供える祭器の名。「瑚璉コレン」(瑚は夏の時代、璉は殷の時代の名称という)

形声字
 コ  虫部
解字 「虫(むし)+胡(コ)」の形声。コという名の虫。「蝴蝶コチョウ」に用いる字。中国では蝶チョウを表す字の前につけ「蝴蝶コチョウ」で、日本の蝶の意味で用いる。中国語は漢字一字で表すと同音が多いので、名詞はほとんど二字にして表す。日本でも蝶を「蝶々ちょうちょ」と発音するのに似ている。なお、「胡蝶コチョウ」は中国で人名(女性)。胡が姓、蝶が名。日本では蝴蝶の代わりに用いる(例:胡蝶蘭)。
意味 「蝴蝶コチョウ」とは中国での蝶の正式名称。日本では蝶の美称として用いる。「蝴蝶蘭コチョウラン」(蝶に似た白い花をつける洋蘭。=胡蝶蘭)「蝴蝶装コチョウソウ」(文字を書いた紙面を二つ折りにし、折り目を重ね合わせて糊で貼り、表紙をつけた装丁方法。開くと蝶が羽をひろげた形になる。=胡蝶装)「蝴蝶紋コチョウモン」(蝶が羽をひろげた形の家紋。=胡蝶紋)「蝴蝶結びコチョウむすび」(蝶々結び。=胡蝶結び) 
<紫色は常用漢字>

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音符「責セキ」<武器で財貨を求める>「積セキ」「績セキ」「債サイ」「漬シ」

2022年10月07日 | 漢字の音符
 磧セキを追加しました。
 セキ・シャク・せめる  貝部

解字 甲骨文から篆文まで「朿(武器の一種)+貝(財貨)」の会意形声。朿は、先の尖った武器の一種(トゲの意味もある)。この武器で財貨を力づくで求めること。また転じて、とがめる意となった。また、要求される方から見て、なすべきこと・つとめの意となる。要求される方が、責任をもつのは本末転倒だが、武器をもつ者の強みといえる。現代字は、篆文の上部・朿⇒龶 に変化した責になった。なお、甲骨文では、財貨を集積する意があるが、これは音符にあらわれる。
意味 (1)せめる(責める)。力づくで求める。とがめる。「叱責シッセキ」「自責ジセキ」「呵責カシャク」(呵は、しかる意。しかって責めること)(2)なすべき仕事。つとめ。せめ。「責務セキム」「責任セキニン」「重責ジュウセキ

イメージ  
 「財貨を求める」
(責・債)
  出された財貨を「つみかさねる」(積・癪・績・漬・簀・蹟・磧)
音の変化  セキ:責・積・績・蹟・磧  サイ:債  サク:簀  シ:漬  シャク:癪

財貨を求める
 サイ・かり  イ部
解字 「イ(人)+責(責め)」の会意形声。責めを負わされた人の意。金銭などを返す義務を負う人。また、その義務をいう。逆の立場から、かしの意もある。
意味 (1)かり(債り)。「債務サイム」「負債フサイ」 (2)かし。貸した金銭。「債権サイケン」 (3)債券の略。(国・地方公共団体などが資金を借り入れるため発行する有価証券)「国債コクサイ」「公債コウサイ

つみかさねる
 セキ・つむ・つもる  禾部
解字 「禾(穀物)+責(つみかさねる)」の会意形声。要求に応じて納められた穀物が、積み重ねられたさまをいう。
意味 (1)つむ(積む)。つもる(積もる)。「積載セキサイ」「積雪セキセツ」 (2)たくわえる。「蓄積チクセキ」 (3)掛け算の答え。 (4)大きさ。「容積ヨウセキ」 (5)つもり。もくろむ。「積極セッキョク」(自ら進んで行う。⇔消極)
 シャク  疒部
解字 「疒(やまい)+積(つもる)」の会意形声。身体や心に積もったものが急に出る発作などの症状。
意味 (1)胸や腹が急に痛くなること。さしこみ。「癪気シャッキ」 (2)急に怒ること。「癇癪カンシャク」(感情を一度にぶちまける性質)
 セキ・うむ・つむぐ  糸部
 
麻糸を績(う)み苧桶おぼけにいれる女たち(菱川師宣「和国百女」より)
解字 「糸(いと)+責(つみかさねる)」の会意形声。麻や苧麻(からむし)などの皮を細かく裂き、それを長くつないでよりあわせること(績む)。植物繊維から糸を作り出すことは手わざと根気を必要とし、その結果、苧桶の中につみかさなった糸は貴重品であり、すぐれた結果となる。積が実った穀物を積み重ねるのに対し、績は糸をつむぎだした仕事の成果をいう。
意味 (1)うむ(績む)。つむぐ(績ぐ)。つないでよりをかけて糸にする。「紡績ボウセキ」(紡も績も、つむぐ意)「績女セキジョ」(糸績(つむ)ぎする女) (2)わざ。しごと。また、その結果。「業績ギョウセキ」「成績セイセキ」 (3)てがら。すぐれた結果。「功績コウセキ
 シ・つける・つかる  氵部
解字 「氵(みず)+責(つみかさねる)」の会意形声。水の中に物をつみ重ねる意。
意味 (1)つける(漬ける)。水などの中につける。ひたす。「漬け物」「塩漬け」 (2)ひたる。つかる(漬かる)。「漬浸シシン」(水につかる)
 サク・す・すのこ  竹部
解字 「竹(たけ)+責(つみかさねる)」の会意形声。細くした竹などを一本一本上から積み重ねて紐で編んだもの。
 
葭簀(よしず)(「ActivePhotoStyle」より)
意味 す(簀)。すのこ(簀)。篠竹や割り竹や葦を紐で編んだもの。もとは寝台に敷いた竹製のござをいった。現在は、すだれとして使ったり、海苔を干す海苔簀や、鮨をまく巻き簀などに用いる。「葭簀よしず」(葭で編んだ簀で日除けなどに用いる)「簀子すのこ」(①竹や葦の簀。②水切りのため竹や木を間隔をおいて張った台)「生簀いけす」(川や池の一部を簀で囲い、獲った魚を一時的に飼育する施設)
 セキ・シャク・かわら  石部
解字 「石(小石)+責(つみかさなる)」の会意形声。小石がつみかさなる河原。また、小石の多い砂漠をいう。
意味 (1)かわら(磧)。川原の小石の重なったところ。「磧礫セキレキ」(川原の小石) (2)砂漠。砂原。「磧中セキチュウ」(砂漠の中)「延磧エンセキ」(延びる砂漠)「沙磧サセキ」(沙漠)
 セキ  足部
解字 「足(あし)+責(つみかさねる)」の会意形声。人が足を踏み重ねること。あしあと。転じて、人のおこないの積み重ねをいう。常用漢字でないため、跡に置き換えることが多い。
意味 あと(蹟)。あしあと。建物の土台のあと。物事がおこなわれたあと。「遺蹟イセキ」(=遺跡)「旧蹟キュウセキ」(=旧跡)「史蹟シセキ」(=史跡)「筆蹟ヒッセキ」(=筆跡)
<紫色は常用漢字>

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音符「夆 ホウ」<であう>と「縫ホウ」「峰ホウ」「蜂ホウ」

2022年10月04日 | 漢字の音符
 篷ホウを追加しました。
 ホウ  夊部         

解字 「夊⇒夂(降下する足)+丰ホウ(麦などの穂先)」の会意。夊⇒夂は下向きの足を表し、ここでは上から下へ降下する意。金文の丰は下にまるい土を描き、若木が生える形。のち、丰に変化し禾(穀物)の穂先(芒)の意味もあることから、麦などの穂先に神が降下する意。
意味 あう。であう。=逢。

イメージ 
 神が穂先に降下する意から神と穂先が「出合う」(逢・縫・篷)
 降下した穂の「するどい先」(峰・蜂・鋒・烽)
 「形声字」(蓬
音の変化  ホウ:逢・縫・篷・峰・蜂・鋒・蓬・烽

出合う
 ホウ・あう  辶部しんにょう
解字 「辶(ゆく)+夆(出合う)」の会意形声。辶(ゆく)をつけて出合う意味を強めた字。常用漢字でないため、二点しんにょう。
意味 (1)あう(逢う)。出合う。「逢着ホウチャク」(でくわす)「逢遇ホウグウ」(出会う。ふと出会う)「逢引あいびき」(逢うのを手引きする)(2)むかえる。「逢迎ホウイン」(出迎えて接待する)
 ホウ・ぬう  糸部
解字 「糸+逢(出合う)」の会意形声。布と布を出合わせて糸を通し、縫い合わせること。
意味 (1)ぬう(縫う)。ぬいあわせる。「裁縫サイホウ」「縫合ホウゴウ」「縫製ホウセイ」 (2)とりつくろう。「弥縫ビホウ
 ホウ・とま  竹部
烏篷舟
船で行く上海の旅 その二 (紹興・寧波)
解字 「竹(たけ)+逢(出合う)」の会意形声。竹を編んだ覆いを舟の上に合わせること。小舟の覆いをいう。
意味 (1)とま(篷)。竹などで編んだ舟の覆い。「篷舟とまぶね」「烏篷舟ウホウぶね」(雨をはじくため黒い(烏からす)塗料を篷に塗った舟) (2)ふね。小舟。「釣篷チョウホウ」(釣り舟)「孤篷コホウ」(一艘の孤独な舟)
 ホウ・のろし  火部
解字 篆文は「火+逢(出合う)」となっており、こちらの火を合図として次の場所へ伝え(出合わせ)、受けた方は火を焚いて別の場所へと次々に敵の襲来を伝えてゆく火煙。現代字は逢⇒夆に変化した烽となった。
現在の字での覚え方 「火+夆(=鋒。ほこ)」で、ほこさきのような火があがる烽(のろし)
意味 のろし(烽)。敵の襲来の合図のため高くあげる煙。「烽火ホウカ」(のろし。とぶひ)「烽煙ホウエン」「烽台ホウダイ」(烽をあげる低い塔のような構造物)

するどい先
 ホウ・みね  山部
解字 「山(やま)+夆(するどい先)」の会意形声。するどく尖った山のいただき。
意味 みね(峰)。山のいただき。高い山。「高峰コウホウ」「秀峰シュウホウ」「霊峰レイホウ
 ホウ・はち  虫部
解字 「虫(むし)+夆(するどい先)」の会意形声。尾にするどい針をもつ昆虫。ハチ。
意味 (1)はち(蜂)。「蜜蜂みつばち」「蜂巣ホウソウ」(はちの巣) (2)むらがる。むれる。「蜂起ホウキ
 ホウ・ほこさき・ほこ  金部
解字 「金(金属)+夆(するどい先)」の会意形声。するどく尖った武具のホコ。また、その先。
意味 (1)ほこ(鋒)。ほこさき(鋒)。切っ先。鉾とも書く。「鋒先ほこさき」「鋒鏑ホウテキ」(ほこさきと、やじり。転じて武器・兵器) (2)勢いのするどい例え。「舌鋒ゼッポウ」(言葉のほこ先がするどい) (3)筆の先。「筆鋒ヒッポウ」(筆のほさき。筆のいきおい) (4)さきて。先陣。「先鋒センポウ

形声字
 ホウ・よもぎ  艸部

日本のヨモギの葉(近くの安威川の河原で筆者撮影)
解字 「艸(くさ)+逢(ホウ)」の形声。[説文解字]は「蒿(よもぎ)也。从艸に従い逢の聲(声)」とする。よもぎはキク科の多年草だが種類が多い。日本のヨモギのイメージをこえて中国ではいろんな意味で用いる。
意味 (1)[日本]よもぎ(蓬)。もちぐさ。「蓬餅よもぎもち」 (2)[中国]よもぎを家屋などに利用する。「蓬戸ホウコ」(ヨモギで編んだ粗末な戸。粗末な家)「蓬門ホウモン」(よもぎを編んで作った門。貧しい家。隠者の家)「蓬矢ホウシ」(よもぎの茎で作った矢。邪気をはらう) (3)物の乱れているさま。「蓬髪ホウハツ」(蓬のようにのびて乱れた髪)「蓬首ホウシュ」(髪のみだれた頭) (4)「蓬莱ホウライ」とは、東海中にあり仙人が住み不老不死の地とされる山。また、これをかたどり松竹梅、鶴亀、尉と姥を配した祝儀の飾り物。
<紫色は常用漢字>

お知らせ
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