漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「戒カイ」<両手で戈をもつ> と 「械カイ」「誡カイ」

2019年10月14日 | 漢字の音符
 カイ・いましめる  戈部            

解字 甲骨文から現代字まで、「戈(ほこ)+廾(両手)」の会意。甲骨文は戈を左右からもつ形。金文以降は両手が下にきて戈を高く持ち上げている形。現代字は両手が廾に変化している。武器を持って用心する(警戒)する意。さらに、用心させる(戒告)意となる。戒を音符に含む字は、「いましめる」イメージを持つ。
意味 (1)用心する。警備する。「警戒ケイカイ」「戒厳令カイゲンレイ」 (2)いましめる(戒める)。さとす。「戒告カイコク」「訓戒クンカイ」「自戒ジカイ」 (3)いましめ。特に宗教上のおきて。「戒律カイリツ

イメージ 
 武器を持って「いましめる」(戒・械・誡)
音の変化  カイ:戒・械・誡

いましめる
 カイ・かせ  木部
解字 「木+戒(いましめる)」 の会意形声。罪人の手足にはめて自由を奪う木製の刑具。転じて、木製のしかけ・からくりを言う。
意味 (1)かせ(械)。枷かせとも書く。刑具のひとつ。罪人の首や手足にはめ自由を束縛する。 (2)しかけ。からくり。道具。「機械キカイ」「器械キカイ」(機械は動力による大規模なものをいい、器械は道具や人力による小規模なものをいうことが多い)
 カイ・いましめる  言部
解字 「言(ことば)+戒(いましめる)」 の会意形声。言葉でいましめること。
意味 いましめる(誡める)。言葉で注意する。「誡告カイコク」(=戒告)「訓誡クンカイ」(=訓戒)  ※「戒」が書きかえ字となっており、現在はほとんど使われない。

<紫色は常用漢字>

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音符 「二 ニ」 <ふたつ> と 「弐ニ」「仁ジン」

2019年10月06日 | 漢字の音符
  佞ネイを加えました。
 ニ・ふた・ふたつ  二部

解字 二本の横線を並べた指事文字。二つの意味を表す。また、にばんめ・別の意を派生する。
意味 (1)ふたつ(二つ)。「二枚にまい」 (2)二つにする。二つになる。「二分ニブン」「二股ふたまた」 (3)次の。にばんめ。「二次ニジ」「二世ニセイ」 (4)ふたたび。「二度目ニドめ」 (5)別の。ちがった。「二様ニヨウ

イメージ  
 「ふたつ」
(二・仁・佞・弐)
 「同音代替」(膩)
音の変化  ニ:二・弐  ジ:膩  ジン:仁  ネイ:佞
  
ふたつ
 ジン・ニ・ニン  イ部
解字 「人(ひと)+二(ふたり)」の会意。二人の人が相親しむこと。相手を人として扱うこと。
意味 (1)ひと。人間。 (2)自分と同じ仲間として、すべての人に接する心。隣人愛や同情の気持ち。「仁義ジンギ」「仁者愛人」(仁なる者は人を愛す)(3)仁の心を備えた人。「仁者ジンシャ」「仁王ニオウ」(仏法を守る神)(4)さね。果実の殻の中のやわらかい部分。「杏仁キョウニン」(杏のさねを乾かしたもの。漢方薬となる。アンニンとも)「桃仁トウニン
 ネイ・デイ  イ部

解字 「仁ジン(おもいやり)+女(おんな)」 の会意。思いやりのある世話好きの女の意から転じて、口がうまい意で用いられたが、のち表面的に思いやりを見せながら、内心はそれを口実に相手に取り入ろうとする女をいうようになった。
意味 (1)口がうまい。弁が立つ。「仁なれども佞ネイならず」(仁徳はあるが弁がたたない)「佞舌ネイゼツ」(おしゃべり)(2)おもねる。へつらう。「佞言ネイゲン」(こびへつらう言葉。おべっか)「佞臣ネイシン」(主君におもねる臣下)「佞弁ネイベン」(口先がうまく人にへつらうこと。また、その言葉)「佞人ネイジン」(口先がうまく、こびへつらう人。=佞者ネイシャ)(3)よこしま。ねじけている。「佞奸ネイカン」(口先が巧みで心の正しくないこと。また、その人)
 ニ  弋部しきがまえ
解字 「弋(くい)+二(ふたつ)」の会意形声。くいが二本でふたつを表す。二の古字。
意味 ふたつ。
[貳] ニ・ジ  弋部しきがまえ
解字 旧字は貳で、「貝(かい)+弍(二の古字)」の会意形声。貝二つで、ふたつの意を表わす。新字体は、旧字から貝を省き代わりに一を弍の上に加え、筆画を簡略にした文字。契約書などでは、二の代わりに用いる。
意味 (1)ふたつ。「弐萬円」(2)ふたごころがある。「弐心ジシン・ニシン」(そむくきもち。疑うこころ)「弐臣ジシン」(ふたごころある家来)(3)そえる。「弐車ジシャ」(そえ車。副車)

同音代替
 ジ・ニ・あぶら  月部にく
解字 「月(からだ)+貳(ジ)」の形声。ジは耳(やわらかい耳たぶ)に通じ、身体のやわらかい皮下脂肪をいう。
意味 (1)あぶら(膩)。皮膚からにじみ出たあぶら。あぶらぎる。「脂膩シジ」(あぶら) (2)なめらか。きめ細かい。「膩理ジリ」(肌がなめらかできめ細かい)「細膩サイジ」(きめが細こまかい。念入り)「瑣砕細膩ササイサイジ」(心遣いが隅々まで行き届いていること)
<紫色は常用漢字>

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音符「巣ソウ」<鳥のす> と 「卵ラン」

2019年10月01日 | 漢字の音符
  剿ソウを追加しました。
 ソウ・す  ツ部

解字 木の上の鳥の巣に雛のいる形の象形[字統]。鳥の「す」を表わす。新字体は、旧字上部の巛⇒ツに変化した。新字体で分解すると、「ツ(たくさんのヒナ)+田(すの本体)+木」となる。
意味 (1)す(巣)。鳥や動物の住む場所。すをつくる。すくう(巣くう)。「営巣エイソウ」「帰巣キソウ」 (2)かくれが。「巣窟ソウクツ」(悪者などの隠れ家) (3)あつまる。あつまる所。「卵巣ランソウ」(卵をつくる器官)「病巣ビョウソウ」(病に侵されている個所)

イメージ
 「鳥の巣」(巣)
 意味(2)の悪者の「隠れ家」(剿)
 「形声字」(勦)

隠れ家
 ソウ・ショウ・ほろぼす・かすめる  刂部
解字 「刂(かたな)+巢(隠れ家)」 の会意形声。隠れ家を襲い刀で切り、ほろぼすこと。
意味 (1)ほろぼす。ころす。「剿賊ソウゾク」(賊をころす)「剿滅ソウメツ」(ほろぼす)「剿絶ソウゼツ」(ほろぼして根絶やしにする) (2)かすめる(剿める)。「剿取ソウシュ」「剿襲ソウシュウ」(かすめとって自分の説とする)

 ソウ・ショウ・ほろぼす・かすめとる  力部
解字 「力(ちから)+巢(ソウ)」の形声。①剿ソウに通じ、ほろぼす意。②力を剿(かす)め取るので疲れる意。[説文解字]は、「勞(つかれ)る也(なり)。力に従い巢(ショウ)の聲(声)」とするが、多くは①の意で用いられる。
意味 (1)ほろぼす(勦ぼす)。ころす。「勦除ソウジョ」(ほろぼして取り除く)「勦討ソウトウ」(討ちほろぼす)「勦殄ソウテン」( 皆ごろしにして滅ぼす)(2)かすめとる(勦る)。「勦襲ソウシュウ」(他人の説を自分の説にする) (3)つかれる。「其れ以て民を勦(つか)れしむ也(なり)」(春秋伝・左伝)「勦民ソウミン」(民を疲れさせる)


    ラン <たまご>
 ラン・たまご  卩部ふしづくり       

解字 木の枝などに虫などのタマゴが産みつけられた形の象形。たまごを意味する。卵は象形なので本来は部首になる字だが、系列字がほとんどないので、卩セツ部になっている。苦しい分類である。
意味 (1)たまご(卵)。鳥・虫・魚などのたまご。「卵生ランセイ」「鶏卵ケイラン」「卵黄ランオウ」 (2)まだ一人前にならない人。「医者の卵」

イメージ  「たまご」(卵・孵)
音の変化  ラン:卵  フ:孵

たまご
 フ・かえる・かえす  子部
解字 「卵(たまご)+孚(だく)」の会意形声。卵をだいて、ひながかえること。卵という部首がないので、子が部首になっている。音符は孚
意味 かえる(孵る)。卵がかえる。かえす(孵す)。「孵化フカ」「孵卵器フランキ
<紫色は常用漢字>

※孵は、音符「孚フ」に属する字。参考のため重出した。音符「孚フ」を参照。

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