漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「欮ケツ」 <のぼせる> と 「厥ケツ」 <えぐる>

2018年09月27日 | 漢字の音符
  ケツ  欠部

解字 「欠(口をあけて息を出す)+屰(ぎゃく)」の会意。口から出た息が逆にもどる形で、気が逆になること。
意味 気が逆になる。のぼせる。しゃっくり。 
 
イメージ  
 「のぼせる」
(欮・瘚)
 「同音代替」(闕)
音の変化  ケツ:欮・瘚・闕

のぼせる
  ケツ  疒部
解字 「疒(やまい)+欮(のぼせる)」の会意形声。気が逆になる症状。
意味 しゃっくり。また、気が逆上するために、のぼせや冷えをともなう症状。気逆病。

同音代替
 ケツ  門部  
 漢梁孝王陵の闕
解字 「門(もん)+欮(ケツ)」の形声。ケツは缺ケツ(かける)に通じ、城壁や垣が欠け、両側に高い楼閣のみがある門。陵墓などの入口に建てられた。のち、宮城の門外の両側に建つ楼閣もいう。
意味 (1)宮城門外の左右に建てられた望楼。「宮闕キュウケツ」「闕下ケッカ」(①天子の宮門のもと。②天子) (2)[缺ケツに通じ]欠ける。「闕字ケツジ」(文章中に天子の名を書くとき、敬意を表すため、そのすぐ上を一・ニ字空けて書くこと)「闕所ケッショ」(①領主の欠けた土地。②領地を没収する刑罰)「闕所改易ケッショカイエキ」(領地を没収し他の人に改める)


   ケツ <えぐる>

 ケツ  厂部  

解字 「厂(がけ・きりたつ)+欮(ケツ)」の形声。ケツは夬ケツ・抉ケツ(刃物でえぐる)、また氒ケツ(丸刃の彫刻刀でほる)に通じ、両側がきりたつほど刃物で深くえぐること。
意味 (1)ほる。ほりおこす。 (2)まげる。くぼむ。ぬかずく。「厥角ケッカク」(地面にぬかずく礼) (3)(仮借の用法)その(厥の)。それ(厥れ)。「厥初ケツショ」(そのはじめ) (4)「突厥トッケツ」とは、トルコ族の一種。6~8世紀に中央アジアに大帝国を建てた。

イメージ 「えぐる・刃物」(厥・劂・蕨・獗・蹶)
音の変化  ケツ:厥・劂・蕨・獗・蹶

えぐる・刃物
 ケツ  刂部
解字 「刂(かたな)+厥(えぐる・刃物)」の会意形声。厥は、刃物でえぐる意。劂は刂(かたな)をつけて、その意味を確認した字。
意味 (1)彫刻用の曲がった小刀。「剞劂キケツ」(彫刻用の曲刀) (2)えぐる。えぐってほる。彫刻する。
 ケツ・わらび  艸部
解字 「艸(草)+厥(=劂。彫刻刀でえぐる)」の会意形声。彫刻刀で板などをえぐったとき出る削りくずが丸くなり、ワラビの芽がでた形と似ていること。
意味 わらび(蕨)。早春にこぶし状に巻いた芽を出し食用とする草。「蕨粉わらびこ」(ワラビの根からとったデンプン)
 ケツ  犭部
解字 「犭(いぬ)+厥(刃物・えぐる)」の会意形声。人が刃物をもって暴れるさまを犬にたとえて言う。
意味 たけりくるう。「猖獗ショウケツ」(悪い者の勢いが盛んなこと)
 ケツ・つまずく  足部
解字 「足(あし)+厥(えぐる)」の会意形声。えぐられた所に足を取られること。また、つまずいてのち、すばやく動くこと。
意味 (1)つまずく(蹶く)。たおれる。「蹶失ケッシツ」(つまずいて立ち位置を失う=つまずいてころぶ)「蹶躓ケツチ」(つまずく、つまずきたおれる。蹶も躓も、つまずく意) (2)(つまずいて)おどろく。はねる。とびあがる。「蹶然ケツゼン」(①驚くさま。あわてるさま。②動作の急なさま)「蹶起ケッキ」(はねおきる。ふるいたつ。奮起・決起する)



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紛らわしい漢字 「逐チク」 「遂スイ」 「墜ツイ」

2018年09月23日 | 紛らわしい漢字 
「逐チク」「遂スイ」「墜ツイ」は紛らわしい漢字だが、この3つに共通しているのは「豕シ」である。豕シは、イノシシまたは家畜のブタを表す。そして、イノシシを追いかけて捕らえる形が「㒸スイ」だ。最後の「墜ツイ」は、仲立ちとなる漢字の「隊ツイ・タイ」がカギとなる。「隊ツイ・タイ」は、ツイの発音で「おちる」という意味で同音代替され、タイの発音で軍隊の意味になるから注意が必要だ。

   シ  <いのしし・ぶた>
 シ・い・いのこ  豕部いのこ

解字 いのしし、または、家畜のぶたの姿を描いた象形。部首「いのこ」「いのこへん」となる。音符として使われることはなく、会意として、いのしし・ぶたなどの意を表わす。亥ガイと似ているが、亥は豚などの骨格を、豕は動物のイノシシや豚(ぶた)を示す。
意味 い(豕)。いのこ(豕)。いのしし。ブタ類の総称。「亥豕ガイシの誤り」(文字の書き誤りのこと)

イメージ  「いのしし・ぶた」(豕・豚・逐)
音の変化  シ:豕  チク:逐  トン:豚
いのしし・ぶた
 トン・ぶた  豕部
解字 「月(にく)+豕(ぶた)」の会意。ぶたの肉の意で、肉をとるための豚を表わす。
意味 (1)ぶた(豚)。こぶた。いのこ。「豚児トンジ」(不出来な息子) (2)「河豚カトン」とは、ふぐのこと。ずんぐりとした形が似ているから。
 チク・おう  辶部           

解字 甲骨文はイノシシの下に足(止)の形を描き、いのししを人が追っているさま。金文は彳(ゆく)と足を描く。この部分が篆文でしんにょうの原形(辵)に変化している。現代字は、「辶(ゆく)+豕(いのしし)」の会意で、いのししを追ってゆくこと。
意味 (1)おう(逐う)。おい払う。「駆逐クチク」(おいはらうこと)「放逐ホウチク」(おいやる・おいはらう) (2)順を追う。「逐一チクイチ」(ひとつひとつ)「逐次チクジ」(次々に)「逐語チクゴ」(一語一語) (3)きそう。争う。「角逐カクチク

   スイ <やりとげる>
 スイ・ズイ  ハ部

解字 甲骨文は「ハ+豕(いのしし)」の会意。狩猟法の一種として用いられており、イノシシをあい路(ハ)に追い込んで捕らえる様子であろう[甲骨文字辞典]。篆文以降、遂と同じく、とげる意で用いられており、イノシシを追い込んで捕らえたので「とげる」意になったと思われる。この字は単独で用いられることは稀で、遂と同字として用いられる。
意味 (1)甲骨文字で、獣をとらえる狩猟法のひとつ。 (2)とげる。=遂スイ。 (3)したがう。

イメージ 「やりとげる」(遂)
音の変化  スイ:遂  
やりとげる
 スイ・ズイ・とげる・ついに  辶部
解字 「辶(ゆく)+㒸(やりとげる)」の会意形声。㒸スイの意味(やりとげる)を之(すすむ)をつけて強調した字。新字体になると、豕の上がハ⇒ソになった遂になる
意味 (1)とげる(遂げる)。やりとげる。なしとげる。「遂行スイコウ」(なしとげる。やりとげる)「完遂カンスイ」(完全にやりとげる)「未遂ミスイ」(未だなし遂げていない)「未遂罪ミスイザイ」(犯罪は未遂であるが罪になること)「既遂キスイ」(既になし遂げたこと) (2)ついに(遂に)。とうとう。おわりに。

   ツイ・タイ <おちる>
 ツイ・タイ  阝部

解字 甲骨文は「阝(はしご)+逆さになった人」の会意で、人がおちる意。篆文で、逆さになった人⇒発音を表す㒸スイ(⇒ツイに変化)に置き換えた「隊ツイ」となった。一方、もう一つの発音であるタイは𠂤タイ(師の原字。軍隊の象徴)に通じ、軍の部隊の意で使われ、のちこの意味が主流となった。おちる意味の隊ツイは、のちに土をつけた墜ツイで表すようになった。
意味 (1)兵の集まり。「軍隊グンタイ」「部隊ブタイ」「隊長タイチョウ」 (2)くみ。むれ。統一された集合体。「隊商タイショウ」「隊列タイレツ」 (3)おちる。=墜ツイ

イメージ  
 「同音代替」(隊)
 「おちる」(墜) 
音の変化 タイ・ツイ:隊  ツイ:墜
おちる
 ツイ・おちる  土部   
解字 「土(つち)+隊(おちる)」の会意形声。隊ツイ・タイは、もともとおちる意だが、軍隊の意に使われたので、土をつけ土の上におちる意とした。
意味 (1)おちる(墜ちる)。おとす。「墜落ツイラク」(墜も落もおちる意)「撃墜ゲキツイ」(撃ち落とす)「墜死ツイシ」(墜落して死ぬ) (2)うしなう。「失墜シッツイ」(失も墜もうしなう意)
<紫色は常用漢字>



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スマホが手書き文化を復活させる? 

2018年09月17日 | 漢字の音符
 これまで私はパソコンだけ使いスマホは持っていなかった。ほとんど家で仕事(?)をしている私に、もう一台の手のひらに収まるパソコン=スマホは必要なかったからだ。しかし最近、各種の格安スマホが売り出されるようになり、外出のとき便利かなと一台買うことにした。ネットで調べて月額1000円(税別)の通信料で済むアンドロイドのスマホ(トーンモバイル)を選んだ。スマホ本体価格は3万円、一括前払いした。

 使い始めて2か月半、少しづつ慣れて使い方が分かってきた。なにしろ月1000円だから動画は見れない(見るためには追加の月額チャージが必要。なお、自宅ではパソコンのWi-Fiに接続するので動画は無制限に見れる)。しかし、普通にネットを検索するかぎり問題はない。電車の中でマップをタップしたら、自分の位置が地図の線路上をすごいスピードで動いていくのにびっくりした。電話は自宅への連絡以外に使うつもりはない。IP電話が付いているので、大阪から自宅に電話したら通じたのでこれで十分だ。
 さらにびっくりしたのは、動画が見れないからワンセグもダメだろうと思っていたら、ワンセグ視聴が可能なことだった。動画(YouTube)とワンセグはまったく別物のようだ。NHKと関西の民放テレビ5局の計7番組を見ることができる(地デジは不可)。

音声検索がきわめて便利
 さらに便利なのが「音声検索」とよばれる機能だ。マイクをかたどったこのマークをタップし画面に向かって調べたいことをしゃべると、音声を文字に変えて調べた結果を表示してくれる。つまりグーグルの検索画面に文字を打ち込む代わりに、言葉で話すようなものだ。
 この音声⇒言語変換はかなり性能がいい。比較的長い言葉でも正確に変換してくれる。ちなみに「米中貿易摩擦の現状」とか「キリンの首はなぜ長い」などとしゃべっても、ちゃんと文字になって出てくる。それもほとんど瞬時だ。また、検索の結果がまとまって出るサイトは、それを女性の声が簡潔に読み上げてくれる。
 
 私はこの音声検索を愛用している。「はんしんたいがーす」としゃべると即座に阪神タイガースの試合速報サイトに切り替わり、試合経過のスコアボードが表示される。さらに「阪神タイガースは現在1対5で中日ドラゴンズにリードされています」と女性の声で知らせてくれる。結果や経過がすぐ分かるのはいいが、最近、タイガースが負けこんでいるので、リードされているお知らせを受けるのはつらい。 同じように、「今日の大相撲」としゃべると、その時点での大相撲の結果を知らせる画面が直ちに現れる。これならパソコンで検索するより、はるかに便利である。

スマホはテンキーやキーボード画面の文字入力がむずかしい
 本日のテーマであるスマホの手書き入力に移ろう。最初、スマホを使い始めたとき、一番苦労したのは文字の入力であった(今でも苦労している)。スマホはキーボードがない。画面にキーボードと同じ配列や、テンキーといって12分割された画面に数字やひらがな等を配列した画面がでる。
 しかし、スマホだからこの画面は小さい。これらマス目に正確に指をふれるのが大変だ。また、テンキー画面は一度ふれただけで入力は完了しない。一つのマス目にいくつかの文字が割り振ってあるので、何回かタップして目指す文字を呼び出さなければならない。私はしばらく試みて辟易した。なんとスマホは文字入力しにくいのだろう!
  特に面倒なのはアルファベットの大文字と小文字を混ぜて入力するときだ。使い始めだから、いろんな画面でやたらと暗証番号の入力を求められる。何回こころみても失敗する。もう勘弁してくれ。私は何度も途中で投げ出した。
 
手書き入力ができる
 ところが、しばらく入力作業をくりかえすうちに奇妙な表示に気が付いた。文字を入力するため、入力枠をタップすると、下にキーボードやテンキーが表示されるが、その上にしばらくの間、うすい水色の2分割の枠が浮き出て、その下に「上から手書き入力できます」と表示されるのだ。
 薄い水色の手書き入力表示。
 そうか、ここをなぞれば手書き入力ができるのか。ためしに「ひらがな」を書くと、文字枠に表示される。次に漢字を書くと、これもほぼ瞬時に変換される。ただ、一つの漢字は連続して筆画を続けないといけない。途中で少し間をおくと、その時点で判断された漢字が瞬時に出てくるからだ。私はいろんな漢字を書いてみた。複雑な漢字もほとんどいける。それに筆順さえ合えばキチンと書かなくても判断してくれる。「これはなかなかイイね。使えるね」と思った。

連続してすばやく書けるわけ
 しかし、瞬時に判断して表示してくれると言っても、どうしてもしばらく間があく。もし手書きの窓が一つだったら、次の字が確定されるまでほんの少し待たなければならない。ここで私は手書き入力の窓が二つある意味が初めて分かった。最初、左の窓に書いてから、間髪を入れず右の窓に書いてゆくのである。右の窓を書いている最中に、左の窓の字が確定する。次に右窓を書き終わったら、すぐ左窓に移れる。つまり、連続して書いてゆけるわけだ。こうして流れるように文章を書くことが可能だ。
 右窓に「大」を書いたとき。
 上の写真の「大」の3画めの最後のはらいは、指をつけているので感知されず、2画で感知した「ナ」が表示されている。指をはなすと「大」になる。

 なお、パソコンで文字入力をするとき、語句を入れると変換候補が下に現れるが、スマホでも同様である。下の写真は、ひらがなで「あい」と入力したときの画面である。下にさまざまな変換候補が現れる。上の3行と下の2行は文字の大きさが違うが、どちらもその文字のマスを押せば、入力窓の「あい」は、マスの文字に変換される。


手書きでメールを返信
 ところで、スマホの練習中、私のパソコンが故障したので買い替えることになった。その間、メールをスマホで受けていた。なかには、どうしてもすぐ返事をする案件がある。しかし、まだスマホの文字入力には自信がない。そうだ、手書き入力で返事をしよう。私は思い切ってメールの返信を押し、画面をタップして手書きにした。手紙を書く要領で、二つの窓を交互に使い文章を書き進めると、意外にスムースに進む。その結果、きわめて短時間に返信の文章は完成したのである。荒っぽく書いても漢字に変換してくれるから、本物の手書きよりはるかに早い。私はメールの送信ボタンを押した。

 しかし、手書き入力にも欠点がある。先にも書いたアルファベットの入力だ。アルファベットでも大文字は問題ない。そのまま書くと認識してくれる。問題は小文字である。小文字も多くは認識するが、i や j などは、1になったりしてなかなか難しい。結局キーボード画面を出して、その狭い文字枠に慎重に指をタップすることになる。以上の欠点はあるが、通常、アルファベットの小文字を使う文章は少ない。

スマホに手書き文化を復活する力がある
 こうして私はスマホの手書き入力の威力を知ったのである。それからの私は音声入力と手書き入力を併用してスマホを使いこなしている。日本人が漢字を書けなくなったのはパソコンやワープロを使い始めて、手書きをしなくなったからだとされる。私もそう思う。漢字は手書きすることによってその筆順を体で覚えていた。ところがパソコンのキーボードは手書きを不要にした。すると頭で覚えていても書く段になって出てこないのだ。野球でも強打者は毎日、何百回と素振りをする。素振りを身体で覚えるとヒットが出る。漢字を書くのも同様だ。毎日手書きを繰り返すことにより、身体が覚えるのである。

 スマホがこんなに手書き入力がすぐれているなら、スマホで手書き入力を意識的に続けたらどうなるだろう。メールの返事などは手書きにする。書けない字はひらがなで書いて変換して置き換えながらも、できるだけ漢字を手書きする。こうした努力を続けることにより、頭と身体で覚えて漢字を使っていた昔の状態を復活できるのではないだろうか。私はスマホの最近の技術の進歩に驚くとともに、スマホに手書き文化を復活する力があるとの希望をもった。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紛らわしい漢字 「第ダイ」 と 「等トウ」

2018年09月13日 | 紛らわしい漢字 
 「第ダイ」と「等トウ」は、上が竹かんむりで共通、文字を書くために用いる竹を割った細い棒である竹簡の意。第の下は弟が略されたかたち、等の下は寺だ。弟と寺の隠された意味が分かると、この2字の違いが明瞭になる。

  テイ <順序よく巻く>
 テイ・ダイ・デ・おとうと  弓部

解字 甲骨文字は、武器であるほこ(戈)の柄(戈の刃がない形)に、すべり止めのため、なめし革の紐を巻いた形の象形。順序よく巻いてゆくので「順序よく」の意味がある。また、柄の部分は刃の下部なので、兄弟の順序の下にある「おとうと」を示す。現代字は上部がソ、紐を巻いた部分⇒弓に変化した弟になった。
意味 (1)おとうと(弟)。「兄弟キョウダイ」「弟妹テイマイ」(弟と妹) (2)でし。門人。教え子。「弟子デシ」「門弟モンテイ」「師弟シテイ」 (3)順序。

イメージ  
 「おとうと」(弟)
 「順序」(第)
順序
 ダイ・テイ  竹部
解字 「竹(竹簡)+弟の略体(順序)」の会意形声。竹簡に書いた文章を綴じるため一本ずつ順番にならべること。順序を定めることをいう。転じて昔の試験の意となり、順序が下位だと落第となる。また、邸テイ(やしき)に通じ、屋敷の意を表す。
意味 (1)しだい。順序。「次第シダイ」 (2)順序を表す語。「第一番」「第三者」 (3)昔の試験。「落第ラクダイ」「及第キュウダイ」(試験に合格する) (4)やしき。「第宅テイタク」(大きな屋敷)「聚楽第ジュラクダイ」(豊臣秀吉が京都に造営した壮大な邸宅)

  ジ <下級の事務役人>
 ジ・シ・てら  寸部

解字 金文第一字は、「之(すすむ)+又(手)」の会意形声。之(音符・之)は、足が下の線から出る形で、前に進むことを示す。又は手で、手にものを持つ意。金文第二字は又⇒寸になっており、この寸は手の意。之と寸が合わさった寺は、手に文書などを持ち、足で前にすすむ「使い」を表し、宮中などで働く事務系の下級役人の意。転じて、役人が働く場所である役所や朝廷などを表す。現代字は上部が土に変化した寺になった。この字を見ると我々はすぐ寺(てら)を思い浮かべるが、この意は仏教伝来以降、渡来した僧侶を外国使節の応接・対応を司る役所(鴻臚寺コウロジ)にしばらく住まわせたことから出た。
意味 (1)役所。朝廷。官庁。「寺人ジジン」(宮中の小臣) (2)てら(寺)。「寺院ジイン」「仏寺ブツジ」 (3)はべる(=侍)。

イメージ
 「下級の役人」(寺・侍・等・待)
音の変化  ジ:寺・侍  タイ:待  トウ:等  
下級役人
 ジ・さむらい・はべる  イ部
解字 「イ(人)+寺(下級役人)」 の会意形声。下級役人が身分の高い人に付き添うこと。
意味 (1)はべる(侍る)。さぶらう。仕える。「近侍キンジ」「侍従ジジュウ」「侍医ジイ」 (2)[国]さむらい(侍)。武士。武術をもって主君に仕えた人。「侍所さむらいどころ
 トウ・タイ・ひとしい・ら・など  竹部
解字 「竹(竹簡)+寺(下級役人)」の会意形声。事務の下級役人が筆記の用具である竹簡の長さを揃えること。一つの文書を作るのに、竹簡の長さを測って同じ長さのものを揃えことから、長さがひとしい・同じたぐいの意となる。長さの揃わないものは、そのほかの意となる。
意味 (1)ひとしい(等しい)。「等分トウブン」「等閑トウカン」(閑に等しい。即ち、なおざりにする意) (2)たぐい。同じもの。「等級トウキュウ」(同じもののあつまる段階)(3)ら(等)。など(等)。ほかにも。「僕等ぼくら
 タイ・まつ  彳部
解字 「彳(路上)+寺(下級役人)」の形声。下級役人が路上で上司の帰りを待つこと。彳は十字路(行)の左半分の字で、通常は「行く」意だが、ここでは路上の意。
意味 (1)まつ(待つ)。まちうける。「待機タイキ」(機会を待つ)「待望タイボウ」(望んで待つ)「期待キタイ」(当てにして待つ) (2)もてなす。あつかう。「待遇タイグウ」「接待セッタイ
<紫色は常用漢字>



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「橐タク」 <ふくろ> と 「蠹ト」

2018年09月08日 | 漢字の音符
 タク・ふくろ  木部

甲骨文の第一字は袋の上下を結んだ形。第二字は袋の中身をタテ線で示した形。篆文で、この袋が束のような形になったところに、この字の発音をしめす石タク(石セキに拓タクの発音がある)を囗で囲んで付け加えた。現代字(楷書)は、石を囗で囲った箇所が上から「冖(ワかんむり)+石+木の上部」に分かれた。意味はタクという発音の「ふくろ」をいう。この字の部首は木だが、成り立ちとは関係ない。
意味 (1)ふくろ()。「橐嚢タクノウ」(ふくろ。も、ふくろの意)「橐中タクチュウ」(ふくろの中) (2)ふご。もっこ。物をいれて運ぶ道具。「竹橐チクタク」(竹のふご) (3)ふいごう。ふいご。鍛冶の送風器。「橐籥タクヤク」(ふいごう)

イメージ
  「ふくろ」
橐・蠹
音の変化 タク:  ト:

ふくろ
蠹[蠧] ト 虫部
解字 「虫虫(たくさんのむし)+の略体(ふくろ)」の会意形成。ふくろの中の虫。外から見えないが、物の中で巣くう虫をいう。は異体字。
意味 (1)むし。きくいむし。「蠹簡トカン」(虫食いの本)「蠹魚トギョ・しみ」(衣服や書物につく虫) (2)むしばむ。むしくう。「蠹蝕トショク」(虫ばむ) (3)そこなう。やぶれる。みだす。「蠹聚トシュウ」(やくざ)「五蠹篇ゴトヘン」(「韓非子カンピシ」のなかの篇。国を虫ばむ五つの悪い虫(悪者)を列挙している)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特殊化した部首 「手シュ」 と 「扌てへん」

2018年09月07日 | 特殊化した部首
 手が部首になるとき、手のかたちのままと、扌に変化する場合がある。扌は左辺(偏)に置かれたとき変化するかたちで「てへん」と呼ばれる。

 シュ・て・た  手部

解字 金文・篆文は五本の指のある手を描いた象形。甲骨文字では三本指を描いた「又(手)」が用いられていたので五本指の手が出現するのは金文からである。隷書(漢代の役人が主に使用した書体)から、上部の曲線がノになって独立し、現在の手が成立した。手は音符にならず看カン(手+目)の字で会意となるのが例外で、組み合わせ漢字になるとき、ほとんどが部首となる。
意味 (1)て(手)。「手相てソウ」「手綱たづな」 (2)てなみ。うでまえ。「手段シュダン」「妙手ミョウシュ」 (3)てずから。「手記シュキ」 (4)てにする。「入手ニュウシュ」 (5)ある仕事をする人。「歌手カシュ」 (6)技芸にすぐれた人。「名手メイシュ
部首の手 手は部首「手て」になる。漢字の下部について手の意味を表す。常用漢字で9字、約14,600字を収録する[新漢語林]では34字が収録されている。主な字は以下のとおり。
(手+音符「麻マ」)、掌ショウ(手+音符「尚ショウ」)、摯(手+音符「執シツ」)、撃[擊]ゲキ(手+音符「毄ゲキ」)、拳ケン(手+音符「巻カン」)、挙[擧]キョ(手+音符「與ヨ」)、拿(手+合の会意)

「扌てへん」の成立
カツにみる「扌てへん」の変遷
下図は篆文~現代(楷書)の括カツの変遷、上に手の部分を抜き出した。

括の字で篆文の手は元の字とほぼ同じ。隷書は指を表す上向きの半円2つが2本の線になり、またタテの線が下部で湾曲した。現代字は横2線にまっすぐのタテ線が下ではねた「扌」になった。

部首「扌部てへん」 手が漢字の左側(偏)の位置に置かれたときの形で、手の意味を表す。常用漢字で87字(第3位)、約14,600字を収録する[新漢語林]で470字が収録されている。扌部と音符は大変なじみがよく、扌部と組み合わさる字はほとんど音符である。例外は形が似ているため便宜的に扌部に含めている才サイだが、この字も音符となる。扌の主な字は以下のとおり。
 打(扌+音符「丁テイ」)、扱キュウ(扌+音符「及キュウ」)、扶(扌+音符「夫フ」)
 批(扌+音符「比ヒ」)、枝(扌+音符「支シ」)、抄ショウ(扌+音符「少ショウ」)、
 披(扌+音符「皮ヒ」)、抵テイ(扌+音符「氐テイ」)、抗コウ(扌+音符「亢コウ」)




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

特殊化した部首 「犬いぬ」 と 「犭けものへん」

2018年09月02日 | 特殊化した部首
犬が部首になるとき、犬の形のままと、犭に変化する場合がある。犭は偏(左辺)についたとき変化するかたちで「けものへん」と呼ばれる。

 まず、もとの形である犬の変遷を見てゆこう。 
 ケン・いぬ 犬部    

解字 甲骨文・金文は動物の「いぬ」を描いた象形。上にあたま、中が脚と胴、下に巻いた尻尾を描いている。篆文はおおきく形が変わり、隷書(漢代の役人が主に用いた書体)で大の右端が上に曲がった形になり、現代字で大に点がついた犬になった。当初はいぬの意味だけに使われたが、のちに組み合わせ漢字で偏(左辺)にくるとき、犬以外の「けもの」も表すようになった。
意味 (1)いぬ(犬)。子犬は狗と書く。「番犬バンケン」「犬猿ケンエン」 (2)[国]いぬ(犬)。①まわし者。スパイ。②むだなこと。「犬死いぬじに
参考 犬は、部首「犬いぬ」になる。漢字の右辺について犬の意味を表す。常用漢字で4字あり、部首の犬のほか、状[狀]ジョウ(犬+音符「爿ショウ」)、献コン(犬+南の会意)、獣ジュウ(単+口+犬の会意)、がある。

    「犭けものへん」の成立
シュにみる「犭けものへん」の変遷
下図は篆文~現代(楷書)の狩シュの変遷。上に犬の部分を抜き出した。

 狩の字で篆文の犬は元の字とほぼ同じ。隷書はタテ長になったため形がおおきく変り上下に弧状の線が通るようになった。現代の「犭けものへん」は、隷書の第1画⇒左はらいに変化して「犭」になった。

 部首「犭けものへん」は、犬が左辺(偏へん)に置かれたとき変化した形。意味は①犬に関すること、②犬以外のけもの、③人間の悪い行動、をあらわす。常用漢字では13字、約14,600字を収録する[新漢語林]では127字が収録されている。主な字は以下のとおり。
ハン(犭+音符「㔾ハン」)、狂キョウ(犭+音符「王オウ」)、狙(犭+音符「且ソ」)
シュ(犭+音符「守シュ」)、独[獨]ドク(犭+音符「蜀ショク」)、狭[狹]キョウ(犭+音符「夾キョウ」)
モウ(犭+音符「孟モウ」)、猫ビョウ(犭+音符「苗ビョウ」)、猿エン(犭+音符「袁エン」
ユウ「犭+音符「酋ユウ」」 、獲カク「犭+音符「蒦カク」」、獄ゴク(犭+言+犬の会意)
(犭+音符「狐コ」)、猪チョ(犭+音符「者シャ」)、狼ロウ(犭+音符「良リョウ」)


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする