音符 「啓ケイ」＜ひらく＞ と 「綮ケイ」「肇チョウ」

啓　ケイ・ひらく　 口部　　　　

解字　甲骨文は、「戸＋又（手）＋口」で、「戸＋又」は戸を手でひらく意、そこに口サイがついた啓の意味は、ひらく、王のために道をひらく・先駆けする意味があるとする［甲骨文字辞典］。この字の口サイは口（くち）でなく、［字統］は「祝詞（のりと）をいれた箱＝神との交信」としている。金文から又（て）⇒攴になったが、その意味は、①開拓・拡大する。②開き導く＝啓発する。③始める。開始（＝肇）。となり、金文でほとんどの意味が出揃っている。さらに現代字は攵に変化した啓になった。現代の意味は以下のとおり。
意味　（１）ひらく（啓く）。明ける。始める。「啓明ケイメイ」（①明けの明星。②知識がひろく明晰）「啓蟄ケイチツ」（虫が地中からはい出る季節。二十四節気の第３で太陽暦の３月６日頃から約１５日間） （２）教え導く。物事を理解させる。「啓示ケイジ」（神があらわし示す）「啓発ケイハツ」（知識を与え導く）「啓蒙ケイモウ」（無知な人を教え導く）「啓迪ケイテキ」（教えみちびく）（３）出発する。先払いする。「啓行ケイコウ」（①先頭に立って道をひらく。②出発する） （4）もうす（啓す）。申し上げる。「拝啓ハイケイ」「啓上ケイジョウ」「敬白ケイハク」

イメージ　
　戸を「ひらく」（啓・肇・綮）
音の変化　　ケイ：啓・綮　　チョウ：肇

ひらく
肇　チョウ・はじめる　　聿部
解字　「聿（ふで）＋啓の略体（ひらく）」の会意。啓は王が道をひらく意味があり、それに聿イツ（筆）をつけた肇は、王が開く道筋を筆で書くこと。その書によってはじめる意味となる。
意味　はじめる（肇める）。おこす。はじめ。「肇国チョウコク」（はじめて国を建てること）「肇造チョウゾウ」（はじめて造る。創造する）
綮　ケイ　　糸部
解字　「糸（いと）＋啓の略体（ひらく）」の会意形声。啓の上部は戸を手で開く形。綮はその戸を糸で結ぶこと。とびらに結んだ呪飾りをいう。
意味　（１）むすびめ。「綮処ケイショ」（むすびめ） （２）「肯綮コウケイ」に使われる字。肯綮コウケイの肯は骨につく筋肉、綮は結び目で、筋肉が骨に結びついている腱ケンの部分をいい、かんじんな所・急所の意。「肯綮に中（あた）る」（意見や批判などが急所をついてうまく当たっている）
＜紫色は常用漢字＞

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