漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「隓ダ」<こぼつ・おちる> と「隋ズイ」「随ズイ」「髄ズイ」「惰ダ」「堕ダ」

2024年09月29日 | 漢字の音符
  女性の出産から派生する字群
 ダ・タ・キ  阝部 huī・duò
<隋の源流字> 

字形の出典は漢典の隓の「字源字形」より(https://www.zdic.net/hans/%E9%9A%93)
解字 金文は「阝(おか)+土土(多くの土)+又又(多くの手)」の会意。丘から多くの人々が手で多くの土を下に落とし、丘をくずすこと。金文は伝説上の聖王・禹が「隓山ダサン」(山をこぼつ)として用いられている。楚帛ソハク(戦国)の第一字(上)は金文と同じ構成。第2字(下)は肉が二つ重なった多がついた異体字。篆文第1字(説文解字)は、「阜(おか)+左左」となり、これまでの土を工に書き間違えた(または、書き直した)。この左がそのまま楷書に続いている。意味は説文解字が、「城敗れたる阜(おか)」としているが、最初の金文および楚帛が工でなく土であることから、阜(おか)の土をこぼつ・けずる意が正しいとおもう。なお、楚帛および篆文第2字の肉(多および月)がついた異体字は、「隋ズイ」および「堕」の原字といえる。
意味 (1)こぼつ。けずる。 (2)(こぼちた土が)おちる。おとす。

胎盤が落ちる
 ズイ・ダ・タ  阝部 suí・duò  
 
 篆文は「隓の略体(おちる)+月(にく)」の会意。この字は仮借カシャ(当て字)されて中国の王朝の意味で使われているが、本来は肉がおちること。[説文解字]は「肉を裂く」と説明しているが、肉が離れておちる意である。趙有臣氏によれば、馬王堆マオウタイ漢墓(湖南省長沙市にある紀元前2世紀の墳墓)の医帛『五十二病方』で隋を臍(へそ)の意味で用いているとしている。
 
①へそ(臍)から垂れている、へその緒(「ハートライト病院でハートフルなお産」より)
https://ameblo.jp/anzanbaby/entry-10287294799.html
②へそと、とれた「へその緒」(ネットの検索サイトから)
 これは新生児が母体を離れたとき付いていたへその緒(肉)が、数日すると役割を終えて、へそから落ちる意味であるとする。したがって隋は、へその緒であるとともに「へそ」の意味でも使う(「『五十二病方』中の「隋」の字に関する考察と解明・趙有臣。」このタイトルでネットにPDFあり)。また、へその緒が落ちた痕(あと)のへそは、長円形をしているので長円形の意味もあるとする。
 卓見であるが私は、趙有臣氏が「落ちる」意味を「へその緒が、へそから落ちる」とするが、へその緒と連続している胎盤(子宮内で胎児を育てていた器官)が後産あとざんとして排出されることが「落ちる」意味であると考えたい。そうすると、胎盤とつながるへその緒が、生れ出た胎児のへそから「だらりとたれる」イメージが出てくる。なお、へその緒は胎児から数センチのところで切断され、以前は胎盤とともに壺や甕(かめ)に入れて土中に埋められた(現在は一部を臍サイ帯血として利用する)。一方、切断され胎児に残ったへその緒は数日すると乾燥して離れ、その穴が楕円状の臍(へそ)になる。
意味 (1)おちる。(=堕)「隋落ダラク」(隋も落も、おちる意=堕落)(2)おこたる。(=惰)(3)中国の王朝名。「隋ズイ」(分裂していた中国をおよそ300年ぶりに再統一した王朝。581-618年。日本と国交を結んだ。国号の由来は、創建者の楊堅ヨウケン(後の文帝)がもと隨州(湖北省北部)の刺史シシ(長官)だったことから、これに因んで隨から辶を取って名付けたとされる)「遣隋使ケンズイシ」「隋書ズイショ」(隋の正史。85巻。636年に完成。)「隋書倭国伝」(隋書中の倭国に関する条。巻81の「東夷伝」倭国の条に日本の実情を述べている)

イメージ 
 「中国の王朝名(仮借)」(隋)
 隓および隋の意である「おちる」(堕)
 へその緒が「だらりとたれる」(惰・随・髄)
 へその緒の落ちたあと「長円形」(楕)
音の変化  ズイ:隋・随・髄  ダ:堕・惰・楕

おちる
  ダ・おちる  土部 duò・huī
解字 旧字は墮で「土(つち)+隋(おちる)」の会意形声。隋に落ちる意があり、土をつけて落ちる意をはっきりさせた字。新字体は工がとれた堕になる。
意味 (1)おちる(堕ちる)。くずれおちる。おとす。「堕落ダラク」(身をもちくずす)「堕胎ダタイ」(胎児をおろす) (2)おこたる。なまける。(=惰)

だらりとたれる
 ダ・おこたる  忄部 duò
解字 「忄(心)+ 隋の略体(だらりとたれる)」の会意形声。心がだらりとすること。「廣韻コウイン」などの発音字典は「懈(おこたる)也(なり)、怠(なまける)也(なり)」とする。
意味 おこたる(惰る)。なまける。「怠惰タイダ」(怠も、惰も、なまける意)「惰性ダセイ」(なまけるくせ)「惰眠ダミン」(なまけて眠ってばかりいる。何もせずに過ごす)
  ズイ・したがう  辶部 suí
解字 旧字は隨で「辶(ゆく)+隋(だらりとする)」の会意形声。相手にだらりとよりかかるようにして行くこと。主となる人にしたがって行く意となる。また、相手に頼りきるので、その保護の範囲で自由にすること。親に頼り切った子が自由にしているのと同じ。新字体は工が取れた随になる。発音字典の「廣韻コウイン」は「従(したがう)也(なり),順(したがう・すなお)也(なり)」とする。
意味 (1)したがう(随う)。ともにする。「随行ズイコウ」「随員ズイイン」「随一ずいいち」(随う者のなかで一番、転じて多くの者のなかの第一位)(2)思いのまま。「随想ズイソウ」「随筆ズイヒツ」「随意ズイイ」(心のまま)(3)地名。「随州ズイシュウ」(隨州・隋州とも。中国にかつて存在した州。南北朝時代から民国初年にかけて、現在の湖北省随州市一帯に設置された。)
[髓] ズイ  骨部 suǐ
解字 旧字は髓で「骨(ほね)+隨の略体(だらりとしたものがとおる)」の会意形声。骨のなかにへその緒のようなやわらかく長いものが通っているところ。骨の中心部にある髄ズイをいう。新字体は工が取れた髄になる。 
意味 (1)骨の中心にある柔らかい組織。「骨髄コツズイ」「脳髄ノウズイ」(2)物事の中心。「神髄シンズイ」(その道の奥義)「精髄セイズイ」(最もすぐれた大事な所) 

長円形
楕[橢] ダ  木部 tuǒ
解字 もとの字は橢で「木(き)+隋(長円形)」の会意形声。木の枝をまるく長円にした形をいう。現代字は隋の阝を省いた楕になる。
意味 細長くまるみのある形。長円形。小判型。「楕円ダエン」「楕円形ダエンケイ」「楕円体ダエンタイ」(楕円面によって囲まれる立体。ラグビーボールのような形)
<紫色は常用漢字>

新字体は省略しすぎて音符字としてのまとまりを失った!
 以上、隋の音符を解字したが、旧字体では明解に説明可能であるが、新字体は省略が多すぎて全体のまとまりが見られない。私も新字体の字を書こうとするとき旧字のどこを省略したのか迷うことがある。つまり、隋の六字はバラバラになってしまった。常用漢字にするからと言って、やみくもに画数を減らしてその漢字の原点を奪ってはならない。隋の最低限の原点は隋の右側である。左の工を消して有になった、随ズイ・髄ズイ・堕はもはや隋の仲間ではない。有には別に独自の音符体系がある。

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音符「夗エン」<まるくかがむ> と「怨エン」「宛エン」「婉エン」「蜿エン」「鴛エン」「豌エン」「鋺エン」「苑エン」と「盌ワン」「腕ワン」「椀ワン」「碗ワン」

2024年09月27日 | 漢字の音符
 エン  夕部 

解字 金文・篆文は「タ(=月にく。からだ)+卩(ひざまずく人)」 の会意。人がひざまずいて身体をまげている形。まがる意を表す。現代字は卩の下部が湾曲して㔾となり、夗のかたちとなった。単独で使われることはない。音符に用いられると「まがる」「くぼんでまがる」イメージを持つ。
意味 ころがりふす。

イメージ 
 「まがる」
(怨・宛・婉・腕・蜿・鴛・盌)
 「形声字」(椀・碗・鋺・豌・苑)

音の変化  エン:怨・宛・婉・蜿・鴛・豌・鋺・苑  ワン:盌・腕・椀・碗

まがる
 エン・オン・うらむ  心部
解字 「心(こころ)+夗(まがる)」の会意形声。押し曲げられたような心の状態。抑圧されて相手をうらむ意となる。[説文解字]は、「恚ケイ(いかる・うらむ)也(なり)。心に従い夗の聲(声)」とする。
意味 うらむ(怨む)。うらみ。あだ。かたき。「怨恨エンコン」「憤怨フンエン」「怨念オンネン」「怨霊オンリョウ」(怨みを抱いてたたりをする霊魂)「怨嗟エンサ」(うらみなげく)
 エン・まがる・あたかも・あて・あてる  宀部
解字 「宀(建物)+夗(まがる)」の会意形声。祖先をまつる廟屋のなかで、ひざまずいて身体をまげて祈るさま。その姿がおごそかなさまから、副詞化し「あたかも・さながら」の意を生じた。なお、日本では宛先・宛名などの意味に仮借カシャ(当て字)される。
意味 (1)まげる(宛げる)。かがむ。「宛虹エンコウ」(弧をえがく虹)「宛丘エンキュウ」(中央が高くなった丘)「宛宛エンエン」(くねくねとまがる)(2)あたかも(宛も)。さながら(宛ら)。「宛然エンゼン」(あたかも) (3)[国]あて(宛て)。あてる(宛てる)。あてはめる。「宛先あてさき」「宛名あてな
 エン・したがう  女部
解字 「女(おんな)+宛(身体をまげて祈る)」 の会意形声。宛は、廟屋のなかで身体をまげて祈る形。そこに女をつけた婉は、うずくまって祈る女を表し、祈る姿から、したがう・おだやか・しとやかの意となる。
意味 (1)したがう(婉う)。すなお。「婉順エンジュン」(2)おだやか。遠まわし。「婉曲エンキョク」「婉語エンゴ」(遠まわしに言う言葉)(3)うつくしい(婉しい)。しなやかで美しい。しとやか。「婉然エンゼン」「婉容エンヨウ
 ワン・うで  月部にく
解字 「月(からだ)+宛(まがる)」の会意形声。上半身で曲がる部分がある肩口から手首までの部分。中国では手首のつけねをいう。
意味 (1)うで(腕)。かいな(腕)。肩から手首までのあいだ。また、肩から肘までのあいだ。「腕章ワンショウ」「上腕ジョウワン」(肩関節と肘関節のあいだ。二の腕)(2)うでまえ。はたらき。「手腕シュワン」「辣腕ラツワン」(3)手首のつけね。「腕骨ワンコツ」(手首の骨。手根骨。8個からなる)
 エン  虫部
解字 「虫(へび)+宛(まがる)」の会意形声。蛇などがまがりくねるさま。
意味 (1)蛇や虫がからだをくねらせるさま。「蜿蜿エンエン」(蛇や竜がうねりながら動くさま。=「蜿蜒エンエン」)「蜿蜿長蛇エンエンチョウダ」(うねうねと長く続いているもののたとえ)(2)うねりまがる。「蜿蝉エンセン」(うねりまがるさま)
 エン・おしどり  鳥部
 鴛鴦(左がオス、右がメス)
解字 「鳥(とり)+夗(まがる)」の会意形声。背がくぼんでまがる鳥。
意味 「鴛鴦エンオウ・おしどり」に使われる字。鴛鴦はカモ目の水鳥。鴛エンは、後方のイチョウ葉形の羽が立つので背がくぼんで見えるオスの水鳥。鴦オウは、「央オウ+鳥」で中央が少しふくらんでみえるメス鳥。雄雌むつまじく離れないので、夫婦仲のむつまじいことに例える。「鴛鴦夫婦おしどりふうふ
 ワン  皿部
解字 「皿(うつわ)+夗(まがる)」の会意形声。口が広く、くぼんでまがるように開いた皿(うつわ)を言った。のち、くぼみの深いものを含めて言う。中国で古くは盌が使われ、のち椀・碗ができた。

中国北宋時代の盌(中国のネットから)
意味 はち形のうつわ。椀・碗の原字。「茶盌チャワン」(茶道の抹茶碗に使われる)「玉盌ギョクワン」「酒盌シュワン
形声字
 ワン  木部
解字 「木(き)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ木製のわんをいう。
意味 (1)わん(椀)。食物・汁などを盛る、まるく刳りぬいた木製の食器。また、木製に限らず用いられる。「膳椀ゼンワン」(お膳とお椀。また、食器類の総称)「飯椀めしわん」「汁椀ジュウワン・しるわん」(2)「椀飯オウバン」とは、オウはワンの転で、①椀に盛ってすすめる飯、②盛んな饗宴、の意)「椀飯振舞おうばんぶるまい」(江戸時代、民間で一家の主人が正月などに親戚縁者を招きご馳走をふるまったこと。転じて盛大な饗応。「大盤振舞」は当て字。「広辞苑」より)
 ワン  石部
解字 「石(磁器)+宛(ワン)」の形声。ワンは盌ワン(おわん)に通じ磁器製のわんをいう。
意味 わん(碗)。食物・汁などを盛る、まるい形の陶磁器製の食器。「茶碗チャワン
 エン・かなまり  金部
解字 「金(金属)+宛(=椀・碗)」の会意形声。日本では椀・碗に通じ、金属製の盌(おわん)をいう。中国では夗エン(くぼんでまがる)に通じ、秤(はかり)の皿を言った。したがって発音はエン。
意味 (1)[国]かなまり(鋺)。金属製のわん。「銀(しろがね)の鋺(かなまる)を持ちて水を汲みありく」(竹取物語)(2)秤(はかり)の金属製の皿。「秤鋺ショウエン」(はかりの皿)
 エン  豆部

豌豆(「タネ(種)の販売広告」から)
解字 「豆(まめ)+宛(エン)」の形声。エンという名のマメ科の二年生または一年生作物。原産地は未詳。中国へ伝来する際の経由地である大宛エン国(中央アジア・ウズベキスタンのフェルガナ地方)から伝わったとされる豆。日本へは中国から渡来した。
意味 「豌豆エンドウ」に用いられる字。豌豆とは、マメ科の二年草。若いサヤと種子は食用となる。熟す前のエンドウをむき実にして食べるのをグリンピースという。エンドウマメ。「莢豌豆さやエンドウ」(若いエンドウで、莢ごと食用にする)
 エン・オン・その  艸部
解字 「艸(草)+夗(エン)」の形声。エンは園エン(その・庭園)に通じ、草木の生えた庭園。[説文解字]は「禽獸を養う也(なり)。艸に従い夗の聲(声)」とし、鳥や獣を飼う場所とするが、これは天子が林や池をつくり、鳥獣を飼い草花を植えて遊び楽しんだ所の意で、苑囿エンユウに、その意味が残っている。
意味 (1)その(苑)。庭園。「神苑シンエン」(神社の境内の庭園)「外苑ガイエン」(神社などの外側にある広い庭園)「苑囿エンユウ」(鳥やけものを放し飼いにしてある苑)「苑馬エンバ」(苑囿で飼われている馬)「鹿苑ロクオン」(釈迦が悟りをひらいた後、鹿が多く住む林の中ではじめて教えを説いたという所=鹿野苑ロクヤオン)(2)文人の集まる場所。また、学術や文芸の集められた所。「芸苑ゲイエン」(学芸の社会)「文苑ブンエン」(文学者の世界。文壇)「筆苑ヒツエン」(=文苑)
<紫色は常用漢字>

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音符「丂コウ」と「巧コウ」「攷コウ」「号(號)ゴウ」「朽キュウ」「兮ケイ」「饕トウ」 と 「考コウ」「栲コウ」「烤コウ」「拷ゴウ」 

2024年09月25日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 コウ・キョウ  一部 kǎo・qiǎo・yú         

解字 甲骨文は丅(示の初形)をゆがめた形。単独では原義の用例がなく、地名・祭祀名として出てくる[甲骨文字字典]。金文は考コウの代わりに父親としての意味、孝コウの代わりに孝順(親につかえる)の意味で用いられている[簡明金文詞典]。[説文解字]は「気のびて出んと欲し、上の一にさまたげられるなり」としているが、理解できる説明ではない。以上の結果、この字独自の意味はないことから、この字をコウ・キョウの発音を表す字と解釈したい。

イメージ  
 「形声字」
(丂・巧・攷・朽・号(號)・
 「その他」(兮)
音の変化  コウ:丂・巧・攷  ゴウ:号(號)  キュウ:朽  ケイ:兮  トウ:
 
形声字
 コウ・たくみ  工部 qiǎo
解字 「工(工具)+丂(コウ)」の形声。工具を用いるたくみな「わざ」を巧コウという。[説文解字]は「技わざ也(なり)。工に従い丂コウ聲(声)」とする。
意味 (1)たくみ(巧み)。手のこんだわざ。うまい(巧い)。「技巧ギコウ」「巧手コウシュ」(巧みな手腕、またその人) (2)たくみに(巧みに)。うわべを飾る。「巧言コウゲン」「巧舌コウゼツ」(ものいい。弁舌)
 コウ・かんがえる  攵部 kǎo
解字 「攵(うつ)+丂(コウ)」の形声。[説文解字]は「敂(たた)く也。攴ボク(攵)に従い丂の聲(声)」とし、うつ・たたく意。また、たたいてその反応をさぐることから、ためす・しらべる・かんがえる意味に広がった。なお、宋代の[集韻]は「考、古くは攷に作る」とし、攷の意味が考に伝わっているとする。
意味 (1)うつ。たたく。「攷撃コウゲキ」(せめる)(2)しらべる。「攷異コウイ」(=考異。異文を校訂する)「攷訂コウテイ」(=校訂。しらべてなおす)(3)かんがえる(攷える)。「攷究コウキュウ」(=考究。考えきわめる)
 キュウ・くちる  木部 xiǔ
解字 「木(き)+丂(キュウ)」の形声。木がくちることを朽キュウという。[説文解字]は「腐(くさ)る也(なり)」とする。
意味 (1)くちる(朽ちる)。草木がくさる。「朽木キュウボク」「腐朽フキュウ」(くさりくちること)(2)すたれる。ほろびる。「不朽フキュウ

[號] ゴウ・コウ・さけぶ  口部 hào・háo
解字 号は「口(くち)+丂(コウ⇒ゴウ)」の形声で、口からゴウと出す大きな声をいう。旧字の號は、虎がゴウと声を出して、ほえる・さけぶ意。号は號から虎を省いた字。さけぶ意のほか、呼び名、呼ぶ順番、記号などに意味がひろがった。
意味 (1)さけぶ(号ぶ)。大声を出す。「号泣ゴウキュウ」(なきさけぶ)「号令ゴウレイ」(命じる言葉)「号砲ゴウホウ」(大砲・鉄砲の大きな音)(2)名をつける。名称。「称号ショウゴウ」「雅号ガゴウ」(3)しるし。「記号キゴウ」(4)数字にそえて順序や等級を表わす。「三月号」(5)乗り物や馬・犬の名などにそえる。「こだま号」
 トウ・むさぼる  食部 tāo
 饕餮(とうてつ)文
解字 「食(たべる)+號(さけぶ⇒大きく口をあける)」 の会意形声。虎が大きく口をあけて食べること。むさぼる意となる。発音は號ゴウ・コウ⇒トウに変化。この変化は、南方では虎を「於兔オト」というので南方の発音と関係があるとする[字統]。
意味 (1)むさぼる(る)。食らう。「饕貪トウタン」(饕も貪も、むさぼる意)「饕戻トウレイ」(むさぼって人の道にそむく)(2)悪い獣の名。「饕餮トウテツ」(もむさぼる意。人をむさぼり食うという悪い獣。後代には魔除けの意味をもった。模様化したものが青銅器などの装飾に用いられている)

その他
 ケイ  八部 xī

解字 甲骨文字辞典は「祭祀机である示(丅)と八(ハ)に従い、祭祀机の上に切り分けた供物を置いた形。字形は金文で丅が丂に変えられ、ハと合わせて兮の字体になった。甲骨文字の意味は地名。神名(詳細は不明)」とする。意味の変遷は明らかでないが、現代字は句末や句中にあって調子を整える助字として用いる。訓読しないことが多い。
意味 (1)歌末の余声。「実際に歌を歌ったとき、あとにくっつける「調子」と考えればよい。漢詩は本来、歌と切っても切れない関係にあった。唐詩も歌う調子で作られたわけである。「兮」というのは、そういう歌末の調子づけとして考えるが、余声という意味がつけ加わっている。余声とは引っぱる、という気持ちである。前の句を歌い、歌い終わるとき、この「兮」をつけ加えて、前の句の意味を引っぱるわけである」(加地伸行著「漢文法基礎」より)「大風は起こり兮雲は飛揚ヒヨウす」(兮は読まない)(2)強調や感嘆を表す。「巧笑倩センたり兮」(にっこりとした笑顔はなんともかわいい。兮は読まない)


   音符字「考コウ」
 コウ・かんがえる  耂部おいかんむり kǎo    
 
 上は考コウ、下は老ロウ    
解字 下の甲骨文の老は、杖をついた長髪の老人の姿。金文は杖のかたちが、Fの字が左へ回転したような形になり最終的にヒに変化した老となった。上の考コウは金文からできた字。老の杖の部分が初形の丂(コウ)になっており、コウという老人の意で死去した父親を指して用いられた。次の篆文で[説文解字]は「老也(なり)。老の省略形に従い丂コウの聲(声)」とし老人の意味があるとする。また、宋代の[集韻]は「考、古くは攷コウに作る」とし、攷の意味が考に伝わっているとし、考える・調べる意は攷コウに由来している。
意味 (1)亡父。「先考センコウ」(亡くなった父)「考妣コウヒ」(亡き父と母。妣は亡き母の意)(2)おいる(老)。老人。「寿考ジュコウ」(長生きの老人。長寿)(3)かんがえる(考える)。「思考シコウ」「長考チョウコウ」「考究コウキュウ」(深く考えきわめる)「論考ロンコウ」(論じ考察する)(3)調べる。「考訂コウテイ」(しらべ正す)」「考古学コウコガク」(古い時代の遺跡・遺物をしらべ研究する学問)(4)比較検討する。試験。「考査コウサ」(①考えしらべる。②学校の試験。テスト)

イメージ  
 「形声字」(考・拷・栲・烤)
音の変化  コウ:考・栲・烤  ゴウ:拷

形声字
 ゴウ・コウ・うつ  扌部 kǎo
解字 「扌(手)+考(コウ⇒ゴウ)」の形声。罪を白状させるため手に棒などを持ち、たたくことを拷ゴウという。
意味 (1)うつ(拷つ)。うちすえる。「拷問ゴウモン」(体に苦痛を加えて問う=拷責ゴウセキ)「拷打ゴウダ」(打ちすえる)(2)かすめとる。「拷掠ゴウリャク」(かすめとる)
 コウ・たえ・たく  木部 kǎo
解字 「木(き)+考(コウ)」の形声。コウという名の落葉樹の名をいう。日本では藤などの繊維で織った白布をいう。
意味 (1)樹木の名前。ミツバウツギ科の落葉小高木。(2)「栲栳コウロウ」とは、柳の枝をまげて編んだいれもの。(3)[国]たえ(栲)。梶の木・藤などの繊維で織った白布。「白栲しろたえ」「春過ぎて夏来るらし白栲たへの衣乾したり天の香具山(万葉集)」[国]たく(栲)「楮(こうぞ)の皮を剥いで灰汁で煮、繊維をとり織物の糸とし、これを栲(たく)といっていました。古事記や万葉集には「栲衾(たくぶすま。衾は夜具)」「栲縄(たくなわ)「栲綱(たくづな)」などの名で呼ばれたものが登場している」(小泉武夫『灰と日本人』中公文庫)
 コウ・あぶる  火部 kǎo
解字 「火(ひ)+考(コウ)」の形声。火であぶって焼くことを烤コウという。

北京ダック(販売広告から)
意味 (1)あぶる。軽く焼く。また、あぶって焼く。「烤薯コウショ」(やきいも)「烤鴨子カオヤーズ」(アヒルのまるやき料理)「北京烤鴨ペキンダック」(北京名物のアヒルのまるやき料理)「烤羊肉カオヤンロウ」(ジンギスカン料理)(2)あたたまる。暖をとる。「烤火コウカ」(火にあたる)「烤手コウシュ」(手をあたためる)
<紫色は常用漢字>

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音符「虒シ」<虎の皮をはぎとる>と「褫チ」「篪チ」「逓テイ」

2024年09月23日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 シ・チ  虎部 sī

解字 篆文は「𠂆の形+虎」の会意。[説文解字]は「委虒イシ。 虎の角あるものなり」とするが実態が明らかでなく、白川静氏は[字通]で「字形は虎皮を剥取(はぎとり)する形であるから、褫(はぎとる)の初文であろう」としている。私もこの説に賛成である。現在の字形は虒となり、発音はシ・チの二音がある。
意味 (1)「委虒イシ」(伝説上の動物の名。虎に似ており、角を持つ)。(2)「虒祁シキ」とは、宮殿の名。春秋時代、晋の平公が築いたとされる。なお、虒シ・チは褫・逓テイの二字で皮を「はぎとる」イメージがある。(3)ちのふえ。篪の俗字。

イメージ 
 「虎に似た動物の名」(虒)
 虎の皮を「はぎとる」(褫・逓)
 「形声字」(篪)

音の変化  シ:虒  チ:褫・篪  テイ:逓

はぎとる
 チ・うばう  衣部 chǐ
解字 「衣(ころも)+虒(はぎとる)」の会意形声。衣をはぎとること。
意味 うばう(褫う)。はぐ。衣服をぬがせ奪い取る。官職をはぎとる。「褫奪チダツ」(衣服・官職・権利などを奪い取る)「褫気チキ」(気をうばわれる。たまげる)

はぎとった虎の皮
[遞] テイ  辶部 dì
解字 旧字のは「辶(ゆく)+虒(はぎとった虎の皮)」 の会意形声。はいだ虎の皮をもってゆくこと。虎の皮を持って交易する意で、物が順次伝わってゆく意味となる。新字体は、旧字の虎の部分が「二+巾」に変わった逓になった。
意味 (1)次々と伝え送る。「逓信テイシン」(郵便や電信などで順次取り次いで伝える)「逓送テイソウ」(荷物や郵便を順次、駅から駅へと送ること)「駅逓エキテイ」(宿駅から宿駅へと荷物などを送ること。うまつなぎ。)「逓信省テイシンショウ」(もと内閣の各省の一つ。1949年に郵政省と電気通産省に別れて廃止された)(2)しだいに。だんだん。「逓減テイゲン」「逓増テイゾウ
覚え方 野()から野()へふたつ()のきん()を伝えゆく() 信省

形声字
 チ  竹部 chí

周の篪(「百度百科」より)
解字 「竹(=籥ヤクの略体。竹笛)+虒(チ)」 の形声。チという名の竹笛。籥ヤクは、穴が三つまたは六つある短い笛なのに対し、篪は長い横笛で低音部を担当する。
意味 ちのふえ(篪)。横笛の一種。八つまたは七つの穴で、分類百科辞典の[爾雅ジガ]に、長さは一尺四寸、小は一尺二寸とある。「吹篪スイチ」(ちのふえを吹く)「鳴篪メイチ」「壎篪ケンチ」(ケンは土を焼いて作った紡錘形の笛。と音色がよく調和するところから、兄弟の仲が良いことのたとえ)「篪竹チチク」(竹の名)

<紫色は常用漢字>  

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音符「毚ザン」<ずるくはしこいウサギ> と 「讒ザン」「儳ザン」「巉ザン」「纔サイ」

2024年09月21日 | 漢字の音符
ずるくはしこいウサギ
 ザン  比部 chán

解字 篆文は、兔の上に兔の一種である大きい兎が乗ったかたちで、上の大きい兎が下の兎を飛び越えて逃げてゆくさま。ずるくてすばしこい意となる。篆文の上と下の兔は同じようにみえるが、上の兔の足に線が一本多い。現代字は「チャク(大きい兎)+兔」のザンになった。
意味 狡猾な。はしこい。「ザント」(ずるくすばしこい兎)「毚欲ザンヨク」(欲の深いこと)
覚え方 クロヒヒ兔ザン

イメージ
 「ずるくはしこい」
)  
 「形声字」
音の変化 ザン:毚・讒・儳・巉  サイ:

ずるくはしこい
 ザン・そしる  言部 chán
解字 「言(ことば)+(ずるくはしこい)」の会意形声。ずるくはしこいことを言って人をおとしいれること。
意味 (1)そしる(る)。陰口を言って人をおとしいれる。また、そしり。「ザンゲン」(人をおとしいれるため悪口をいう=讒口ザンコウ)「讒毀ザンキ」(人の悪口を言って名誉を毀損する)「讒謗ザンボウ」(讒も謗も、そしる意) (2)よこしま。「讒慝ザントク」(よこしま。邪悪)
 ザン  イ部 chán・chàn
解字 「イ(ひと)+(ずるくはしこい)」の会意形声。ずるくはしこく自分のことだけ考える人の意。わりこむ、でしゃばる、みにくい意となる。なお、後漢の[説文解字]は「儳互ザンゴ(みだれて不ぞろい)、不齊(ととのわず)也(なり)。人に従い毚の聲(声)」とする。
意味 (1)わりこむ。でしゃばる。みにくい。「儳言ザンゲン」(口をはさむ)「儳越ザンエツ」(分をわきまえずでしゃばる)「儳婦ザンフ」(正直でない婦人) (2)ふぞろい。「儳互ザンゴ(みだれて不ぞろい)「儳焉ザンエン」(乱れるさま)

形声字
 ザン  山部 chán
解字 「山(やま)+毚(ザン)の形声。ザンは嶄ザン(山が高くけわしい)に通じ、山が切り立って険しいこと。
意味 (1)山が切り立って険しい。「巉崖ザンガイ」(切り立った崖)「巉巖ザンガン」(険しい岩山)「巉峭ザンショウ」(山の切り立っているさま)
 サイ・ザイ・わずか  糸部 cái
解字 「糸(細いいと)+毚(サイ)」の形声。同音の才サイに通じ、わずか・少し・やっと・かろうじて、の意味に用いる。
意味 (1)わずか(纔か)。わずかに(纔かに)。「纔瞬サイシュン」(一瞬)。「纔着サイジャク」(装束のたけを、その人のたけと等しくし、わずかに(纔かに)地につくほどに着ること。<広辞苑>) (2)やっと。「纔知サイチ」(やっと知る)「方纔ホウサイ」(はじめて。やっと)

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音符 「此シ」<背をむける> と「雌シ」「觜シ」「嘴シ」「眦シ」「髭シ」「貲シ」「疵シ」「茈シ」「紫シ」「些サ」「砦サイ」「柴サイ」

2024年09月19日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 シ・これ・この  止部 cǐ


 上は此、下は北
解字 甲骨文から現代字まで「止(シ)+ヒ(背をむけた人の形)」の会意形声。ヒは北ホク(二人が背を向けた形)の右辺と同じで、背を向けた人を表す。これに発音を表す止(シ)をつけた此は、背をむけた人の意。しかし、もとの意味でなく、之と同声のため「これ・この」を示す助字に仮借カシャ(当て字)された。
意味 (1)これ(此れ)。この(此の)。ここ。近くの事物をさす語。「此岸シガン」(この世)「此処ここ」「此方こちら」 (2)かく(此く)。このように。「此くの如し」

イメージ 
 「この・これ(仮借・当て字)」
(此・些) 
 「背をむける」(雌・觜・嘴・眦・髭・貲)
 「形声字」(疵・茈・紫・砦・柴)
音の変化  
  シ:此・雌・觜・嘴・眦・髭・貲・疵・茈・紫  サ:些  サイ:砦・柴

この
 サ・いささか・すこし  二部 xiē
解字 「ニ(ふたつ)+此(この)」の会意形声。この二つのもの。すくない。すこしの意。
意味 いささか(些か)。わずか。すこし(些し)。「些細ササイ」(細かく小さい)「些事サジ」(つまらない事)「些少サショウ」(すこし)

背をむける
 シ・め・めす・めん  隹部 cí
解字 「隹(とり)+此(背をむける)」の会意形声。オスの鳥に背をむけて交尾するメスの鳥。
意味 (1)めす(雌)。「雌鶏めんどり」「雌雄シユウ」 (2)かよわい。「雌伏シフク」(しばらく他人の支配に服してたえる)⇔「雄飛ユウヒ
 シ・スイ・くちばし・はし  角部 zī・zuǐ 
解字 「角(つの)+此(背をむける⇒逆向き)」の会意形声。角に対し、もう一つ逆向きの角が合わさる意で、猛禽類のように角が向きをかえて合わさっている形の鳥のくちばしをいう。
意味 (1)くちばし(觜)。はし(觜)。鳥のくちばし。「觜距シキョ」(鳥のくちばしと、けづめ。戦うときの武器にたとえる) (2)くちばしのような形。「觜鼻シビ」(くちばしのような鼻。とがってみにくい鼻)「砂觜サシ」(=砂嘴) (3)とろきぼし。二十八宿の一つ。「觜宿シシュク」(とろきぼし。オリオン座の北部) 
 シ・くちばし・はし  口部 zuǐ
解字 「口(くち)+觜(くちばし)」の会意形声。觜(くちばし)に口をつけ、くちばしであることを、分かりやすく示した字。

イカルのくちばし(「京都市動物園ブログ」より)
意味 (1)くちばし(嘴)。はし(嘴)。鳥の口さき。「嘴太鴉はしぶとがらす」(口先の太いカラス)(2)人の口。「嘴尖シセン」(口達者)「嘴頭シトウ」(①口先、②ものの言いぶり)(3)くちばしのような形。「砂嘴サシ」(沿岸流や波浪によって運ばれた砂が海岸から鳥のくちばしのように突き出た地形をいう)
眥[眦] シ・サイ・まなじり  目部 zì
解字 「目(め)+此(背をむける⇒反対側)」の会意形声。目もとの反対側にある目尻をいう。
意味 (1)まなじり(眥)。眦とも書く。目の尻。目尻をいう。「目眦モクシ」(まなじり)「眥(まなじり)をあげる」(緊張した面持ちで目を見張ること)「眥(まなじり)を決する」(眼を大きく開き、決意したときのさまにいう)「眥裂髪指シレツハッシ」(眥は裂け髪は上を指す。眼を大きく見開き、髪の毛が逆立つ。激しくいきどおる)(2)にらむ。「睚眥ガイサイ」(睚も眥も、にらむ意。にらむこと)
 シ・ひげ  髟部 zī 
解字 「髟(髪の毛)+此(背をむける⇒反対側)」の会意形声。髪の毛に背をむけたほう(反対側)のあごの近くに生える毛。
意味 ひげ(髭)。あごの近くに生えるひげ、とくに口ひげをいう。「髭鬚シシュ」(口ひげと、あごひげ)「髭根ひげね」(ひげのように生える根。イネやムギなどの根をいう)
 シ・あがなう  貝部 zī
解字 「貝(財貨)+此(背をむける⇒反対側)」 の会意形声。財貨で罰を反対側(罰を受けない)にすること。後漢の[説文解字]は「小さい罰、財を以て自ら贖(あがな)うなり」として、財貨を払って罰を受けないようにする意が原義。転じて、財貨で官職を買う意や、さらに財産・資材の意で使う。 
意味 (1)あがなう(貲う)。金品を代償として出し罪をまぬがれる。「貲贖シショク」(貲も贖も、あがなう意)(2)金品で地位や官職を買う。「貲郎シロウ」(金銭をおさめて官職を買い役人になった者)(3)財産。資産。たから。「貲財シザイ」(=資財)「貲産シサン」(=資産)

形声字
 シ・きず  疒部 cī
解字 「疒(やまい)+此(シ)」 の形声。シは刺(さす)や、茨(いばら)に通じ、イバラのとげなどに刺された傷をいう。
意味 (1)きず(疵)。きずあと。あやまち。欠点。「小疵ショウシ」(少しのきず。わずかな欠点)「瑕疵カシ」(過失)(2)やまい。病気。「疵厲シレイ」(病気)(3)そしる。悪口をいう。「疵毀シキ」(そしる)
 シ・サイ・むらさき  艸部 zǐ・cí
解字 「艸(くさ)+此(シの音)」の形声。シという名の草。

茈草シソウ(紫草)※写真は中国ネットから。 
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1766583189285753022&wfr=spider&for=pc
意味 (1)むらさき(茈)。植物の名。ムラサキ科の多年草。根は太く乾燥すると暗紫色になる。紫色の染料として用いる。「茈草シソウ」(紫草) (2)「茈胡サイコ」とは、多年草の名。「三島茈胡 ミシマサイコ」とも。薬草となる。
 シ・むらさき  糸部 zǐ
解字 「糸(いと)+此(シ)」 の形声。シは茈(むらさき草)に通じ、この根を乾燥させ煮出した液に漬けて紫色に染めた糸。
意味 (1)むらさき(紫)。赤と青の中間色。「紫雲シウン」「紫衣シイ・シエ」(紫色の僧衣。日本では以前、天皇が高僧に下賜した)「紫煙シエン」(タバコの煙)「紫電シデン」(①むらさき色の電光。②鋭い光、また刀の光)
 サイ・とりで  石部 zhài
解字 「石(いし)+此(サイ)」の形声。サイは寨サイ(とりで)に通じ、石を積んで出来たとりでをいう。
意味 とりで(砦)。敵をふせぐ小さな城。「山砦サンサイ」「砦柵サイサク」(敵を防ぐ柵)「城砦ジョウサイ」(とりで)
 サイ・しば  木部 chái
解字 「木(き)+此(サイ)」の形声。[説文解字]は「小木散材(細かな木や役立たない材木)。木に従い此サイ聲(声)」とする。
意味 (1)しば(柴)。山野に生える雑木。また、それを切ったもの。「柴門サイモン」(柴で作った門。粗末な家)「柴戸サイコ」(①柴で作った戸。②あばら屋)「柴山しばやま」(小さな雜木の生えている山)「薪柴シンサイ」(まきと、しば。たきぎ)(2)木の柵。へだてる。「柴柵サイサク」(やらい。とりで)「柴断サイダン」(ふさぎへだてる)(3)姓。「柴しば」「柴田しばた」(4)地名。「柴又しばまた」(東京都葛飾区の地区)
<紫色は常用漢字>

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音符「囟シ」<ひよめき>「細サイ」と「𡿺ノウ」「脳ノウ」「悩ノウ」「瑙ノウ」

2024年09月17日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 シ・シン  口部 xìn

解字 脳をおおう頭蓋骨(ずがいこつ)の形。𡿺ノウの原字。また、生後間もない赤ちゃんの完全に閉じきっていない頭蓋骨の隙間(泉門)のことを言う。メが隙間を表している。

  新生児の泉門(デジタル大辞泉「泉門」より)
意味 頭の鉢。脳の蓋骨。泉門・ひよめき(幼児の頭の骨がまだ完全に縫合していない形で、頭蓋骨に隙間がある)。

イメージ 
 「ひよめき」
(囟・細)
音の変化  シ:囟  サイ:細
ひよめき
 サイ・ほそい・ほそる・こまか・こまかい  糸部 xì

解字 「糸(いと)+囟(ひよめき。頭蓋骨のほそい隙間)」 の会意形声。糸のような、ひよめきのほそい隙間の意で、ほそい意を表わす。現代字は、囟⇒田に変化した。
意味 (1)ほそい(細い)。ほそる(細る)「細筆サイヒツ」(細い筆) (2)こまかい(細かい)「細工サイク」「細事サイジ」「細心サイシン」 (3)くわしい。「詳細ショウサイ」「細見サイケン
<関連音符>
 シ・おもう  心部 sī・sāi
解字 「心(心臓)+囟シ(ひよめき)」の会意形声。音符「思シ」を参照。


   𡿺 ノウ <のう>
𡿺 ノウ  川部 nǎo           

解字 旧字は「囟シ・シン(ひよめき)+巛(毛の生えているさま)」の会意。囟は、まだ頭骨のすきまが開いている赤子の頭。これに毛をつけたのが𡿺で、赤子に毛が生えて成長した頭のかたち。転じて、頭の中の「脳」を意味し、脳の原字。単独で使われることはない。新字体の音符になるとき、囟 ⇒ 脳の右辺、に変化する。
 
イメージ 
 「のう(脳)」
(脳・悩・瑙)
音の変化  ノウ:脳・悩・瑙

のう
 ノウ  月部にく nǎo
解字 旧字は腦で「月(からだ)+𡿺(のう)」の会意形声。𡿺は「のう」の意。これに月(からだ)をつけて「のう」の意を確認した字。新字体は脳に変化。
意味 (1)脳みそ。あたま。「大脳ダイノウ」「脳天ノウテン」(頭のてっぺん)(2)頭脳のはたらき。「脳裏ノウリ」「洗脳センノウ」(3)主要なもの。「首脳シュノウ」(組織の中心。また組織の中心の人)
 ノウ・なやむ・なやます  忄部 nǎo

解字 篆文は「女(おんな)+𡿺(のう)」 の会意形声。女の脳の形で、女が脳で思うこと。女は婚姻により生家を離れて生活し苦労が多いので、なやむ意となる。旧字で忄(心)がついた惱となり、女だけでなく人の「なやみ」となった。新字体は悩。
意味 (1)なやむ(悩む)。なやます(悩ます)。「懊悩オウノウ」(なやみもだえる。懊も悩もなやむ意)「悩殺ノウサツ」(悩みを殺す。女性が性的魅力で男性を夢中にさせる)(2)なやみ。「苦悩クノウ」「煩悩ボンノウ」(人を煩わせる悩み)
 ノウ  王部 nǎo
解字 「王(たま・貴石)+𡿺(のう)」 の会意形声。馬の脳に似た宝石の意で、「瑪瑙メノウ」に使われる字。

瑪瑙(ウィキペディアより)
意味 「瑪瑙メノウ」とは、石英・蛋白石などの結晶の混合物。赤褐色・緑・白などの美しい縞模様があり、装飾品・彫刻材料などに用いられる。
<紫色は常用漢字>

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音符「楽ガク・ラク」<元はクヌギの木>と「薬ヤク」「櫟レキ」「礫レキ」「轢レキ」「爍シャク」「鑠シャク」

2024年09月15日 | 漢字の音符
  増訂しました。
[樂] ガク・ラク・たのしい・たのしむ  木部 lè・yuè・yào・lào
 
解字 甲骨文は「木(き)+二つの糸束」に従う。すでに白を加えた字体もある。甲骨文字辞典は「字源は諸説あるが、甲骨文字には地名の用法しか見られないため明らかにすることは難しい」とする。金文は白が加わった樂になった。意味は[簡明金文詞典]によると、すでに、①音楽。②享楽。喜悦。③人名、になっている。金文の字体に木を加えた櫟レキは「クヌギの木」の意味である。甲骨文で地名の意味だったのは、クヌギの生えている土地の名と私は推定するが、なぜ金文で突然、音楽・享楽の意味になったのか? その理由のひとつは発音が異なる字となったことである。クヌギの発音が櫟レキに対し、樂はラク・ガクになった。樂ラクと櫟レキはラ行であることから、レキ⇒ラクへの変化は起こりやすい。ラクの借音(発音を借りて他の意味を表す)の方法で「たのしい」意味への変化がおこり、その後ガクの発音で音楽の意味になったのではなかろうか。
 篆文もほぼ同じ形を引き継いでいるが、[説文解字]は「五聲(声)と八音の緫名(総称)。(上部は)鼓鞞コヘイ(太鼓と小鼓)を象(かたど)り。木は鼓を掛ける虡(台)也(なり)」とするのは、音楽の意味になった後の「こじつけ」である。清末・民国の学者・羅振玉は「絲に従い木の上に坿(つ)ける。(楽器の)琴と瑟シツ之(の)象也(なり)。或は白を增す。以て調弦之器を象る」と解説しているが、これも楽器の意味とするこじつけである。
 私見では、木の上の「幺白幺」は、真ん中の白がドングリ、左右の幺幺は天蚕がつくる糸束すなわち繭(まゆ)である。詳しい説明は櫟レキをご覧いただきたい。
意味 Ⅰ:ガクの音。(1)音のしらべ。「音楽オンガク」「楽譜ガクフ」(2)かなでる。「楽人ガクジン」「楽器ガッキ」 Ⅱ:ラクの音。(3)たのしい(楽しい)。たのしむ(楽しむ)。こころよい。「快楽カイラク」「安楽アンラク」(4)[国]らく(楽)。①たやすい。「仕事が楽だ」②千秋楽センシュウラク(相撲・歌舞伎など興業の最終日)の略。

イメージ
 「借音(当て字)」
(楽)
  元の意味である「くぬぎ」(櫟)
  クヌギの実(ドングリ)は「こつぶ・小さい」(礫・轢)
 「形声字」(薬・爍・鑠)
 音の変化  ガク・ラク:楽  シャク:爍・鑠  ヤク:薬  レキ:櫟・礫・轢

くぬぎ
 レキ・ヤク・くぬぎ  木部 lì・yuè

クヌギ(「さがの樹木図鑑」より)
解字 「木(き)+樂(くぬぎ)」の会意形声。樂は、もともとクヌギの意味であったが地名に用いられていた。クヌギは大木になる木であり目立つことからクヌギのある場所として地名になっていたと思われる。しかし、金文から樂が音楽・楽しい意味となったので、木をつけて元の意味を表した。故に、この字には木が二つある。[説文解字]は「木也。木に従い樂の聲(声)」とするが、[同注]は「櫟木也。秦の人謂う。柞櫟サクレキを櫟と爲す」とし、柞サク(ナラ・クヌギなどの総称)と結び付けて説明している。

皇后さま皇居で伝統の「山つけ」(ANNnewsCH)
(2018/5/2毎日新聞)皇后さまは2日、皇居内の養蚕施設で「天蚕(てんさん)」と呼ばれる野生種のカイコの卵を、餌となるクヌギの枝に取り付ける「山つけ」をされた。皇室では明治以降、代々の皇后が春から夏にかけて養蚕の作業を続けている。来年4月末に天皇陛下が退位されるため、皇后さまの養蚕は今年が最後になる。

緑色をしている天蚕
意味 (1)くぬぎ(櫟)。ブナ科コナラ属の落葉樹。高さ15m、径60㎝をこえる大木になる。橡・櫪とも書く。屋内で蚕を飼育する家蚕(かさん)が行われる以前から、野外でクヌギの葉にヤママユガ(天蚕の成長した蛾。葉に卵を産み付ける)を付けて飼育する方法が行われていた。その場合はクヌギの幹を根もとの少し上で切り、そこから若枝を輪生させて用いる。実はドングリとよばれ、直径2センチほどの球形、あく抜きをすると食べられる。日本の縄文時代に食用とされた。それ以外は薪や炭の原料となるが無用の材とされていた。「櫟樗レキチョ」(クヌギとニワウルシ。ともに大きいが役に立たない木。転じて、役に立たない人)「苞櫟ホウレキ」(うっそうとしたクヌギ林)(2)[国]いちい(櫟)。いちいがし。イチイ科の常緑高木。(3)地名。初出は金文。「櫟陽レキヨウ」(秦の都だった都市。陝西省の渭水北岸にあった)

クヌギの実「しろうと自然科学者の自然観察日記」より
 レキ・つぶて  石部 lì
解字 「石(いし)+樂(=櫟。くぬぎの実)」の会意形声。ころころした小粒の櫟の実のような石。
意味 つぶて(礫・飛礫)。こいし。いしころ。石つぶて。小石を投げること。「礫石レキセキ」(河原などの小さな石)「砂礫サレキ」(砂と小石。また、つぶて)「礫岩レキガン」(礫が堆積して砂などとともに堅い岩のようになったもの)「瓦礫ガレキ」(①瓦の破片と小石。②価値のないもの)「飛礫ヒレキ」(つぶて)
 レキ・ひく  車部 lì
解字 「車(くるま)+樂(=礫。石ころ」の会意形声。車が通るとき車輪により石が砕けて小さくなること。また、車が通る音。
意味 (1)ひく(轢く)。ふみにじる。「轢死レキシ」(車輪に轢かれて死ぬ) (2)きしる(轢る)。きしむ。すれあう。「軋轢アツレキ」(人の仲が悪くなること)

形声字
 ヤク・くすり  艸部 yào 
解字 「艸(草木)+楽(ラク⇒ヤク)」の形声。[説文解字]は「病を治す艸(くさ)也(なり)」とし薬草をいう。草木を材料に調合した漢方系のクスリ。
意味 (1)くすり(薬)。「薬草ヤクソウ」「薬餌ヤクジ」(薬と食べ物)「薬石ヤクセキ」(薬と鍼はり[石針])(2)化学効果をおこす粉末状のもの。「火薬カヤク」「弾薬ダンヤク
 シャク・とかす  金部 shuò
解字 「金(金属)+樂(ラク⇒シャク)」の形声。金属をとかすことを鑠シャクという。[説文解字]は「金を銷(とか)す也(なり)。金に従い樂の聲(声)。(発音は)書藥切(シャク)」とする。
意味 (1)とかす(鑠す)。とろかす。金属をとかす。「鑠金シャクキン」(2)光かがやく。「鑠鑠シャクシャク」(3)「矍鑠カクシャク」とは、年老いてなお意気盛んなさまをいう。
 シャク・ひかる・とかす  火部 shuò 
解字 「火(ひ)+樂(ラク⇒シャク)」の形声。火のように光ることを爍シャクという。また鑠シャク(とかす)に通じ、火でとかす意味がある。
意味 (1)ひかる(爍る)。「灼爍シャクシャク」(明るく照り輝くさま)「閃爍センシャク」(きらめき輝くこと)(2)とかす。「焦爍ショウシャク」(やけとける)
<紫色は常用漢字>

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音符「明メイ」<本来は星と月のあかるさ>と「盟メイ」「萌ホウ]

2024年09月14日 | 漢字の音符
 メイ・ミョウ・あかり・あかるい・あきらか・あける  日部 míng
  
解字 甲骨文字第一字(上)は「月+囧ケイ(星の光)」で、月と星明かりをあわせた星の光る月夜を表している。第二字は「月+日(太陽)」で、太陽が出た直後に月も見えている様子を表し原義は「明け方」である(「漢字字形史字典」より)。金文は「月+囧」の形が続き、篆文もほぼ同じ形であるが[説文解字]は「照る也(なり)。月に従い囧(まど)に従う」と囧を窓とする。この場合は窓から入る月明かりの意味になる。楷書になると「月+日」の明になり、甲骨文字の第二字に元返りした。
 現代字から「日と月を合わせたら明るい」と思ってしまうが、太陽が明るかったら月の姿はかすんでしまう。明るさは太陽だけで十分なのである。しかし歴史的変遷でたどると、明は晴れた夜の星と月の明るさ、または窓から入る月明かりなのである。夜の照明が十分に発達していなかった古代の人々にとって、夜の「明るさ」は月と星の光りに頼っていた。また「月+日」の明け方の明かりは、暁ギョウ(あかつき・天が白くなってきた夜明け)と成り立ちが共通している。
意味 (1)あかるい(明るい)。「明星ミョウジョウ」(金星の異称)「明暗メイアン」(2)あかり(明り)。「灯明トウミョウ」(灯火の明かり。神仏にそなえる灯火)(3)あきらか(明らか)。「明確メイカク」「明瞭メイリョウ」(4)あける(明ける)。夜があける。あす。「明朝ミョウチョウ」「明日あす」(5)(神仏にそなえる灯明から)神。神聖なもの。「神明シンメイ

イメージ 
 「あかるい」
(明・萌) 
 意味(3)の「あきらか」(盟)
音の変化  メイ・明・盟  ホウ:萌

あかるい
 ホウ・ボウ・もえる・きざす  艸部 méng
解字 「艸(草)+明(あかるい)」の会意形声。草が明るいほうへ芽を出すこと。
意味 (1)め。めばえ。芽を出す。もえる(萌える)。「萌芽ホウガ」「萌生ホウセイ」(芽生える)(2)きざす(萌す)。きざし(萌し)。「萌兆ホウチョウ」(萌も兆も、きざす意)
(3)「萌葱・萌黄もえぎ」(葱ねぎの萌え出る色を連想させる、青と黄色の中間の色)。明るい緑色は「萌黄」①、濃い緑色は「萌葱」②と書き分けることが多い。
①萌黄 ②萌葱
色見本は、「GOO字書」より。

あきらか
 メイ・ちかう  皿部 méng

解字 「皿(血を入れた器)+明(あきらか)」 の会意形声。篆文の皿は、よく見ると皿の中に一があり、皿に血が入っている形。集まった人たちが互いに犠牲獣の血を飲んでいる形で、参加者の取り決めを血を飲んで皆に明らかにすること。ちかう(盟う)意味となる。現代字は「皿+明」の盟となった。
意味 ちかう(盟う)。ちかい。神仏や人などに対し、ある事を必ず守ると約束する。「盟約メイヤク」(約束を盟うこと)「盟友メイユウ」(かたい約束を結んだ友人)「同盟ドウメイ」(同じ行動をとることを盟うこと)「連盟レンメイ」(多くの国などが連合して盟うこと)
<紫色は常用漢字>

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音符「粲サン」<白い米> と 「餐サン」「燦サン」

2024年09月12日 | 漢字の音符
  白い米
 サン  米部 càn


 上は粲サン、下は歹ガツ
解字 「歺ガツ(残骨)+又(て)+米(こめ)」 の形声。[字通]は「歺又ザン」を声符とする。歺ガツは歹ガツの変形字で残骨の形。意味は残骨が晒されて白くなっているものを又(手)でもつ形で白い意。これに米がついた粲サンは玄米を搗いて白くした米を表す。また、白い米の美しさから、あざやかの意ともなる。
意味 (1)しらげよね。ついて白くした米。白米。「白粲ハクサン」(2)めし。ごちそう。(=餐)(3)あざやか。あきらか。「粲粲サンサン」(あざやかで美しい)「粲然サンゼン」(①あざやかなさま。②美しい歯をだして笑うさま)
覚え方  と()た()また()こめ()でサン

イメージ 
 「白い米」
(粲・餐)
 意味(3)の「あざやか」(燦)
音の変化  サン:粲・餐・燦

白い米
 サン  食部 cān
解字 「食(たべる)+粲の略体(白い米)」の会意形声。白米を食べること。白米はめったに食べることのできないご馳走であった。
意味 (1)ごちそう。たべもの。飲み食いする。「晩餐バンサン」(夜の食事。豪華な夕食)「聖餐セイサン」(イエスが自分の血と肉を象徴(聖体)する葡萄酒とパンを信徒に分かつキリスト教の儀式)(2)食事。食べる。「午餐ゴサン」(昼飯)「餐飯サンパン」(食事。飯を食う)「餐銭サンセン」(天子から臣下に賜う賄い料)

あざやか
 サン・あきらか  火部 càn
解字 「火(ひ)+粲(あざやか)」の会意形声。あざやかの意味を火(火の光)をつけて強調した字。あきらか・きらめく・あざやかの意味で用いる。
意味 あきらか(燦か)。きらめく。あざやか。「燦燦サンサン」(明るくきらきら輝くさま)「愛燦燦アイサンサン」(美空ひばりの曲の題名)「燦然サンゼン」(きらきらと光り輝くさま)「燦爛サンラン」(美しくきらめき輝く。爛は盛りの意)

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