皇の字源はこれまで、①灯火の形でかがやく意の煌の原文、②日光の形で煌の原文、の二つが主な説であった。近年、良渚リョウショ文化の出土品をもとに王冠の原文説が注目されており、私も共感を持つ部分があるので、これをもとに皇を解字してみたい。解字にあたっては「漢字多功能字庫」の皇を参照した。
皇 コウ・オウ・きみ 白部
良渚玉人(正面・背面)
https://humanum.arts.cuhk.edu.hk/Lexis/lexi-mf/search.php?word=%E7%9A%87
解字 甲骨文は三本の羽飾りがついた冠を棒で立てて飾っている形。棒のそばに横向きの王の字がつく。金文はこの冠の下に王をつけた形。写真は紀元前3500~2200年ころの長江文明の一つである良渚リョウショ文化(浙江省杭州市良渚)出土の玉製の人形で、頭部に山形の冠をつけている。別に発掘された冠の実物では三ツ山の上に穴があり羽根を挿せるようになっているという。冠の下部につく王の字は発音(オウ⇒コウ)を表すとともに、これをつける者が王であることを示している。従ってこの冠は王冠である。
しかし甲骨文は断片のため意味不詳。金文は、①きみ。王。②盛大、③美しく輝く、④祖先の尊称、などに用いている。なお、「きみ」の意味は秦代になり全土を統一した王が秦の始「皇帝」と称して中国全土の統治者の意味とした。篆文は上部が自に変化した。後漢の[説文解字]は、この字体から「大なり。自(鼻=始め)と王から構成される。最初の王が皇であり、偉大な君主である」とする。当時、金文は知られておらず、この「大なり」の解釈は後起の字に影響を与えている。現代字はさらに白に変わった皇となった。
覚え方 (日焼けをしていない)顔のしろい(白)おう(王)は、皇帝
意味 (1)きみ(皇)。王。天子。「皇帝コウテイ」 (2)かみ(皇)。天上の偉大な王。上帝。「皇天コウテン」(天のかみ) (3)おおきい。おおい。ひろい。 (4)祖先への尊称。「皇考コウコウ」(亡き父の尊称)「皇妣コウヒ」(亡き母の尊称) (5)[国]すめらぎ(皇)。天皇。「皇室コウシツ」「皇太子コウタイシ」「皇族コウゾク」「皇統コウトウ」(天皇の血筋)
イメージ
「きみ・天子」(皇・凰)
盛大の意から「おおきい・ひろい」(鰉・蝗・篁・徨・惶)
王冠が「きらびやか」(煌)
音の変化 コウ:皇・鰉・蝗・篁・徨・惶・煌 オウ:凰
きみ・天子
凰 オウ・コウ・おおとり 几部
解字 鳳ホウに合わせて後に作られた字。鳳ホウは「凡(風の略体)+鳥(とり)」で、風の神である鳳(おおとり)の意。篆文は今篆(復元した篆文)として「漢字源流字典」(中国)に掲載されている字で、鳳ホウと同じく風の神の意を、「凡(風の略体)+皇(きみ・天子⇒かみ)」としている。現代字は「几(風の略体)+皇」の凰となり併せて鳳凰となった。なお、篆文の正字は皇で、鳳凰は鳳皇と書いた。
意味 おおとり(凰)。想像上のめでたい鳥。鳳ホウは雄、凰オウは雌とされる。「鳳凰堂ホウオウドウ」(平等院の阿弥陀堂の別称)「鳳凰文ホウオウモン」(鳳凰を文様化したもの)
おおきい・ひろい
鰉 コウ・ひがい 魚部
ヒガイ
解字 「魚(さかな)+皇(おおきい)」の会意形声。大きな魚で中国でチョウザメ科のサメをいう。日本では明治天皇が琵琶湖疎水の開門式に出席したときに賞味したことから、琵琶湖に産する淡水魚の「ひがい」をいう。
意味 (1)チョウザメ。「鰉魚コウギョ」(チョウザメ) (2)[国]ひがい(鰉)。コイ科の淡水魚。琵琶湖に産するもの(ビワヒガイ)が知られる。
蝗 コウ・いなご 虫部
解字 「虫(むし)+皇(ひろい)」の会意形声。広い地域を集団で飛び回るバッタをいう。日本では稲子(いなご)に当てる。
意味 (1)バッタ。トビバッタ。バッタ目の昆虫の総称。「蝗虫コウチュウ」(バッタ)「飛蝗ヒコウ」(バッタが多数群になって飛ぶ現象)「蝗害コウガイ」(バッタ類による作物を食い荒らす害)(2)いなご(蝗)。稲子。バッタ科イナゴ属の昆虫の総称。稲の害虫。
篁 コウ・たかむら 竹部
解字 「竹(たけ)+皇(ひろい)」の会意形声。竹が広く一面に生えている竹藪をいう。
意味 (1)たかむら(篁)。竹やぶ。「叢篁ソウコウ」(竹やぶ)「幽篁ユウコウ」(奥深い竹やぶ)「翠篁スイコウ」(みどりの竹やぶ) (2)竹の通称。
徨 コウ・さまよう 彳部
解字 「彳(ゆく)+皇(ひろい)」の会意形声。広い荒野を行くこと。道のない荒れ地をさまようこと。
意味 さまよう(徨う)。「彷徨ホウコウ」(さまよう。彷も徨もさまよう意)
惶 コウ・おそれる 忄部
解字 「忄(こころ)+皇(=徨。さまよう)」の形声。荒野をさまよう心の状態をいう。
意味 (1)おそれる(惶れる)。「惶急コウキュウ」(おそれあわてる)「惶恐コウキョウ」(惶も恐も、おそれる意)「惶惑コウワク」(おそれまどう) (2)あわただしい。「蒼惶ソウコウ」(あわただしい)
きらびやか
煌 コウ・かがやく・きらめく 火部
解字 「火(ひ)+皇(きらびやか)」の会意形声。きらびやかな意を火をつけて表した。
意味 かがやく(煌く)。きらめく(煌めく)。「煌煌コウコウ」(きらびやかに光るさま)
<紫色は常用漢字>
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皇 コウ・オウ・きみ 白部
良渚玉人(正面・背面)
https://humanum.arts.cuhk.edu.hk/Lexis/lexi-mf/search.php?word=%E7%9A%87
解字 甲骨文は三本の羽飾りがついた冠を棒で立てて飾っている形。棒のそばに横向きの王の字がつく。金文はこの冠の下に王をつけた形。写真は紀元前3500~2200年ころの長江文明の一つである良渚リョウショ文化(浙江省杭州市良渚)出土の玉製の人形で、頭部に山形の冠をつけている。別に発掘された冠の実物では三ツ山の上に穴があり羽根を挿せるようになっているという。冠の下部につく王の字は発音(オウ⇒コウ)を表すとともに、これをつける者が王であることを示している。従ってこの冠は王冠である。
しかし甲骨文は断片のため意味不詳。金文は、①きみ。王。②盛大、③美しく輝く、④祖先の尊称、などに用いている。なお、「きみ」の意味は秦代になり全土を統一した王が秦の始「皇帝」と称して中国全土の統治者の意味とした。篆文は上部が自に変化した。後漢の[説文解字]は、この字体から「大なり。自(鼻=始め)と王から構成される。最初の王が皇であり、偉大な君主である」とする。当時、金文は知られておらず、この「大なり」の解釈は後起の字に影響を与えている。現代字はさらに白に変わった皇となった。
覚え方 (日焼けをしていない)顔のしろい(白)おう(王)は、皇帝
意味 (1)きみ(皇)。王。天子。「皇帝コウテイ」 (2)かみ(皇)。天上の偉大な王。上帝。「皇天コウテン」(天のかみ) (3)おおきい。おおい。ひろい。 (4)祖先への尊称。「皇考コウコウ」(亡き父の尊称)「皇妣コウヒ」(亡き母の尊称) (5)[国]すめらぎ(皇)。天皇。「皇室コウシツ」「皇太子コウタイシ」「皇族コウゾク」「皇統コウトウ」(天皇の血筋)
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「きみ・天子」(皇・凰)
盛大の意から「おおきい・ひろい」(鰉・蝗・篁・徨・惶)
王冠が「きらびやか」(煌)
音の変化 コウ:皇・鰉・蝗・篁・徨・惶・煌 オウ:凰
きみ・天子
凰 オウ・コウ・おおとり 几部
解字 鳳ホウに合わせて後に作られた字。鳳ホウは「凡(風の略体)+鳥(とり)」で、風の神である鳳(おおとり)の意。篆文は今篆(復元した篆文)として「漢字源流字典」(中国)に掲載されている字で、鳳ホウと同じく風の神の意を、「凡(風の略体)+皇(きみ・天子⇒かみ)」としている。現代字は「几(風の略体)+皇」の凰となり併せて鳳凰となった。なお、篆文の正字は皇で、鳳凰は鳳皇と書いた。
意味 おおとり(凰)。想像上のめでたい鳥。鳳ホウは雄、凰オウは雌とされる。「鳳凰堂ホウオウドウ」(平等院の阿弥陀堂の別称)「鳳凰文ホウオウモン」(鳳凰を文様化したもの)
おおきい・ひろい
鰉 コウ・ひがい 魚部
ヒガイ
解字 「魚(さかな)+皇(おおきい)」の会意形声。大きな魚で中国でチョウザメ科のサメをいう。日本では明治天皇が琵琶湖疎水の開門式に出席したときに賞味したことから、琵琶湖に産する淡水魚の「ひがい」をいう。
意味 (1)チョウザメ。「鰉魚コウギョ」(チョウザメ) (2)[国]ひがい(鰉)。コイ科の淡水魚。琵琶湖に産するもの(ビワヒガイ)が知られる。
蝗 コウ・いなご 虫部
解字 「虫(むし)+皇(ひろい)」の会意形声。広い地域を集団で飛び回るバッタをいう。日本では稲子(いなご)に当てる。
意味 (1)バッタ。トビバッタ。バッタ目の昆虫の総称。「蝗虫コウチュウ」(バッタ)「飛蝗ヒコウ」(バッタが多数群になって飛ぶ現象)「蝗害コウガイ」(バッタ類による作物を食い荒らす害)(2)いなご(蝗)。稲子。バッタ科イナゴ属の昆虫の総称。稲の害虫。
篁 コウ・たかむら 竹部
解字 「竹(たけ)+皇(ひろい)」の会意形声。竹が広く一面に生えている竹藪をいう。
意味 (1)たかむら(篁)。竹やぶ。「叢篁ソウコウ」(竹やぶ)「幽篁ユウコウ」(奥深い竹やぶ)「翠篁スイコウ」(みどりの竹やぶ) (2)竹の通称。
徨 コウ・さまよう 彳部
解字 「彳(ゆく)+皇(ひろい)」の会意形声。広い荒野を行くこと。道のない荒れ地をさまようこと。
意味 さまよう(徨う)。「彷徨ホウコウ」(さまよう。彷も徨もさまよう意)
惶 コウ・おそれる 忄部
解字 「忄(こころ)+皇(=徨。さまよう)」の形声。荒野をさまよう心の状態をいう。
意味 (1)おそれる(惶れる)。「惶急コウキュウ」(おそれあわてる)「惶恐コウキョウ」(惶も恐も、おそれる意)「惶惑コウワク」(おそれまどう) (2)あわただしい。「蒼惶ソウコウ」(あわただしい)
きらびやか
煌 コウ・かがやく・きらめく 火部
解字 「火(ひ)+皇(きらびやか)」の会意形声。きらびやかな意を火をつけて表した。
意味 かがやく(煌く)。きらめく(煌めく)。「煌煌コウコウ」(きらびやかに光るさま)
<紫色は常用漢字>
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