漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「朝チョウ」<あさ> と「潮チョウ」「嘲チョウ」「廟ビョウ」

2013年04月15日 | 漢字の音符
 チョウ・あさ  月部 
    
解字 甲骨文は、「艸(くさ)+日+月+艸」の会意。艸は日と月の上下に描かれている。草間に日が出てくるころ、なお月が見えている形で早朝の意。逆の夕暮れを表す甲骨文は「艸+日+艸」で表す。これは草間に日が沈もうとする形(音符「莫バク」を参照)。朝を表すためには夜明けの月を加える必要があった。金文は月の代わりに水の流れを描いているが、これは朝の海潮を表している。篆文は月が舟になった他、かなり乱れた書体になったが、現代字は「艸(上下に分かれる)+日+月」の形で、甲骨文字とほぼ同じである。
意味 (1)あさ(朝)。あした(朝)。「朝刊チョウカン」「早朝ソウチョウ」「朝凪あさなぎ」(朝に風がやむとき)「朝餐チョウサン」(朝食) (2)(朝日を迎えて政治を行なったことから)天子が政治をとる場所。その国。「朝廷チョウテイ」(君主が政治をおこなう所)「王朝オウチョウ」「朝野チョウヤ」(政府と民間)「朝威チョウイ」(朝廷の威光)

イメージ  
 「あさ」
(朝・潮・廟)  
 「形声字」(嘲)
音の変化   チョウ:朝・潮・嘲   ビョウ:廟

あさ
 チョウ・しお・うしお  氵部
解字 「氵(水)+朝(あさ)」の会意形声。朝におきる海水の動きをいう。また、海水の満ち引きをいう。
※「ゆうしお」は汐セキと書く。
意味 しお(潮)。うしお(潮)。(1)海水の満ち引き。あさしお。「潮干しおひ」(潮がひくこと)「潮騒しおさい」(潮のさしてくる時の波の音)「潮汐チョウセキ」(海水の満ち引き)(2)海水の流れ。「潮流チョウリュウ」「潮音チョウオン」(海の波の音)(3)時の流れ。傾向。「思潮シチョウ」「風潮フウチョウ
 ビョウ・たまや・みたまや  广部
解字 「广(たてもの)+朝(朝礼を行なう)」の会意。もと朝礼を行なう所で、そこが祖先の霊を祀る廟所であった。のち、祭政が分離して政治を行なう王宮の正殿の意ともなった。
意味 (1)みたまや(廟)。たまや(廟)。祖先の霊を祀る場所。「霊廟レイビョウ」「廟所ビョウショ」 (2)王宮の正殿。政治を行なう所。「廟議ビョウギ」(朝廷の評議)「廟堂ビョウドウ」(①みたまや。②王宮の政殿)

形声字
 チョウ・あざける  口部
解字 「口(くち)+朝(チョウ)」の形声。チョウは調チョウに通じる。調は調和する意であるが、調和の状態が行き過ぎた、からかう・ふざける意がある(調笑=嘲笑)。嘲は、口からからかいやあざけりの言葉を発すること。
意味 あざける(嘲る)。からかう。ふざける。「嘲笑チョウショウ」「嘲弄チョウロウ」(あざけりなぶる)
<紫色は常用漢字>

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音符「气キ」<水蒸気を含む空気>「気キ」「汽キ」と「乞キツ」

2013年04月11日 | 漢字の音符
 キ・ケ  气部きがまえ           

解字 雲気が空に流れ、その一方が垂れている形。水蒸気をふくむ空気の意を表わす。気・汽の原字。単独では使われず、部首「气きがまえ」になる。

イメージ 
 空のなかの「蒸気」(気・汽)
 氣の意味である、米をふかすとき蒸気が「ふき出る」(愾)
音の変化  キ:気・汽  ガイ:愾 

蒸 気       
[氣] キ・ケ  气部
解字 旧字は氣で「米+气(蒸気)」の会意形声。米をふかすときにふき出る蒸気のこと。転じて、气のもとの意味も含めて広く空気や自然現象、人や社会の動きなどにも使われる。新字体は、米→メに変化した。
意味 (1)くうき。すいじょうき。「空気クウキ」「水蒸気スイジョウキ」「気化キカ」 (2)自然現象。「気候キコウ」「電気デンキ」 (3)いき・呼吸。「気息キソク」(息づかい)「呼気コキ」(吐き出す息) (4)ようす・けはい。「気配ケハイ」 (5)心のはたらき。「気力キリョク」「短気タンキ
 キ  氵部
解字 「氵(水)+气(蒸気)」の会意形声。气には蒸気の意があり、氵(水)をつけて水蒸気の意に限定した。
意味 ゆげ。水蒸気。「汽車キシャ」「汽船キセン」「汽笛キテキ

ふきでる
 ガイ・カイ・キ・いかる  忄部
解字 「忄(心)+氣(ふき出る)」の会意形声。心から感情がふきでること。
意味 (1)いかる(愾る)。いきどおる。「敵愾心テキガイシン」(相手に対する怒りから発する強い闘争心) (2)なげく。ため息をつく。


    キツ <雲気があがって上空でただよう>
 キツ・こう  乙部

解字 雲気が上って上空でゆきづまり、ただよっている形の象形。もと気と同字。のち分化して雲気の「気」、「乞」(乞求。こいもとめる)となった。古くは雲気に卜(うらない)し祈ったので、乞(こいもとめる)意となった。
意味 こう(乞う)。こいもとめる。「乞食コジキ・コツジキ」「乞命キツメイ」(命ごいをする)「乞巧奠キコウデン・キッコウデン」(陰暦七月七日、織女星・牽牛星に手芸等の上達を祈る行事。現代の七夕祭)

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 「もとめる」
(乞)
  雲気がただよう「空の上」(屹)
  雲気が上空で「ゆきづまる」(吃・迄)
音の変化  キツ:乞・屹・吃・迄

空の上
 キツ・そばだつ  山部
解字 「山(やま)+乞(空の上)」の会意形声。山が空の上までそびえたつこと。
意味 そばだつ(屹つ)。山が高くそびえる。「屹立キツリツ」(そびえ立つ)「屹然キツゼン」(①そびえ立つさま。②周囲から独立しているさま)

ゆきづまる
 キツ  口部
解字 「口(くち)+乞(ゆきづまる)」の会意形声。口の中で言葉や息がつまること。
意味 (1)どもる(吃る)。言葉がつかえる。「吃音キツオン」(どもること) (2)息がつかえる。「吃逆しゃっくり」「吃驚びっくり・キッキョウ」 (3)(喫キツに当てた用法)飲む。食べる。吸う。「吃煙キツエン」(=喫煙)
 キツ・まで  之部
解字 「之(ゆく)+乞(ゆきづまる)」の会意形声。ゆきづまる所までゆく意で、およぶ意と、そこまでの意となる。
意味 (1)およぶ。いたる。 (2)まで(迄)。「今迄いままで」「是迄これまで
<紫色は常用漢字>



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音符「旦タン」と「但タン」「坦タン」「担タン」「胆タン」と「亶タン」

2013年04月07日 | 漢字の音符
   タン <地平線から太陽が上がる>
 タン・ダン・あした  日部 

解字 金文は雲から明け方の太陽が昇るかたちで早朝の意。篆文は「日(太陽)+ 一 印(地平線)」の会意。太陽が地平線から上る形で明け方・早朝の意を示す。旦を音符に含む字は、地平線から太陽が上る意から「あらわれる」イメージがある。
意味 (1)あした(旦)。よあけ。あさ。あけがた。「元旦ガンタン」「旦夕タンセキ」(朝夕) (2)あける。夜があける。「平旦ヘイタン」(よあけ) (3)梵語の音訳語。「旦那ダンナ」(僧に施しをする人)

イメージ 
 地平線から太陽が「あらわれる」(旦・袒・但)
 地平線が「たいら」(坦)
 「形声字」(担・胆・疸・靼)
音の変化  タン:旦・袒・但・坦・担・胆・疸・靼

あらわれる
 タン・はだぬぐ  衤部
解字 「衤(ころも)+旦(あらわれる)」の会意形声。衣から肌があらわれる意。
意味 (1)はだぬぐ(袒ぐ)。かたぬぐ。衣をぬいで肩をあらわす。「袒裼タンセキ」(袒も裼もはだぬぐ意) (2)ひとはだぬぐ。味方する。「左袒サタン」(左も袒もたすける意)
 タン・ただし  イ部
解字 「イ(人)+旦(あらわれる)」の会意形声。人が肩肌をあらわすのが原義。「ただ」「ただし」の意の助字に仮借カシャ(当て字)される。
意味 (1)ただ(但)。いたずらに。限定を示す。 (2)ただし(但し)。条件や例外を補足するときの語。「但し書き」 (3)地名。「但馬たじま」(兵庫県北部地方の旧国名。但州タンシュウ) (4)肌があらわれる。(=袒タン

たいら
 タン・たいら  土部
解字 「土(つち)+旦(たいら)」の会意形声。旦は地平から太陽が昇る形。そこに土がついた坦は地平(たいら)な土地の意。
意味 (1)たいら(坦ら)。たいらか(坦らか)。「平坦ヘイタン」 (2)おだやか。心がひろい。「坦懐タンカイ」(わだかまりがなくおおらかな気持ち)「虚心坦懐キョシンタンカイ」(わだかまりのないおだやかな心)

形声字
 タン・かつぐ・になう  扌部
解字 旧字は擔タンで、「扌(手)+詹タン(=儋。にないがめ)」の会意形声。にないがめを手でかつぐ意。詹タンは同じ発音の旦に置き換えられた。
意味 (1)かつぐ(担ぐ)。になう(担う)。「担架タンカ」(動けない人をのせて運搬する器具)「負担フタン」(負い担ぐ) (2)引き受ける。受け持つ。「担当タントウ」「分担ブンタン」 (3)たすける。味方する。「加担カタン
 タン・きも  月部にく
解字 旧字は膽タンで、「月(からだ)+詹タン(=儋。にないがめ)」の形声。体の中にあって胆汁(苦い消化液)をためておく器官。詹タンは同じ発音の旦に置き換えられた。
意味 (1)きも(胆)。肝臓の右にあって胆汁を分泌する器官(かめ)。「胆汁タンジュウ」(脂肪を消化するため胆から分泌される液体)「胆石タンセキ」 (2)きもったま。度胸。「大胆ダイタン」 (3)こころ。きもち。「魂胆コンタン
 タン  疒部
解字 「疒(やまい)+旦(=胆。胆のう)」の会意形声。胆のうの病気。
意味 おうだん。胆汁色素が異常に増加し、肌が黄色くなる病気。「黄疸オウダン
 タン・タツ・なめしがわ  革部
解字 「革(かわ)+旦(タン)」の形声。革をよく使うタンという名の部族。韃靼ダッタンという部族の名に使われる。
意味 (1)韃靼ダッタンに使われる字。韃靼はタタールの音訳字で、達タツと旦タンで発音を表し、遊牧の民であるタタール人がよく使う革(なめし革)を意符とした。現代中国ではdádá(ダーダー)と発音される。韃靼はモンゴル系の一部族タタールの呼称。また、中国北方民族の呼称。 (2)なめしがわ(靼)。なめして柔らかくした革。
<紫色は常用漢字>

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