漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「仄ソク・ショク」<体をかたむける>と「昃ショク」

2019年08月28日 | 漢字の音符
 ソク・ショク・シキ・かたむく・ほのか・ほのめかす  人部

解字 篆文の少し前の字体である籀文チュウブンは、「厂(ガケ)+夨ショク・ソク(人が頭をかたむけた形⇒かたむける)」 の会意形声。体をかたむけてガケに身を寄せている人の形で、かたむく意を表す。篆文以降は、「厂+人」の形となった。また、発音のソクは側ソク(がわ・そとがわ)に通じ、中のことが外側にほのかに聞こえる意ともなる。
意味 (1)かたむく(仄く)。「仄日ソクジツ」(日がかたむく意で夕日) (2)漢字音の四声のうち平声以外の音。「仄声ソクセイ」(平声以外の、傾き(上げ下げ)のある発音)「仄韻ソクイン」(仄声の発音=韻)「平仄ヒョウソク」(平らな発音と上げ下げのある発音)「平仄が合わない」(漢詩を作るときに守るべき平声字と仄声字の配列が合わない。転じて、話のつじつまが合わない意) (3)ほのか(仄か)。かすかに。ほのめかす(仄めかす)。「仄聞ソクブン」(ほのかに聞く=側聞)

イメージ 「かたむく」(仄・昃)
音の変化 ソク:仄・昃
かたむ
 ショク・ソク・かたむく  日部

解字 甲骨文字は、午後に太陽が傾き人の影が斜めに伸びてゆくさまを描き、日がかたむく意で午後を表す。金文は「日(太陽)+夨ショク・ソク(人が頭をかたむけた形)」 の会意形声となり、篆文から「日+仄(かたむく)」の形になった。意味は日が傾くことで、午後の時間をいう。
意味 (1)かたむく(昃く)。日が西にかたむく。 (2)午後。日が西にかたむくころの時間。「日昃之労ニッショクノロウ」(昼食も食べずに午後を働く)「昃食ショクショク」(夕食)

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音符「頼ライ」<勢いがよい>「瀬ライ」「籟ライ」「獺ダツ」

2019年08月09日 | 漢字の音符
  懶ラン・嬾ランを追加しました。
[賴] ライ・たのむ・たのもしい・たよる  頁部おおがい       

解字 篆文・旧字とも、「束+刀(刂)+貝」の形。「束+刀(刂)」は剌ラツ(勢いよくとびはねる)であり、賴ライはこれに貝(財貨)を加えて、財貨の勢いがよい、即ち「もうけ」の意となる。そこから、「たのもしい・たよりとなる」意味となり、また「たよる・たのむ」意も生じた。
 新字体は、旧字・賴の右辺⇒頁ケツに変化した。したがって、部首は頁になる。「刀+貝」⇒「頁(あたま)」となるこの変化は、まったく意味のない変化であるばかりでなく、伝統ある「頁おおがい」という部首をけがす悪い変化である。画数も同じであり変える必要はなかった。
意味 (1)たのもしい(頼もしい)。たよりになる。「信頼シンライ」 (2)たのむ(頼む)。たよる(頼る)。「依頼イライ」「無頼ブライ」(頼るべきところがない)「頼母子講たのもしこう」(一定の掛け金を出し合って、くじや入札などで金を融通する互助仲間。無尽むじんとも) (3)姓のひとつ。「頼山陽らいさんよう」(江戸時代末の儒学者・歴史学者) (4)名乗り。「頼朝よりとも」「勝頼かつより

イメージ 
 「勢いがよい」
(頼・瀬・獺・籟) 
 意味(2)の「たよる」(懶・嬾)
  「ライの音」(癩)
音の変化  ライ:頼・瀬・籟・癩  ラン:懶・嬾  ダツ:獺

勢いがよい
 ライ・せ  氵部
解字 旧字は瀨で「氵(水)+賴(勢いよく)」の会意形声。水が勢いよく飛びはねる急流や浅瀬。新字体は瀬に変化。
意味 (1)せ(瀬)。はやせ。水が激しくくだけて流れる所。「早瀬はやせ」「急瀬キュウライ」「瀬戸せと」(幅の狭い海峡。潮の干満によって激しい潮流を生じる) (2)あさせ。川や海の浅い所。「浅瀬あさせ」 (3)立場。場所。機会。「立つ瀬がない」「逢瀬おうせ
 ダツ・かわうそ  犭部
 カワウソ
解字 「犭(けもの)+賴(=瀬。あさせ)」の会意形声。浅瀬にすむけもの。
意味 かわうそ(獺。川獺)。イタチ科の哺乳類。水辺に棲み魚などを捕食する。「獺祭ダッサイ」(カワウソが捕えた魚を祭りの供物のように岸にならべること。転じて、詩文を作るとき参考書をたくさん並べ、言葉を選び出して文章を修飾すること)
 ライ  竹部
解字 「竹(竹笛)+賴(勢いよく)」の会意形声。勢いよく音がでる竹の笛。
意味 (1)ふえ。穴が三つある笛の一種。「籟簫ライショウ」(ふえ。籟も簫もふえの意) (2)ひびき。こえ。音。「松籟ショウライ」(松に吹く風。また、その音)「風籟フウライ」(風の声。風の音)

たよる
 ラン・おこたる・ものうい・ものぐさい  忄部 
解字 「忄(こころ)+賴(たよる)」 の会意形声。たよる心で、人にたよって自分は、おこたる・なまける意。発音はライ⇒ランに変化。
意味 (1)おこたる(懶る)。「懶惰ランダ」(おこたりなまける)「懶眠ランミン」(なまけてねむる。怠惰なねむり) (2)ものうい(懶い)。ものぐさい(懶い)。「懶婦ランプ」(無精な女性)
 ラン・おこたる・ものうい  女部
解字 「女(おんな)+賴(たよる)」 の会意形声。人にたよって自分は何もしない女性。発音はライ⇒ランに変化。
意味 (1)おこたる(嬾る)。「嬾惰ランダ」(=懶惰) (2)ものうい(嬾い)。「嬾婦ランプ」(=懶婦)

ライの音
 ライ  疒部
解字 「疒(やまい)+賴(ライ)」の形声。ライという名の慢性の感染症。癩菌ライキンによって感染する。
意味 らいびょう(癩病)。現在は「ハンセン病」が正式病名。
<紫色は常用漢字>

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音符「爵シャク 」<中国古代の酒を温める器>「嚼シャク」

2019年08月01日 | 漢字の音符
 シャク  爪部
 

解字 中国古代の酒を温める器の象形。青銅器で、三本の足と把手、注口とバランスをとるためその反対側に尾(び)が少し長く作られている。殷(いん)代から周代にかけて祭器として盛行した。使い方は酒を入れて火のそばに置いて温め、注ぎ口から杯などについだと思われる。字形に寸(て)がついているのは把手(写真正面の手前)を手でもつ意であろう。また皇帝が恩賞として爵をさずけたことから世襲的身分(爵位)を表す言葉となった。
意味 (1)さかずき。祭礼用のさかずき。酒を飲む容器の総称。「爵杯シャクハイ」(爵の形をした杯の意) (2)貴族の身分の等級を示す。公・侯・伯・子・男の五階級がある。「爵位シャクイ」。爵位を授ける。「侯爵コウシャク」「伯爵ハクシャク」「男爵ダンシャク」 (3)すずめ。爵シャクと雀ジャクの隋唐音はtsǐakで同音。「爵羅シャクラ」(スズメを捕らえる網=雀羅ジャクラ
覚え方 のっている目(ノツ罒)よれてん(ヨレ丶)ね、ちょっと()だけ、あの子さま  (『漢字川柳』を参考)

イメージ 
 「さかずき」
(爵) 
 隋唐音で同音の「すずめ」(嚼)
音の変化  シャク:爵・嚼 

すずめ
 シャク   口部
解字 「口(くち)+爵の旧字(すずめ)」 の会意形声。すずめ(雀)の焼いたものを口でかむ意。雀は小骨が多く、かみくだくように食べる。京都の伏見稲荷大社で名物の「スズメの丸焼き」を食べたことがあるが、まさに歯でかみくだいた。
意味 かむ(嚼む)。かみくだく。かみしめる。「咀嚼ソシャク」(かみくだく)「嚼齧シャクゲツ」(歯でつよくかむ)「咬文嚼字コウブンシャクジ」(文を咬み字を嚼む・文字の使い方を細かく吟味する)
<紫色は常用漢字>
   
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