漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「戊ボ」<マサカリに似た武器>と「茂モ」

2015年08月21日 | 漢字の音符
 ボ・ボウ・モ・つちのえ  戈部

解字 戈(オノ型ほこ)の刃先が広い武器の象形。しかし、本来の意味でなく、甲骨文字から十干の五番目に当てられた。
意味 (1)つちのえ(戊)。五行(木・火・土・金・水)のひとつである土の兄(え)の意味で、十干の五番目。五行との関連は下図を参照。 「戊辰戦争ボシンセンソウ」(1868年の戊辰(つちのえたつ)の年から新政府軍と幕府側との間で行なわれた戦争) (2)ほこ。
 十干とは、甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の10の要素の順列。これを五行(木・火・土・金・水)に配列し、おのおのに兄(え)と弟(と)を当てて訓読みする。以下を参照。

十干の読み方(オンライン無料塾「ターンナップ」より)

イメージ 
 「仮借(当て字)」
(戊)
 「形声字」(茂)
音の変化  ボ:戊  モ・ボウ:茂

形声字
 モ・ボウ・しげる  艸部
解字 「艸(草)+戊(ボウ・モ)」の形声。ボウは冒ボウ・モウ(おおう)に通じ、草がおおう意。
意味 (1)しげる(茂る)。草がしげる。「繁茂ハンモ」「茂生モセイ」 (2)すぐれて立派なこと。「茂才モサイ
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「母ボ」 <はは> と 「毋ブ」 「毒ドク」

2015年08月08日 | 漢字の音符
 ボ・はは  毋部

解字 乳房をつけた女性を描いた象形。女の字に両方の乳房を点で加えた形。子を生み育てる母の意。
意味 (1)はは(母)。「母親ははおや」「父母フボ」「母系ボケイ」 (2)ものを作り出すもと。おおもと。「母校ボコウ」「母国ボコク

イメージ  「はは」 (母・姆・拇・苺・栂)
音の変化  ボ:母・姆・拇  バイ:苺  とが:栂

はは
 ボ・モ・うば  女部
解字 「女(おんな)+母(はは)」 の会意形声。母親の代わりをする女。
意味 (1)うば(姆)。めのと。もり。「保姆ホボ」(保育所などで児童の保育をする女性=保母) (2)あによめ。弟の妻が兄の妻をよぶ語。
 ボ・おやゆび  扌部
解字 「扌(手)+母(はは)」 の会意形声。手の指で他の指と向かい合って母親の役をするおやゆび。
意味 おやゆび(拇)。親指。おおゆび。「拇指ボシ」(おやゆび)「拇印ボイン」(親指の先に朱肉をつけて押し、印鑑の代わりとする)
<国字> とが  木部
解字 「木(き)+母(=拇。おやゆび)」 の会意。ちょうど親指ぐらいの大きさの実がつく木からと言われる。
 栂の実 
意味 (1)とが(栂)。つが(栂)。マツ科の常緑高木。球果は小柄で楕円形、長さ2.5cm程度で、親指の先ほどの大きさ。木目がこまかく建築用材や器具製作の材料となる。 (2)地名。「栂池高原つがいけこうげん」(長野県北安曇郡小谷村に広がる高原)
苺[莓] バイ・マイ  艸部
解字 「艸(草)+母(子を産むはは)」  の形声。親株からでるランナー(匍匐茎)から次々と子株をふやすいちご。
意味 いちご(苺)。莓とも書く。バラ科の多年草。黄・紅色の液果をつけるものの総称。「石垣苺いしがきいちご


            ブ <ない・なかれ>
 ブ・ム・ない・なかれ  毋部     

解字 もと母の字で、否定・打消しに仮借カシャ(当て字)して用いる。金文は母の字であるが、のち両方の乳房を直線化した字形にして、母と区別した。[字統]
意味 (1)なかれ(毋れ)。禁止を表す助字。 (2)ない(毋い)。否定を表す助字。
 ドク  毋部                  

解字 篆文は「生(芽生える草)+毋(なかれ:禁止)」 の会意。食べてはいけない草、すなわち毒草の意味。現代字は、生 ⇒ 龶 に変化した。
意味 (1)どく(毒)。「毒薬ドクヤク」「中毒チュウドク」(どくあたり) (2)どくする。そこなう。「毒舌ドクゼツ」(毒のある言葉を言う)「毒婦ドクフ」(腹黒く悪事を働く女)
<紫色は常用漢字>

                バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「毎マイ」<髪型を整える女>と「敏ビン」「繁ハン」「侮ブ」「梅バイ」「海カイ」「悔カイ」

2015年08月07日 | 漢字の音符
[每] マイ・バイ・ごと・つね  母部

歪梳(わいそ)苗族の女性の髪形
解字 甲骨文字は、カンザシをして頭髪をまとめた女の象形。金文から女⇒母になるが、金文には他に女の字形も存在する。したがって毎の字は、頭髪を飾った母というより女であって、必ずしも母の意味があるわけではない。しかし篆文から金文を引き継ぎすべて母となっている。意味は、頭髪を結った女が寝る前にカンザシをはずし、朝おきると又、髪を結うので「毎日」「そのたび」の意。転じて、つねに・いつも等の意となる。旧字は頭髪の部分が「𠂉」に変化したになり、さらに新字体で母⇒毋に変化した毎になった。
 中国では現在も少数民族で、櫛などを挿して髪をたばねる髪型を守る苗族の支族がある。
意味 (1)ごと(毎)。次々と生じる事柄をさし示す言葉。「日毎ひごと」「毎日マイニチ」「毎次マイジ」(2)つね(毎)。つねづね。いつも。「毎毎マイマイ」(いつも)(3)ひとりずつ(各)。「毎人マイニン・マイジン」(一人ずつ) 

イメージ
 「髪型を整える女」(毎・敏・繁)
 「形声字」(晦・海・悔・誨・侮・梅)
音の変化  マイ:毎  バイ:梅  ハン:繁  ビン:敏  ブ:侮  カイ:晦・海・悔・誨 

髪型を整える女  
 ビン・さとい  攵部     

解字 甲骨文は、カンザシをした女が頭に手をやり髪型を整えている形。手は自分の手とも他人の手とも解釈できる。篆文は、女が母に、手が攴になり、現代字はさらに攵に変化している。女が毎日髪をととのえるので、手早く髪をととのえる意で、はやい・すばやい意を表し、転じて、さとい意となる。
意味 (1)はやい。すばやい。とし(敏し)。「敏速ビンソク」「機敏キビン」  (2)さとい(敏い)。かしこい。するどい。「俊敏シュンビン」「鋭敏エイビン」「敏感ビンカン
 ハン・しげる 糸部
解字 「糸(糸飾り)+敏(女が髪を整える)」の会意形声。敏ビンは女が手早く髪をととのえる形で、それに糸がついた繁は、次々と髪に糸飾りをつけること。転じて、さかんになる・しげる意となる。
意味 (1)さかんになる。「繁栄ハンエイ」「繁盛ハンジョウ」 (2)しげる(繁る)。草木がしげる。「繁茂ハンモ」「繁殖ハンショク」 (3)回数が多い。しげく(繁く)。いそがしい。わずらわしい。「繁忙ハンボウ」「頻繁ヒンパン

形声字
 カイ・みそか・つごもり・くらい・くらます  日部
解字 「日(太陽)+每(マイ⇒カイ)」の形声。[説文解字]は、「月盡(つき)るなり。日に従い毎の声。(発音は)荒內切(クヮイ)」とし月が尽きて見えない夜で、陰暦の月の最終日をいう。月が出ないので「くらい」意味ともなる。マイの発音がどうしてカイ(クヮイ)になるのかは不明だが、カイ(クヮイ)は、「くらい」または「かくれる」意味となるので、漢字以前からあった「カイ(クヮイ)・かくれる・くらい」という発音を表すために、每マイの字を転音させたのであろう。毎マイに海カイ・悔カイなどの音がある。
意味 (1)みそか(晦日)。つごもり(晦。晦日)。陰暦で月の最終日。「大晦日おおみそか」(一年の最終の日。おおつごもり) (2)くらい(晦い)。「晦冥カイメイ」(くらやみ) (3)くらます(晦ます)。「晦渋カイジュウ」(文章や語句などがむずかしくて分かりにくい)「晦蔵カイゾウ」(自分の才能などを人にわからないようにかくす)
 カイ・うみ  氵部
解字 「氵(川)+毎(マイ⇒カイ)」の会意形声。川に面したカイという名の地名。現在は貴州省六曲河鎮に存在し、海眉カイビ村の名で残っている。六曲河は文字通り河が曲がりくねっている意で、海眉とは「眉まゆのような曲線の河に面した土地の意味と思われる。[漢字字形史字典]は、周代の金文に東方の地名として「海眉」が見え、あるいは海岸地域(海に面した土地の地名)の呼称が原義かもしれないとする。海の解字には諸説あるが、地名からの説明が分かりやすいと思う。
 なお[字統]は、「「氵(みず)+毎(=晦カイ。くらい)」の会意形声とし、「中国では自分たちの地・中華に対し、そこからはずれた四方の極地を晦冥カイメイの地(くらやみの地)とする観念があった。その地に氵(みず)がついた海は、晦冥の地にひろがる果てしない水のうみの意」とする。
意味 (1)うみ(海)。「海岸カイガン」「海洋カイヨウ」「海峡カイキョウ」「溟海メイカイ」(大海) (2)広く大きい。多くのものが集まる。「雲海ウンカイ」「樹海ジュカイ
 カイ・ゲ・くいる・くやむ・くやしい  忄部
解字 「忄(心)+毎(=晦。くらい)」の形声。カイは晦カイ(くらい)に通じ、心が沈んでくらい状態をいう。罪や過ちを犯し暗い気持ちになり、それを悔やむこと。
意味 くいる(悔いる)。くやむ(悔む)。くやしい(悔しい)。「悔悟カイゴ」(悔い改める)「後悔コウカイ」「悔恨カイコン」(後悔して残念に思う)「懺悔ザンゲ」(罪悪を自覚し悔い改める)
覚え方 こころ()で日、(くや)んで後コウカイ。  
 カイ・おしえる  言部
解字 「言(いう)+每(=悔。くいる)」の会意形声。言葉で相手を悔い改めさせること。
意味 おしえる(誨える)。おしえさとす。わからせる。「教誨キョウカイ」(教えさとす)「教誨師キョウカイシ」(刑務所で受刑者に対し徳性の育成を行なう宗教家)
 ブ・あなどる  イ部  
解字 「イ(人)+毎(ブ)」の形声。ブは毋ブ・ム(ない)、無ム・ブ(ない)に通じ、人を無視する態度をとり、さげすむこと。
意味 あなどる(侮る)。さげすむ。「侮辱ブジョク」(あなどり、はずかしめる)「侮蔑ブベツ」(あなどり、さげすむ)「軽侮ケイブ」(あなどって軽くみる)  
覚え方 ひと()を日、(あなど)りブジョク
 
 バイ・うめ  木部
解字 「木(き)+毎(バイ)」の形声。バイはバイ(うめの古字)に通じ、木をつけてウメの木、ウメの実を表す。
意味 うめ(梅)。うめの木。「梅花バイカ」「梅園バイエン」「梅雨バイウ・つゆ」(梅の実がなるころ降る雨)「入梅ニュウバイ
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする