漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「夆ホウ」<であう>と「逢ホウ」「縫ホウ」「篷ホウ」「烽ホウ」「峰ホウ」「蜂ホウ」「鋒ホウ」「蓬ホウ」

2025年01月31日 | 漢字の音符
 改訂しました。
 ホウ  夊部 féng・páng         

解字 甲骨文字は「下向きの足+ホウ(土盛りに植物を植えた形⇒丰)」の形声。下向きの足は相手が向こうからやってくる形であり、ホウの音で逢着(出あう)する意であろう」(甲骨文字辞典)。金文は「夊(下向きの足)+ホウ(土盛りに植物を植えた形)」となり、篆文は「夂+丰の初文」となり、現代字は「夂+丰(ホウ)」の夆となった。あう・であう意味であるが、辶(すすむ)をつけた逢ホウの原字であり、また夆ホウで音符の役割をする。
意味 あう。であう。=逢。

イメージ 
 「出合う」(逢・縫・篷・烽)
 「形声字」(峰・蜂・鋒・蓬)
 
音の変化  ホウ:逢・縫・篷・烽・峰・蜂・鋒・蓬

出合う
 ホウ・あう  辶部しんにょう féng
解字 「辶(ゆく)+夆(出合う)」の会意形声。辶(ゆく)をつけて出合う意味を強めた字。常用漢字でないため、二点しんにょう。(なお、スマホは一点しんにょうで表示されている)
意味 (1)あう(逢う)。出合う。「逢着ホウチャク」(でくわす)「逢遇ホウグウ」(出会う。ふと出会う)「逢引あいびき」(逢うのを手引きする)(2)むかえる。「逢迎ホウイン」(出迎えて接待する)
 ホウ・ぬう  糸部
解字 「糸+逢(出合う)」の会意形声。布と布を出合わせて糸を通し、縫い合わせること。
意味 (1)ぬう(縫う)。ぬいあわせる。「裁縫サイホウ」「縫合ホウゴウ」(縫い合わせる)「縫製ホウセイ」(縫って作る)(2)とりつくろう。「弥縫ビホウ」(失敗などを一時的にとりつくろう)
 ホウ・とま  竹部 péng

烏篷舟(船で行く上海の旅 その二 (紹興・寧波)
解字 「竹(たけ)+逢(出合う)」の会意形声。竹を編んだ覆いを舟の上に合わせること。小舟の覆いをいう。
意味 (1)とま(篷)。竹などで編んだ舟の覆い。「篷舟とまぶね」「烏篷舟ウホウぶね」(雨をはじくため黒い(烏からす)塗料を篷に塗った舟)(2)ふね。小舟。「釣篷チョウホウ」(釣り舟)「孤篷コホウ」(一艘の孤独な舟)
 ホウ・のろし  火部 fēng

解字 篆文は「火+逢(出合う)」のとなっており、こちらの火を合図として次の場所へ伝え(出合わせ)、受けた方は火を焚いて別の場所へと次々に敵の襲来を伝えてゆく火煙。現代字は逢⇒夆に変化した烽となった。

明代建築の烽火台(中国ネットから)
意味 のろし(烽)。敵の襲来の合図のため高くあげる煙。「烽火ホウカ」(のろし。とぶひ)「烽煙ホウエン」「烽火台ホウカダイ」(烽をあげる低い塔のような構造物)「烽櫓ホウロ」(のろしを上げる望楼)
 ホウ・ほこ・ほこさき 金部 fēng

解字 篆文は「金(金属)+逢(出会う)」の会意形声。戦さで兵が出会ったとき使用する、鋭く尖った武具の鋒(ほこ)および鋒先をいう。
意味 (1)ほこ(鋒)。ほこさき(鋒)。切っ先。鋭利な部分。鉾とも書く。「鋒先ほこさき」「鋒利ホウリ」(鋭利。するどい)「鋒鏑ホウテキ」(ほこさきと、やじり。転じて武器・兵器)(2)さきて。先陣。「先鋒センポウ」(3)勢いのするどい例え。「舌鋒ゼッポウ」(言葉のほこ先がするどい)(4)筆の先。「筆鋒ヒッポウ」(筆のほさき。筆のいきおい)
 ホウ・はち  虫部 fēng
解字 「虫(むし)+夆(ホウ=鋒。ほこさき)」の形声。尾にするどい針をもつ昆虫。ハチ。
意味 (1)はち(蜂)。「蜜蜂みつばち」「蜂巣ホウソウ」(はちの巣)「養蜂ヨウホウ」(蜂を飼育する)(2)むらがる。むれる。「蜂起ホウキ」(一斉に起きる)「蜂出ホウシュツ」(むらがって出る)

形声字
[峯] ホウ・みね  山部 fēng
解字 「山(やま)+夆(ホウ)」の形声。篆文の[説文解字]は峯と書き「山の耑(=端。先端)也(なり)。山に従い夆の聲(声)」とし山のみね(峰)の意、楷書は山が左についた峰になった。するどく尖った山のいただきを言う。
意味 みね(峰)。山のいただき。高い山。「高峰コウホウ」「秀峰シュウホウ」「霊峰レイホウ」(神仏をまつる神聖な山。信仰の対象となる山)「峰頂ホウチョウ」(峰のいただき)「孤峰コホウ」(周りから孤立している峰)
 ホウ・よもぎ  艸部 péng

伸びてきた蓬 (よもぎ)(「季節の花300」より)
解字 「艸(くさ)+逢(ホウ)」の形声。[説文解字]は「蒿(よもぎ)也。艸に従い逢の聲(声)」とする。よもぎはキク科の多年草で、日当たりのよい原野や道端などに集団を作って生え、高さは1m前後になる。春の地表に生えた若芽は食用になり、餅に入れられることから、モチグサ(餅草)ともよばれる。灸のもぐさや漢方薬の原料になるなど利用される一方、繁殖力の強さから雑草と見なされることが多い。日本のヨモギのイメージをこえて中国ではいろんな意味で用いる。
意味 (1)[日本]よもぎ(蓬)。もちぐさ。「蓬餅よもぎもち」(2)[中国]よもぎを家屋などに利用する。「蓬戸ホウコ」(ヨモギで編んだ粗末な戸。粗末な家)「蓬門ホウモン」(よもぎを編んで作った門。貧しい家。隠者の家)「蓬矢ホウシ」(よもぎの茎で作った矢。邪気をはらう)(3)物の乱れているさま。「蓬髪ホウハツ」(蓬のようにのびて乱れた髪)「蓬首ホウシュ」(髪のみだれた頭)(4)「蓬莱ホウライ」とは、東海中にあり仙人が住み不老不死の地とされる山。また、これをかたどり松竹梅、鶴亀、尉と姥を配した祝儀の飾り物。
<紫色は常用漢字>

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英単語を「音符」で読んだら英語らしくなった!

2025年01月29日 | 漢字の音符
 本稿では「音符」を、「音節」の意味と「音符」の両方の意味で使っています。

 数年前に「英単語の語源図鑑」(かんき出版)という本がさかんに売れたことがある。あの頃は英語の語源に関する本がブームになり、多くの本が出版された。私もこのブログ「漢字の音符」で、漢字を分解して同じ音符でまとめる作業をしているので、英単語の語源と漢字の音符とのあいだに何か共通する点があるのではないか思い、本を購入して読んだことがある。
 読んでみると、英語の語源も核となる言葉があって、その前後に前置詞、後置詞がついて、多くの家族字ができていることが分かったが、漢字音符と比較して考察するには両者はあまりにも隔たりがあり過ぎるというのが実感であった。
 漢字は字形というものはあるが、その発音は隠れているのに対し、英語の熟語は字形がない代わりにアルファベットの26文字だけで多くの発音が表されているからである。両者はまったく真逆の言語なのである。
 漢字は「やま」を表すのに「山」という図形を描いて文字にし、「サン」という名で呼んだ。英語はアルファベットで「mountain」と表記し「やま」の発音を表して「やま」の概念を伝える。
 音符にこだわる私は、英語の単語がわずか数個前後のアルファベットで、どうして多くの発音を表すことが可能なのか? 音符は音符でも、いわば単語のなかにある発音の原理(=音符)に興味をもつようになったのである。


 「英単語の語源図鑑」は、清水建二・すずきひろし著で手元の本は、2018年5月1刷・8月8刷とあるから、その当時、短期間でかなり増刷しており売れ行きがよかったことがわかる。
 さて、本の題名になっている英単語の「単語」というのは「意味のひとまとまりを表し、構文上の働きをもつものとしての、極小とされる単位」(Oxford Languagesの定義)であり、 従って「英単語の語源」とは「英単語の​​本来の形や意味、それに成立の由来や起源」のことである。
 まず本の導入部を読むと、「語源のパーツには3種類あります」とあるが、正確に言うと「英単語のパーツには3種類あります」であろう。本のタイトルが語源を用いているので、「語源」⇒「英単語」の意味で用いているようだ。
 その3種類とは、(1)語の先につく「接頭辞」(2)真ん中にきて意味の中核をなす「語根」(3)最後につく「接尾辞」があり、最初の例として挙げている、attractionは、 at(接頭辞)と tract (語根)と ion(接尾辞)から成り、語根の tract は、引く意だという。
 以下に、この本から4つの語根を選んで、それがどのように組み合わさって用いられているかを紹介させていただく。
tract(引く)

 at(~の方へ)+tract(引く)+ion(接尾辞。名詞化)は、引き付けるもの(attraction)⇒魅力
 con(共に)+tract (引く)は、引き合う(contract)⇒契約する
 ex(外に)+tract (引く)⇒外に引く(extract)⇒引き出す
 dis(離れて)+tract (引く)+ion(接尾辞)⇒引き離すもの(distraction)⇒気晴らし。
 とあって、語根の tractに接頭辞と接尾辞が付いて、4種類の単語ができていることがわかる。漢字でいうと語根は音符にあたり、 at(接頭辞)と ion(接尾辞)は漢字では強いていえば部首にあたる。しかし、漢字の場合は文字の一部として枠の中に組み込まれてしまうのに対し、英語の単語はアルファベットの文字が連続して並ぶという特徴がある。
mini(小さい)
 mini(小さい)+ster(人)⇒(神に仕える)小さい人(僕しもべ)で牧師(minister)。転じて大臣。
 ad(~の方へ)+ minister(大臣)⇒治める。執行する(administer 治める・執行する)。名詞形(administration、支配・政治・行政)
 di(分離)+mini(小さい)+sh(接尾辞)⇒小さくなる(diminish 減少する)
just(正しい)
 ad(~の方へ)+just(正しい)=正しい方向へ(adjust)⇒調節・適合させる
 just(正しい)+ice(名詞化)=正しいこと(justice)⇒公平。正義。
 just(正しい)+ ify(動詞に)=正しいものにする(justify)⇒正当化。
serve(保つ、守る)
 ob(~に向かって)+ serve(保つ・守る)⇒観察する・気づく・守る(observe)
 re(うしろ)+ serve(保つ・守る)⇒後ろに置いておく。取っておく(reserve)
 con(共に)+ serve(保つ・守る)⇒みんなで取っておく。保存・保護する(conserve)
 pre(前に)+ serve(保つ・守る)⇒あらかじめ取っておく。保存。貯蔵(preserve)
 de(完全に)+ serve(つかえる)⇒つかえるに値する。価値がある(deserve)

 以上が「英単語の語源図鑑」の語根の一端ですが、英単語の「音符」はどこにあるのでしょうか。それは意味の中核をなす「語根」にあると思います。例えば、すぐ上の語根 serve(sˈəːv)は、observe(əbzˈəːv)・ reserve(rɪzˈəːv)・conserve( kənsˈəːv)・preserve(prɪzˈəːv)・deserve( dɪzˈəːv)となり、語根serveの発音は(sˈəːv)であり共通です。つまり、英語の単語は語根の発音を中核としながら、その前後につく接頭・接尾のスペルを含む単語の全体が発音となるわけです。
 こうして成立した英単語のスペルは、長いものでpreserveの8文字、短いものでserveの5文字のアルファベットの文字が並びます。しかし、こうして並んだ5~8字のアルファベットは、英語を知らない人にとっては単なる文字の羅列であり発音はできません。意味を知っている人でも発音はできない人もいるでしょう。この羅列文字を発音するためには、発音を表す文字の塊りに区切る必要があるのです。
 発音の塊りに区切ると、ひとつひとつの区切りは音になるのです。これを音節(シラブル)といいます。音節とは音の節(ふし)で、その区切り(節)の一つ一つが発音を表します。私が用いている漢字の「音符」は発音を表す音符字をさしており英単語では語根の発音です。シラブル(音節)というのは、全体の文字列の発音を表す区切りになります。この点が漢字音符と英単語の違いになります。
 これについて、分かりやすい解説をしているユーチューブのサイトがありましたので、紹介させていただきます。
https://www.youtube.com/watch?v=BLMIwU_Jr08


 この動画をまとめると、
①シラブルは英語の発音の基本単位となる音である。日本語では、「あ・い・う・え・お」の五十音が基本的な音だが、英語はそうでない。アルファベットは26文字あるが、ひとつひとつは音ではない。
②「ねこ」は、catで(kˈæt)と発音するが、アルファベットの発音でcシイ/aエイ/tテイとは発音しない。シラブルは「子音+母音(a・b・c・d・e)+子音」が1セットになる。catは「子音+母音+子音」だから1セット。
③ 英語は発音とアルファベットの文字が一致しない。catの文字だけ覚えても発音できない、つまり話せない。
④ 母音はいろんな発音の種類がある。例えば「いいえ」のnoの発音は、noのうしろに「う」の発音を表すwが、姿は見えないがついてnow(ノウ)の発音になる。だから「子音+母音+子音」になっている。
⑤ noに tをつけた notの発音は、 nɑ:tで、oはɑ:の発音になる。さらにeをつけたnoteはnˈowtとなるが、うしろのeは発音しないサイレント。
⑥ coatの発音は kˈəutで、oaはəu(オウ)の発音になる。母音が2つあるが音は一音。
⑦ peaceの発音は、 pi:sでeaは長母音の i:(イー)と発音。一般にeaは i:(イー)となることが多い。最後のeはサイレント。
⑧ 子音には、2~3つがかたまりとなるクラスターがある。strikeはstrάɪkと発音し、strがクラスター、最後のeはサイレント。thoughtは、θɔːtと発音し、thとghがクラスター。thはθの発音、ghはサイレント。7文字の長い単語だが、母音がひとつで1音節である。
⑨シラブルが2つ以上ある単語は、どちらかにストレス(強調)があるので、どこがストレス部分かを確認する。beautiful はbeau-ti-ful で3音節。発音記号・読み方は /bjúːṭɪf(ə)l(米国英語), ˈbju:tʌfʌl(英国英語)/(ネットのweblio辞典)で、beauのeauはju:(ユー)と発音する長母音。ストレス(強調)はbeauにある。


英単語を実際に発音してみる 

 以上で、英単語のスペルと発音の概要が分かった段階で、実際にテキストを使って実践することにした。
実践というのは、英単語のスペルと発音を対比させることによって、どの発音がどの文字と対応するのか確かめることです。使ったテキストは ①「ドラゴン・イングリッシュ 必修英単語1000」(講談社)。この本は大学受験生のための英単語の有名な参考書で、受験によくでる1000の単語を収録し、成り立ち・覚え方・使い方を解説した本。
 前から持っていたが、あまり使わずに置いてあったもの。ひとつひとつの単語について、「覚え方」として「接頭辞」や「接尾辞」を含めて単語の構造を説明しおり、さらに「使い方」として詳しい説明がある。1ページに3単語を掲載しており、一つの単語と、その説明欄との間に仕切りがあるので、単語の下の空白欄に発音記号を書きこむことにした。ところが、ここで問題点が発生した。
音節(シラブル)の区切りが分からない
 単語の下に、発音記号が書いてあるのだが、音節の区切りが入っていない。おおまかには分るのですが、自分勝手に区切るわけにはゆきません。そこで頼ったのが前から持っていた②の「プログレッシブ英和中辞典」(小学館)。この辞典を開いてみると、単語のスペルの途中に中点が入っており、これが音節の区切りと思われる。因みに先ほどのbeautiful を引いてみると、beau・ti・ful となっているので間違いない。また、発音のアクセント記号はbeauの上に乗っている。

 以上で準備が整ったので、実践にはいることとした。まず一番簡単なindustryですが、音節(シラブル)の区切りは、in・dus・try です。「ドラゴン・イングリッシュ」では、indu(中に)+ str (築く)と分解していますが、「プログレッシブ英和」およびネットのWeblio では、音節が in・dus・try となっています。そこで、まず青ペンで in・dus・try と書き、その下に発音記号を書いて点線で結んでみました。すると、・dus・のu⇒ə、・try のy ⇒i に変化していることが分かります。


 次のappropriateは、音節がap・pro・pri・ateに別れ、下に発音記号を書いて対応させると、apのa⇒ə、proのo⇒ou、ateのa⇒əに変化していることが分かります。最後のeはサイレントで発音しません。この単語はアクセントが二か所あります。


 次のfortuneは、音節がfor・tuneに別れ、forのo⇒ˈɔː になり、tu⇒ tʃəに、neのeはサイレントです。


 次のconstructionは、音節がcon・struc・tion に別れ、conのo⇒ə、strucのu⇒ʌ、tion のti⇒ʃ、o⇒ə、と少し複雑な形になっています。

 以上ですが、こうした作業を続けてゆくと、英単語のスペルを見ただけで、この部分はあの発音だ! と感覚的に分かるようになり、ある程度発音が推測できるようになりました。
 ところで、ひとつの単語を書き終わったとき、必ず電子辞書かパソコン上の辞書で発音を聞きます。2~3回繰り返し聞いて、スペルと発音記号を確認します。スマホでも確認できますが、私の経験ではスマホは2回ほど繰り返すと止まってしまうようです。以上、私の経験です。こうした英単語のスペルにひそむ音符(音節)の秘密。もっと早く知りたかった。なお、この作業をおこなうにあたり、発音記号にいろいろなものがあって、どれを採用するか迷いました。私の書いている発音記号が必ずしも最適でないものがあるかも知れません。
 ここで取り上げた「英単語の語源図鑑」は、たまたま私が持っているので取り上げただけで、語源の本として推奨しているわけではありません。購入する場合は図書館などで現物を確かめてからにしてください。
 もう一冊の「ドラゴン・イングリッシュ必修英単語1000」(講談社)は、受験参考書として実績があり役立つ図書と思います。

追加参考ユーチューブ動画
大人のフォニックス 前編】Yumi's English Boot Camp
https://www.youtube.com/watch?v=ydCu7Pq2SH8

大人のフォニックス 後編】Yumi's English Boot Camp
https://www.youtube.com/watch?v=dMm7hrdHvK4 
  





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音符「帛ハク」 <しろぎぬ> と 「綿メン」「緜メン」「棉メン」「錦キン」

2025年01月27日 | 漢字の音符
 ハク・きぬ  巾部 bó

解字 「白(しろい)+巾(ぬの)」の会意形声。白い絹織物のこと。紙がなかった古代中国で、絹布は字や画を書く材料としても用いられた。
意味 きぬ(帛)。しろぎぬ。絹織物の総称。「帛書ハクショ」(絹に書いた文書や手紙)「布帛フハク」(布は麻・棉などの植物繊維の布、帛は絹織物をいう。併せて織物の総称。きれじ)「竹帛チクハク」(竹簡と帛書、両者とも書物となるので書籍のこと)「雁帛ガンパク」(帛の手紙を雁の足に結びつけて放つ。雁が運んでくる手紙)

「馬王堆漢墓帛書」(前漢・前196年~前180年頃製作)

イメージ 
 「しろぎぬ」
(帛・綿・緜・棉・錦)
音の変化  ハク:帛  メン:綿・緜・棉  キン:錦

しろぎぬ
綿[緜] メン・つらなる・わた  糸部 mián

解字 篆文は緜で、「系(糸がつながる)+帛(しろぎぬ)」の会意。絹織物をつくっている、つながった長い糸の意。転じて、つらなる意に用いられる。また、長い繊維のかたまり(真綿まわた)の意味でも使われる。のち、植物の木綿の実から製した「わた」にも用いる。現代字は、系⇒糸に変化した綿になった。緜は次の緜を参照のこと。
意味 (1)つらなる(綿なる)。長くつづく。「連綿レンメン」(長く続いて絶えない)(2)こまかい。「綿密メンミツ」(3)わた(綿)。まわた。きぬわた。「真綿まわた」((まゆ)を引きのばして作ったわた)(4)わた(綿)。きわた。わたの実から製したわた。「木綿モメン」「綿花メンカ
 メン・べン・わた  糸部 mián
解字 「系(糸がつながる)+帛(しろぎぬ)」の会意。絹織物をつくる、つながった長い糸の意。綿メンの本字。
「昭和17年6月17日、国語審議会は標準漢字表を、文部大臣に答申しました。標準漢字表は、各官庁および一般社会で使用する漢字の標準を示したもので、糸部に新字の「綿」が収録されていました。その一方、旧字の「緜」は標準漢字表には含まれていませんでした。昭和17年12月4日、文部省は標準漢字表を発表しましたが、そこでも新字の「綿」だけが含まれていて、旧字の「緜」は含まれていませんでした(安岡 孝一「人名用漢字の新字旧字・綿と緜」)。以後、現在の常用漢字表まで「綿」が使用されている。
意味 (1)綿メンに同じ。現在、緜は使用されない。(2)中国の地名。「緜山メンザン」(山西省にある山)「緜上メンジョウ」(山西省にある県の名)
 メン・わた  木部 mián

綿(棉)の実(七十二候「綿柎開(わたのはなしべひらく」)
解字 「木(き)+帛(=綿。まわた)」の会意。真綿(まわた)のとれる木(実際は多年草)の意で、わたのき(アオイ科の多年草)及び、きわた(木綿)を表わす。常用漢字でないため、代わりに糸へんの綿が使われることが多い。
意味 わた(棉)。(1)アオイ科の多年草。種子をとりかこむ白毛から、きわたができる。「棉花メンカ」(わたのきに咲いた花。種子のまわりに白い繊維がふっくらと付く=綿花)「棉実油メンジツユ」(きわたの種子から絞った油=綿実油)(2)もめんわた。きわた(木棉)。日本で木棉が栽培され一般的になるのは戦国時代後期からで、江戸時代に入ると急速に栽培が拡大し綿(棉)織物が普及した。
参考  
 キン・にしき  金部 jǐn
解字 「帛ハク(きぬ織物)+金キン(黄金)」の会意形声。帛は「白+巾」で白い絹布のこと。錦は金糸(金箔きんぱくを和紙にはりつけ細く切って縒った糸)や色糸を織り込んだ美しい模様を織り出した絹織物。また、重さが黄金と等しい値打ちがある色糸の絹織物との説もある。この字の音符は「金キン」で部首も金。参考のため重出した。
意味 (1)にしき(錦)。金糸や銀糸・色糸などを織り込んだ美しい織物。「錦旗キンキ」(錦のみはた。①官軍の標章。②自分の行為・主張を権威づけること)「錦織部にしごりべ」(大和朝廷で錦などを織ることに従事した職業部の一つ)(2)にしきのように美しい。「錦絵にしきえ」「錦秋キンシュウ
<紫色は常用漢字>

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音符「至シ」<いたりてとどまる>「鵄シ」「室シツ」「桎シツ」「蛭シツ」「窒チツ」「膣チツ」「姪テツ」「鰘むろあじ」と「致チ」<いたらせる>「緻チ」

2025年01月25日 | 漢字の音符
 シ・いたる  至部  zhì

解字 甲骨文字から篆文まで「矢が下方に進むさま+ 一 印(地面の線)」の会意。矢が地面に届いたさまで、いたる意。隷書(漢代)で上部が変形し下部は土になり、現代字はその流れをうけた至になった。矢が「届く・至る」意。至を音符に含む字は、「いたりとどまる」の他、「ぴったりつく」イメージを持つ。
意味 (1)いたる(至る)。とどく。「冬至トウジ」「夏至ゲシ」「必至ヒッシ」(必ずいたる)「開戦は必至だ」(2)このうえもない。きわめて。「至言シゲン」「至近シキン」「至急シキュウ

イメージ 
 「いたりとどまる」(至・室・鰘・窒) 
  いたりて「ぴったりつく」(桎・蛭・姪)
 「形声字」(膣・鵄)
音の変化  シ:至・鵄  シツ:室・桎・蛭  チツ:窒・膣  テツ:姪  むろあじ:鰘

いたりとどまる
 シツ・むろ  宀部 shì 
解字 「宀(たてもの)+至(いたりとどまる)」の会意形声。人が至りとどまる建物。通常は人のすむ住宅の家屋をいい、さらに家の各部屋の意味で用いる。また、大きな家屋に住む一族、その建物の宮殿などをいう。日本では、周囲を壁でかこんだ「むろ」の意味もある。
意味 (1)へや。「居室キョシツ」(居間)「教室キョウシツ」「温室オンシツ」(2)大きな家。宮殿。大きな家にすむ一族。「宮室キュウシツ」(宮殿)「皇室コウシツ」(天皇を中心とする一族)「王室オウシツ」(国王一家)(3)いえ。「室家シッカ」(いえ。家族)(4)(妻がすむ部屋から)つま。夫人。「正室セイシツ」(⇔側室ソクシツ)「令室レイシツ」(他人の妻の尊敬語)(5)[国]むろ(室)。周囲を壁でかこんだ部屋。山腹などの岩屋。「氷室ひむろ」(氷を夏まで貯蔵する部屋)
<国字> むろあじ  魚部 shì
解字 「魚(さかな)+室(むろ)」の会意。室津むろつ(兵庫県たつの市にあり播磨灘に面する港町・漁港)で多く漁獲される魚から名付けられたと言われる。

鰘(むろあじ)の干物(「沼津のひもの」より)
意味 むろあじ(鰘)。室鯵とも書く。アジ科の魚。マアジより少し大形。開き(干物)として賞味される。
<国字> むろ  木部 shǐ
解字 「木(き)++室(むろ)」の形声。「むろ」という名の木。ヒノキ科のビャクシン属常緑小・高木ネズ(杜松)の古名。樹脂が多く耐朽性が高いため、床柱のような装飾材に利用され、また盆栽として用いられる。

ネズ(杜松)の木(榁)。②榁(むろ)の変木
意味 (1)ヒノキ科の常緑小高木のネズ(杜松)の古名。ねず(杜松)。むろ(榁)。むろのき(榁木)。もろのき(榁木)とも。(2)地名。「榁木峠むろのきとうげ」(大阪から奈良に越える暗峠の延長線上にある奈良県の峠)(3)姓。「榁木むろき
 チツ・ふさがる  穴部 zhì・dié  
解字 「穴(あな)+至(いたりとどまる)」の会意形声。穴の奥で行きづまって先に進めないこと。
意味 (1)ふさがる(窒がる)。ふさぐ。「窒息チッソク」「窒欲チツヨク」(欲望をふさぐ)「窒塞チッソク」(ふさがること。ふさぐこと)(2)元素の名。「窒素チッソ」(空気の8割を占める気体元素。原子番号7、元素記号Nの元素。窒素だけでは窒息してしまうので付けられた)
 テツ・としより  老部 dié
解字 「老(としより)+至(いたる)」の会意形声。老年に至る意で、老人の意。
意味 (1)老人。八十歳の老人。また、七十・六十歳の老人。「テツガイ」(老人と若者)「孩ガイテツ」(若者と老人)(2)おいる。

ぴったりつく
 シツ・あしかせ  木部 zhì
解字 「木(き)+至(ぴったりつく)」の会意形声。身体にぴたりと付いて固定する木製の足かせ。[説文解字]に「足の械(かせ)也(なり)」とある。

(あしかせ)(ウィキペディア「足枷」より)
意味 (1)あしかせ(桎)。足枷とも書く。罪人の足にはめる刑具。2個の半円形の切り込みがある2枚の厚い板を組み合わせると足を拘束することが出来る器具。手にはめる刑具を梏コクという。「桎梏シッコク」(①足かせと手かせ、②自由を束縛するもの)(2)あしかせをはめる。「窮桎キュウシツ」(桎をはめられて窮(きわま)る)
 シツ・テツ・ひる  虫部 zhì・dié
解字 「虫(むし)+至(ぴったりつく)」の会意形声。人の皮膚にぴったりと付いて血を吸うヒル。
意味 ひる(蛭)。他の動物に吸いついて血を吸うヒル類の総称。「肝蛭カンテツ」(山羊・牛などの草食獣と人の肝臓に寄生する吸虫)「蛭子ひるこ」(①日本神話でイザナギ・イザナミの間に生まれた子。3歳になっても脚が立たず海に流されたと伝える。②七福神の一人=恵比寿)
 テツ・めい  女部 zhí
解字 「女(おんな)+至(ぴったりつく)」の会意形声。ぴったりとつきそう女。もと、諸侯に嫁ぐ婦人にはその父の兄弟の子(女)がつきそう習慣があり、この女を意味した。転じて父の兄弟姉妹の子(娘)をいうようになった。また、女性からみた父の兄弟の子(娘)にも言う。
意味 (1)めい(姪)。兄弟姉妹の娘。「姪甥テツセイ」(めいとおい)「姪孫テッソン」(兄弟姉妹の孫)(2)つきそい。古代の嫁入りで正妻に従ってゆく女性。

形声字
 チツ  月部にく zhì
解字 「月(からだ)+窒(チツ)」の会意形声。女性の性器を膣チツという。
意味 ちつ()。女性の性器。子宮から体外に通じる管。
 シ・とび  鳥部 chī
解字 「鳥(とり)+至(シ)」の形声。シは鴟(とび)に通じ、「とび」をいう。鴟の異体字。
意味 (1)とび(鵄)。海辺などにすみ、死んだ小動物などを食べる。はばたかないで輪をえがいて空中をとび餌をみつける。「鵄尾シビ」((瓦葺屋根の大棟の両端につけられる飾り。訓で「とびのお」と読むが、実際は魚の尾を象ったものといわれる。=鴟尾)(2)姓。「鵄崎とびさき

東大寺大仏殿の鴟尾(鵄尾シビ(ブログ「家の建人」より)

    チ <いたらせる>
 チ・いたす  至部 zhì            

解字 金文は「人(ひと)+至(いたりとどまる)」の会意で、人をいたらせること。自動詞の至(いたる)に対して、他動詞(いたらせる)として用いる。篆文で、人⇒夂(下向きのあし)になり歩いていたらせる、さらに現代字で夂⇒攵ボク(=攴。うつ・たたく)に変化した致になった。[角川新字源]は、「夂を攵に書き誤った俗字」とするが、文字どおりに解釈すると、たたいて至らせるとなる。また、相手をこちらにいたらせる意も生じた。
意味 (1)いたす(致す)。いたらせる。「致死チシ」(死にいたらせる)「致命傷チメイショウ」(命を終わりにいたらせる傷)(2)いたす(致す)。こちらにいたらせる。まねきよせる。「誘致ユウチ」(誘いよせる)(3)きわめる。行きつく。「合致ガッチ」 (4)気持ちのいたるところ。おもむき。「風致フウチ」(自然のおもむき)「雅致ガチ」(風雅なおもむき)

イメージ 
 「いたらせる」(致・緻)
音の変化  チ:致・緻

いたらせる
 チ・こまかい  糸部 zhì  
解字 「糸(いと)+致(いたらせる)」の会意形声。糸と糸の間を隙間なくつめて織ること。
意味 こまかい(緻かい)。目がつまって隙間がない。きめがこまかい。「緻密チミツ」「精緻セイチ
<紫色は常用漢字>

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音符「前ゼン」<まえ・切りそろえる>と「煎セン」「箭セン」「剪セン」「翦セン」「揃セン」「彅なぎ」

2025年01月23日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ゼン・セン・まえ  刂部 qián・jiǎn


上は前、下は舟
解字 前ゼンの金文は「あし(止の古形)+舟(中空の器。ここでは、たらい)」の形。舟(たらい)に足をつけて洗い清めたのち出発する形で、「まえにすすむ」意味を表わす。篆文第一字はゼンで「止(あし)+舟(たらい)」で金文と同じ形。第二字で「ゼン+刂(刀)」が出現した。この字は、洗った足の爪を刀で切りそろえる意であるが、従来通り「まえ」の意で使われた(切りそろえる意は、新たに剪センが作られた)。旧字の前ゼンは月の部分が舟月(ふなづき。舟が月に変化した形)であるが、現代字は[舟月]⇒[お月さま]の月になった。「前」の意味は、前にすすむ意から、身体の正面の「前」になる他、時間のあとさき(前後)の「前」の意ともなる。
意味 (1)まえにすすむ。(2)(うしろに対する)まえ(前)。「前進ゼンシン」「前衛ゼンエイ」(前方の護衛)(3)(時間的に)まえ(前)。過去。「前例ゼンレイ」「前科ゼンカ」(以前に法を犯して刑罰を受けている)(4)(順序としての)まえ(前)。「前座ゼンザ」(5)それ以前にまず。あらかじめ。「前納ゼンノウ」(6)[国]まえ(前)。①立派な状態。「男前おとこまえ」「腕前うでまえ」②わりあて。「五人前ごにんまえ

イメージ 
 「まえ」
(前・彅)
  爪を切りそろえる意から「切りそろえる」(剪・箭・翦)
  切りそろえる意から「そろえる」(煎・揃)
音の変化  ゼン:前  セン:剪・箭・翦・煎・揃  なぎ:彅

まえ
<国字> なぎ  弓部 jiǎn
解字 「弓(ゆみ)+前(まえ)+刀(かたな)」の会意。弓を持つ源義家(八幡太郎)の前を刀で草を薙ぎ払ったという伝承に基いて出来たといわれる字。秋田県仙北市にある田沢湖地区の草彅姓をもつ旧家に伝わる伝承によると、「源義家がこの地に来られた時、草彅家の先祖が義家(弓の名手)を案内して山道を越えた。先祖はをもつ義家のを歩きで草を薙ぎはらいながら案内して山道を越えることができた。そこで源義家から草という姓を賜った」(NHK日本人のおなまえ2018.3.15放送)
意味 なぎ(彅)。薙ぎ、とも書く。姓に用いられる字。「草彅くさなぎ

切りそろえる
 セン・きる 刀部 jiǎn  
解字 「刀(かたな)+前の旧字(切りそろえる)」の会意形声。前は、もともと刀で端をきりそろえる意だが、前が「まえ」の意で使われたので、刀をつけて元の意味を表した。そのため、この字には刀(刂)が二つある。
意味 (1)きる(剪る)。たつ。はさみや鎌で端をきりそろえる。「剪定センテイ」(植え木の刈り込み)「剪紙センシ」「剪裁センサイ」(①布などを裁ちきる。②文章を手入れする)(2)はさみ。「剪刀セントウ」(はさみ)
        中国の伝統的な民間芸術の切り絵細工「剪紙」

 セン・や  竹部 jiàn
解字 「竹(たけ)+前の旧字(切りそろえる)」の会意形声。長さを切りそろえた竹の矢。
意味 や(箭)。やだけ。しのだけ。「弓箭キュウセン」(弓と矢、転じて武器・武芸一般)「箭羽センウ」(矢の羽)「箭頭セントウ」(やじり)
 セン・きる  羽部 jiǎn
解字 「羽(はね)+前の旧字(きりそろえる)」の会意形声。羽を切りそろえること。矢羽根を作る作業と思われる。転じて、ほろぼす意ともなる。また、剪センに通じ、はさみの意味もある。
意味 (1)きる(翦る)。切りそろえる。「翦落センラク」(髪を切って僧侶になる)「翦裁センサイ」(草木をきりそろえる。文章に手を入れて直す)「翦草除根センソウジョコン」(草をきり根を除く。問題を根本から解決する)(2)ほろぼす。「翦夷センイ」(ほろぼし平らげる)「翦伐センバツ」(討伐する)(3)(剪と通じ)はさみ。「翦刀セントウ

そろえる
 セン・いる  灬部 jiān    
解字 「灬(火)+前の旧字(そろえる)」の会意形声。火力の熱を物に均等に当るように熱すること。また、煮つめることを言う。
意味 (1)いる(煎る)。鍋で食品の水気がなくなるまで、まんべんなく熱すること。「煎り豆」「煎り胡麻」「煎餅センベイ」(薄くのばした焼菓子)(2)せんじる(煎じる)。にる。につめる。「煎じ薬せんじぐすり」「煎茶センチャ」(茶葉を湯で煎じる。また、それに使う茶葉)
 セン・そろう・そろえる  扌部 jiǎn・jiān
 解字 「扌(手)+前の旧字(そろえる)」の会意形声。本来はハサミなどで切りそろえる意であるが、日本では手で物をそろえる、ならべる、整える等の意に使う。
意味 (1)[中国]きる。たつ。きりそろえる。(2)[国]そろう(揃う)。そろえる(揃える)。ならべる。整える。準備ができる。「耳を揃える」(小判の縁(耳)を揃えることから、金額を不足なくとり揃える)(3)[国]そろい(揃い)。「力作揃い」
<紫色は常用漢字>

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音符 <ひしゃくからマスへ>「斗ト」「蚪ト」「料リョウ」と「升ショウ」と「昇ショウ」「陞ショウ」「枡ます」「呏ガロン」 

2025年01月21日 | 漢字の音符
   ト <ひしゃくからマスへ>
 ト・ます  斗部とます dòu・dǒu 


 上は斗、下は升ショウ        
解字 斗の甲骨文は、下の甲骨文の升(柄杓の形)から中身の液体(一点)と、こぼれる液体を表す二点を取ったかたちの象形。金文も升は中に入っている液体(点)があるのに対し、斗は点がない。篆文は升の篆文から一画少ない形だが、隷書(漢代)への変化をへて、さらに楷書は斗になった。意味は升の10倍の容積を表す。また、もとが柄のあるひしゃくの形の象形のため、北斗七星は、その七つの星の配置が「ひしゃく」の形をしているところから名づけられた。

①春秋時代の銅斗。この時代は柄がついている(湖北省宜城市博物館所蔵)②一斗枡(いっとます)と手前の一合枡・桝かき棒(関ケ原町歴史民俗資料館蔵)
時代や国で違う斗の容量
 1斗は10升、1升は10合という関係は、日本でも中国でも同じである。しかし、実際の容量は国によりまた時代によって変化している。ウィキペディアの「斗」によると、日本では明治24年に1升=約1.8リットルと定められたので、1斗は18リットルとなる。(なお日本の奈良時代の1升は現在の1升の0.4升にあたると澤田吾一氏が推定している。したがって1斗は0.4升×10=4升=7.2リットル)
 一方、中国では現在、1升=1リットルと定められているので、1斗は10リットルとなる。しかし、時代によって変遷し、周代は1斗が1.94リットル、⇒秦代3.43リットル⇒後漢1.98リットル、⇒魏・西晋2.02リットル⇒隋・唐5.94リットル⇒明代10.74リットルとなっている(以上、ウィキペディア)。したがって中国の古代文献の斗は、今の日本の斗(18リットル)でなく、隋唐の前は、1斗が約2リットル(日本の1升程度)で換算する必要がある。中国古代の「斗酒トシュ」は日本の1升酒の感覚であろう。
意味 (1)容量の単位。1斗は18リットル(明治24年以降の日本)。(2)とます(斗)。ます(斗)。液体や穀物を量る器。もと柄があったが、漢以降はなくなった。「斗量トリョウ」(ますで量る)「斗掻(とか)き」(升に盛った米などを平らにならす棒)「斗酒隻鶏トシュセキケイ」(1斗の酒と1羽の鶏。魏の曹操が友人の墓を祭った時の供物)「斗酒百篇トシュヒャッペン」(1斗酒を飲みながらたくさんの詩をつくること)(3)ひしゃく。(4)ひしゃくの形をしたもの。「北斗七星ホクトシチセイ」(天の北極につらなる大熊座の柄杓形の七つ星)
参考 斗は部首「斗と・とます」になる。漢字の右辺について「ひしゃく」の意味を表す。常用漢字で3字、『新漢語林』で11字が収録されている。主な字は以下のとおり。
 (部首):紫色は常用漢字
 アツ・めぐる(斗+倝の会意)
 カイ・さきがけ(斗+音符「鬼キ⇒カイ」)
 シャ・ななめ(斗+音符「余ヨ⇒シャ」)
 シン・くむ(斗+音符「甚ジン」)
 リョウ・はかる(斗+米の会意)
 
イメージ 
 「ひしゃく・ます」
(斗・蚪・料)
音の変化  ト:斗・蚪  リョウ:料

ひしゃく・ます
 ト・トウ  虫部 dǒu
解字 「虫(むし)+斗(ひしゃく)」 の会意形声。ひしゃくの形に似た虫(両生類)のオタマジャクシ。春秋時代の銅蚪は、柄がつき下部が丸いかたちをしており、ひっくり返した形は、おたまじゃくしの頭と尾に似ている。

オタマジャクシ(「オタマジャクシの上手な飼い方」より)
意味 「蝌蚪カト」(おたまじゃくし)に用いられる字。蝌も、おたまじゃくしの意。「蝌蚪文字カトモジ」(中国の古代文字のひとつ。その書体がおたまじゃくしに似ている)
 リョウ・はかる  斗部 liào
解字 「米(こめ)+斗(ます)」の会意。穀物をざらざらと斗(ます)に落とし入れてかさを量ること。
意味 (1)はかる(料る)。「料金リョウキン」(はかった量に見合うお金)(2)おしはかる。「料簡リョウケン」(推しはかり考えをめぐらす)(3)もとになるもの。「衣料イリョウ」「材料ザイリョウ」「料理リョウリ」(材料を調理すること)
<参考>
 カイ・さきがけ  鬼部 kuí
解字 「斗(ひしゃく)+鬼(=傀。おおきい)」の会意形声。音符は鬼キ⇒カイ。大きな柄杓(ひしゃく)の意。大きな柄杓から天空の柄杓である大熊座の北斗七星に当て、特に枡の部分にあたる4つの星をいう。また、枡の部分の第一星を魁星カイセイと呼んだことから、さきがけの意となった。さきがけは先頭に立つ意であり、かしら・首領、すぐれる意となる。
北斗七星
意味 (1)大きなひしゃく。(2)おおきい。(3)北斗七星。「天魁テンカイ」(北斗七星)「魁星カイセイ」(北斗七星の第一星)(4)さきがけ(魁)。先頭に立つ。(5)かしら(魁)。首領。「首魁シュカイ」(6)すぐれたもの。「魁士カイシ」(すぐれた男子)
※この字の音符は「鬼キ⇒カイ」であるが参考のため重出した。

  ショウ <ひしゃくからマスへ その2>
 ショウ・ます  十部 shēng

解字  甲骨文の升(柄杓ひしゃくの形)は中身の液体(一点)と、こぼれる液体二点を描いたかたちの象形。金文は中に入っている液体(点)を入れている。篆文以降は特異な変化をし、隷書(漢代)をへて現代字は升になった。升は柄杓(ひしゃく)の象形から変化したかたちで、容量の単位を表す。
 升は中国・日本とも柄のないマスの意となっており、1升の容量は時代によって変遷があるが、10合が1升、10升が1斗となる比率は変わらない。升はもと柄杓の意味であり、液体などを中に入れてすくいあげるので、中国で「あがる・のぼる」意で使われ、昇の原字。

升の本来の形である柄杓(ネットのアンティーク商品より)

中国清代の升(ます)(中国のネットから)
http://www.360doc.com/content/20/0715/10/15449255_924337784.shtml#google_vignette
意味 (1)ます(升)。(2)物の容量や容積をはかる器。現代日本の1升は約1.8リットル。「升目ますめ」(①升ではかった量。②格子状のかたち)「升酒ますざけ」「升席ますせき」(四角に仕切った見物席)(3)容積の単位。1升は10合。(4)のぼる。あがる。「上升ジョウショウ」(=上昇)

イメージ 
 「ます・容量の単位」
(升・枡・呏)
 ひしゃくは物を中に入れてすくいあげるので「あがる」(昇・陞)
音の変化  ショウ:升・昇・陞  ます:枡  ガロン:呏

ます・容量の単位
<国字> ます  木部 shēng
解字 「木(き)+升(ます・容量の単位)」 の会意。容量の単位である木製のます。
意味 (1)ます(枡)。容量をはかる正方形の器。(2)ます(枡)のかたち。「枡形ますがた」(①枡のような四角い形。②城の一の門と二の門の間の四角い空き地。敵の進撃をにぶらせる。)「枡席ますせき」(四角に仕切った見物席=升席)
 ガロン  口部 shēng
解字 「口(くちまね)+升(容量の単位)」の会意。容量の単位である升ショウの英語・ガロン(gallon)を口まねした字。
意味 ガロン(呏)。ヤード・ポンド方法の体積の単位。1ガロンはイギリスで約4.5リットル、アメリカと日本で約3.8リットル。

あがる
 ショウ・のぼる  日部 shēng
解字 「日(太陽)+升(あがる)」 の会意形声。日が上にあがる意。
意味 (1)のぼる(昇る)。上にあがる。「上昇ジョウショウ」「昇天ショウテン」「昇仙ショウセン」(天にのぼって仙人になる)「昇華ショウカ」(①個体が直接に気体になること。②欲求が芸術的・宗教的活動に置き換わること) (2)官位や序列があがる。「昇進ショウシン」「昇格ショウカク
(3)高い状態で平らか。「昇平ショウヘイ」(世の中がおだやかに治まる)
 ショウ・のぼる  阝部 shēng
解字 「阝(階段)+升(あがる)+土(地上)」の会意形声。阝(こざと)は丘と階段の意味があるが、ここでは階段の意。陞は地上から階段をのぼる意。
意味 (1)のぼる(陞る)。高いところへあがる。あげる。上へ進む。「陞降ショウコウ」(のぼりくだり=昇降)「陞車ショウシャ」(車にのぼる)(2)昇格する。官位がのぼる。「陞叙ショウジョ」(上級の官位に叙せられる=昇叙)「陞官ショウカン」(昇任)

<紫色は常用漢字>

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音符「幺ヨウ」<①糸たば、②糸のさき>と「幼ヨウ」「窈ヨウ」「拗ヨウ」「黝ユウ」「幽ユウ」「幻ゲン」「後ゴ」

2025年01月19日 | 漢字の音符
  改訂しました。
 ヨウ  幺部いとがしら yāo     

糸の束(麻糸。Chuko Online より)
解字 甲骨文から篆文まで糸束(いとたば)を描いた象形。糸束は糸を枠に巻き取ってからはずし、保存の為ねじった形。隷書レイショ(漢代)で糸束のふたつの丸印に隙間ができた形になり現代字は幺になった。なお幺の意味は糸束でなく、糸たばの先の細い糸から、ちいさい・ほそい・かすかの意を表わす。幺は部首となるが、音符となるとき、「糸・糸たば」「かすか・わずか」のイメージをもつ。
意味 (1)ちいさい。「幺微ヨウビ」(ちいさい。価値のないつまらないこと)(2)おさない。(=幼)。「幺弱ヨウジャク」(おさなくかよわい)
参考 幺は部首「幺いとがしら」になる。漢字の左辺に付き、ちいさい・かすか・および糸束の意を表す。おもな字は、このページに収録している「幼ヨウ」「幽ユウ」「幻ゲン」のほか「幾イク」の4字である。

イメージ
 「かすか・わずか」
(幺・幼・窈・黝・幽・後)
 「糸・糸たば」(幻・拗)

音の変化  ヨウ:幺・幼・窈・拗  ユウ:黝・幽  ゲン:幻  ゴ:後

かすか・わずか
 ヨウ・おさない  幺部 yòu・yào

解字 甲骨文は「力(耜スキ)+幺(ヨウ)」の形声字。スキは足で踏み込んで土を掘り起こす農具で、[甲骨文字辞典]は「何らかの農耕儀礼の表現であろう」とする。金文は幺が耜スキの上に重なる形だが、意味は不明。篆文にいたり[説文解字]は、「少(わかい)也。幺に従い力に従う」。として幼い意味になった。これは力リョク・リキが耜(スキ)から力(筋肉の力ちから)の意味に変化したので、意味も力が少ない幼児の意味に変化したと思われる。
意味 おさない(幼い)。年がすくない。じゅうぶんではない。「幼少ヨウショウ」「幼児ヨウジ」「幼稚ヨウチ」「幼虫ヨウチュウ」「幼魚ヨウギョ
 ヨウ   穴部 yǎo
解字 「穴(横穴)+幼(ヨウ=幺ヨウ。かすか。わずか)」の会意形声。横穴が奥深く光がわずかで薄暗いさま。
意味 (1)奥深い。薄暗い。ひそかな。かすかな。「窈然ヨウゼン」(奥深いさま)(2)奥ゆかしい。しとやか。「窈窕ヨウチョウ」(美しくたおやか)
 ユウ・あおぐろ  黑部 yǒu・yī
解字 「黑(くろ)+幼ヨウ⇒ユウ(=幺ヨウ。かすか)」の会意形声。幼は幺に通じ、かすかの意。かすかな黑の意で、青みがかった黒色をいう。発音はヨウ⇒ユウに変化した。
意味 (1)あおぐろ()。青みがかった黒。「ユウゼン」(青黒いさま。樹木が茂ってうすぐらいさま)「黝黝ユウユウ」(青黒いさま。樹木が茂ってうすぐらいさま)(2)くろい。「黝堊ユウアク」(建物の黒塗りと白塗りの部分。堊は白塗りの土)
 ユウ・かすか・くらい  幺部 yōu

解字 甲骨文は「火(ひ)+幺幺(ユウ)」の会意形声。甲骨文字は「黒色の意味で用いられており、幺(糸束)を火で燻(いぶ)した色とされる」(甲骨文字辞典)。金文は「幽衡ユウコウ」(黒色に近い佩玉ハイギョク[玉の飾り])の意味がある」(字通)。篆文になると火が山の形に変化したので[説文解字]は「隱(かくれ)る也(なり)。山の中の幺幺ユウ(ほのぐらい)に従うとし、かくれる意とした。したがって意味は、かすか・くらい・かくれる・死後の世界、などとなる。
意味 (1)かすか(幽か)。くらい(幽い)。奥深い。「幽玄ユウゲン」(奥深く味わいに富む)「幽谷ユウコク」(2)あの世。死後の世界。「幽界ユウカイ」「幽霊ユウレイ」(①死んだ人の魂。②実際には無いのにあるように見せかける。幽霊会員)(3)かくれる。ひそむ。とじこめる。「幽囚ユウシュウ」「幽閉ユウヘイ」「幽客ユウキャク」(俗世を離れて暮らす人。=幽人)
 ゴ・コウ・のち・うしろ・あと・おくれる   彳部 hòu

解字 甲骨文第一字は「幺(わずか)+夂(下向きの足⇒もどる)」の会意。夂は下向きの足で、ここでは(上に行った足が)もどる意。これに幺(わずか)がついて、わずかにもどる意となり甲骨文では時間的な先後の「のちに」の意で使われる。甲骨文第二字は、進行を表す彳(テキ)が付いて意味を強めたかたち。金文以下現代字まで彳が付いた「後」となっている。金文では「後人コウジン」(子孫)「後嗣コウシ」(後代の子孫)の意味などもある。先に対する「のち」の他、集団や列のうしろ・おくれる意ともなる。
意味 (1)のち(後)。あと(後)。「後悔コウカイ」「後日ゴジツ」(2)後の世代。「後世コウセイ」(後の世。後の子孫)「後代コウダイ」(後の時代)(3)うしろ(後)。うしろのほう。おくれる(後れる)。「後援コウエン」「背後ハイゴ」「後継者コウケイシャ」 

糸・糸たば
 ゲン・まぼろし  幺部 huàn

解字 金文は幺(糸たば)が逆さになった形を意味する象形。糸たばの先端が下にたれさがり逆さの形を意味する。篆文は機織りの道具のひ(予=杼。解字の右端)が逆さになった形。正常な杼(予)は右の予の篆文である。幻は糸たばや杼が逆さになっており、一瞬、正常なかたちと錯覚するので、まぼろし・まどわす意となる。現代字は金文の形が変化した幻になった。
意味 (1)まぼろし(幻)。「幻影ゲンエイ」「幻覚ゲンカク」(2)まどわす。たぶらかす。「幻惑ゲンワク」「幻術ゲンジュツ」「幻聴ゲンチョウ
 ヨウ・オウ・ねじる・ねじける・すねる・こじれる  扌部 niù・ào・ǎo・yù
解字 「扌(手)+幼(ヨウ=幺ヨウ(糸たば))」の形声。幼(ヨウ)はここで幺(ヨウ・糸たば)の意。拗は手で糸たばをねじること。人に移して、すねる・ひねくれる意ともなる。
意味 (1)ねじる。(拗る)。ねじれる(拗れる)。こじれる(拗れる)。「拗音ヨウオン」(キャ・キョなど、仮名を小さく添える音)(2)すねる(拗ねる)。ねじける(拗ける)。ひねくれる。「執拗シツヨウ」(ねばり強くしつこい)
<紫色は常用漢字>

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音符「鬼キ」<おに> と「愧キ」「傀カイ」「嵬カイ」「隗カイ」「塊カイ」「魁カイ」「槐カイ」「瑰カイ」「蒐シュウ」

2025年01月17日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 キ・おに  鬼部 guǐ

解字 甲骨文第一字と金文は「田(仮面)+人(ひと)」の象形。おそろしい顔の面をつけた人を表す。また、甲骨文第二字は、〒(=示。祭壇)を付けており神の前で仮面をつけて行なう祭祀を示している。おそらく鬼やらい(悪鬼を祓い疫病を除く)のような祭祀であろう。篆文から尻尾のような形でムが加わったが、これは死者を意味する符号とされる。鬼の意味は多様であるが、古代文字で表されているのは、人に災いをもたらす悪霊であろう。そのほか、鬼は死者の魂、また、神として祀られた霊魂などの意味がある。
大津絵の鬼
意味 おに(鬼)。(1)人の死後、霊魂が形をなして現れたもの。亡霊。死者の魂。「鬼哭キコク」(死者の霊が恨めしげに哭くこと)「鬼雨キウ」(死者の涙のような雨。また大雨)「鬼籍キセキ」(寺院で信徒の死者の名などを記した帳簿。過去帳)(2)ひとがみ。神として祀られた霊魂。「鬼神キシン」(3)強く大きい者。人間わざと思えない。「鬼才キサイ」(4)勇猛な者。「鬼将軍おにしょうぐん」(5)残忍な者。「鬼婆おにばば」「鬼畜キチク」(①残酷な行いをする者。②鬼と畜生)(6)大きくいかめしいものの形容。「鬼百合おにゆり」(7)[国]おに(鬼)。想像上の生物。角が生えふんどしをしている。「鬼が島」(鬼が住んだという島。「一寸法師」「桃太郎」で知られる)
参考 鬼は部首「鬼おに・きにょう」になる。漢字の左辺や右辺(旁)また下部に付き、「おに」「霊的存在」などを表す。約14,600字を収録する『新漢語林』では22字が収録されている。
常用漢字 5字
 (部首)
 コン・たましい(鬼+音符「云ウン」)
 シュウ・みにくい(鬼+音符「酉ユウ」)
 ミ・もののけ(鬼+音符「未ミ」)
 マ・(まもの)(鬼+音符「麻マ」)
常用漢字以外の主な字
 バツ・(ひでり)(鬼+音符「犮ハツ」)
 ハク・たましい(鬼+音符「白ハク」)ほか 

イメージ  
 「おに」
(鬼・愧・傀) 
  強く大きい鬼から「おおきい」(嵬・隗・槐・魁)
  「形声字」(塊・蒐・瑰)
音の変化  キ:鬼・愧  カイ:傀・槐・嵬・隗・魁・塊・瑰  シュウ:蒐

おに
 キ・はじる  忄部 kuì
解字 「忄(心)+鬼(おに)」の会意形声。この鬼は人に害を与える邪悪な鬼。邪悪な鬼が自分の行いをはずかしく思うこと。
意味 はじる(愧じる)。はじ。自分の見苦しい行ないをはずかしく思う。「慙愧ザンキ」(はじいる)「愧死キシ」(恥じ入って死ぬ。死ぬほどはずかしい)
 カイ  イ部 guī・kuǐ
解字 「イ(ひと)+鬼(おに)」の会意形声。鬼が人に憑依ヒョウイ(とりつく)すること。人が鬼に操られるように動くこと。あやつり人形をいう。また、おおきい人の意もある。

傀儡師くぐつし(大江匡房(まさふさ)の「傀儡子記」より)
意味 (1)くぐつ。でく。あやつり人形。「傀儡カイライ」(他人に操られる者)「傀儡くぐつ」(操り人形)儡ライは「イ(ひと)+畾(ライ=雷)」で、雷(かみなり)のように大声を出すが中身はない人で、あやつり人形のこと)「傀儡師カイライシ・くぐつシ」(各戸を回り人形を操って金品をもらった者。人形まわし)(2)おおきい。りっぱ。「傀偉カイイ

大きい
 カイ  山部 wéi
解字 「山(やま)+鬼キ⇒カイ(大きい)」の会意形声。高くおおきな山を嵬カイという。
意味 高くおおきい。「嵬峨カイガ」(高くけわしい山)「崔嵬サイカイ」(高くそばだつ。崔は高くけわしい意)
 カイ  阝部 wěi・kuí
解字 「阝(おか)+鬼キ⇒カイ(おおきい)」の会意形声。大きなけわしいおかを隗カイといい、けわしい意。
意味 (1)けわしい(隗しい)。たかい。「隗然カイゼン」(けわしいさま)(2)人名。「郭隗カクカイ」(中国・戦国時代の燕の人)「隗カイより始めよ」(燕の昭王に賢者の求め方を問われ、賢者を招きたければ、まず凡庸な私(隗)を重く用いよ、そうすれば自分よりすぐれた人物が自然に集まってくる、と答えたという「戦国策」の故事から、大事業をするには、まず身近なことから始めよ。また、物事は言い出した者から始めよということ)
 カイ・えんじゅ  木部 huái
解字 「木(き)+鬼キ⇒カイ(大きい)」の形声。中国原産で大樹となる槐カイ(えんじゅ)をいう。成長して大木となり庭園や街路樹として植えられ、夏に木陰を提供する。日本では鬼の出入りするといわれる屋敷内の鬼門(東北の方角)に植えて災厄をさける木とされた。

①槐(えんじゅ)(中国のウィキペディアより)槐の花(「季節の花300より)
意味 (1)えんじゅ(槐)。槐樹カイジュ。マメ科の落葉高木。庭園や街路樹に植えられる。大木に育つ。「槐黄カイオウ」(槐の黄色い花が咲くころ。7~8月)(2)周代の朝廷で三本の槐樹を植え、この樹下に座ることのできるのは最高位の三人の高官とされた。「槐位カイイ」(三人の高官の位。=三公・三槐サンカイ)「槐門カイモン」(大臣の別称)
 カイ・さきがけ・かしら  斗部 kuí

魁星(「詞と星の名」より)
解字 「斗(ひしゃく)+鬼(おおきい)」の会意形声。原義は大きな柄杓(ひしゃく)。大きな天空の柄杓である大熊座の北斗七星に当て、特に枡の部分にあたる4つの星をいう。また、枡の部分の第一星を魁星カイセイと呼んだことから、さきがけの意となった。また、さきがけは先頭に立つ意であり、かしら・首領、すぐれる意となる。
意味 (1)大きなひしゃく。(2)おおきい。「魁偉カイイ」(大きく立派なさま)(3)北斗七星。「天魁テンカイ」「魁星カイセイ」(①北斗七星の第一星 ②科挙試験の首席合格者)(4)さきがけ(魁)。物事のはじめとなる。「秋田魁さきがけ新報」(秋田県の地方紙。明治7年(1874年)の創刊)(5)かしら(魁)。首領。「首魁シュカイ」(6)すぐれたもの。「魁士カイシ」(すぐれた男子)

形声字
 カイ・かたまり  土部 kuài
解字 「土(つち)+鬼(カイ)」の形声。土のかたまりを塊カイという。
意味 (1)土くれ。土のかたまり。「土塊ドカイ」(土のかたまり。土くれ)(2)かたまり(塊)。「金塊キンカイ」「肉塊ニクカイ」「凝塊ギョウカイ」(こりかたまったもの)
 シュウ・あつめる  艸部 sōu
解字 「艸(草)+鬼(シュウ)」 の形声。シュウという名の草。あかね草をいう。また、集シュウ(あつまる)・収シュウ(える)に通じ、あつめる意や狩りをする意がある。
意味 (1)あかね(蒐)。茜あかね草。「芧蒐ボウシュウ」(あかね草)(2)あつめる(蒐める)。「蒐集シュウシュウ」(3)狩りをする。「蒐猟シュウリョウ
 カイ  玉部 guī
解字 「王(=玉。たま)+鬼(カイ)」の形声。美しい玉を瑰カイという。
意味 (1)玉の名。「玫瑰マイカイ」(①赤色の美しい玉。②ハマナスに似た赤紫色の花をつける品種)「ケイカイ」(美しい玉)(2)すぐれる。めずらしい。おおきい。「瑰偉カイイ」(人格・能力が卓越している)「瑰意カイイ」(非凡な心。優れた心)「瑰姿カイシ」(美しい姿)

マイカイ(玫瑰)(ハマナスよりも濃い赤紫色の八重咲き品種)
<紫色は常用漢字>

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音符「牙ガ」<きば> と 「芽ガ」「雅ガ」「谺カ」「訝ゲン」「冴ゴ」「邪ジャ」「穿セン」「鴉ア」

2025年01月15日 | 漢字の音符
  改訂しました。
ガ・ゲ・きば  牙部 yá         


くいちがってつく犬の牙(「シリウス犬猫病院・犬の歯」より)
解字 金文は、ケモノのきばの上下がまじわる形の象形で、きばの意をあらわす。(字を横にすると実際の牙の食い違いになる)篆文はその変形。現代字は牙になった。牙は4画だが、新字体の組み合わせ漢字(芽・邪・雅)では「芽」の下部のように5画になる。
意味 (1)きば(牙)。「象牙ゾウゲ」「犬牙ケンガ」(犬の牙)(2)(犬の牙が入れ違っていることから)くいちがい。いれちがい。「犬牙相制ケンガソウセイ」(両国の領土を犬牙のように入りこませて互いに牽制させる)(3)は・歯。「歯牙シガ」(歯と牙。また、歯)「歯牙にもかけない」(問題にしないで無視する)
参考 牙は部首「牙きば」になる。しかし、牙が部首となる漢字は、漢検1級字(約6300字)を収録する[漢検漢字辞典]では部首の牙のみで、他の字はない。実質的な1字部首である。

イメージ 
 「きば」
(牙・芽・穿・谺)
  牙が「ちぐはぐにかみあう」(邪・訝)
 「形声字」(鴉・雅・冴)

音の変化  ガ:牙・芽・雅  カ:谺  ゲン:訝  ゴ:冴  ジャ:邪  セン:穿  ア:鴉

き ば
 ガ・め  艸部 yá
解字 「艸(くさ)+牙(きば)」の会意形声。きばの形のように出てくる草の芽。幼根や幼芽が種皮を破って出現したときを発芽という。

インゲン豆の発芽(「成長の連続する写真を見る」より)
意味 (1)め(芽)。草木の芽。「発芽ハツガ」「麦芽バクガ」(大麦を発芽させたもの。ビールや水あめの原料)「摘芽テキガ」(脇芽を摘む)(2)きざし。めばえ。「萌芽ホウガ
穿 セン・うがつ・ほじる・はく  穴部 chuān・chuàn
解字 「穴(あな)+牙(きば)」の会意。牙のようなとがったもので穴をうがつこと。
意味 (1)うがつ(穿つ)。ほる。ほじる(穿る)。「穿孔センコウ」(孔をあける。また、その穴)(2)つらぬく。「貫穿カンセン」(つらぬきうがつ)(3)(腰から下の衣服を、つらぬくように)はく(穿く)。着る。「スカートを穿く」「スラックスを穿く」「袴はかまを穿く」
※ 履物をはく場合は「履く」を使う。「靴を履く」「スリッパを履く」「草鞋わらじを履く」
 カ・こだま  谷部 xiā
解字 「谷(たに)+牙(きば)」の会意形声。牙が食い込んだような深い谷。日本では深い谷に反響するこだまの意味でもちいる。
意味 (1)谷の深く空虚なさま。「谽谺カンカ」(谷の深く空虚なさま)(2)[国]こだま(谺)。やまびこ。深い谷で声を発したとき反響する音。

ちぐはぐにかみあう・くいちがう
 ジャ・よこしま  おおざと部 xié・yé 

解字 篆文は「牙(くいちがう)+邑(むら・まち)」の形。牙(くいちがう=正道からはずれた)ことが行なわれている邑(むら・まち)の意。漢代の隷書から邑⇒阝になり、現代字は「牙+阝」の邪になった。
意味 (1)よこしま(邪)。正しくない。「邪道ジャドウ」「邪悪ジャアク」(2)人に害を及ぼすもの。「邪気ジャキ」「風邪フウジャ・かぜ
 ガ・ゲン・いぶかる・いぶかしい  言部 yà
解字 「言(ことば)+牙(くいちがう)」の会意形声。相手の言葉が食い違うので、いぶかること。また・むかえる、に通じ、むかえる意がある。
意味 (1)いぶかる(訝る)。うたがう。あやしむ。「怪訝ケゲン」(不思議で合点のゆかないさま)(2)むかえる。「訝賓ガヒン」(客をむかえねぎらう)

形声字
 ア・からす  鳥部 yā
解字 「鳥+牙(ア)」の形声。アは鳥の鳴き声で、アーアーと鳴くカラス。牙はガgaの音からgが脱落しアaとなった。
意味 (1)からす(鴉)。カラス科の鳥の総称。「寒鴉カンア」(冬のカラス)「乱鴉ランア」(乱れ飛ぶカラス)(2)くろ。黒い色のたとえ。「鴉片アヘン」(ケシの実からとれる麻薬。黒い色の麻薬の意。=阿片)
 ガ・ア・みやび  隹部 yǎ・yā・yá 
解字 「隹(とり)+牙(ガ・ア)」の形声。ガーガー・アーアーとなく隹(とり)でカラスの意。鴉と同じ成り立ちの字。しかし、雅の発音で中国最古の詩集である「詩経」の三部門のひとつ「雅」に仮借カシャ(当て字)された。詩経の「雅」は朝廷での会合や宴会の時に用いる詩が中心であり、周王朝の開国伝説を述べた叙事詩が多く、その内容から転じて「正しい」意となったと思われる(私見)。さらに上品・由緒正しい意となり、日本では雅楽(正しい楽舞の意)が奈良・平安時代から、宮廷や寺院や神社において盛んに演奏された。その音楽から雅(みやび)やかの訓ができた。
意味 (1)みやび(雅)。みやびやか(雅やか)。おくゆかしい。「雅趣ガシュ」(みやびなおもむき)「優雅ユウガ」「雅俗ガゾク」(風雅と世俗)(2)正しい。正当な。「雅言ガゲン」(①正しい言葉。②みやびな言葉)「雅厚ガコウ」(心が正しく厚い)(3)つねに。もとより。「雅意ガイ」(常の志)「雅辞ガジ」(平素のことば) (4)古典語を解説した言葉集。「爾雅ジガ」(漢代以前の中国古代の字書。類義語や訓詁を集めたもの)「広雅コウガ」(漢代の学者の訓詁により「爾雅」を増補したもの)
 ゴ・コ・さえる  冫部 hù・hú
解字 「冫(こおる)+牙(ゴ)」の形声。冴は同音の冱(こおる)の俗字。日本では、澄み切った氷のように、さえる意で使う。
意味 (1)こおる。冱と同字。(2)[国]さえる(冴える)。光や音が澄む。頭のはたらきが鋭い。
<紫色は常用漢字>

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音符「廌タイ」<神判をする聖獣> と 「薦セン」「慶ケイ」

2025年01月13日 | 漢字の音符
  増訂しました。
 タイ・チ  广部 zhì

解字 甲骨文字は二本の角がある動物の象形でおそらく山羊のような獣であろう。祭祀犠牲に用いられている[甲骨文字辞典]。商代末の金文は、ほぼ同じ形で氏族名(廌父タイフ)として使われている。篆文になるとかなり字形が変化し、上の角が中央が高い山形になった。これを基に現代字はさらに変化した廌タイになった。[学研漢和]はこの字を「鹿と馬を合わせたような聖獣」、[字統]は「羊に似た神聖な獣」といい、最古の部首別字典である[説文解字]は「牛に似た一角獣」とし、それぞれ異なるが、現在の字形からみると「鹿+馬」が、字の部分的組み合わせとして覚えやすい。この聖獣は何をするのか。[説文解字]は、「古(いにしえ)裁判をするとき不直(正直でない)なる者に触らせる」とし、悪者を指摘する裁判官のような役割をする、としている。

 甲骨・金文で山羊と思われる獣が、なぜ神判をする聖獣となったのか? 
 白川静氏は[字統]などで春秋時代の思想家・墨子の影響を指摘している。私なりに解釈すると、墨子は「明鬼、下」でこの世には耳目では接することのできない鬼神キシン(超人的な能力を有する存在)がおり、この鬼神は世の中を明察することができ、賢を賞し暴を罰する存在であると説く。天下が乱れたのは人々が鬼神の存在を疑うようになったからだとし、一つの説話を挙げて鬼神の存在を説明した。

墨子。春秋末~戦国初期の思想家(「維基百科」より)
 「むかし春秋時代の斉の荘君(斉の第25代君主)の臣二人が訴訟で争って三年しても決着がつかなかった。そこで斉君は羊神判を行なうことにし、各自に羊一頭ずつを神社に供えて盟(ちかい)をさせた。そのとき羊の頸ケイ(首)を切って血をとり社に注がせた。一人の臣は神への誓辞(誓いの言葉)をよみあげたが、なんの異常もなかった。ところがもう一人がその誓辞をよみ進めて半ばにもならぬうちに、羊がおきあがってその臣に触れた。するとこの臣は脚をよろけてつまずいた。すると神霊が至りこの臣を打ち殺した。」この出来事は広く人々の間に伝わり斉の春秋の書に記録されている。墨子は、この書の説くところは「神前の盟(ちか)いにおいて誠実が欠ける者は鬼神の罰を受ける」と説いた。
 羊から廌タイ
[字統]は、廌タイは羊に似た神羊であるとする。墨子の「明鬼、下」の神社に供えた羊は悪い者に触れて鬼神の役割をしており、甲骨文字で山羊のような獣とされた廌タイが鬼神の役割を兼ねた聖獣として用いられたのであろう。なお、後漢の[説文解字]が「牛に似た一角獣」とするように、後代の廌は一角獣の形に変化している。
字の覚え方 鹿の上部+馬の上部を一に略した字=廌

中国の陝西歷史博物館藏の解廌カイタイは一角獣の姿をしている。

陝西歷史博物館藏の解廌(「法獸解廌」より)
日本では橘守国の『絵本写宝袋』(下図)に一角獣の獬豸カイチが描かれている。


意味 神判のとき用いる聖獣。「解廌カイタイ」(「獬廌カイタイ」とも。①中国の伝説上の動物。正義・公正・法治を司る。②牛に似た神獣の名。人が争うのをみれば、悪い方を角で突くという。=解豸カイチ。豸は廌の側面形とされる。)

イメージ  
 「神判をする聖獣」
(廌・薦・慶)
音の変化  タイ:廌  セン:薦  ケイ:慶

神判をする聖獣
 セン・すすめる  艸部 jiàn
解字 「艸(くさ)+廌(神判をする聖獣)」の会意。聖獣が食べる草の意。転じて、この草をきちんと揃えて聖獣にお供えし、すすめる意となる。また、草をそろえて供える形から敷物・こも(薦)の意ともなる。
意味 (1)草。細かい草 (2)すすめる(薦める)。人を選んで推挙する。「推薦スイセン」「薦挙センキョ」(人を挙げてすすめる)「自薦他薦ジセンタセン」 (3)しく。敷物。こも(薦)。あらく織ったむしろ。もとはマコモを利用したが、現在は藁を用いる。「薦席センセキ」(①こもを敷いた席、②ご馳走の席)「薦掛(こもが)け」(薦を掛けて樹木や土塀を保護する)「薦被(こもかぶ)り」(薦でつつんだ酒樽。薦樽こもだる

金沢武家屋敷跡の薦掛(こもが)け

薦樽こもだる(「日本の食べ物用語辞典」より)
 ケイ・よろこぶ  心部 qìng

解字 金文は「心(こころ)+廌タイ(神判をする聖獣)」の会意。「心」はもともと心臓をかたどった字であったが、金文では感情さらに思想や精神を意味するようになった。慶の字は、不正を指摘する聖獣である廌タイに心(感情や精神)がある意で、心をもつ廌タイは正しい側の人を指摘する聖獣の意となる。転じて、よろこばしい・めでたい意となる。字形は篆文から心の下に夂(下向きの足)がつくが、これは金文の廌の後ろ足と尻尾が変化した形。
意味 (1)よろこぶ(慶ぶ)。いわう。めでたい。「慶事ケイジ」「慶祝ケイシュク」(慶び祝う)「慶雲ケイウン」(良い前兆の雲)「慶弔ケイチョウ」(慶び事と弔いごと)(2)たまもの。ほうび。「天慶テンケイ・テンギョウ」(①テンケイ:天から授かった賜物。②テンギョウ:日本の元号の一つ。938年から947年までの期間。平安時代中期)(3)日本の元号。「慶應ケイオウ」(江戸期の1865.4.7~1868.9.8まで。次年号は明治。[文選]の「慶雲ケイウン應(まさ)に輝くべし」より命名)
 「慶應大学(慶應義塾大学)」(大分県中津藩士の福沢諭吉は大阪の適塾で蘭学を学び、のち江戸の中津藩邸で蘭学塾の講師となった。折しも幕府の咸臨丸が米国へ派遣される際に船長の随員となり、万延元年(1860年)に渡米した。その際、これからは英語が世界の主流言語となると確信し、蘭学塾を英語塾に改めた。文久元年(1861年)には欧州各国へ派遣された幕府使節団に加わり翌年に帰国した。尊王攘夷の騒然としたなか、慶應3年(1867)4月に芝の新銭座の屋敷に引っ越し慶應義塾と称したのが慶應大学の始まり(明治元年は、この年の9月8日~)。明治3年に港区三田の一万二千坪もある島原藩の中屋敷跡地へ移転し、ここが以後の慶應義塾の中心地となった)

※なお、不正を指摘されることをホウといい、「氵(水)+廌タイ+去(さる)」の会意。ホウは、廌タイが悪者の非をとがめて水(海)に流し去ること。すなわち、聖獣による神判に敗れた人を海に追放する刑罰。刑罰を示すことで、のり・きまりの意味を表わす。現代字は、から廌を省いた法となった。
「法ホウ」
<紫色は常用漢字>

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