漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「鬲レキ・カク」 <三本脚のうつわ> 「隔カク」 「膈カク」 「融ユウ」

2019年07月30日 | 漢字の音符
 レキ・カク  鬲部れき
 陶鬲

解字 三本の脚がある鼎(かなえ)に似た土器の形。三脚の部分がふくれており、湯をわかすのに火の通りがよい形になっている。のち、ほぼ同じ形の青銅器も作られた。また、中に食物を入れ貯蔵するのにも使ったと思われる。鬲は部首となるが、音符にもなる。
意味 (1)かなえ。「陶鬲トウレキ」「鬲如レキジョ」(かなえのごとし) (2)へだてる。「鬲絶カクゼツ」「鬲塞カクソク」(へだてふさぐ)「鬲蔽カクヘイ」(へだてかくす) 
参考 鬲は部首「鬲れき」になる。字の左辺または下部に付いて、「煮炊きするうつわ」の意味を表す。
常用漢字以外
 シュク・かゆ(鬲+音符「粥シュク」)
 フ・かま(鬲+音符「甫ホ」)ほか

イメージ 
 「三本脚の器」
(鬲・融)
 三本の脚がそれぞれ離れていることから「へだてる」(隔・膈)
音の変化  レキ:鬲  カク:隔・膈  ユウ:融  

三本脚の器
 ユウ・とける  虫部
解字 「虫(むし)+鬲(三本脚の器)」の会意。三本脚の器に入れておいた食物が腐敗し、やわらかくなって虫がつくこと[字統]。ユウの音は、溶(ヨウ・ユウ:とける)と共通の言葉。
意味 (1)とける(融ける)。とかす(融かす)。固体が液体になる。「融解ユウカイ」 (2)とおる。通じる。「融資ユウシ」「融通ユウズウ」 (3)やわらぐ。「融和ユウワ

へだてる
 カク・へだてる・へだたる  阝部
解字 「阝(丘)+鬲(へだたる)」の会意形声。丘にへだてられること。
意味 (1)へだてる(隔てる)。「隔離カクリ」「隔壁カクヘキ」(①間をへだてる壁。②船や航空機で、内部を仕切る壁)(2)へだたる(隔たる)。「隔絶カクゼツ」「遠隔エンカク」 (3)へだたり(隔たり)。「間隔カンカク」「隔月カクゲツ
 カク  月部にく
解字 「月(からだ)+鬲(へだてる)」の会意形声。身体の中で各部をへだてている膜(まく)をいう。常用漢字でないため、隔で代用することが多い。
意味 体の各部をへだてる筋肉の膜(まく)。「膈膜カクマク」(特に、胸部(胸腔)と腹部(腹腔)をへだてる膜をいう。=隔膜)「横膈膜オウカクマク」(胸腔と腹腔をへだてる筋肉性の膜。立ち姿の人で横に走っているから言う。=横隔膜)
<紫色は常用漢字>

  バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「閵リン」 <門の隹はふまれる> 「藺リン」 「躙リン」

2019年07月28日 | 漢字の音符
 リン  門部     
   
解字 「門(もん)+隹(とり)」の会意。門にくる鳥の形で、古書では鳥の名を表すが、どんな鳥か分からない。この字は発音の「リン」が轔リン(車のひびき・ふむ・ふみにじる)に通じ、「ふむ」意味がある。
意味 (1)鳥の名。 (2)ふむ(=躙)。「閵轢リンレキ」(ふみしく)
覚え方 (とり)は(ふ)まれる

イメージ  「ふむ」(閵・藺・躙)
音の変化  リン:閵・藺・躙

ふむ
 い・リン  艸部
 藺草
解字 「艸(草)+閵(ふむ)」の会意形声。人々に踏まれるむしろの原料となる草。
意味 い(藺)。いぐさ(藺草)。灯心草。イグサ科の多年草。湿地に自生、また水田に栽培される。茎は約1~1.5メートル、中に白色の髄があり灯心にする。また、茎は蓆(むしろ)や畳表・蓑(みの)に編まれる。「藺席リンセキ」(い草のむしろ)「藺笠いがさ」「「太藺草ふとい」(カヤツリグサ科の多年草)「藺筵いむしろ」(藺草で編んだむしろ)
躙[躪] リン・にじる  足部
解字 「足(あし)+閵(ふむ)」の会意形声。足でふむこと、ふみにじること。躪は異体字。
意味 (1)にじる(躙る)。ふむ(躙む)。ふみにじる。おしつけてすり動かす。「蹂躙ジュウリン」(ふみにじること)「人権蹂躙ジンケンジュウリン」 (2)[国]にじる(躙る)。膝をおすように動く。「躙(にじ)り口」(茶室の小さな出入口。にじって出入りする) 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「鼠ソ」<ねずみ> と 「竄ザン」と「巤(鼡)リョウ」<けもの> 「猟リョウ」と「蝋ロウ」「臘ロウ」

2019年07月27日 | 漢字の音符
 ソ・ねずみ  鼠部

解字 甲骨文は口を開けた頭部に胴と足と尾をつけた形に3点がつく。3点は小(ちいさい)で口を開けた小さな齧歯類ゲッシルイ(物をかじるのに適した歯と顎をもつ動物で、ビーバー・リス・ネズミなど)で、齧歯類の小動物であるネズミの意[甲骨文字辞典を参照]。篆文は頭部が臼に変化し(齧かじるための門歯の奥にある臼歯の意か)、下部はリョウ(けもの)の下部とまったく同じ作りで両脚としっぽを表す鼠になった。
 ネズミの歯。右が門歯、左が臼歯。
意味 ねずみ(鼠)。ネズミ科の哺乳動物。「鼠算ねずみザン」「鼠盗ソトウ」(鼠のようにこそこそと盗みをする泥棒)「鼠賊ソゾク」(=鼠盗)

イメージ 
 「ねずみ」
(鼠・竄)
音の変化  ソ:鼠  ザン:竄

 ザン・サン・のがれる・かくれる  穴部
解字 「穴(あな)+鼠(ねずみ)」の会意。ねずみが穴に逃げかくれること。これを人に移して言う。転じて、もとの字を隠して別の字を書く意味にも使う。
意味 (1)のがれる(れる)。かくれる(れる)。にげる。「竄入ザンニュウ」(逃げ込む。誤って紛れ込む)「奔竄ホンザン」(走ってかくれる)「逃竄トウザン」(逃げかくれる)(2)あらためる。書き換える。「改竄カイザン」(文章の字句を書き直してしまうこと。悪用する場合に使う)



    巤[鼡] リョウ <けもの>
巤[鼡] リョウ  巛部
    
解字 けもの(獣)をかたどった象形。たてがみがついた頭部に足と尾をつけた形。鼡は巤を簡略化した形で、新字体で用いられる。
意味 (1)たてがみ。 (2)「鼡」は日本で鼠(ねずみ)の異体字として使われることがある。

イメージ   
 「けもの」
(猟・) 
  けものはえものを「さがし求める(猟)」(蝋・臘)
音の変化  リョウ:猟・  ロウ:蝋・臘

けもの
 リョウ・かる・かり  犭部
解字 旧字はで「犭(犬)+(けもの)」の会意形声。犬を使ってけものを狩りすること。新字体は⇒鼡に変化した猟になった。
意味 (1)かる(猟る)。かり(猟り)。鳥獣をとる。「狩猟シュリョウ」「猟師リョウシ」「猟犬リョウケン」 (2)あさる。さがし求める。「渉猟ショウリョウ」(広くわたり歩いてさがし求める。転じて、書物を読みあさる)「猟奇リョウキ」(異様なものを探し求める)
 リョウ・たてがみ  髟部
解字 「髟(長いかみ)+から巛(かみのけ)を取った形」 の会意形声。髟ヒョウは「镸(長の変形)+彡(細かいものがたくさん並んでいるさま)」 で、長く豊かな髪の毛の意。これにから巛を取った形)がついたは、けものの髪の毛で、たてがみをいう。また、ひげの意でも用いる。
意味 (1)たてがみ()。「馬鬛バリョウ」(馬のたてがみ)「鬣鬣リョウリョウ」(たてがみがなびくさま)「鬣尾リョウビ」(たてがみと尾) (2)ひげ。「鬚鬛シュリョウ」(鬚は、あごひげ、鬛はひげ)「長鬛チョウリョウ」(長いひげ)

さがし求める(猟) 
蠟[蝋] ロウ  虫部
解字 「虫(はち)+(=猟。さがし求める)」の会意形声。ミツバチが材料をさがし求めて作った蜂の巣。巣をとかして作るのがである。新字体に準じた蝋が一般に使われる。
意味 (1)ろう(蝋)。みつろう。ミツバチの巣を加熱・圧縮して採取したろう。ロウソクなどに利用する。「蜜蝋ミツロウ」(蜜蜂の巣から作った蝋)「蝋燭ロウソク」(より糸を芯とし、そのまわりに蝋をつけ円柱状にしたもの。灯火用とする)「木蝋モクロウ」(ハゼの実から採った蝋)「蝋人形ロウニンギョウ」「蝋石ロウセキ」(蝋のように光沢のある石)(2)その他。「蝋梅ロウバイ」(ロウバイ科ロウバイ属の落葉広葉低木。早春に葉が出る前に枝に黄色い花を咲かせる。「臘梅ロウバイ」とも書く)
 ロウ  月部にく
解字 「月(にく)+(=猟。かりをする)」の会意形声。狩りをした動物の肉。猟の獲物を先祖の百神にそなえること。
意味 (1)冬至後の第三の戌(いぬ)の日に猟の獲物を先祖百神にそなえ年をおくる祭。「ロウサイ」 (2)年の暮。陰暦12月の異称。「ロウゲツ」(陰暦12月)「ロウジツ」(大晦日)「旧キュウロウ」(昨年の12月) (3)[国]仏教寺院の僧侶の年功によって得られる身分。地位の称。また、宮女の高位のものをいう。「法臘ホウロウ」(僧侶の出家受戒後の年数)「夏臘ゲロウ」(=法臘。夏の修行である夏安居ゲアンゴを一回終えると法歳を一つ加えることから)(4)「臘梅ロウバイ」(ロウバイ科ロウバイ属の落葉広葉低木。蝋梅とも書く)
<紫色は常用漢字>

お知らせ
本ブログ掲載の漢字を選りすぐった『音符順精選漢字学習字典』発売中!


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紛らわしい漢字 「侯コウ」 と 「候コウ」

2019年07月17日 | 紛らわしい漢字 
 侯コウに、さらにイ(にんべん)をつけた形が「候コウ」。両者の関係がわかれば、この二字の違いが分かる。

 コウ・きみ  イ部               

解字 甲骨文は「厂(石の略体)+矢」 の会意。[甲骨文字辞典]は、「甲骨文字では地方領主の意味で用いられている。厂は反ハンにおいては(石器の武器を手でもつ形で)石製の武器として用いられているので、地方領主を石器や弓矢のような原始的な武器を持った勢力と見なした文字と考えられる」としている。金文は甲骨文と同じ形で、意味は諸侯(天子から受けた封土の人民を支配した人)および、官爵名として用いられている。
 篆文で上に人がつき、地方領主が人であることを示したものであろう。現代字は篆文の人の腕と厂のタテ線がむすびついてイとなり、人の残りと厂のヨコ線⇒ユに変化した侯となった。
意味 (1)きみ(侯)。封建時代の領主・大名。「諸侯ショコウ」「王侯オウコウ」 (2)爵位の第2位。「侯爵コウシャク」 (3)まと。弓矢のまと。「射侯シャコウ」(まとを射る)「侯鵠コウコク」(まと、方十尺なるを侯といい、四尺なるを鵠という)
覚え方 「ひとゆや(亻ユ矢)で」と覚えると書きやすい。

イメージ  
 「身分の高い人」(侯・候)
音の変化  コウ:侯・候

身分の高い人
 コウ・そうろう・うかがう  イ部  
解字 「イ(人)+侯(身分の高い人)」 の会意形声。身分の高い人のそばについて仕える人。イ(にんべん)が重なるので、真ん中のイをタテ線にした候となった。意味は貴人のそばにつかえる意のほか、貴人をまつ、貴人の安全のため、まわりの様子をうかがう等の意となり、転じて「きざし」などの意に拡がった。
意味 (1)さぶらう。貴人のそばに仕える。「伺候シコウ」(おそばに奉仕する) (2)まつ(候つ)。待ちむかえる。「候補コウホ」(補任を待つ) (3)うかがう(候う)。ようすをみる。さぐる。「斥候セッコウ」「測候ソッコウ」 (4)きざし。しるし。「気候キコウ」「兆候チョウコウ」 (5)そうろう(候)。有る・居るなどの謙譲語・丁寧語。「候文そうろうぶん
<紫色は常用漢字>

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「食ショク」<食べ物がはいった器> と「飾ショク」「蝕ショク」

2019年07月04日 | 漢字の音符
    飭チョクを追加しました。
 ショク・ジキ・くう・くらう・たべる  食部   

解字 古代文字はすべて食物が入った器にふたをした形の象形。たべもの。たべる意を表わす。現代字はフタ上部である「」の下が良に変化した。食は部首になるが、「たべる」意で音符ともなる。
意味 (1)くう(食う)。くらう(食らう)。たべる(食べる)。ごはん。「食事ショクジ」「食物ショクモツ」「給食キュウショク」「乞食コツジキ・コジキ」 (2)太陽や月が見えなくなる。かける。「日食ニッショク」「月食ゲッショク」 (3)むしばむ。「浸食シンショク
参考 食は、部首「食しょく・しょくへん」になる。漢字の下部または偏(左辺)に付き、①食事をする、②食べ物、の意味を表す。下部に付くときは食のかたち、左辺に付くときは(新字体)または𩙿(新字体以外)になる。約14,500字を収録する[新漢語林]で107字が収録されている。主な字は以下のとおり。
常用漢字  12字
 ショク・たべる 部首
 イン・のむ(食+欠の会意)
 ガ・うえる(食+音符「我ガ」)
 カン・やかた(食+音符「官カン」)
 キ・うえる(食+音符「几キ」)
 シ・かう(食+音符「司シ」)
 ジ・えさ(食+音符「耳ジ」)
 ショク・かざる(部首・音符「食ショク」+人+巾)
 ハン・めし(食+音符「反ハン」)
 ヘイ・もち(食+音符「并ヘイ」) 
 ホウ・あきる(食+音符「包ホウ」)  
 ヨウ・やしなう(食+音符「羊ヨウ」)

イメージ 
 「たべる」
(食・飾・蝕・喰)
 「その他」(飭)
音の変化  ショク:食・飾・蝕  チョク:飭  くう:喰

たべる
 ショク・かざる  食部              

解字 「食(たべる)+人+巾(ぬの)」の会意。食事をするとき人が身につけるナプキンのこと。現代字は右上の𠂉が人である。体の前面をおおう布の意だったが、身なりを整える意へと変化した。食は部首であるとともに、音符にもなっている。
意味 (1)かざる(飾る)。身なりを整える。装い。かざり。「装飾ソウショク」「服飾フクショク」 (2)外観をよく見せかける。「飾言ショクゲン」(いつわり飾った言葉)「粉飾フンショク」(①白粉(おしろい)で飾る。②実情を隠して見かけをよくする)
 ショク・むしばむ  虫部
解字 「虫(むし)+食(たべる)」の会意形声。虫が食べて物をだめにする。虫が食うように体や心がおかされること。蝕の左辺は旧字の食へん。
意味 (1)むしばむ(蝕む)。そこなう。おかす。「侵蝕シンショク」(=侵食) (2)太陽や月が欠ける。「日蝕ニッショク」(=日食)「月蝕ゲッショク」(=月食) ※熟語では「食」に置き換えるものが多い。
<国字> くう・くらう  口部
解字 「口(くち)+食(たべる)」の形声。口で食べる意を表す国字。
意味 (1)くう(喰う)。くらう(喰らう)。物をたべる。 (2)(このましくない事を)身にうける。こうむる。「小言を喰う」

その他
 チョク・ととのえる・つつしむ・ただす・いましめる  𩙿部

解字 「𩙿ショク+人+力(ちから)」の会意形声。[字通]に興味深い解字が載っている。それによると、飭チョクは、後漢の[説文解字]が飾ショクの字の巾⇒力と誤って書き、解釈した字だという。飾ショクは食事をするとき人が身につけるナプキンで、体の前面をおおう布の意だったが、身なりを整える意へと変化し最終的に飾る意となった。巾が力に代わった飭チョクは、力をこめて身を整える意となり、さらに同音の勅チョクに通じ、つつしむ・うやまう・ただしい・いましめる意となった。発音は食ショク⇒チョクに変化。表記は𩙿⇒飠も可。飭は普段目にしない字だが、飾ショクと関連して覚えると身近な字になる。
意味 (1)ととのえる(飭える)。「飭令チョクレイ」(法令をととのえる)「飭正チョクセイ」(きちんとととのえ、ただす) (2)ただす(飭す)。つつしむ(飭む)。「修飭シュウチョク」(身を修め、つつしむ)「飭身チョクシン」(身をつつしむ) (2)いましめる(飭める)。「飭厲チョクレイ」(いましめはげます)「戒飭カイチョク」(戒も飭も、いましめる意)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする