漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「貫カン」<つらぬく>と「慣カン」「実ジツ」

2019年11月22日 | 漢字の音符
 カン・つらぬく  貝部  

解字 金文第一字は貝を上下に連ねた形。第二字は孔のあいた銭を連ねた形と思われる。貝は貨幣の意であり、大量の銭に紐を通して束ねた銭貫(ぜにさし)を表す。篆文は金文第二字の一つを上に、下に貝をつけた形に変化した。貫とは、銭の孔に紐を通して(貫いて)1000枚を1組としておくこと。後に通貨単位としての「貫」となり、その通貨の重さの単位ともなった。また、銭を紐で通すことから、つらぬく意となる。
 銭を1000枚つらねた銭貫ぜにさし(ウイキペディアより)
意味 (1)つらぬく(貫く)。やりとおす。「貫通カンツウ」「縦貫ジュウカン」(縦に貫く)「首尾一貫シュビイッカン」(趣旨や意味が筋の通っている) (2)戸籍。「郷貫キョウカン」(本籍) (3)ならわし。「旧貫キュウカン」 (4)貨幣・重さの単位。1貫は銭1千文、重さは1千匁もんめ=3.75㎏。

イメージ  
 「つらぬく」
(貫・慣) 
 「紐で通した大量の貝(貨幣)」(実)
音の変化  カン:貫・慣  ジツ:実

つらぬく
 カン・なれる・ならす  忄部
解字 「忄(心)+貫(つらぬく)」の会意形声。心のなかに時間を貫いて続いているもの。
意味 (1)ならわし。しきたり。「慣行カンコウ」「習慣シュウカン」 (2)なれる(慣れる)。ならす(慣らす)。「慣用カンヨウ」(使いなれる)「慣熟カンジュク」(慣れてうまくなる) (3)「慣性カンセイ」とは、外からの力を受けないかぎり、物体がその運動状態を変えない性質。「慣性の法則」

紐で通した大量の貝(貨幣)
[實] ジツ・み・みのる  宀部
解字 旧字は實で 「宀(いえ)+貫(紐で通した大量の貨幣)」の会意。大量の貨幣が家の中に満ちていること。みちる・内容がある意。転じて、草木の実となり、また実る意となる。新字体は旧字の實⇒実に簡略化された。
意味 (1)みちる。内容がある。「実質ジッシツ」「充実ジュウジツ」 (2)み(実)。みのる(実る)。「果実カジツ」「結実ケツジツ」 「実入(みい)り」(①穀物などの実の入りかた。②収入) (3)まこと。まごころ。「実直ジッチョク」「誠実セイジツ」 (5)ほんとう。ありのまま。「実例ジツレイ」「真実シンジツ
<紫色は常用漢字>

   バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。


font>
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符 「聶ショウ」 <多くの耳> と 「囁ショウ」「懾ショウ」「鑷ジョウ」「摂セツ」

2019年11月18日 | 漢字の音符
  ジョウを追加しました。
 ショウ・ジョウ  耳部 

解字 「耳+耳+耳」の会意。多くの耳を寄せ合うこと。 
意味 (1)ささやく。(=囁)。 (2)姓。

イメージ 
 「多くの耳を寄せる」
(聶・囁)  
 「多くの耳で聞く」 (摂)
 「形声文字」(鑷)
音の変化  ショウ:聶・囁・懾  ジョウ:鑷  セツ:摂

多くの耳を寄せる
 ショウ・ジョウ・ささやく  口部  
解字 「口(くち)+聶(多くの耳を寄せる)」の会意形声。多くの耳を寄せて、口でささやくこと。
意味 ささやく(囁く)。耳もとでそっと話す。

多くの耳で聞く
 セツ・とる  扌部  
解字 旧字は攝で「扌(手で行なう)+聶(多くの耳で聞く)」の会意形声。多くの耳で民の声を聞き、その内容を取り入れて政務を執行すること。とりいれる・とる意、および、とりおこなう・統べる・つかさどる、が原義。また、本来統べる人が幼少のとき、経験のある者が代わりに行なう意となる。新字体は、攝⇒摂に変化する。
意味 (1)とる(摂る)。とりいれる。「摂取セッシュ」(取り入れて自分のものにする)「摂受セツジュ」(受け入れる) (2)(栄養を摂り入れることから)やしなう。「摂生セッセイ」(生をやしなう。養生する) (3)とりおこなう・統べる・つかさどる。「摂理セツリ」(①統べ治める。②自然界を支配している理法) (4)代わって執り行う。「摂政セッショウ」(天子や天皇に代わって政治を執ること)「摂関家セッカンケ」(摂政と関白に任ぜられる家柄)「摂行セッコウ」(他人に代わって事を処理する) (5)かねる。「摂兼セッケン」(摂も兼も、かねる意) (6)地名。「摂津セッツ」(大阪府北部および兵庫県の一部にまたがる地域の旧国名。現在は、その一部が摂津市となっている。由来は、難波津なにわづ(大阪港)を摂セツ(管掌する・統べる)する役所の摂津職セッツシキが置かれた国のこと)
※難波津については、「人工港 難波津の成立」(日下雅義『地形からみた歴史』所収)に詳しい。

形声文字
 ジョウ・けぬき・ぬく  金部
解字 「金(金属)+聶ジョウ」の形声。ジョウはジョウ(毛抜き・ピンセット)に通じる。同じ発音のジョウも毛抜きの意に用いる。なお、ジョウが何故、毛抜きの意になるのかは不明。
意味 (1)けぬき(鑷)。「鑷子ジョウシ」(毛抜き) (2)ぬく(鑷く)「鑷白ジョウハク」(白髪をぬく)
 ショウ・おそれる  忄部
解字 「忄(こころ)+聶ショウ」の形声。[説文解字]に、「気を失うなり」とあり、恐懼キョウク(恐れかしこまる)ことをいう。
意味 おそれる(懾れる)。「懾畏ショウイ」(懾も畏も、おそれる意)「懾竄ショウザン」(おそれてかくれる)「懾伏ショウフク」(おそれてひれふす)「震懾シンショウ」(ふるえおそれる)
<紫色は常用漢字>

    バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音符「蔑ベツ」 <よく見えない>  と 「襪ベツ」「衊ベツ」

2019年11月01日 | 漢字の音符
 ベツ・メチ・さげすむ  艸部

解字 甲骨文は「眉(まゆ)を強調した人(𦹋の上部+人)+戈(ほこ)」 の会意。眉(まゆ)を強調した人の意味は不明であるが、よく観察する人の意で戦場の情報参謀と思われる。この人を戈で捕らえる、または伐(き)る形。意味は、[甲骨文字辞典]によると、①捕虜を献上すること。②吉凶語で不吉の意などで用いられている。字形は𦹋に置き換えることもできるので、その後、意味も眉毛のついた目の働きを伐(きる)意から、よく見えない、転じて「ないがしろ」にする意となった。現代字は伐⇒戍ジュに変化したのち、さらに戌ジュツに誤った蔑ベツになっている。
意味 (1)さげすむ(蔑む)。ないがしろ(蔑ろ)。あなどる。「軽蔑ケイベツ」「蔑視ベッシ」「侮蔑ブベツ」(あなどる) (2)見えない。ない。「蔑然ベツゼン」(ぼんやりしてよく見えない。くらい)

イメージ  
 蔑の意味(2)の「見えない」(蔑・襪)
音の変化  ベツ:蔑・襪・衊

見えない
 ベツ・バツ・モチ・したぐつ  衤部

中国の襪(ネットの販売品)
解字 「衤(ころも)+蔑(見えない)」 の会意形声。足をかくして見えなくする足の衣の意で足袋をいう。靴をはくとき、これを着けてはくので「くつした」の意味ともなる。
意味 したぐつ。しとうず。たび。靴下。「襪衣ベツイ・バツイ」(足袋の異称)「羅襪ラベツ」(うす絹の足袋)「襪繋ベッケイ・バッケイ」(足袋のひも)

形声字
 ベツ・けがす  血部
解字 「血(ち)+蔑(ベツ)」の形声。[説文解字]は「汚れた血也(なり)。血に従い蔑ベツの聲(声)」とする。
意味 (1)けがす(衊す)。血でけがす。「汚衊オべツ」 (2)はなじ(衊)。「衄衊ジクべツ」(衄ジクも鼻血の意)
<紫色は常用漢字>


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする