亡 ボウ・モウ・ない・ほろびる 亠部
解字 甲骨文は腰をおろした形の人の手の先にフタのようなものを当てたかたちで、物陰に人がかくれる形の象形とされる。人が亡くなることを暗示した。金文以降、形が変化し現代字で「亡」の形になった。かくれる形で、いなくなる・ほろびる・うしなう・しぬ意を表す。
意味 (1)ほろびる(亡びる)。ほろぼす。「滅亡メツボウ」「亡国ボウコク」 (2)ない(亡い)。うしなう。「亡失ボウシツ」 (3)なくなる。死ぬ。「死亡シボウ」「亡者モウジャ」 (4)にげる(亡げる)。「逃亡トウボウ」「亡命ボウメイ」(本国を脱して他国に身をよせる)
イメージ
「ない・なくなる」(亡・忘・妄・忙・盲・芒・茫・肓)
「逃亡・亡命」(氓)
「ボウの音」(望・虻)
音の変化 ボウ:亡・忘・忙・氓・芒・茫・虻・望 モウ:妄・盲 コウ:肓
ない・なくなる
忘 ボウ・モウ・わすれる 心部
解字 「心(こころ)+亡(なくなる)」 の会意形声。心の中で記憶がなくなること。
意味 わすれる(忘れる)。覚えていない。「忘却ボウキャク」「忘我ボウガ」「健忘ケンボウ」(忘れっぽい。健は程度がはなはだしい意)「忘己利他モウコリタ」(己を忘れて他人を利する)
妄 モウ・ボウ・みだり 女部
解字 「女(おんな)+亡(ない)」 の会意形声。女が我をなくして、とり乱した状態。
意味 みだり(妄り)。でたらめな。「妄言モウゲン・ボウゲン」「妄想モウソウ」「妄念モウネン」
忙 ボウ・いそがしい 忄部
解字 「忄(心)+亡(ない)」 の会意形声。することが多くて心がまともに存在しない状態をいう。
意味 いそがしい(忙しい)。あわただしい。「多忙タボウ」「繁忙ハンボウ」「忙殺ボウサツ」(非常に忙しい)
盲 モウ 目部
解字 「目(め)+亡(ない)」 の会意形声。目が見えないこと。
意味 (1)目が見えない。「盲人モウジン」「盲目モウモク」 (2)わからない。道理にくらい。「文盲モンモウ」「盲従モウジュウ」「盲点モウテン」 (3)一端がふさがる。「盲腸モウチョウ」
芒 ボウ・のぎ・すすき 艸部
解字 「艸(草)+亡(ない・みえない)」 の形声。稲や麦の穂先の見えないほど細いとがったノギをいう。ススキにも枝分れした花穂に小穂が密生し、この先に細い芒があるので、ススキの意ともなる。
小麦のノギ
意味 (1)のぎ(芒)。イネ・ムギなどの実の殻にある固い毛。「芒種ボウシュ」(二十四節気のひとつ。夏至の前の節気で、芒を持つ穀物の種を蒔く時期の意だが、日本の季節には合わない)「光芒コウボウ」(光のほさき。すじのように見える光) (2)すすき(芒)。薄とも書く。イネ科の多年草。大群落を作る草。秋の七草のひとつ。 (3)茫ボウに通じた用法。「芒洋ボウヨウ」(果てしなく広々とした=茫洋)
茫 ボウ 艸部
解字 「氵(水)+芒(すすき)」 の会意形声。芒が群がるように水がひろがること。ひろい・はてしない意となる。
意味 (1)ひろい。果てしない。とおい。「茫洋ボウヨウ」(果てしなく広々とした)「茫漠ボウバク」(広くはてしない) (2)ぼんやりした。はっきりしない。「茫然ボウゼン」(ぼんやりした様子)「茫然自失ボウゼンジシツ」
肓 コウ 月部にく
解字 「月(からだ)+亡(ない・みえない)」の会意形声。身体のよく見えない部分の意から、横隔膜の上の部分をいう。
意味 からだの内部のよく見えない場所。横隔膜の上のかくれた部分。「膏肓コウコウ」(膏は心臓の下の部分。肓は横隔膜の上の部分。病気が治療しにくいところ。「病膏肓に入る」(病(やまい)膏肓(コウコウ)に入る)(病気が治療しにくい所まで進行したこと。膏肓コウモウは慣用よみ)
逃亡・亡命
氓 ボウ・たみ 氏部
解字 「民(たみ)+亡(逃亡・亡命)」 の会意形声。他の地より逃亡・亡命してきた民。民も亡も部首にないので、苦肉の策で「氏」を部首にしている。
意味 (1)たみ(氓)。移住民。亡命してきた民。「流氓リュウボウ」(流浪する民) (2)人民。庶民。「蒼氓ソウボウ」(人民。たみくさ。民のふえるさまを草に例えていう語)
ボウの音
望 ボウ・モウ・のぞむ・もち 月部
解字 甲骨文は、土盛りの上に立った人(壬テイ)の上に目がつき、遠くの方を見ている形。この目は臣のかたち。臣は目の向きを変えたかたちで、ここでは遠方を見る目を表し、人が遠くをみる(のぞむ)意となり、甲骨文では望み見る・偵察する意。金文は、これに月が付き特別にながめる月である旧暦15日の満月を表す。一方、金文からこの字の発音であるボウ(亡)を臣に置き換えた「亡+月+壬テイ」があり、篆文ですっかり置き換わった。また、特定のものをながめる意から転じて、ねがう・のぞむ意ともなる。なお、現代字は下部の、壬テイ⇒王に変化している。
意味 (1)のぞむ(望む)。遠くをながめる。みわたす。「望見ボウケン」「望楼ボウロウ」(物見やぐら)(2)のぞむ(望む)。ねがう。「希望キボウ」「願望ガンボウ」「所望ショモウ」(望みねがう)(3)ほまれ。人気。「人望ジンボウ」「声望セイボウ」(4)もちづき(望月)。満月。十五夜の月。中秋の名月。
覚え方 亡(な)い月をみたいと王が所望ショモウする。
虻 ボウ・あぶ 虫部
解字 「虫(昆虫)+亡(ボウ)」の形声。ボウボウ(ブーン)と音を出して飛ぶ虫。ボウは飛ぶ音の擬声語。
意味 あぶ(虻)。アブ科の昆虫。「虻蜂あぶはち取らず」(虻も蜂も取れないこと。あれもこれもと狙うと、どちらも手に入らないこと)
<紫色は常用漢字>
<参考音符>
罔 モウ・ボウ・あみ 网部
解字 「亡ボウ(ない・みえない)+网モウ(あみ)」の会意形声。网は、あみの象形、亡は「ない・みえない」意で、罔は獲物をおおい隠して(みえなくして)とらえる「あみ」を表す。網の原字。また、亡に通じて「ない」の意味を表す。
意味 (1)あみ(罔)。網する。 (2)おおう。みえない。 (3)ない。くらい。おろか。
イメージ 「あみ」 (罔・網) おおわれて 「みえない・ない」 (魍・惘)
音の変化 モウ:罔・網・魍 ボウ:惘
音符「罔モウ」 を参照。
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※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。
解字 甲骨文は腰をおろした形の人の手の先にフタのようなものを当てたかたちで、物陰に人がかくれる形の象形とされる。人が亡くなることを暗示した。金文以降、形が変化し現代字で「亡」の形になった。かくれる形で、いなくなる・ほろびる・うしなう・しぬ意を表す。
意味 (1)ほろびる(亡びる)。ほろぼす。「滅亡メツボウ」「亡国ボウコク」 (2)ない(亡い)。うしなう。「亡失ボウシツ」 (3)なくなる。死ぬ。「死亡シボウ」「亡者モウジャ」 (4)にげる(亡げる)。「逃亡トウボウ」「亡命ボウメイ」(本国を脱して他国に身をよせる)
イメージ
「ない・なくなる」(亡・忘・妄・忙・盲・芒・茫・肓)
「逃亡・亡命」(氓)
「ボウの音」(望・虻)
音の変化 ボウ:亡・忘・忙・氓・芒・茫・虻・望 モウ:妄・盲 コウ:肓
ない・なくなる
忘 ボウ・モウ・わすれる 心部
解字 「心(こころ)+亡(なくなる)」 の会意形声。心の中で記憶がなくなること。
意味 わすれる(忘れる)。覚えていない。「忘却ボウキャク」「忘我ボウガ」「健忘ケンボウ」(忘れっぽい。健は程度がはなはだしい意)「忘己利他モウコリタ」(己を忘れて他人を利する)
妄 モウ・ボウ・みだり 女部
解字 「女(おんな)+亡(ない)」 の会意形声。女が我をなくして、とり乱した状態。
意味 みだり(妄り)。でたらめな。「妄言モウゲン・ボウゲン」「妄想モウソウ」「妄念モウネン」
忙 ボウ・いそがしい 忄部
解字 「忄(心)+亡(ない)」 の会意形声。することが多くて心がまともに存在しない状態をいう。
意味 いそがしい(忙しい)。あわただしい。「多忙タボウ」「繁忙ハンボウ」「忙殺ボウサツ」(非常に忙しい)
盲 モウ 目部
解字 「目(め)+亡(ない)」 の会意形声。目が見えないこと。
意味 (1)目が見えない。「盲人モウジン」「盲目モウモク」 (2)わからない。道理にくらい。「文盲モンモウ」「盲従モウジュウ」「盲点モウテン」 (3)一端がふさがる。「盲腸モウチョウ」
芒 ボウ・のぎ・すすき 艸部
解字 「艸(草)+亡(ない・みえない)」 の形声。稲や麦の穂先の見えないほど細いとがったノギをいう。ススキにも枝分れした花穂に小穂が密生し、この先に細い芒があるので、ススキの意ともなる。
小麦のノギ
意味 (1)のぎ(芒)。イネ・ムギなどの実の殻にある固い毛。「芒種ボウシュ」(二十四節気のひとつ。夏至の前の節気で、芒を持つ穀物の種を蒔く時期の意だが、日本の季節には合わない)「光芒コウボウ」(光のほさき。すじのように見える光) (2)すすき(芒)。薄とも書く。イネ科の多年草。大群落を作る草。秋の七草のひとつ。 (3)茫ボウに通じた用法。「芒洋ボウヨウ」(果てしなく広々とした=茫洋)
茫 ボウ 艸部
解字 「氵(水)+芒(すすき)」 の会意形声。芒が群がるように水がひろがること。ひろい・はてしない意となる。
意味 (1)ひろい。果てしない。とおい。「茫洋ボウヨウ」(果てしなく広々とした)「茫漠ボウバク」(広くはてしない) (2)ぼんやりした。はっきりしない。「茫然ボウゼン」(ぼんやりした様子)「茫然自失ボウゼンジシツ」
肓 コウ 月部にく
解字 「月(からだ)+亡(ない・みえない)」の会意形声。身体のよく見えない部分の意から、横隔膜の上の部分をいう。
意味 からだの内部のよく見えない場所。横隔膜の上のかくれた部分。「膏肓コウコウ」(膏は心臓の下の部分。肓は横隔膜の上の部分。病気が治療しにくいところ。「病膏肓に入る」(病(やまい)膏肓(コウコウ)に入る)(病気が治療しにくい所まで進行したこと。膏肓コウモウは慣用よみ)
逃亡・亡命
氓 ボウ・たみ 氏部
解字 「民(たみ)+亡(逃亡・亡命)」 の会意形声。他の地より逃亡・亡命してきた民。民も亡も部首にないので、苦肉の策で「氏」を部首にしている。
意味 (1)たみ(氓)。移住民。亡命してきた民。「流氓リュウボウ」(流浪する民) (2)人民。庶民。「蒼氓ソウボウ」(人民。たみくさ。民のふえるさまを草に例えていう語)
ボウの音
望 ボウ・モウ・のぞむ・もち 月部
解字 甲骨文は、土盛りの上に立った人(壬テイ)の上に目がつき、遠くの方を見ている形。この目は臣のかたち。臣は目の向きを変えたかたちで、ここでは遠方を見る目を表し、人が遠くをみる(のぞむ)意となり、甲骨文では望み見る・偵察する意。金文は、これに月が付き特別にながめる月である旧暦15日の満月を表す。一方、金文からこの字の発音であるボウ(亡)を臣に置き換えた「亡+月+壬テイ」があり、篆文ですっかり置き換わった。また、特定のものをながめる意から転じて、ねがう・のぞむ意ともなる。なお、現代字は下部の、壬テイ⇒王に変化している。
意味 (1)のぞむ(望む)。遠くをながめる。みわたす。「望見ボウケン」「望楼ボウロウ」(物見やぐら)(2)のぞむ(望む)。ねがう。「希望キボウ」「願望ガンボウ」「所望ショモウ」(望みねがう)(3)ほまれ。人気。「人望ジンボウ」「声望セイボウ」(4)もちづき(望月)。満月。十五夜の月。中秋の名月。
覚え方 亡(な)い月をみたいと王が所望ショモウする。
虻 ボウ・あぶ 虫部
解字 「虫(昆虫)+亡(ボウ)」の形声。ボウボウ(ブーン)と音を出して飛ぶ虫。ボウは飛ぶ音の擬声語。
意味 あぶ(虻)。アブ科の昆虫。「虻蜂あぶはち取らず」(虻も蜂も取れないこと。あれもこれもと狙うと、どちらも手に入らないこと)
<紫色は常用漢字>
<参考音符>
罔 モウ・ボウ・あみ 网部
解字 「亡ボウ(ない・みえない)+网モウ(あみ)」の会意形声。网は、あみの象形、亡は「ない・みえない」意で、罔は獲物をおおい隠して(みえなくして)とらえる「あみ」を表す。網の原字。また、亡に通じて「ない」の意味を表す。
意味 (1)あみ(罔)。網する。 (2)おおう。みえない。 (3)ない。くらい。おろか。
イメージ 「あみ」 (罔・網) おおわれて 「みえない・ない」 (魍・惘)
音の変化 モウ:罔・網・魍 ボウ:惘
音符「罔モウ」 を参照。
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