漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「達タツ」<母羊から子羊が生まれる>と「韃タツ」「燵タツ」

2013年06月13日 | 漢字の音符
 タツ・とおる・たち 之部

解字  達の右辺は篆文で「大+羊」の形。大の字は、この字において母羊を後ろから見た形で、この大(母羊)が下の羊を産み落としたかたち[字統]。達は、辶(行く・とおる)をつけて羊のお産のようにすらすらと通る意を表す。現代字は「大+羊」の字の大⇒土に変化した。
意味 (1)とおる(達る)。「四通八達シツウハッタツ」(道が四方八方へ通じる) (2)なしとげる。「達成タッセイ」 (3)とどく。「伝達デンタツ」「配達ハイタツ」 (4)すぐれる。「達人タツジン」 (5)おたっし。通知。「通達ツウタツ」 (6)たち。だち。複数を示す。「僕達ぼくたち

イメージ 
 「とおる・とどく」
(達・韃・撻・燵)
音の変化  タツ:達・撻・燵  ダツ:韃

とおる・とどく
 ダツ・タツ・むちうつ  革部
解字 「革(革のむち)+達(とどく)」の会意形声。革のムチが馬に達する意で、ムチ打つこと。また、ムチを打って馬をあやつる遊牧民族の名前に使う。常用漢字でないため、二点しんにょうである。
意味 (1)むちうつ。=撻タツ (2)「韃靼ダッタン」に使われる字。韃靼はモンゴル系の一部族タタールの呼称。また、中国北方民族の呼称。
 タツ・むちうつ  扌部
解字 「扌(手)+達(=韃。むちうつ)」の会意形声。ムチをうつ時のうつ意で用いるが、一字でも「むちうつ」意として使われる。手にもったムチがとどく意。常用漢字でないため、二点しんにょうである。
意味 うつ。むちうつ(撻つ)。「撻笞タツチ」(むちをうつ)「撻罰タツバツ」(むちうちの刑)
 <国字> タツ
解字 「火(ひ)+達の旧字(とどく)」の会意形声。「炬燵コタツ」のタツに当てて作られた国字。火が炉にとどいている意。炬燵の炬キョ・コは「火+巨(へだたる)」で、地上からへだてて管理されている火の意。両字で管理された火を意味する。こたつは室町時代に禅宗寺院から広まったもので、漢字の炬燵や火燵は禅僧の発案と考えられている。常用漢字でないため、二点しんにょうである。
意味 床に炉を設け、上にやぐらを置き、ふとんを掛けて暖をとる道具。堀ごたつ。移動できる置ごたつもある。火燵とも書く。「掘炬燵ほりごたつ」「置炬燵おきごたつ」「炬燵板こたついた
<紫色は常用漢字>

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音符「哭コク」 <大声でなく> と 「喪ソウ」 

2013年06月05日 | 漢字の音符
 コク・なく  口部         

解字 「口口(口ぐちに大声を出す)+犬(犬の犠牲)」の会意。共に埋葬する犠牲の犬で葬送の儀礼をあらわし、口口で大きな声でなくことを示す。原義は葬送の時、なくこと。口口は人が泣くのであり、犬が鳴くのではない。犬が鳴くのは吠ハイで表す。
意味 なく(哭く)。声をあげてなく。「哭泣コッキュウ」「慟哭ドウコク」(大声をあげてなげき哭くこと)

イメージ 
 「大声でなく」
(哭・喪)
音の変化  コク:哭  ソウ:喪

大声でなく
 ソウ・も・うしなう  口部            

解字 篆文は、「哭コク(大声でなく)+亾ボウ(=亡。死者)」の会意。亾ボウは死者の象形。この字で哭は、口口が犬の上でなく犬の左右にひとつずつ配されている。喪の原義は亡き人を送り大声で哭くこと。死者との別れを悲しむ葬送の意。また、死後一定期間悲しみの意を表す「も」の意味にも用いられる。
意味 (1)死者をほうむる儀式。とむらい。「喪主もシュ」「喪服もフク」 (2)も(喪)。人の死後、近親者が一定期間悲しみの意をあらわす礼。「喪中もチュウ」「喪家ソウカ」(喪中の家) (3)うしなう(喪う)。なくす。「喪失ソウシツ」「喪亡ソウボウ」(なくなる。滅亡する)
覚え方 じゅう()に、くちぐち(口口)、いち()に、れめ(レメ) ※は、ノに右はらい
<紫色は常用漢字>

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