MSN産経ニュース 2012.5.15 09:45
国連特別報告者が米先住民の権利の保護状況に関する現地調査を初めて実施し、米政府に対し「聖地」の返還など、先住民が抑圧で受けた傷が癒やされる措置を講じるよう求めた。米国は2007年に採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」を無視していたが、オバマ政権になって一転、支持を表明。担当の特別報告者を受け入れた。きょうのテーマは「先住民に聖地返還を」とした。(SANKEI EXPRESS 内畠嗣雅)
米、国連宣言を無視
国連人権理事会(本部=ジュネーブ)は現在、北朝鮮やミャンマーなど人権状況に問題のある10の「国」、児童虐待や国内避難民など35の「テーマ」についてそれぞれ、「特別報告者(special rapporteur)」などの肩書の担当者を任命(学者、元外交官ら)。現地調査の上、報告、改善のための提言をまとめさせている。提言に拘束力はないが、対象国への圧力にはなる。
米国はいつもは、特別報告者が調べるような国々の人権状況を「弾圧がある」などと非難し、制裁をちらつかせて改善を要求する役回り。ところが、先住民のテーマでは逆に調べられる立場となる。
世界に3億7000万人いるとされる先住民の人権や文化、経済的権利を保護する「先住民族の権利に関する国連宣言」は07年9月の国連総会で採択された。賛成は日本など143カ国。米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国が反対した。宣言の採択に伴い、国連人権理事会は先住民問題をテーマの一つとした。
いまも抑圧の傷
ロイター通信によると、先住民問題担当の国連特別報告者、ジェームズ・アナヤ氏は12日間かけて、首都ワシントンとアリゾナ、アラスカ、オレゴン、ワシントン、サウスダコタ、オクラホマの各州を訪れ、各地の先住民代表、米政府当局者らと面談した。アナヤ氏は今月4日、「米先住民は抑圧の歴史によって今日も深く傷ついており、米政府は傷を癒やすためのたくさんの措置を講じる必要がある」とのコメントを発表した。
「抑圧」とは土地、資源の収奪、言語の喪失、条約の不履行(米政府は先住民各部族と条約を結んだ)、人種差別、残虐行為などを指す。南西部ではウラン採掘により先住民の土地、水資源が汚染された。アナヤ氏は傷を癒やすための措置の一つとして、先住民が「聖地」とみなす土地の返還を挙げた。
初期の米大統領の巨大な胸像が彫られたラシュモア山のあるブラックヒル(サウスダコタ州)はスー族の聖地であり、1867年に米政府とスー族が交わした条約で、スー族側への帰属が示されていた。だが、一帯で金が発掘され、その後の法律で米国への帰属と改められた。米最高裁は1980年、米政府に非があったとする判決を下し、補償金の支払いを命じた。スー族側はあくまで聖地の返還を求め、補償金の受け取りを拒否している。
報告者受け入れ
ブッシュ共和党政権下で、「先住民族の権利に関する国連宣言」を無視した米国だったが、政権が民主党に代わり、バラク・オバマ大統領(50)は2010年12月、宣言への支持を表明した。米国初の黒人(アフリカ系)の大統領であるオバマ氏は、先住民を含む人種的少数派(マイノリティー)重視で一貫している。
先住民問題を担当する国連特別報告者のアナヤ氏は米国の法学者で、ニューメキシコ州出身。米先住民のアパッチ族、プレペチャ族の血が流れており、子供のころから先住民問題への意識は高かったという。アナヤ氏による正式な報告、提言は今年9月、国連人権理事会に提出される。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120515/amr12051509580002-n1.htm
国連特別報告者が米先住民の権利の保護状況に関する現地調査を初めて実施し、米政府に対し「聖地」の返還など、先住民が抑圧で受けた傷が癒やされる措置を講じるよう求めた。米国は2007年に採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」を無視していたが、オバマ政権になって一転、支持を表明。担当の特別報告者を受け入れた。きょうのテーマは「先住民に聖地返還を」とした。(SANKEI EXPRESS 内畠嗣雅)
米、国連宣言を無視
国連人権理事会(本部=ジュネーブ)は現在、北朝鮮やミャンマーなど人権状況に問題のある10の「国」、児童虐待や国内避難民など35の「テーマ」についてそれぞれ、「特別報告者(special rapporteur)」などの肩書の担当者を任命(学者、元外交官ら)。現地調査の上、報告、改善のための提言をまとめさせている。提言に拘束力はないが、対象国への圧力にはなる。
米国はいつもは、特別報告者が調べるような国々の人権状況を「弾圧がある」などと非難し、制裁をちらつかせて改善を要求する役回り。ところが、先住民のテーマでは逆に調べられる立場となる。
世界に3億7000万人いるとされる先住民の人権や文化、経済的権利を保護する「先住民族の権利に関する国連宣言」は07年9月の国連総会で採択された。賛成は日本など143カ国。米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国が反対した。宣言の採択に伴い、国連人権理事会は先住民問題をテーマの一つとした。
いまも抑圧の傷
ロイター通信によると、先住民問題担当の国連特別報告者、ジェームズ・アナヤ氏は12日間かけて、首都ワシントンとアリゾナ、アラスカ、オレゴン、ワシントン、サウスダコタ、オクラホマの各州を訪れ、各地の先住民代表、米政府当局者らと面談した。アナヤ氏は今月4日、「米先住民は抑圧の歴史によって今日も深く傷ついており、米政府は傷を癒やすためのたくさんの措置を講じる必要がある」とのコメントを発表した。
「抑圧」とは土地、資源の収奪、言語の喪失、条約の不履行(米政府は先住民各部族と条約を結んだ)、人種差別、残虐行為などを指す。南西部ではウラン採掘により先住民の土地、水資源が汚染された。アナヤ氏は傷を癒やすための措置の一つとして、先住民が「聖地」とみなす土地の返還を挙げた。
初期の米大統領の巨大な胸像が彫られたラシュモア山のあるブラックヒル(サウスダコタ州)はスー族の聖地であり、1867年に米政府とスー族が交わした条約で、スー族側への帰属が示されていた。だが、一帯で金が発掘され、その後の法律で米国への帰属と改められた。米最高裁は1980年、米政府に非があったとする判決を下し、補償金の支払いを命じた。スー族側はあくまで聖地の返還を求め、補償金の受け取りを拒否している。
報告者受け入れ
ブッシュ共和党政権下で、「先住民族の権利に関する国連宣言」を無視した米国だったが、政権が民主党に代わり、バラク・オバマ大統領(50)は2010年12月、宣言への支持を表明した。米国初の黒人(アフリカ系)の大統領であるオバマ氏は、先住民を含む人種的少数派(マイノリティー)重視で一貫している。
先住民問題を担当する国連特別報告者のアナヤ氏は米国の法学者で、ニューメキシコ州出身。米先住民のアパッチ族、プレペチャ族の血が流れており、子供のころから先住民問題への意識は高かったという。アナヤ氏による正式な報告、提言は今年9月、国連人権理事会に提出される。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120515/amr12051509580002-n1.htm