信濃毎日新聞 2025/03/11 09:31
どこが謙虚なのか。「厳しい反省」も見られないままである。
自民党が9日、第92回党大会を東京都内で開いた。党総裁の石破茂首相は、派閥裏金事件に伴う政治不信を踏まえ「政府を謙虚に機能させ、国会を公正に運営する」などと述べている。
それならば、裏金事件の疑念を払拭することが最優先ではないのか。議員側への資金還流を誰が、いつ始めたのかも分かっていない。事件の主な舞台となった旧安倍派が、いったん中止した資金の還流を再開した経緯も不明だ。
裏金は長期間続いてきた疑いが濃厚で、還流を受けた議員らの使途も不明確のままである。
自民党は全容解明に否定的だ。2月末の衆院予算委員会の参考人聴取では、旧安倍派の会計責任者が2022年8月の幹部会合で再開が決まったと証言した。会合に出席した幹部と証言が食い違ったままだ。党は再調査にも応じず、幹部らの再聴取も否定している。
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衆院議員だった23年に杉田氏はアイヌ民族や在日コリアンへの差別的言動をして、法務当局から人権侵犯と認定された。性的少数者を「生産性がない」と寄稿して問題化。性被害者を中傷する投稿に「いいね」を多数押して被害者から提訴され、賠償命令も受けた。
それなのに、今回の公認の選考過程で、執行部から差別的言動を問われることもなかったという。
杉田氏の公認は、国会議員が差別的な言動をして、社会を扇動することを自民党が容認することにつながる。「国民の声に謙虚でありたい」という首相の言葉は空虚に響くだけである。