静岡県立美術館館長 木下直之
日本経済新聞 2025年3月3日 2:00 [会員限定記事]
幕末の蝦夷地を松浦武四郎がどれほど精力的に歩き回ったかは、安政6年(1859年)に出版した地図「東西蝦夷山川地理取調図」に一目瞭然だ。奥地までアイヌ語の地名がびっしりと記されている。そんな情報を得られるだけ、アイヌの人びととの間に信頼関係が成り立っていた。「北海道」という名も武四郎の提案とされる。
それだけに、明治政府による抑圧的な北海道経営に嫌気がさした。官職を投げ打ち、野に下り、古物や古銭の...
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