去る5月25日の「SPレコード試聴会」(大分市)で偶然お会いしたオーディオ仲間のYさん。
同じ別府市内に住んでいるのでもっと頻繁に顔を合わせてよさそうなものだが、Yさんはバリバリの現役、当方は「尾羽打ち枯らした素浪人」(笑)というわけでなかなかお互いの訪問日程が噛み合わないのが悩みの種。
そのYさんから「プリアンプとCDプレイヤーの電源にリチウムイオン電池を導入しましたよ。」と、興味深い情報が入った。
マニアならご存知のとおりオーディオ機器の電源対策は音質に関わる最重要事項の一つ。
つい先日も、テレビ視聴用の真空管アンプ1台の電源トランスがメチャ熱くなるクセを持っているので、同じ電源タップに扇風機のコンセントを挿し込んで冷していたところ、音声の中からジーッと雑音がするので、そのコンセントを引き抜いたところ、ピタリと雑音が治まった。
ちなみに我が家の電源対策はデジタル機器のCDトランスポートとDAコンバーターはCSEの電源レギュレーターに接続してクリーン化を図っている。通常の家庭用電源に接続したときと比べて、はるかに「澄み切った音」になるので効果絶大。
また、パワーアンプ群は200V電源を増設してそれを100Vに降圧したうえでCSEの「ゼロ・クロス・スイッチ」に繋ぎ、そこから電源を取っているし、プリアンプ群にしてもわざわざ別の電源タップから引いている。
電源対策に関してはやればやるほど効果が出るので、Yさんからリチウムイオン電池の情報を聞くと、試聴したくてもう矢も楯(たて)もたまらない。
そこで、先日、Yさんとようやく日程が折り合って舌なめずりしながらクルマでわずか10分ほどのご自宅にお伺いした。
ソニー製の「ホームエネルギーサーバー」(以下「サーバー」)という名称のリチウムイオンを利用した充電可能の電池である。丁度“一斗缶”程度の大きさ。
ちなみにYさんが使っておられるプリアンプとCDプレイヤーはいずれもアキュフェーズ製。アキュフェースといえばお医者さんなどのお金持ちがよく使う国内最高のブランドというのが通り相場だが、その中でも飛びっきりの上級機種である。
これらCDプレイヤーやプリアンプなどはシステムのうちで前段機器とされ、あまり電力を喰わない代わりに精密な微小電流のコントロ-ルを要求される役どころなので家庭用電源と隔絶したリチウムイオン電気サーバーを配置するのは実に理に適っている。しかも両者にそれぞれサーバー1台(計2台)を配するという豪華版だから、その“こだわり”には心から恐れ入リました(笑)。
この際なのでネットでソニー製のサーバーの主な諸元をググってみた。
☆ 容量は300W/h
☆ 充電時間は約6時間でバッテリ-残量は4段階に分かれたランプで確認できる
☆ BDレコーダー(50W)の場合、およそ5時間連続で使用できる
プリアンプやCDプレイヤーなどは、たかだか50W程度の消費電力だろうから、5時間程度はぶっ続けで使用できる計算で通常の使用範囲としてはこれで十分だろう。
リチウムイオン電池の性能向上は、震災時の予備電源やハイブリッド車用としてますます必要性が高まっており、関係各社が“しのぎ”を削っている技術分野だが、とうとう本格的に家庭用として使える時代になったようだ。
つい先日(6月20日)もボッシュ(ドイツ)と日本のGSユアサ、三菱商事が次世代リチウムイオン電池の取り組みに向けて国際的な提携を発表したばかり。
将来、「オーディオ機器の電源はすべてリチウムイオン電池に」の時代がやってくる可能性が高い。省エネ効果もありそうだし、いずれ遠くない将来に予想される東南海地震のときにも活躍が期待できる。
さて、蓄電池の性能向上は別として、一番の興味はどのくらい音質向上に効果があるのだろうかというわけで、いろんなCDを拝聴させてもらった。Yさん宅の従来の音はすでに3回ほど試聴させてもらっているので熟知している。
いやあ、これは素晴らしい!
アキュフェーズの製品にケチをつける気は毛頭ないし、それぞれ各人の好みだから良いとか悪いとかの話ではないが、これまで同社の機器については「機械的な電気特性は非の打ちどころがないが、どこか冷たくて血が通っていない音」という個人的な印象をどうしても拭い切れなかった。
そもそも日頃から電気特性が数段劣る真空管アンプを愛用しているので、これは自分の聴感上の「偏見」というものだろうが、今回聴いた音はそういう印象を完全に吹き飛ばすような潤いと艶やかさがあった。
「アキュフェーズらしさとはいったい何?」
到底、自分に判断する資格があるとは思えないが、これが本来の音だとしたら、これからアキュフェーズファンに“宗旨替え”してもいいくらい(笑)。
これだけ効果があるのなら、自分もリチウムイオン電池を考えてみたいが、このソニー製は使用中は充電がきかないのがちょっと残念。そもそも技術的に可能かどうかもよく分からないが、将来、その辺が解決されれば「買い」!
おっと、一番関心事の値段を忘れていた。1台あたり定価15万円のところを12万円で購入されたとのことだった。
どうやら、これが一番のネックになりそうで・・・。