22日(土)~23日(日)にかけて、我が家に相次いでお客さんが試聴にお見えになった。
22日がオーディオ仲間のAさん、そして23日がYさんだったが、我が家の「AXIOM80・3ウェイシステム」と「JBL3ウェイ・オール・ホーン・システム」とを聴き比べての感想が奇しくもお二人とも同じだった。
「ふっくらとして艶やかなヴィオリンの音は“AXIOM80”しか出せないし、一方で管楽器やシンバルのきらびやかな音はJBLしか出せないし、一つのスピーカーに両方の音を求めるのは無理ですね」に落ち着いた。
それぞれのスピーカーには再生する楽器の得手不得手があって、一概にどちらが絶対的にいいとは簡単に決めつけられないというわけ。
「クラシックからジャズまでいろんな音楽を満足して聴こうと思ったら、少なくとも2系統のシステムが必要になる。」との従来からの想いを一層強くした。
折しも、このことと深く関係する(後述)内容のメールがオーディオ仲間のMさん(奈良)から「お知らせ」として、入ってきた。(「いつも貴重な情報ありがとうございます!」)
「Youtube で瀬川さんの肉声が聞こえます。モニタースピーカーについての講演です。私の所有するロジャースのPM510も出て来て興味深い講演でした。」(以下、クリック可)
http://www.youtube.com/watch?v=kiuFRvf-RSQ
オーディオ史上、屈指の存在ともいえる評論家「瀬川冬樹」さん(故人)については、先日のブログ「良い音とは、良いスピーカーとは」で触れたので紹介は割愛するが、急逝された時にステレオサウンド誌に掲載された「オーディオ界の巨星墜つ」という見出しがいまだに目に焼き付いている。
それを契機として「ステレオサウンド」誌の講読からもすっかり遠ざかってしまった。「瀬川さんのいないステレオサウンド誌なんて、クリープを入れないコーヒーみたいなものだ」(笑)。
その瀬川さんの偉大な足跡が近年になって続々と復刻されているのはまことに喜ばしい限り。
瀬川さんのかっての評論には現代のオーディオ界が見失っているものが沢山あるよう思うのは、はたして自分だけだろうか?
つい口上が長くなってしまったが、このユーチューブをさっそく聞いてみた。20分程度だったが、仰っていることが前述した自分の想いと“そっくり”だったのでいささか驚いた。抜粋してみよう。(以下、「SP」はスピーカーの略)
「アメリカのJBLモニターSPは、レコードに刻み込まれている音を残さず拾い出す特徴があります。一方でイギリスのモニターSP(510)もあるのですが、同じモニターなのに国民性が違うのかまったく音質が違います。しかし、時間をかけて聴くと、両方納得できる音です。
30年以上オーディオ遍歴をしてきましたが、アメリカ製SPとイギリス製SPといまだにどちらか一つに絞りきれません。JBLの4350は実にいいSPです。プログラムソースに入っている低音をきちんと出す。年から年中、低音を出すSPがありますが、これは駄目です。必要量に応じて出すのが本当にいい低音です。
しかし、JBLの音は弦の音が金属的に鳴ります。優しく鳴らせばうまくいきますし、JBLだけ聴いているとおかしくないのですが、これをイギリス系のSPに切り換えると弦の音が実によく鳴る。ヴァイオリンの弦が胴に共鳴して響く音が何とも言えない。これはJBLには出せない音です。
総じてアメリカ製のSPは弦楽器オンチですが、一方で、シンバルを叩いたり弾きかえす音は独壇場です。
弦楽器と金属系楽器の両方を100%うまく鳴らすスピーカーは今のところありません。将来そういうSPが出てくるかどうかは分かりませんが、もしそうなったとしてもそれがはたしていいのか悪いのか、面白味がないという人もいるかもしれませんね。
したがって、今のところどうしてもJBL系とイギリス系のSPを同居せざるを得ません。」
大要、以上のとおりだが、ロジャースのPM510をクラシック一辺倒のMさんがことのほか愛用されている理由もよく分かった。
さて、前述したとおり我が家も瀬川さんとまったく同じ理由でアメリカ系SPとイギリス系SPをやむなく同居させている。瀬川さんが亡くなられたのは1981年なので、もう30年以上も前の話だが、JBLシステムが金属製のダイアフラムで弦楽器の主要帯域を鳴らす仕組みを変えない限り、今でも通用する話。
そもそも、我が家のそれほど広くもない部屋に2系統のシステムを同居させる「愚」は分かっているし、本当はやりたくないのだが、クラシックもジャズもうまく聴こうと欲張ると必然的にそうせざるを得ない。
「ほんとうにSPをうまく鳴らせば、ジャズもクラシックも両方いけるはず」という話をよく聞くし、その通りだと思うが、今のところそういう理想的なSPはない。
まあ、市販されているすべてのSPを聴いたわけではないので断言は禁物だろうが・・・。また、両方70点程度で良ければそういうSPの類は“ごまん”とあるので、これはあくまでも高次元での話(笑)。
繰り返すようだが金属製のダイアフラムで弦楽器の胴鳴りを「ふっくら」と鳴らすことが出来れば文句は言わない!
そういうわけで、JBLに弦の音を求めるのは「木に縁(よ)りて魚を求める」ようなものだし、一方で「AXIOM80」に管楽器の咆哮とシンバルの音を求めるのは「比丘尼(びくに)に求めるに陽物(ようぶつ)をもってする」(司馬遼太郎「歳月」)ようなものなのだ(笑)。