タイトルに使っている「野太い」という形容詞は、広辞苑によると「はなはだ横着である、大胆である、図太い」とある。
オーディオマニアにとって、「高音」とは一般的に繊細かつ微妙な音場の雰囲気を醸し出す役割を担っており、「野太い高音」と表現するのが適当でないことは十分承知しているが、先日聴かせてもらった「SPレコード試聴会」(5月25日開催)の高音域の鳴り方を表現するとなると、こういう形容しか思いつかない。
それも気に入らない音ならすぐに忘れてしまうのだが、2週間ほど経ってもいまだに強力に印象に残っているところをみると、おそらく自分好みの音なのだろう。
この試聴会の模様については先日のブログで「“失ったもの”と“得たもの”」「実在感のある音」の2回にわたって登載したが、爾来「ツィーター(高域用ユニット)を、使っていないのにあのようなリアルな高音がどうして出るんだろう?」と、折にふれ自問自答する毎日。
そもそも「ツィーターの役割っていったい何?」
曲りなりにもオーディオを40年以上やってきて、いまだにこういう初歩的な疑問に囚われるのだから、自分なんぞはまったく大したことはない(苦笑)。
結局、いつものように「下手の考え休むに似たり」で、手っ取り早く我が家のシステムで実験してみることにした。
もともと、以前から再生レンジを高域方向に広げるとたしかに“いい面”もあるものの、一方では全体的に音が薄くなる印象も抱いていたので丁度いい機会。まあ、聴感覚の分野なので個人差もあることをお断りしておこう。
実験の概要を記す前に前提として、ここで「周波数帯域の分類」(「エレクトロニクス講座・応用編1」)を明確にしておくほうが分かりやすい。
「最低音域=30~60ヘルツ」、「低音域=60~100ヘルツ」、「中低音域=100~200ヘルツ」、「中音域=200~500ヘルツ」、「中高音域=500~1000ヘルツ」、「高音低域=1000~2000ヘルツ」、「高音域=2000~4000ヘルツ」、「高音高域=4000~8000ヘルツ」、「最高音域=8000~16000ヘルツ」
以上、9つの帯域に細かく分けてあるが、この分類は数値で明確に区分できるわけではなく、おおよその目安でそれぞれ両隣の帯域と重なる部分があるのは言うまでもない。
まあ、大雑把な分け方となると「低音域=30~200ヘルツ」、「中音域=200~1000ヘルツ」、「高音域=1000~16000ヘルツ」といったところ。こうしてみると人間の耳にとって一番敏感かつ重要な帯域は「中音域」にあると言える。
ちなみに、我が家の2つのシステムは低音用ユニットと中音用ユニットを200ヘルツ付近でクロスさせているが、タンノイさんの2ウェイ同軸ユニットではクロス周波数を1000ヘルツにしてある。非常にデリケートな「中音域」で違うユニット同士を混ぜ合わせて音を濁らせない配慮をしているのが伺える。
さて、こういう帯域区分を踏まえて野太い「高音」を出すための対策だが、どうやら「中音域」から「高音高域」にかけての音の密度にポイントがありそうなので、今回の実験ではとりあえず「高音高域」部分に主眼を置くことにした。
(実験の)趣旨は以上のとおりだが、前回のブログで登載した「テスト盤の種類はオーディオレベルの証し?」の後段で記載したように「AXIOM80」システムに加えていたJBL075ツィーターを外して、「LE85」(中域用ドライバー)を裸の状態でプラスしたのもその一環だが、今度はJBLの3ウェイシステムにも応用してみることにした。
先ず、JBL375のハイカット用のコイルを外す。それに応じてJBL075ツィーターのローカット用のコンデンサーを入れ替えて、周波数帯域の下限を9000ヘルツ前後から16000ヘルツ前後へと引き上げる。
大雑把な説明で専門外の人にはサッパリ分からないだろうが、“くどい”説明は嫌われるだろうから、このくらいにしておこう。
画像左側がこれまで075ツィーターのSPコードに挿入していたローカット用のオイル・コンデンサー(ウェスタン製、ブラック仕様)、右側が375中域用ドライバーのSPコードに挿入していたハイカット用のコイル。
これで375の帯域が天井知らずになって、きっと伸び伸びと鳴ってくれるに違いない。
ちなみに「375」はメーカー仕様のオリジナル・ネットワークではハイカットを7000ヘルツ程度にしているはずで、そもそも10.2センチ口径のダイアフラムではそれ以上の帯域を持たせるのは好ましくないが、我が家の375はJBL純正の2441用のダイアフラム(ダイアモンドカット)が入っており、低音域はあまり出ない代わりに高音域は比較的伸びるとされているので好都合だった。
さあ、これで胸をワクワクさせながら試聴してみると・・・。自画自賛は“はしたない”ので、やめておこう(笑)。
ちなみに、この変更以後に我が家にオーディオ仲間が大分から3名、地元別府から2名、それぞれ試聴にお見えになったが、いずれも好評で「以前よりもずっと自然で聴きやすくなった!」との評価だった。
まあ、他家の音を聴いて「この音はおかしい」なんて、面と向かって言う人もおるまいが、野太い「高音」に1歩近づけたことはたしかだろう。