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共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

思いを受け継いで

2016年11月18日 22時05分10秒 | 音楽
今日、あざみ野の教室に行く前に、都内にある昔からお世話になっている方の御自宅にお邪魔しました。

この方は、かつてオーケストラでいろいろと演奏を御一緒したヴィオラ奏者でしたが、数年前からある運動系の難病を患ってしまい、楽器演奏はおろか、杖無しでは普通に立っているのも儘ならない状況になってしまっているということでした。直接確かめる術も無いままその後の容体を案じていた私の元に数日前御本人から連絡があり、相談も含めて諸々お話があるということで伺うことになりました。

久々にお目にかかった御当人は、予想に反してお元気そうでした。曰く、小脳の機能低下によって、常に体がふらついて何かに掴まるか杖をつかなければ歩けないのと、特定の発音の呂律が回りにくいことの他はすこぶる元気だということで、少し安心しました。

お茶を頂きながら積もる話に花を咲かせていましたが、その中で、この病気が進行性であること、難病認定を受けていて薬で進行を遅らせてはいるが完治することはないこと、足や呂律だけでなく弦楽器奏者として重要な左手の動きが鈍っていること等を話されました。そこで、これを期に引退しようと思う、ついては自分の愛用していたヴィオラを引き取ってもらいないだろうか…という話をされました。

このことについては、過日の電話でもお話がありました。その時には躊躇したのですが、

「何処の誰かも知らない人間の手に渡るより、一緒に演奏してきた貴方に引き取ってもらった方が安心だ。」

という言葉を頂いて涙が出るほど嬉しく思い、破格の御値段で譲って頂くことになりました。

このヴィオラは旧東ドイツの作家Bernd Hillerによる1994年製のもので、サイズは胴長38㎝とヴィオラとしてはかなり小柄なものです(標準的なヴィオラのサイズは胴長40㎝ほど)。しかしながらボディーに厚みがあるため、小型のヴィオラながらしっかりとした低音を響かせることができます。

現在私が使っているヴィオラは胴長が42㎝あり、標準体よりも大きなものです。特に低音の響きに惚れ込んで入手し愛用しているのですが、その大きさ故に最近演奏後に疲れてしまうことも何度かありました。そういった意味で、いみじくもこの小さなヴィオラが私の元に来たということは、ある意味天祐とでも言うべきことだったのかも知れません。

お世話になった方ともう二度と合奏を御一緒出来なくなってしまったのは悲しいことですが、折角頂いた御縁を大切にしながら、これからは責任をもってこの楽器とも演奏活動していきたいと思います。
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