今日は台風一過の青空が広がる、気持ちのいいお天気に恵まれました。そして気温も鰻登りとなり、最高気温が30℃を超える真夏日ともなりました。
さて、今日10月2日はドイツ・ロマン派の最後の作曲家ともいわれているマックス・ブルッフの祥月命日です。
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マックス・クリスティアン・フリードリヒ・ブルッフ(1838〜1920年)はドイツのケルンに生まれた作曲家です。ブルッフは指揮者や教育者としても有名で、かつては日本からドイツに留学していた山田耕筰(1886〜1965)や、拙ブログでも採り上げたイギリスの作曲家レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(1872〜1958)もブルッフに師事していました。
ブルッフの作品を特徴づけているのは、何と言ってもその叙情的な旋律性です。ブルッフは魅力的な旋律を生み出すことに長けていて、それが各作品を親しみやすいものとしています。
ブルッフの音楽的理想は活動の最初期に確立され、それは時代が20世紀に入り、第一次世界大戦を経験する最晩年までその態度を変化させることはありませんでした。ブルッフはロマン派音楽の中でも古典的な理想を掲げていて、特にメンデルスゾーンやシューマン、友人でありライバルでもあったブラームスへの尊敬は終生変わることが無かったといいます。
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代表作である《ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調》やヴァイオリンと管弦楽のための《スコットランド幻想曲》、チェロと管弦楽のための《コル・ニドライ》といった数あるブルッフ作品の中で、ヴィオラ弾きの端くれとして今日は敢えて《ヴィオラと管弦楽のためのロマンス ヘ長調》を紹介します。
ブルッフはその後半生に、クラリネット奏者だった息子のために作曲した《クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲》や、ピアノ・クラリネット・ヴィオラのための《8つの小品》といった中音域楽器のための作品を作り上げました。このロマンスは1911年に作曲されたもので、ブルッフならではの歌が切々と紡がれている佳作です。
いかにもロマン派的な美しい旋律ですが、この曲が作られた1911年にはフランスでドビュッシーやラヴェルといったいわゆる印象派の作曲家が活躍し、ヤナーチェクやストラヴィンスキーといった作曲家が新たな音楽界の旗手として台頭していたということを思うと、何とも古めかしい音楽とも思えてきます。第一次世界大戦開戦前夜ともいえる不穏な時代にこのような叙情歌を生み出したブルッフの胸には、一体どのような思いが去来していたのでしょうか。
そんなわけで今日は、20世紀に作られたとは思えないほど美しく叙情的な音楽を、マキシム・リザノフのヴィオラでお楽しみください。