共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日は歌劇《ドン・ジョヴァンニ》初演の日〜ダニエル・ハーディングによる《ドン・ジョヴァンニ》序曲

2021年10月29日 18時40分35秒 | 音楽
今日も神奈川県は爽やかな秋晴れの空が広がりました。こうした気持ちのいい陽気が続いてくれると、子どもたちにとっても大人たちにとっても嬉しいものです。

ところで今日10月29日は、モーツァルトの歌劇《ドン・ジョヴァンニ》が初演された日です。

今でこそモーツァルトの数々のオペラは人気ですが、当時のウィーンではそれほど評判になりませんでした。代表作のひとつである歌劇《フィガロの結婚》ですらウィーンでは不発でしたが隣国チェコののプラハでは大ヒットし、モーツァルト自身が招かれることになりました。

プラハに着いたモーツァルトは街行く人々が鼻歌に《フィガロの結婚》の一節を歌っているのに接して大いに感激し、父レオポルト・モーツァルトへの手紙にプラハでの評判の高さを書き送りました。その結果、プラハの翌シーズンのために新しい作品を依頼されてできたのが歌劇《ドン・ジョヴァンニ》で、初演は1787年10月29日にプラハのエステート劇場でモーツァルト自身の指揮で行われました。

初演に先立って書き掛けの原稿を持ってプラハにやってきたモーツァルトは、友人夫妻の別荘に滞在して最終仕上げを急ぎました。ところが前夜になっても序曲だけは未完成だったため、眠気を押さえるために妻のコンスタンツェに話を聞かせてもらったり飲み物を作ってもらったりしながらほぼ徹夜でスコアを書き上げて、翌早朝にはどうにかこうにか写譜屋に原稿を渡せた…という、演奏する側からすれば何とも迷惑な逸話が残されています(苦笑)。

個人的な話ですが、昭和時代人として《ドン・ジョヴァンニ》というと思い起こすのが、1984年に公開された映画《アマデウス》です。この映画の中で《ドン・ジョヴァンニ》は父レオポルト・モーツァルトの死を象徴するように登場し、



ポスターにもそれを暗示するような仮面姿の男が描かれたりと、決して史実通りにモーツァルトの生涯を描いているわけではないエンターテインメント作品でありながら、《ドン・ジョヴァンニ》や《交響曲第25番ト短調》といったモーツァルトの短調作品を効果的に使った名画となっています。

さて、いくら何でも《ドン・ジョヴァンニ》全編の動画を載せたら3時間近く時間がかかってしまうので、今回はその序曲の動画を転載してみました。

先程も紹介したように序曲はわずか一晩で書かれましたが、さすがモーツァルト晩年の作だけあって円熟した曲に仕上がっています。実際のオペラの序曲では終結せずにそのままオペラの本編につながっていくのですが、モーツァルト自身が演奏会用の華々しい終結部を別に作曲していて、演奏会で独立して演奏されることもしばしばあります。

実は私も12月に出演する演奏会で、この《ドン・ジョヴァンニ》序曲を演奏することになっています。なかなか難しい曲なので、頑張って練習しないと…。

そんなわけで、今日は2006年のザルツブルク音楽祭で披露された《ドン・ジョヴァンニ》の序曲を、ダニエル・ハーディング指揮によるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でお楽しみください。


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