共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日は歌劇《フィガロの結婚》の初演日〜コンサートの定番曲でもある序曲

2022年05月01日 12時40分55秒 | 音楽
折角の昨日の晴天は何処へやら、今日はまた曇りがちの空模様となりました。午後からは冷たい雨も降り始めてきたくらいです。

ところで、今日5月1日は



モーツァルトの歌劇《フィガロの結婚》が初演された日です。

歌劇《フィガロの結婚》は、フランスの劇作家カロン・ド・ボーマルシェ(本名ピエール=オーギュスタン・カロン、1732〜1799)が1778年に書いた世相風刺的な戯曲を基ににして、モーツァルトが1786年に作曲したオペラです。オペラの台本は、後に《ドン・ジョヴァンニ》や《コジ・ファン・トゥッテ》も手掛けたイタリア人台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテ(1749〜1838)が、ボーマルシェの戯曲に基づいてイタリア語で書きました。

この歌劇の原作である『フィガロの結婚』という戯曲は、後にロッシーニが1816年にオペラ化した第1部の喜劇『セビリアの理髪師』、ミヨーが1964年にオペラ化した第3部の正劇『罪ある母』と共に、ボーマルシェによる『フィガロ三部作』と呼ばれている連作の第2部にあたるものです。前作『セビリアの理髪師』の好評を受けての続編で、1784年にパリで初演されて前作以上の評判を得ました。

この歌劇《フィガロの結婚》のウィーンでの上演については、実は一悶着ありました。というのも、この戯曲が封建貴族アルマヴィーヴァ伯爵に仕える家臣フィガロが、自身の結婚式をめぐる事件を通じて主人である伯爵をやりこめてしまうという貴族を痛烈に批判した内容のため、ヨーロッパ各国で度々上演禁止に遭っていたためです(特に革命の機運が高まりつつあったフランスの国王ルイ16世は「これの上演を許すくらいなら、政治犯を収容しているバスティーユ監獄を破壊する方が先だ」と激昂したといわれています)。

しかしながら、モーツァルトが活躍していた神聖ローマ帝国内ではこの戯曲に魅せられた人々からの強い要請を無視できず、遂に神聖ローマ皇帝ヨーゼフ2世のお膝元ウィーンで公演許可が出されるに至りました。このような特権階級にとって危険な思想を孕んだ作品をオペラ化しウィーンで上演できた確固たる理由は不明ですが、台本を担当したロレンツォ・ダ・ポンテの自伝によれば、ダ・ポンテがうまく皇帝を懐柔して許可を得た…ということになっています。



世相風刺的な内容はさておいて、《フィガロの結婚》には『恋とはどんなものかしら』『もう飛ぶまいぞこの蝶々』『愛の神よ照覧あれ』をはじめとした様々な名曲があります。その中でも楽器奏者として縁深いのは、何と言っても序曲です。



こちらは序曲のモーツァルトの自筆譜です。よく見ると現在よく見られる書き方と違って、一番上から第1・第2ヴァイオリン、ヴィオラ、その下にフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット、クラリーノ(トランペット)、ティンパニ、最下段にチェロ・コントラバスの順になっていて、管打楽器パートを弦楽器パートでサンドするように書かれています。

3分前後の短い曲ですが、その短い時間でこれから始まるドタバタ喜劇を予感させる、楽しい気分にしかならない名曲です。オペラを離れてオーケストラのコンサートのオープニングに使われることもあるので、今までに何回演奏したか分かりません。

そんなわけで、今日は歌劇《フィガロの結婚》の序曲をお聴きいただきたいと思います。フルスコア動画と共に、ウキウキするような喜劇音楽をお楽しみください。


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