昨日一日中降ったり止んだりした豪雨もようやく落ち着き、今日は曇りがちな天候で明けました。そこからは晴れ間がのぞいたり俄か雨が降ったりを繰り返していましたが、昨日の荒天と比べれば穏やかといえるお天気ではありました。
ところで、今日7月17日は
ヘンデルの《水上の音楽》が初演された日です。
《水上の音楽》は、当時のイギリス王室がテムズ川の川面に船を浮かべて涼を取りながら音楽を聴くという、夏の優雅な舟遊びのために作曲されました。 当時の王室の舟遊びは涼を取るという他にも、王室の威厳や優雅さを象徴する催し物としても開催されていたようです。
この曲の誕生には、ちょっとした伝承があります。
ヘンデルは25歳の時(1710年)にドイツのハノーファー侯の宮廷楽長になっていましたが、間もなく休暇をとってイギリスへ渡りました。そこで大歓迎を受けたヘンデルは2年後に再び渡英し、時のアン女王の寵愛を受けたこともあって、今度はハノーファー侯の再三の帰国命令を無視してロンドンに居座ってしまいました。
そのままシレッとイギリスで音楽活動を続けていたヘンデルですが、そこに思わぬ事態が起こります。1714年にアン女王が急逝すると、あろうことかかつての主君ハノーファー侯がイギリスの新しい国王に就任し、ジョージ1世としてヘンデルのいるイギリスヘやって来てしまったのです。
ヘンデルとしては
「これはマズい…!」
ということになり、なんとか新国王のご機嫌を取るために作った曲がこの《水上の音楽》だ…というのが、この曲が誕生した経緯だといわれています。そして、王がテムズ川で舟遊びをするために船出した時にこっそりとオーケストラを乗せた御座船で追いかけ、頃合いを見計らって壮大な管弦楽曲を演奏して、その結果
ジョージ1世とヘンデルはめでたく和解した…という話なのです。(ただ、実際にこの曲が出来た時には既に彼らは和解していたようです)。
《水上の音楽》は第1・第2・第3の3つの組曲からなり、それぞれに管楽器の編成が異なります。第1組曲はバロック音楽のオーケストラに典型的なオーボエ・ファゴット・ホルンが用いられ、第2組曲はそこにトランペットが加わって一段と華やかなものに、第3組曲ではトランペットが除かれてフルートやピッコロが加えられ、柔らかな響きの作品となっています。
そんなわけで今日は《水上の音楽》から、最も華やかな第2組曲をお聴きいただきたいと思います。本番イギリスのロイヤル・アルバート・ホールで2012年に行われたプロムスでの、古楽アンサンブル『コンセール・スピリチュエル』による壮麗で典雅な演奏をお楽しみください。