今朝はかなり涼しい空気が流れていましたが、昼前後には真夏日近くまで気温が上昇しました。昼間の気温に合わせて服装を選ぶと朝晩は肌寒いし、逆にすると日中は暑いしで、どうしたらいいのか分かりません…。
ところで、今日10月2日はカトリックでいうところの『守護天使の日』です。
写真はローマの要塞サンタンジェロ城の大天使ミカエル像です。西暦590年にペストが大流行した際、時の教皇グレゴリウス1世が城の頂上で剣を鞘に収める大天使ミカエルを見てペスト流行の終焉を感得したことから、城の守護天使として設置されました。
カトリック教会では10月2日を『守護天使の日』としていますが、その始まりは16世紀の中盤にかけてみることができるようです。それまでこの日はカトリック全体の聖務日課書には定められておらず、コルドバやトレドのような特定の地方教会で守護天使を記念する日とされていました。
『守護天使の日』が正式に教会の暦に入れられたのは17世紀初頭の教皇パウロ5世の時代でしたが、それでも当時は教会ごとに任意で記念するものだったようです。10月2日と固定された日付が設定されたのは17世紀後半の教皇クレメント10世の時代で、 最終的に現在のように10月2日を『守護天使の日』として定められたのは19世紀後半、教皇レオ13世の時代でした。
カトリックにおける守護天使に関する教義によると、クリスチャンであれ、それ以外であれ、たとえ大罪人であれ、全ての人々に決して離れることのない守護天使がついている、としています。守護天使とその守護する人間との関係については、
カトリックにおける守護天使に関する教義によると、クリスチャンであれ、それ以外であれ、たとえ大罪人であれ、全ての人々に決して離れることのない守護天使がついている、としています。守護天使とその守護する人間との関係については、
「守護天使は、人が自由意思を悪の方向に用いようとした時にもそれを止めさせることはしないが、その心を照らして良い方向に向けて霊感を吹き込むことだけをする」
とされていて、守護天使とのコミュニケーションについても、
「人は天使に語りかけることが可能で、天使たちはその必要性、希望、欲求によって人間に語りかけ、啓蒙する」
としています。
さて、私が『守護天使の日』と聞いて真っ先に思い浮かんだのは
ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー(1644〜1704)の《ロザリオのソナタ》の最終曲『守護天使のパッサカリア』です。
《ロザリオのソナタ》は新約聖書にある聖母マリアへの受胎告知から始まって、キリストの成長と受難、復活からのイエスと聖母マリアの昇天、そして天界での聖母戴冠に至るまでのマリアとイエス・キリストの生涯の中から、計15のエピソードを採り上げて作曲されたものです。特徴的なのは、第1曲目と終曲以外は全て特殊な調弦(スコルダトゥーラ)で演奏するように指定されていることです。
このソナタの楽譜には、それぞれの曲のエピソードを表す銅版画が添えられています。そして、このソナタ全体を締め括る終曲の『守護天使のパッサカリア』の楽譜には
子どもの手を引く守護天使が描かれています。
パッサカリアとは元々スペイン起源の舞曲で、一定の同じ動きをするバス声部(バッソ・オスティナート=執拗低音)の上にメロディを紡いでいく変奏曲です。バロック期のパッサカリアは特に大規模なパイプオルガンに作品が多いのですが、ビーバーは敢えてキリストの生涯を描いた壮大なヴァイオリン・ソナタ集の最後に、シンプルこの上ない無伴奏ヴァイオリンのパッサカリアを持ってきました。
始めに提示される「ソ、ファ、ミ♭、レ…」という低声部の上に、短いセンテンスのメロディが次々と紡がれていきます。この「ソ、ファ、ミ♭、レ…」という音型はメロディの下支えたる低音部に留まらず、中間部では高音部に現れて曲調に変化をつけたりもするので、その展開の面白さもこの曲の魅力のひとつです。
そんなわけで、『守護天使の日』である今日はビーバーの大作《ロザリオのソナタ》の終曲『守護天使のパッサカリア』をお聴きいただきたいと思います。ドミトリー・シトコヴェツキーによるバロックヴァイオリンでの演奏をお楽しみください。