今日から日曜日まで4連休でございます。通常ならば何処かへ出かけたくなる…ところですが、東京都内ですっかり息を吹き返した新型コロナウィルスのことを思うとそうもいきません。
さて、暇に飽かして何の書き込みをしようかと思っていたのですが、今日は久しぶりに巨匠の自筆譜シリーズにしてみることにしました。今日は、ある意味この方のことにふれたくて今シリーズをスタートさせたと言っても過言ではないベートーヴェンです。
今年生誕250年のアニヴァーサリーを迎えたベートーヴェン、本来なら世界中でベートーヴェンに関連したコンサートが開かれていたでしょうが、現在はそれも儘なりません。
ところで、クラシック音楽界でベートーヴェンは悪筆家のトップとも言われています。
上の写真は、かの有名な交響曲第5番《運命》の冒頭部、いわゆる『ジャジャジャジャ〜ン!』のところです。これだと音符も比較的読みやすく書いてありますし、小節線も真っ直ぐ書かれているのでそんなに悪筆には見えません。
しかしこれはかなりいい方で、ベートーヴェンの他の作品の自筆譜はかなりエキセントリックです。
これは交響曲第9番、通称『第九』の第一楽章再現部付近です。書き損じか路線変更か何かをペンでグッチャグチャに消していたり、縦に引かれた小節線も曲がっていたりして、お世辞にもきれいな楽譜とは言えません。
これは交響曲第9番、通称『第九』の第一楽章再現部付近です。書き損じか路線変更か何かをペンでグッチャグチャに消していたり、縦に引かれた小節線も曲がっていたりして、お世辞にもきれいな楽譜とは言えません。
更に
こちらはチェロソナタ第3番イ長調の楽譜ですが、これに至ってはそこいら中にペンでの書き直しがあって、グチャグチャ過ぎて最早何処を読んでいいやら悪いやら皆目見当がつきません。
当時はどんな曲でも必ず写譜屋が浄書して初めて出版に漕ぎ着けるのですが、
せめて以前掲載したバッハの自筆譜くらいのレベルで書いてくれればいいものを、ベートーヴェンの場合は音符だけだなく曲中の指示の文字もかなりの悪筆ぶりで、当時の写譜屋だけでなく後世の校訂者までもがかなり苦労させられております。
ベートーヴェンの氣性の激しさは有名なところですが、中でもその一面を如実に物語ってくれるのが交響曲第3番《英雄》の自筆譜です。
当時ベートーヴェンはこの作品を、当時の封建社会にあって民衆の先頭に立って快進撃を繰り広げたフランスの英雄ナポレオンに捧げるつもりでした。しかし、ナポレオンがフランス皇帝に即位した報を受けて激怒し、
表紙に書いた『ボナパルトに捧ぐ』という献辞を、上の写真のように紙に穴が開くほとペンでグチャグチャにしてしまい、後に『ある英雄の思い出に』と書き換えました。
こうした逸話に事欠かないベートーヴェンの生誕250年を本来なら盛大にお祝いしたいところですが、一連の新型コロナウィルスの蔓延ぶりを考えるとそうもいきません。せめて皆さんひとりひとりがCDでもYouTube動画でもいいので、こうしたベートーヴェンの音楽に触れてお祝いしてあげて頂きたいと思います。