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コピー機

 塾でコピー機はなくてはならない機械だ。コピー機を使わない日はないといってもいい。私の塾ではずっとS社のコピー機を使っている。別にそこの機械が気に入っているわけではなく、たまたま取引をするようになった事務機器会社がS社を扱っていたから、何の考えもなく使っている。しかし、コピー機というものは精密機械であり、高価なものである。現金でおいそれと買える品物でもない。したがってリース契約を結んで毎月リース料を支払うことになる。塾を始めて25年近くなるが、ごく最初の時期からリース契約を結んでいる。
 だが、このリース契約というものは、実態がよく分らない。あれこれ交渉して自分では納得して契約しているつもりだが、時々釈然としなくなる。勿論、現金で購入すれば何も問題はないのかもしれないが、そんな余裕がないので、どうしてもリースに頼ってしまう。毎月のリース料の中には、当然リース会社の利益も含まれているから合計金額を考えれば、決して安くなってなどいない。私も重々それは理解しているつもりだが、毎月引き落とされる金額を見るたびにもっと安ければいいのになとため息をつく。
 リース契約をしているのは、コピー機だけではない。このPCもそうであるし、印刷機(リソグラフ)、電話機、ファックスもリースである。それらを皆合計するとかなりの金額を毎月支払うことになる。全て必要経費になるからいいのかもしれないが、出費するお金であることには変わりはない。何とかもう少し安くしようと、リース期間が満了したものは新しい機械に買えずに、できるだけ長く使うようにしなければならないと思っている。
 しかし、コピー機だけはそう簡単に話がすまない。というのは、コピー機というのにはリース料だけではなく、印刷コストが1枚1枚にかかるのだ。トナー(黒い粉)や紙代だけでなく、ある一定の枚数を印刷すると、メンテナンスと言って、コピー内のキットを交換する必要がある。コピー機のシステムには色々あって、会社によって違うらしいのだが、S社の場合4万枚印刷するとそのメンテナンスの時期がやってくる。私の塾の場合、それが大体3年周期でやってくる。問題なのは、そのメンテナンスをしてもらうのに7万円かかることだ。しかも、3年経つと保守契約が切れてまた新たな契約を結ばねばならない、それに4万4千円。さらには4千枚印刷するごとにトナーが無くなってしまうので、そのたびごとに4千円払ってトナーを購入しなくてはならない。この合計をメンテナンスのときに支払わなくてはならない。私は今まで、メンテナンスの時期が来るたびに、この経費を払うのが惜しくて、コピー機を新しくしくして新たなリース契約を結ぶことを繰り返してきた。そのたびに、少しずつリースが料が高くなってきたが、それは許容できる範囲に抑えて、ここまでやってきたつもりだ。
 

 年が明けてから、そのメンテナンスの時期がやって来てしまった。予定の枚数4万枚をコピーしてしまったのだ。メンテナンスのお知らせランプが点灯した時、「あ~あ、またか」とイヤになった。コピー機をどうするか、事務機器会社と交渉しなければならない。しかし、他っておくわけには行かない、この入試の時期に使えなくなっては困ってしまう。電話して10年来の付き合いとなっている営業担当者に来てもらった。5年のリース契約がまだ3年過ぎただけなので、リース残高も組み込んで新たな契約をしなければならないため、どうしても月々のリース料が今までよりも高くなると言う。私は、何とか今までと大差のない金額に収めたいものだから、珍しく粘ってみたのだが、「もうこれが精一杯ですね、これで何とかお願いします」などと最終金額を出されてしまうと、すぐに根性が萎えてしまう。まあ、これならいいかと、適当に妥協し続けた結果が今の高いリース料になっているのだが、相手の営業マンもさすがにつぼを心得ていて、私などでは粘りきれない。「じゃあ、お願いします」と、結局は今までよりも2千円ほど高い金額で契約してしまった。高性能など望んでいないのに、今はもうデジタルコピー機しかないなどと言われて、M社の製品に変えることになった。
 それでも、色々融通はきいてくれる会社なので、今まで付き合ってきて不満を感じたことはない。今回もいっぱいいっぱいの誠意を見せてくれた結果だということにしておこうと思っている。
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