じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

小川糸「親父のぶたばら飯」

2019-10-05 20:28:48 | Weblog
☆ 小川糸さんの「あつあつを召し上がれ」(新潮文庫)から「バーバのかき氷」と「親父のぶたばら飯」を読んだ。

☆ 「バーバのかき氷は」、認知症で死期が近づいている「バーバ(祖母)」に思い出の富士山のようなかき氷を食べてもらう話。

☆ 「親父のぶたばら飯」は、恋人同士がある中華料理店を訪れ、プロポーズをするという話。

☆ ストーリーはさておき、この料理が実にうまそうだ。「濃厚な肉汁がぎゅっと詰まって、口の中で爆竹のように炸裂する」(35頁)しゅうまい。もう、たまりません。あっつあっつならではだ。

☆ 次のメニューはフカヒレスープ。「野原に降り積もる雪のように」「地面に舞い降りた瞬間すーっと姿を消してしまうかのよう」な(37頁)、優しい味だという。

☆ そして、ぶたばら飯。ご飯の上にじっくり煮込んでとろけるような豚ばら肉をのせ、それをあんかけでとじたもの。「食べ物というより、芸術作品を口に含んでいるようだ」(40頁)って彦摩呂さんか。

☆ 料理が主役過ぎて、ストーリーはどうでもよくなってしまった。
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小林多喜二「母たち」

2019-10-05 16:44:23 | Weblog
☆ 「日本近代短篇小説選」(岩波文庫)から小林多喜二の「母たち」を読んだ。

☆ 共産主義運動をしたために特高警察に検挙される青年たちとその母親たちの話。実際に拷問死させられた小林多喜二の文章だけにリアルだ。

☆ 共産主義を声高に主張するのではなく、子どもを検挙された母親たちの様子を淡々と書いている。

☆ 後半伏字が目につくようになる。今から思えば大した単語ではなさそうだが、これが検閲というものか。(前半に伏字が少ないのは何故だろうか)

☆ 香港では混乱が収まるどころか、運動側も体制側の暴力的にエスカレートしている。最終的には軍隊が投入され鎮圧されるのではと危惧する。
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浅田次郎「椿寺まで」

2019-10-05 11:53:28 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの「五郎治殿御始末」(新潮文庫)から「椿寺まで」を読んだ。美しい作品だった。ストーリーも美しいが文章も簡潔にして美しい。

☆ 商人の主人らしき小兵衛という男、丁稚の新太を連れて旅に出た。その道中の話。追いはぎに襲われたり、女郎屋のような宿で飯盛り女に出会ったり、10歳ばかりの新太にはきつい旅だった。追いはぎの男たちも飯盛り女も、もとは武家の人間。明治6年という時代、近代化の中で没落する人々が描かれている。

☆ 「世の中は変わっていくのではなく、毀れていくのだ」(26頁)と新太は子どもなりにそう思った。

☆ さて、この旅には一つの目的があった。椿寺に行くこと。その寺には果たして何があるのやら。椿の鮮やかな色が感じられる。
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