私が草刈り機なるものを初めて手にしたのはちょうど今から20年前。効率ばかりを追い求める暮らしが嫌になり、それまでの事業をすっかり畳んで妻とこの霧島の地へ移り住んだ時です。
林間別荘地の我が家には敷地面積と同じくらいの草地が隣接していて、やむなく私の草刈り人生が始まりました。最初は来る日も来る日も竹の根っこをクワで取り除いたものです。その後は草刈りです。
何年か続けるうちに、伸び放題にして刈るよりも、まだ草の丈が低いうちにこまめに刈れば作業は楽だし危険な金属刃よりも安全なナイロンコードですむことにも気付きました。そんな理由で、今では4月から9月の間、月1回のペースで作業しています。
ところが加齢というのは恐ろしいもの。高温多湿の中での肉体労働は想像以上の過酷なものとなってきたのです。今年も先日、何とか最終回の作業を終えることが出来たのですが、大きなおまけを頂戴することに。
かつてぎっくり腰で痛めた腰を再びひどく痛めてしまったのです。毎朝の朝食作りもままならず、泣く泣く妻に代わってもらいました。
「果たして来年はできるだろうか」。迫り来る心身の老化に折れそうな私の心です。
でも体が動く限り挑戦です。作業後の達成感と、いつも写真を見守ってくれる高千穂の峰のためにも。
鹿児島県霧島市 久野茂樹(71) 2020/10/17 毎日新聞鹿児島版掲載