千葉県に住む娘から、孫娘がコロナ恐怖症になって落ち込み、種子島に行きたいと言うが、行ってもいいかと電話がきた。帰省はじゅくするようにとの国の方針を伝え、納得してもらったが、翌日「猫の写真でも見せて慰めてほしい」と改めて訴えてきた。
我が家には7歳になったメインクーン系の茶トラがいて一緒に住み始めた幼少のころからの写真がたくさんある。早速パソコンに保存してある中から6枚ほど取り出し、プリンターで印刷して送った。
ところで、猫は人の思惑など全く意に介さず、自分の意志を貫き、思い通りに行動する生き物だ。我が家の猫殿もその気質は顕著で、外出からおなかをすかして帰ってくるなり、私の顔を見上げて命令調に「ニャーン」とわめく。かみさんにはそれが「ごはん」と聞こえるらしい。
空腹を満たした彼は、縁側のガラス戸の前に行き、振り返って「出るから開けてくれ」と私に命じる。ちゃんと自分専用の出入り口が取り付けてあるのだが、太りすぎて少し窮屈になったようだ。
こんな日常を贈っている私は孫に一筆書いた。「世の中なるようにしかならないのだから、猫を見習って思い通りに生きてください」
それを見たかみさんが「まるで哲学者のようなことを書いちゃって」と冷やかす。孫からは「猫の写真に癒されました」と電話が。コロナ騒動の中、孫とじいとの交流だった。
鹿児島県 西之表市武田静瞭(83) 2020/4/22 毎日新聞鹿児島版・男の気持ち掲載