大衆理容に行った。私は千円のカット仕上げ。一番安いコースである。在職中は七三分けだったが、退職を機に前髪を切って分けない髪形でお願いした。
刈られた髪が落ちて行く。薄い髪がこの髪形に耐えられるのか……。不安が湧いたがもう後もどりはできない。「終わりました」の声に、メガネを掛けて鏡の中の自分と向き合った。
前髪がないので、額があらわになった。また全体的に短めで心細い。だがこれでサラリーマンを脱ぎ捨てられたという決意にも似たすがすがしい気分になった。これからはこの髪形にふらわしい生き方を見つけたい。
宮崎市 福島洋一(64) 2020/3/31 毎日新聞鹿児島版掲載