はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ビーズ教室

2007-02-28 17:40:34 | はがき随筆
 5ヶ月ぶりにビーズ教室に行ってみよう。疲労骨折してまだ歩くには少し不自由だけれど。半分ほどして間違いに気付いて「しまった! ああ最初からやり直し」。加齢のせいかな。ちょっぴり落ち込む。手の指も曲がったり、しびれたり、力の入れ方が弱かったりと、なんて考える方がおかしい。自分のペースでと一応は思っているのに。でも遅れて完成した時は、とっても嬉しいし、感激してしまう。それが少々、いびつになっていても。ビーズの魅力に取りつかれている、おかしな私が居る。
   鹿屋市 三隅可那女(62) 2007/2/28 掲載
写真はREICAさんからお借りしました。

かくれ念仏

2007-02-27 12:40:29 | はがき随筆
 薩摩藩は「阿弥陀仏を信じ、念仏を唱えれば悪人でも往生できる」という一向宗(浄土真宗)の信仰を強く禁止した。禁制の理由は諸説あるが、最大の理由は封建社会の体制維持のために、人間の平等を説く信仰は、都合が悪かったからだといわれる。しかし、男女や職業、身分などに関係なく同じように救われるという教えは、多くの人々に受け入れられた。我が郷土加世田にも禁制を犯し、隠れて信仰を続けた人々の遺跡が二ヵ所残っている。奥深い山の洞窟と、畑の端に巧妙に掘られたかなり広い穴である。今は憲法で信教の自由が保障されていて有り難い。
   南さつま市 川久保隼人(72) 2007/2/27 掲載

歌いましょ

2007-02-26 13:51:30 | アカショウビンのつぶやき












昨日は「鹿屋市民合唱団」の第13回定期演奏会でした。
生憎の冷たい雨にもかかわらず、沢山の方々が応援に来てくださいました。
そして一緒に歌いました、会場いっぱいのお客様と!
懐かしい「朧月夜・もみじ・ふるさと」。

私たち「信愛コーラス」14名は友情出演で参加させて頂きました。
「市民さん」の足を引っ張りかねない私たちと一緒にハモって下さり有難うございました。

「かのやオーケストラ」の皆さん、有難うございました。
まあいろいろありましたが、お許し下さいね。

鹿屋市民合唱団のラストステージはいつも楽しい趣向で、今年はどんなステージになるんだろうとワクワクします。

今年は団員のお子さんたちも登場し、ママと一緒にステージを飾ってくれました。

そして、「うっちゃげ」は、更に楽しかったことは言うまでもありません。

   今日もルンルンのアカショウビンです。

あの日も

2007-02-26 11:56:05 | はがき随筆
 突然、膝に痛みが走る事がある。原因が見つからないので、神様からのサインだと思うことにしている。
 あの日はサインを解読して、傘を持った腕に手をのばすと、あの人は傘を持ちかえて腕を貸してくれた。こんな何でもないしぐさが私を幸せにする。
 心は見えないけれど見えることを、この人はそっとわからせてくれる。時にふとざけたり、叱ったりしながら。
 だから氷雨が雪に変わり、堂塔や杉木立を白く染め上げていった日も、あの人から目をそらすことが出来なかった。
   鹿屋市 伊地知咲子(70) 2007/2/26 特集版-6

鶯とメジロ

2007-02-26 11:50:57 | はがき随筆
 年が明けた5日早朝。新年のごあいさつに鶯が訪れたが、お目当ての梅のつぼみは固く、早々にお帰りに。翌朝にはメジロも新年のごあいさつに。小枝のつぼみをのぞいて「ん」と小首を傾げる様子は、ちゃめっ気たっぷりの幼児を思い出すほどに愛らしい。次の日から鶯とメジロが交互に飛来して、梅の開花をせかせる。鳥たちの健気な来訪に、太陽が睦月の大地を暖かく照らして協力する。花の精が17日の朝に二輪咲かせた。鶯は感謝の念を表して「チッチッ」。メジロは蜜を吸って「ん」と、今度は満足の様子。1ヶ月も早い開花に私も「ん」。
   出水市 道田道範(57) 2007/2/26 特集版-5

写真はバセさんからお借りしました。

ああ、雛人形

2007-02-26 11:45:01 | はがき随筆
 我が家には娘ばかり3人もいたのに、雛人形がなかった。もちろん貧しかったからだろうが、子ども心に父が息子がいないことを嘆くのを聞いて、娘は歓迎されていないからだと思っていた。私は雛人形が欲しかった。大人になって自分のために何度か買おうとしたが、十数万円の出費にためらった。娘にも恵まれず悲願五十余年、ついに昨夏、孫娘誕生! 買い初めは雛人形をと張り切っていたら、嫁の里からの年始の電話で「当地の習わしですので、雛人形はうちから贈ります」。二つはいらないよねえ、と思いつつもなかなか諦め切れない私です。
   出水市 清水昌子(54) 2007/2/26 特集版-4

おしゃべり

2007-02-26 11:38:03 | はがき随筆
 「あんなに喋ることがあるなあ」と男性が呆れるほど女はよく喋る。こんな真理がわかるだけに、ご主人様の留守を狙っておしゃべりが弾む。姦しいという字が女三人寄ればの形ですもの、仕方がありません。お喋りは聞いてくれる人がいて弾むというもの。
 当然ながら否定ばかりされると話は続かない。お喋り出来る雰囲気というものがあり、喋りやすい人がある。昔から「井戸端会議」などと、女のお喋りを言っているのだろう。お喋りの紅葉はストレス解消、きょうも、またまた女のお喋りが始まる。
   霧島市 口町円子(67) 2007/2/26 特集版-3

別れ遠足

2007-02-26 11:04:36 | はがき随筆
 仲間たちと大隅路の巨木巡りを始めて早や5年経った。毎年春先に神社や里山を訪ね実際に幹周りを計測してみて、3㍍以上の巨木が40本以上もあったのは驚きだった。ハイキング気分で気楽に歩くのだが、大樹の下に立つと、威厳に圧倒される。数百年の樹齢を重ねた古木のほこらに入ってみると、優しい温もりを感じ、子どものころを思い出す。
 校庭に大きいエノキがあった母校も訪ねた。かつて運動会で万国旗が飾られ、卒業式にはクラス写真を撮ったが、今はもうなかった。巨木巡りは、懐かしい別れ遠足の名残なのか。
   鹿屋市札元 上村 泉(66) 2007/2/26 特集版-2

ありがとうJR

2007-02-26 11:00:34 | はがき随筆
 右半身が不自由な妻と新幹線で博多に行った。出水駅には妻の車椅子の手配を頼んでいたが、病後、初めて遠出をする妻の電車の乗り降りに不安があった。が、それは杞憂に過ぎなかった。出水や新八代、博多の各駅では駅員が素早く、かつ安全に車椅子を押してくれるし、車内では女性乗務員が、妻が転ばないように手助けするので、心配することはなかったのである。用事が済み、帰る電車の中で「私、自信がついた」と妻が言う。目も輝いている。身障者の妻に〝希望〟を与えてくれたJR九州さん、ありがとう。
   出水市 清田文雄(67) 2007/2/26 掲載 特集版-1

寒ブリ

2007-02-25 21:08:38 | はがき随筆
 宅急便でブリが届いた。氷の中に横たわる体長50㌢程の寒ブリは、目が光り潮の香さえ感じられる。重量もありそうだ。台所よりもと、庭に厚手のビニールシートを準備した。使い慣れない出刃包丁を持ち、まな板の上のブリさんと向き合う。「ゴメンネ」の気持ちで、まず頭を落とし、はらわたを出した。その後は娘にバトンタッチした。ためらいながらの初体験は、背骨に厚く身を残しての三枚おろしになった。それを刺し身と照り焼き用に切り分けた。ブリづくしの食卓は最高のご馳走で、中でも身たっぷりのあら煮が又、絶品であった。
   鹿児島市 竹之内美知子(72) 2007/2/25 掲載

親の願い届く

2007-02-23 14:46:10 | はがき随筆
 我が家の息子次男、三男は結婚に乗り気でない。息子たちは今のままで暮らしていけると話す。親として大変不満であり、不安になっている。
 折しも未婚女性30、40代の結婚意欲は58%しかないとの記事が載った。
 これまで結婚しなかった理由は「理想の相手に出会わなかった。自由や気楽さを失いたくない。必要性を感じなかった」など。こんな女性や2人の息子は現在の独身生活に本当に満足しているのか。大丈夫なのか?と思いを巡らしている矢先に次男から「結婚」すると伝えてきた。まさに晴天の霹靂だが私はとても嬉しかった。   鹿児島市 鵜家育男(61) 2007/2/23 掲載

写真はあざみさんからお借りしました。

久方ぶりのコンサート

2007-02-22 16:41:23 | アカショウビンのつぶやき




 昨日は、友人ご夫妻の招待で九州交響楽団のコンサートに久しぶりに行ってきました。全席自由席なので早めにと、午後5時前にお迎えの車でおいでくだったお二人。夕食は帰ってから残り物で済まそうという私の思いを察してか、「お腹が空くでしょうから…」とお弁当まで用意してくださった奥様に感謝しつつ。
九電の冠コンサートは始めての体験だったが、会場のスタッフは九電社員だろうか、礼儀正しくお客様を誘導していた。

指揮は東京フィルの渡邊一正、ヴァイオリンがニューヨーク在住の渡辺玲子。曲目はポピュラーな懐かしい曲がならぶ。いよいよオーケストラの出場、オーケストラ全員の調弦の響きは会場いっぱいに広がる。これがたまらない。
まず軽快なロッシーニの「どろぼうカササギ序曲」で始まり、サンサーンス「序奏とロンドカプリチオーソ」、マスネ「タイスの瞑想曲」、第一ステージ最後は情熱的なサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。最後のステージはチャイコフスキーのバレエ組曲から「白鳥の湖」で興奮の一時を終えた。
室内楽曲以外、興味を示さなかった夫は、<チャイコはねぇ…>と、彼の曲を好まなかったようだが、白鳥の湖のフィナーレを聴いていると、自分が白鳥になったような不思議な感動を覚えた。数年前のロシアの旅で「ここが白鳥の湖です」と紹介された美しい風景を思い出しながらのアカショウビンです。

碁の楽しみ

2007-02-22 14:58:16 | はがき随筆
 一緒に碁を楽しんでいた義弟は6年前に他界した。碁の相手を失い寂しい思いをしていたが、親類から突然の電話があった。雑談していると本人曰く、私も還暦が見えてきましたという。彼は公立高を卒業と同時に東京で調理師の勉強をしながら碁を趣味にし、道場にも通っていたそうだ。20年前に鹿児島に帰り、調理師として40年を超えたとか。「碁の勝負を」と誘うと、「是非」との返事。俺もまだ若者には負けないと勢い気込む。休日に電話があり、自宅で待つ。勝負は3対0で私の惨敗。彼の詰めのうまさには驚いた。次回を夢みている。
   姶良町 谷山 潔(80) 2007/2/22 掲載

はがき随筆1月度入選

2007-02-21 12:06:05 | 受賞作品
 はがき随筆1月度の入選作品が決まりました。
△ 出水市明神町、清水昌子さん(54)の「孫は来てよし」(25日)
△ 鹿屋市札元、神田橋弘子さん(69)の「孫たちと一緒に」(8日)
△ 鹿児島市武、鵜家育男さん(61)の「重ねる年に誓う」(13日)
の3点です。

1月は元旦を中心にして家族の帰省や知人の訪問などが多く、それらを描いた面白い物を読ませてもらいました。清水さんの「孫は来てよし」は、訪ねてきた孫の守りで大いに楽しんだ清水さんが疲れ果てて「孫は来てよし、帰ってなおよし」とまとめた、その一文が効いてますね。
 神田橋さんの「孫たちと一緒に」も、孫の話。孫が通う保育園の冬の行事に「年の瀬餅つき大会」があるとか。年長組の園児が小ぶりの杵をふりあげて頑張り、きなこ餅やのり巻き餅などを大人たちと一緒にほおばって楽しんだという、実感にあふれた素直な文章でした。
 さて、このへんで男性の文章を2品見てみましょう。鵜家さんの「重ねる年に誓う」と、川久保隼人さんの「健全育成」です。鵜家さんは新年を迎えて、趣味の写真撮影その他で1年を過ごそうかなどと胸をざわめかせますが、次第に新年に宣言して自分を奮い立たせ磨き直そうと思い「自分に正直に生きる」「額に汗して太陽の下で体を動かす仕事を」と言います。川久保さんは近ごろの子供たちのいじめ問題などを問題にします。お二人とも広い大きな目で自分を見るいい文章ですね。
 1月は年の初めだからか、昨年の総括とか今年の予定といった文章が目立ちました。これは当然でいいことでもありますが、身辺のことやそれらへの思いを、さらりとまとめる、ということを試してみてみましょうよ。はがき随筆は小さい、日常の事から楽しさや美しさなどを発見し、それを文章化して確認することにある、と私は思ってます。この考え、いかがでしょうか。

(鹿児島文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)
係から
 入選作品のうち1編は24日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで奉仕羽されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。     2007/2/21 掲載

ひゃっかん地獄

2007-02-21 11:18:38 | はがき随筆
 辞書には出ていない。八寒地獄ならあるが。北海道生まれの母が、片づけのできない私の部屋を見ては言っていた。その母に聞いてもどんな字を書くのかは知らないと。京都出身の祖父母が使っていた言葉だという。
 母は要らないものはどんどん捨てる人だった。私はというと、いつか使うかも、と取っておくタイプ。当然、部屋の中は物であふれている。
 年末の大掃除で思い切って捨てたり、しまいこんで一見片付いたようにみえた部屋が、また「ひゃっかん地獄」状態になって、母とともにこの謎の言葉を思い出している。 
   鹿児島市 本山るみ子(54) 2007/2/21