はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

失敗に悔いなし

2007-04-30 08:16:23 | はがき随筆
 自分の力で作品の表装を願い、幾度も失敗を重ね、笑いの種をまいている。残して起きたい作品はYさんに額装を軸装に仕上げてもらっている。
 今回は落ち着いた緞子と品格のある一文字で自分の字が思いがけない躍動感を見せてくれた。もう一度、暴れた字を書こう。
 薄墨を含む大筆を思いきり上に突き進める。
 ─無我の境地─
 競争心も自尊心もない。結果の良否にとらわれず穏やかに楽しめる書にしたい。数々の失敗に悔いなし。新たな意欲を。
   薩摩川内市 上野昭子(78) 2007/4/30 毎日新聞鹿児島版掲載

雨の日曜日

2007-04-29 08:41:01 | はがき随筆
 今日の天気は雨。午前中はヒマワリの苗の植え付けをし、降り出さないうちに買い物にも行った。昼2時過ぎ、外を見ると雨が止んでいるので歩きに出た。念のため傘を持って出たが、30分もせずに本降りになった。
 こんな雨の日はさすがに人に会わないが、道路には蛙やイモリ、それに蝸牛までいた。又、川沿いの土手には雨に打たれて花びらが重そうだが野バラが咲き誇っている。とてもきれいだ。帰り着いた時はズボンも靴もずぶ濡れだったが、雨の日も風情があり、なかなかいいものだと思った。
   出水市 川頭和子(55) 2007/4/29 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はkinmeさんからお借りしました。

ハジロカイツブリ

2007-04-28 07:46:58 | はがき随筆
 見上げた空の美しさに出かけてみた。鶴の越冬した出水の東干拓には北帰行してない鶴がまだあちこち点在している。 
 ねぐらだった田より少し先に調水池があり、ここで越冬した水鳥もまた残っているのが遠く見えた。
 双眼鏡で見るとヒドリガモ、カイツブリ等。その中に目が赤く、しかも目の縁から後ろに冠をつけた鳥が3羽いた。なんとおしゃれな鳥だろう。
 そうだ、話にでた珍鳥ハジロカイツブリだ。広い干拓に人影もなく静寂の中でしっとこの美しい鳥を見ている時、私は無心になった。
   出水市 年神貞子(71) 2007/4/28 毎日新聞鹿児島版掲載

写真はvird watchingさんからお借りしました。

ぼけ予防

2007-04-27 13:03:04 | はがき随筆
 「おばあちゃん、ぼけないでね」と、一人生活を心配した甥がゲーム誌をくれたころ、毎日新聞の「数独で脳を鍛える」が目についた。ヒントを得るのに時間がかかったが、何とか解けるようになった。数字の1~9を9×9ブロックに入れるパズル。プラスでもマイナスでもなく空白に並べるだけ。鉛筆と消しゴムで消したり書いたり。脳を鍛えるどころか、傷め過ぎてはじける思いをしながらも水曜日の新聞が待ち遠しい。正解時の壮快さは言うに及ばない。初級で5.6分程度とあるが1.2日かかることも。食事の時間ももどかしく現在、唯一のお楽しみ。
   阿久根市 川畑マスミ(76) 2007/4/27 毎日新聞鹿児島版掲載

新しい春

2007-04-26 08:39:06 | はがき随筆
 「ケキョケキョ」「ホーケキョ」「ホーホケキョ」
 「あっ、ウグイスが鳴き方の練習をしている」
 「上手に鳴けるようになったらうれしいだろうね」
 「土筆がたくさん生えていたから、帽子に入れていっぱい取ったの。きんぴらにしてもらったよ。食べてみて」
 「わあ、すごい。ありがとう」
 心のこもった土筆料理。感謝していただく。おいしい。ほんのりと暖かい春の味が広がる。こんな会話に励まされながら、「兎の目」の小谷先生にあこがれつつ、また新しい春を迎える。
   出水市 山岡淳子(48) 2007/4/26 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆3月度入選

2007-04-25 11:41:39 | はがき随筆
はがき随筆3月度の入選作品が決まりました。
△ 姶良町西餅田、福崎康代さん(44)の「至福の一刻」(3日)
△ 霧島市溝辺町崎森、秋峯いくよさん(66)の「落花生」(2日)
△ 出水上鯖渕、橋口礼子さん(72)の「思いやりの心」(18日)
の3点です。

 4月になりました。春本番ですね。いろいろ行事の多い時で忙しいかと存じますが、忙しさを楽しむ文章は活発で良いものです。下市良幸さんの「この火を消すな」、宮園続さんの「結婚記念日」などは、楽しい忙しさでしょう。森孝子さんの「アカジョウドリ」は、この鳥のことでお父さんから早朝起こされたという思い出話。
 秋峯さんの「落花生」は、友人から送ってきた落花生について日本の食糧自給率や友の優しさなどを考えたものです。やや奥深いものを感じさせる福崎さんの「至福の一刻」は、初めて訪れたバリ式マッサージ店の女性の対応に酔う気持ちを描いた文章です。この女性の対応の細やかさ、美しさが直接に感じられるのは、文章がよく書けているから。橋口さんの「思いやりの心」も、細やかな心遣いなどを取り上げています。いいですねえ。
 3月は、皆さんが桜や春風や小鳥などなど春らしい話題を取り上げて、毎日楽しく読ませてもらいました。しかし、これは、皆さんの既成概念によるものかもしれません。自分ならではの個性を主張して、あっと驚く文章を見せていただくのもいいが……と思ったりします。とにかく、文章の上達はたくさん書くこと以外は、ありません。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
入選作品のうち1編は28日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。

今を生きる

2007-04-25 08:21:25 | はがき随筆
 29年前に父が鬼籍に入り、9年前に母が不帰の人となったが、両親の死に目には会えなかった。感謝の言葉も告げられずに逝かせてしまったことは今でも心残りである。特に母の死はショックで、この世に親と呼べる人がいなくなった時、自分の心の中に大きな風穴ができた。もっと親孝行すればよかったと自分を責めた。そんな時、藤沢周平の時代小説「三家清左衛門残日録」に出会った。老武士の老いの寂寥、孤独、哀しさを感じたが、人間の力強さと明るさ、生きていることの幸福も味わえた。私は清左衛門の目を通して生と死を眺めることができた。
   鹿児島市 吉松幸夫(49) 2007/4/25 毎日新聞鹿児島版掲載

母の辞世の句

2007-04-24 10:08:32 | はがき随筆
 母は生前「救われるとか救われないとか、そんなこと気にしないで、すべて仏さまにまかせなさい」と、周りの人に話すのが常だった。母は、生まれも育ちも、そして嫁ぎ先も浄土真宗の篤い信仰の中で生涯を送った。
 面白い話がある。戴帽式に孫娘から招かれ、ロウソクの灯りの中で若い娘たちが誓いの言葉を述べる情景に感極まって思わず念仏を称えてしまい周りを驚かせた。念仏は母の口癖だった。95歳で生涯を終えた母の最後の句は「何ごともみな み仏にまかす身は 心にかかる ことのはもなし」だった。あれから8年、いろいろな事が思い出される。
   志布志市 一木法明(71) 2007/4/24 毎日新聞鹿児島版掲載

一人居である

2007-04-23 08:12:11 | はがき随筆
 一人居である。妻の出掛けた後、自分のやれる分は限られている。妻の役割、存在の大きさを知る。家事の一部でもとの思いは強いものの、実際の場ではなかなかである。慣れぬ手つきで包丁を使う。妻の10分の1である。生まれた時から母に習っていたら……、少しばかりは利口にできるのかも知れぬ。包丁よりも野菜を手で切って炒めた方が手っ取り早い事を知った。一日二日の一人居には飽きもやってくる。作る材料は、三色でもなく二色でもなく、たった一色である。一色で食卓を飾ることにもならぬ。総菜を買ってきた方が、本当に手っ取り早く一番早い。
   出水市 岩田昭治(67)2007/4/23 毎日新聞鹿児島版掲載

柳川の旅

2007-04-22 23:45:59 | はがき随筆
 先日、北原白秋の生誕地、柳川を訪ねた。山側の町並みは古きものが美しい。川と柳の新芽が調和し、旅の心を癒してくれる。柳川城址、武家屋敷の庭園にうっとり。白秋記念館に入る。人影のまばらな館内は静けさが漂い、古い資料や写真が整然と並べられ、歴史がしのばれる。感動の中、青春時代に心を揺さぶり潤した歌や詩が思い出され、ひととき白秋の世界に浸る。柳川をこよなく愛した白秋。あの偉大な詩人が生まれた背景は、有明海に面した風土、人情、歴史が慈しみ育んだものだろう。船に揺られながら、川下りを楽しむ人の姿が心に残った。
   出水市 橋口礼子(73)2007/4/22 毎日新聞鹿児島版掲載

ご老人度?

2007-04-21 11:32:52 | アカショウビンのつぶやき
検索中、「精神年齢鑑定」なるサイトに迷いこんだ。
年齢を入力し、30項目の質問に答えると
1.実際の年齢との差
2.幼稚度
3.大人度
   そしてなんと、最後は
4.ご老人度
   えぇー ご老人度を測る「ものさし」まであるんだぁ…。
面白そうなので、やってみた。

精神年齢 38歳 数字が逆じゃないかと一瞬ドキッ。
大人度   68% 「あなたはなかなかたいした大人です」 トホホ。
ご老人度 42% 「初老の段階です、おばあちゃんに急接近です」。
   分かってます、既に大老ですから。
   でも、幼稚度が……。
最後に、あなたとお友達になれそうな人 黒柳徹子 星一徹。
  余計なお世話です!

今日も脳力下降中のアカショウビンです。
 

帝都桜満開

2007-04-21 09:58:39 | はがき随筆
 快晴の空。機上から見えた富士山は雪を被り、神々しく美しい容姿だった。帝都に降り立つと、そこはもう人、人の大洪水、そして桜満開の街だ。千鳥ケ淵、浅草界隈、ふた抱えもある桜の大木、数㌔に及ぶ桜並木、花のトンネル、哲学堂公園、上野公園不忍池、満開サンデーなど家族連れ、職場仲間の桜を愛でる人が25万人程だったという。私も薩摩っぽの端くれ、上野公園の西郷さん、敬天愛人の石碑にしばし感動。今回の上京は婿殿の栄転、孫達3人の進入学、私たちの金婚まで祝ってくださった。4家族22人。横浜中華街での楽しい宴だった。
   大口市 宮園 続(76) 2007/4/21 毎日新聞鹿児島版掲載

写真はhiro-Ⅱさんさんからお借りしました。

眼瞼下垂

2007-04-20 07:52:41 | はがき随筆
 机の前の孫の写真。楽しみに毎日、眺めているが近ごろ、顔がはっきり写らない。遠くの景色もボヤッとしている。おかしいな。薄暮の運転、歩行者が見えづらい。眼科へ。視力検査、視野検査その他。
 結果は、まぶたの筋肉が老化で垂れ下がってくるから視野が狭くなるとのこと。右目の手術1時間くらい。バランスをとるため左目も。2週間の入院。皆さんが「若くなりましたよ」と。
 家内は「どうかした時は、厳しい目になる」と言っている。現在、孫の写真も、どうにか鮮明に。いろんな病気があるもんだと思っている。
   薩摩川内市 新開譲(81) 2007/4/20 毎日新聞鹿児島版掲載

なぜ…再び

2007-04-19 11:59:00 | アカショウビンのつぶやき

悲しい なぜこんなことが……

核廃絶と恒久平和を 訴え続けた 長崎市長が
二代続けて 卑劣な暴力の 犠牲になるとは……

追いつめられた 弱者による テロや
聖戦の名の下に 
世界中で 繰り返される 暴力

いかなる理由があるにせよ 暴力は絶対に許されない
平和の街 長崎に 大きな汚点を残してしまった

一人一人の心を 平和と愛で満たしてください
と 切に祈るアカショウビンです。

北薩摩の夢

2007-04-19 11:16:20 | はがき随筆
 水俣から北薩摩にかけての悲しみが心にかかっていた。進む過疎や、水俣病。かつての出水特攻基地跡、阿久根空襲など。作詞にしよう、と思った。風景に悲しみと願いを込めた詩を綴ったら、作曲・編曲をしてもらえた。30年、公演をしている「コール出水」の指揮者と団員の好意で作詞曲「北薩摩」の、厳しい練習を重ねた、素晴らしい合唱が聴けた。拍手が鳴り響いた。感謝でいっぱいになり、私の胸は音を立てた。深く麗しい声は、音楽ホールの満席の皆さんをうっとりさせた。歌の願いのように、水俣や北薩摩の皆に、夢叶う日よ、早く来い、と思う。
   出水市 小村 忍(64) 2007/4/19 毎日新聞鹿児島版掲載