朝まだき、川のせせらぎに誘わるるまま白髪の老人が一人川辺りを歩く。その昔は、ピチピチとはじけるような若さがあった。仕立て屋さんで洋服を作り、ハイヒールも軽やかだった。
縁あって山口から鹿児島に嫁ぎ半世紀が過ぎた。夫は肺結核が再発し、一粒ダネの娘をのこし身まかった。娘に婿を迎え2人の子を授かり、今春孫娘は京都の大学へ、息子は高校へ。義母を見送り、婿に代替わりして私の役目も終わった。今、高血圧が悩ましい。〝案じるでない。案じれば案じの理がまわる。喜べ、喜んで喜びの種をまくのだ〟と内なる声が聞こえる。
鹿児島市 内山陽子(81) 2018/8/30 毎日新聞鹿児島版掲載