月間賞に岡田さん(熊本)
佳作は前田さん(宮崎)
武田さん(鹿児島)
古城さん(熊本)
はがき随筆11月度の受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)
【月間賞】9日「病院の玄関」岡田政雄=熊本市北区
【佳作】7日「メール」前田隆男=宮崎県延岡市
▽30日「ほほ笑む月下美人」武田静瞭=鹿児島県西之表市
▽28日「生産性」古城正巳=熊本県合志市
「病院の玄関」は、身につまされる内容です。誰でもそれなりに、自分のためにも他人のためにも、精いっぱい生きて来たはずなのに、老齢になり、身体が不自由になった途端に、まるで邪魔な存在のようにとり扱われるのは、哀しいですね。病院の一隅で見かけた光景に、人生の悲哀を感じとった筆者の優しい感受が、優れた文章を生みました。
「メール」は、奥さまに先立たれ、さびしさのあまり娘さんたちに愚痴を言ったら励ましのメールが来た。それ以来メールはなくてはならないものになり、最近では、お孫さんたちも加わっての、グループメールになってしまった。その近況を亡き奥さまに知らせたという結びが、読む者をホットさせてくれます。
「ほほ笑む月下美人」は、美しい文章です。庭の隅でひっそりと咲こうとしていた月下美人の蕾を、寂しかろうと室内で咲かせて、その香りとともに楽しんでいるという内容です。花の名前の美しさ、その香り、ご夫婦の思いやり、それに応えてほほ笑んでくれた月下美人、それらが文章を美しくしています。
「生産性」は、政治家への風刺の奥に鋭い批判精神が潜んでいる文章です。散歩の途中で見かける牛小屋では、老牛には餌が後回しになっている。某衆議院議員の「生産性がない」発言があったが、ここの牛飼いも、某議員と同じ考えであろうか、とすると年金暮らしの後期高齢者の自分も「生産性がない」と思われているのだろうか、という疑問が書かれています。弱者の与えられている武器は、政治や政治家に対する批評精神を、文章化することだと思います。
11月は好随筆が多く選ぶのに迷いました.【佳作】の対象にした作品を列記してみます。【宮崎】の杉田茂延さん「彼岸の神秘」▽福島洋一さん「大根たち」【鹿児島】的場豊子さんの「クッサレイオ」▽中鶴裕子さんの「布ぞうり」【熊本】畑田ももえさん「孫とハーモニカ」▽西洋史さん「全員野球内閣?」。感想抜きで申し訳ありません。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦