はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

日記と作句

2009-01-30 15:31:10 | はがき随筆
 昨年末、5年日記を書き終えた。俳句伝統校の小学生が、夏休みに1日1句、計40句作るというのを聞いて、よし自分もやるかと発奮。04年7月から始めた自分流俳句作りを、日記と同時進行で記入している。
 1836句になっている。
 それもその日の出来事を、作文俳句につづっている。5年の歳月は早いもの。若いころは俳句など考えも及ばなかったが、小学生との出会いから始めて、今では毎日1句出来るので、面白いものである。
 これから生きていくうえでの生きがいとなるのでは、と思うので続けてゆこう。
   伊佐市 宮園続(77) 2009/1/30 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆12月度入選

2009-01-30 08:38:48 | 受賞作品
 はがき随筆12月度の入選作品が決まりました。
▽鹿児島市鴨池1、川端清一郎さん(61)の「トシドン」(30日)
▽同市紫原6、高野幸祐さん(75)の「バスと盲導犬」(20日)
▽伊佐市大口小木原、宮園続さん(77)の「勝ちゃん」(17日)──の3点です。

 賀春、今年もよろしくおねがいいたします。
 世情騒然、人心荒廃の中で年が暮れましたが、皆さんは平穏な正月を迎えられましたでしょうか。今年も時代に負けないような、すばらしい文章をお願いします。
 川端さんの「トシドン」は、下甑島の大みそかの夜に、鬼の面を着けたトシドンが子どもをしかったり諭したりして、その成長を祈る伝統行事が描かれています。全国的にはナマハゲが有名ですが、戦後こういう行事は前近代的なものとして廃止されていきました。それとともに私たちは子どもの成長にとって大事なものを失(な)くしていったようです。
 高野さんの「バスと盲導犬」は、盲導犬を連れた女性のバス停での立っていた位置と、その真ん前で止まったバスとが、細かい観察に基づいて書かれています。つい見落としてしまう日常の出来事への観察と、それを自分の生活態度に結びつけて考える姿勢に好感を持ちました。
 宮園さんの「勝ちゃん」は、働き者の義弟への追悼の文章です。短い文章の中に、義弟の一生がほうふつとします。伊佐米の「わらこずみ」の積み方にも几帳面な人柄が現れていて、目に見えるようです。今は珍しくなった代表的庶民の一生です。
この他の、興味深く感じた文章をあげてみます。
 有村好一さんの「家老柿」(9日)は、「松尾城家老」の末えいの知人から柿を貰い、渋抜きをして、勝手に「家老柿」と名づけて配ったという内容です。堀美代子さんの「卯の花によせて」(2日)は、その印象から卯の花とも呼ぶ「おから」料理のレシピ一覧です。文章には「~づくし」という羅列という方法もあります。武田静瞭さんの「郵便局の傑作」(10日)は、種子島郵便局の玄関横の、廃品利用の「牛のオブジェ」に、心が和ませられるという内容です。若宮庸成さんの「感動の日」(11日)は、不遇なまま亡くなった田中一村の絵画と常設館の印象です。例のアカショウビンが眼前に浮かぶ文章です。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授・石田忠彦)
(係から) 入選作品のうち1編は31日午前8時40分からMBCラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のこーなー「朝のとっておき」です。

収穫あり

2009-01-30 08:13:23 | はがき随筆
 同窓会は昨年の10月始め、還暦を記念して東京で開かれた。卒業以来40年ぶりに顔を合わす人もいて、夜中の2時まで話がはずんだ。
 自分は、これまで二親と姉を相次いで亡くして、不幸者と思っていた。しかし、子どもに恵まれず、夫に先立たれ独り暮らしの友もいる。家族はかけがえのないもの、彼女の悲しみは計り知れない。
 「還暦に赤いものを近くに置けばいいんだって」。彼女の言葉に、縁起かつぎなどしないあまのじゃくの私が、さっそく東京で赤い財布を求めた。
 前向きになれたことに感謝。
   いちき串木野市 奥吉志代子(60)2009/1/29 毎日新聞鹿児島版掲載

つかの間の夢

2009-01-28 17:37:02 | はがき随筆
 元旦には姉妹からの励ましの電話がうれしかった。
 仏前に2人分の雑煮と正月料理を並べると昼前になった。右腕が少し強くなったので今年は物を破損したり転倒したりすることが少ないようにと念じた。
 午後は小倉百人一首のテープで一人遊びをした。ベッドの上にカルタを並べた。暖かい。
 ──朗詠の声がだんだん遠くになる。亡き母と夫が、私の少女のころの羽子板模様の羽織、髪飾りなど初詣の準備中。叫ぶが、声が出ない。夫の好きなロウバイの香りが漂い、心が癒されたひとときの幸せ──。
 つかの間の夢だったのだ。
   薩摩川内市 上野昭子(80) 2009/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はバセさん

春はそこまで

2009-01-27 11:57:53 | アカショウビンのつぶやき




 久しぶりに二階の窓から、ゆっくりと庭を眺めると、紅梅がちらほら開いている。慌ただしかった日々を振り返り、「あぁ、春はそこまできてるんだ…」とやっと気づかされた。

 年末から体調を崩し、人工呼吸器で命をつないでいた91歳の兄が旅立ち、山口までお別れに行ってきた。10日前に見舞ったときは、かすかに目を開き、声を掛けるとうなずいたように思えたのだが…。安らかな表情の兄は幸せだった。4歳のひ孫が、お線香を絶やさぬようにと何回も何回も小さな手を合わせて焼香していた。家族の優しさがジーンと伝わってくる。

末っ子の私とは16も歳が離れ、一緒に生活した期間が短いので、断片的な記憶しかないのだが、穏やかな兄だった。
器用な人で「器用貧乏ってお前のことを言うのかねえ」なんて、母に言われていた兄。兄が50年以上前に作ってくれた和箪笥は見栄えは良くないけれど今も健在。とうとう形見になってしまった。

バス、フェリー、新幹線つばめ、リレーツバメ、山陽新幹線と乗り継いでの長い旅だった。食欲が出るかなと、鹿児島駅で「篤姫べんとう」を買ってみたが、半分しか食べられなかった。

風は冷たいけれど春はもうすぐ。
慶事も近づいた…。さあ、気持ちを切り替えて歩き出そう。

生きている

2009-01-27 10:10:19 | はがき随筆
 新美南吉さん(1913~1943年)の名作「ごん狐(ぎつね)」を読んだ。独りぼっちのこぎつね・ごんのけなげさに心打たれる。ごんは、どうして独りぼっちになってしまったんだろう。兵十がもし銃を持っていなかったなら──。次から次へと空想が広がる。「手袋を買いに」のこぎつねや「うた時計」の廉のけなげさ、純粋さにも心を打たれる。子どもってこんなものだよと語りかけているようだ。
 30年という短い人生の中でたくさんの童話を残された。それは今でも人々に読み継がれ、ずっとずっと生きている。童話の中でずっとずっと生きている。
   出水市 山岡淳子(50) 2009/1/27 毎日新聞鹿児島版掲載

だんだん!

2009-01-26 14:57:42 | はがき随筆
 正月の2日、3日は予定を入れずに必ず空けておくこと。これが子どもたちからの年末のお触れだった。これまで正月に寺を留守にしたことは一度もない。寺は法務員に任せ、猫の世話は幸い隣の奥さんが快諾してくださった。2日午後、案内されたのは宮崎の青島にある横文字のホテルだった。招待の趣旨は、2人とも古稀を過ぎるまで元気で生きていてくれていることに対する褒美だそうだ。孫たちにも囲まれた宴会は話題が尽きなかった。2次会は私どもの部屋に集まり、バレエを習いたての6歳の孫娘の独演で盛り上がった。本当に、だんだん。
   志布志市 一木法明(73) 2009/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載

笑う門には……

2009-01-25 14:27:11 | はがき随筆
 大みそかは娘家族とすき焼きをつつくことになった。とりあえず1年の健康に感謝して乾杯。孫に促されてうどんとそばが入り早めのお開きとなった。テレビのにぎわいをよそに、早寝早起きの夫は血圧測りに懸命だがエラーでうまくいかない。そこへ僕も私もと腕や頭を差し出し邪魔をする。と夫は「よーし! 頭を量ってやる」と5歳の孫娘の頭に血圧計を巻き付けた。孫は白目になって頭を左右に振りはしゃいでいる。その格好に大笑い。「おーすごい。脳がたくさん詰まっとる」にまた大爆笑。この笑いが翌年につながることを願って新年を迎えた。
   薩摩川内市 田中由利子(67) 2009/1/25

冬来たりなば

2009-01-24 20:59:32 | はがき随筆
 正月がすぎて寒波が襲来し、県北部でも天気図に雪だるまが並ぶようになった。私の住む町では雪こそ降らないが、冷たい風に乗って氷雨が落ちてくる。
 毎年のことながら、いまが一番寒い時なのかもしれない。昔とくらべいろいろ寒さをしのぎやすくなってきたのは事実だが、それでも寒い。
 しかし庭に出ると、水仙がりんとして咲き乱れ、紅梅の枝先につぼみがかすかにふくらんでいる。花も、咲く春を待っている。まして人として生きる身にとって、強くたくましく冬を生きねばと思う。冬来たりなばと言うから……。
   志布志市 小村豊一郎(82) 2009/1/24 毎日新聞鹿児島版掲載

母と娘

2009-01-24 20:53:03 | はがき随筆
 種子島の漁港、突堤にうずくまった母の傍らに私は立っていた。3歳になる前の冬のこと。
 東シナ海から吹く冷たい風がやんで、寒満月がさえていた。母は長い間黙っていた。私も黙っていた。ついに母は私に向かって「一緒に死のうか」と言った。私は「うん」と答えた。
 晩年、病む母と暮らしていたある日、この話をしたら、「誰に聞いたか」と厳しい口調になり、「覚えている」と答えたら、「恐ろしい子だ」と言った。
 今考えるに母はあの時、ついこの間朝鮮から引き揚げ、鹿児島に着いてすぐ死んだ娘を思い、悲しみに暮れていたのだ。
   薩摩川内市 森 孝子(66) 2009/1/23 毎日新聞鹿児島版掲載

自分へのケア

2009-01-24 20:46:34 | はがき随筆
 昨年の11月より体調不良に悩んでいる。加齢による体力的な衰えと外見の変化に、心まで影響を及ぼしている。年を取ったという自覚のないままに無理を重ねたのがいけなかった。心も身体もバランスを崩し、弾力を失ってしまった。睡眠を十分に取り、ストレスをため込まず、休養を心がけ、趣味を楽しみながら生きたい。気持ちの張りや心の持ちようで日々の暮らしも好転するのでは……。スポーツや芸術に感動して、胸をときめかせることも「心のケア」といえる。残り少ない人生を自然や人に優しく、自分にも優しく、前向きに生きていきたい。
   出水市 橋口礼子(74) 2009/1/22 毎日新聞鹿児島版掲載

持ち前

2009-01-21 08:16:20 | はがき随筆
 夕げの支度に取りかかった。精進揚げのピーマンに包丁を当てるとすーっと刃が引けた。その切れ味のよいこと。キャベツの千切りは細かく美しく切れた。私が外出した間に、夫が包丁を研いでくれた。「あなた、ありがとう」と感謝する。
 私がうまく研げないから、いつのころからか、ころ合いを見て研ぐようになった。その度に夫のやさしさを感じた。
 包丁の切れがよいと料理も楽しくなる。包丁差しに出刃、刺し身、大小の菜切り包丁がきれいに磨かれていた。
 料理は一切しない夫だけど、さりげなく手伝ってくれる。
  出水市 年神貞子(72) 2009/1/21 毎日新聞鹿児島版掲載

1秒の命

2009-01-20 13:30:47 | はがき随筆
 体調不良と寒さでこたつにしがみついている。新聞、テレビにも飽きて体を横にくつろぐ。ふと柱時計に目が止まる。秒針が勢いよく1秒を刻んでゆく。じっと見ていると自分の命が刻々とそがれていくようで心に暗雲が漂う。秒針よ止まれ。こんな思いになったのは初めてだ。
 しかし母の体内に宿った時から1秒は始まっているのだ。我が心臓の鼓動と共に。そっと胸に手を当てる。確かに躍動している。お陰で今日までの命があることに感謝。正月、子供や孫たちに囲まれ楽しく過ごした。今年も彼らの心の支えとなって生きよう。1秒の命を大切に。
   霧島市 楠元勇一(82) 2009/1/20 毎日新聞鹿児島版掲載

今年の漢字は?

2009-01-19 19:30:51 | かごんま便り
 鹿大法文学部の「マスコミ講座」は、県内に取材拠点を置く新聞・通信・放送各社が大学側と協力して授業を展開する全国的にも珍しい試みだ。一線の記者やデスクなどを講師に、取材の実習などを交えながら、報道機関の役割や課題などを学んでもらう狙いである。
 先日、担当するクラスで作文の模擬試験をやった。課題は「09年はどんな年になると予想(または期待)しますか」。併せて「漢字1文字の題」をつけてもらった。京都・清水寺で発表される「今年の漢字」をまねた訳ではないが、若者の新鮮な感覚が時代をどう表現するか興味があった。
 10編の作文で、出てきた漢字は次の九つ。安・活・協・差・実・変・耐・魅・迷──。
 「変」「迷」「差」「耐」などは、深刻な不況など、今の暗い世相を比較的ストレートに表現している。
 次はちょっとひねった部類。「活」は、08年に表面化した「活(い)きにくさ」からの脱却を望む内容。
 「就活(就職活動)」の不安を取り上げた点はいかにも学生らしい。「実」は、食の問題で露呈した誠実さの欠如、実態なき経済が生んだ不況、実績を残せなかった麻生内閣など、失われた〝実〟の回復への願い。「協」は、失業者を支援する派遣村ボランティアの話題から、人々が助け合う必要性を訴えていた。
 明るいイメージの漢字は素直な期待感の現れ。「安」は、北京五輪の感動を引き合いに、野球のWBCやサッカーW杯最終予選での日本チームの活躍が、国民の不安を吹き飛ばしてほしいとの趣旨だ。
 「魅」はかなりの変化球か。新世代の環境対策車にみられる優れた省エネ技術が景気回復への足がかりだととらえ、資源の乏しい日本で培った技術力が世界を「魅せる」年になってほしいという希望が述べられていた。
 さて、あなたは今年の漢字に何を予想(期待)しますか?
鹿児島支局長 平山千里
2009/1/19毎日新聞掲載

ボンジュール

2009-01-19 13:58:48 | はがき随筆
 日曜日の夜9時半は、モロッコに住む娘一家と、テレビ電話での交信を楽しんでいる。
 「モニア、美佳、ナディア、ご機嫌いかが」
 「ばあば、おじいちゃんが『ボンジュール』って言っているよ」
 「はいはい、ボンジュール」
 画面いっぱいにアップしたナディアの後ろで、モニアのパパとママが手を振っている。
 「美佳たちと一緒に住めてとてもうれしい。遊びに来てね」
 パパはフランス語の先生だそうだ。
 私も、今年はフランス語の勉強を始めることにしよう。
   阿久根市 別枝由井(67) 2009/1/19 毎日新聞鹿児島版掲載