降伏はラジオの「玉音放送」で国民に知らされたが、幼かった私に記憶はない。まもなく進駐軍の車両が岩国市の街を走るようになり、これが占領下なのだと思った。
小学校に入学後、ほどなくして朝鮮戦争が勃発した。連日、岩国基地から出撃する爆撃機を見上げていた。1機が市内に墜落し死傷者が生じたこともある。ベトナム戦争の時も出撃基地となった。
今は極東最大級の米軍の航空基地であり、最新鋭ステルス戦闘機が配備され、機能は強化されている。
町に爆音が絶えることはない。基地から離れた地区に住む知人が、最近、基地の近くを訪れた際、ごう音に驚き、「付近の人は大変だ」と話してくれた。
米真珠湾攻撃を命じる旧海軍の「新高山登レ」の暗号電文が、沖合の柱島近海に停泊中の戦艦から発信されて80年。再び町が出撃の地にならないことを願う。
岩国市 片山清勝(80) 2021/8/15 中国新聞掲載 岩国エッセイサロンより