忘年会も終わるころ、宝田明さんの名前が耳に入ってドキッとした。旧満州のハルピン育ちと知っていた。私も同じ街で育ったのだ。
中国大陸の一部とはいえ、ひと口でそうは言いがたいオシャレでモダンな街なのだ。
その昔、白系ロシア人が築いた処で、ハルピン駅をはじめ街並みも芸術的な往時を偲ぶ風情が未だに残っていて、テレビを見ながら一人懐かしんだ。
もし宝田さんと会えたらあのむごい敗戦当時の話などはしないだろう。「よくここまで生きてきましたよね」と握手をしたい。
熊本市中央区 木村恵子(88) 2019/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載