日の出が6時ごろとなり、いつとなくセミ時雨が消えて静かな朝だ。早朝の空気が肌に冷たい。空気がうまい。草むらから虫の音が聞こえる。澄んだ声で「リーン」と鈴虫の音だ。右手を見ると、葉かげに紫紅色の花が咲いている。カズラの花だ。厳しい夏を乗り切ってけなげに咲いている。ふと目を移すと、彼岸花の芽が出ている。柔らかな芽なのに土を破る力がどこにあるのだろうか。
人間の知恵ではつくれない自然の美しさだとしみじみ思う。過ぎ去った1年は早い。喜寿を過ぎ、残り少ない人生。青空を眺めながら生きていきたい。
出水市 橋口礼子 2012/9/25 毎日新聞鹿児島版掲載