はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

通勤風景

2014-06-30 22:51:01 | はがき随筆
 

テッポウユリが真っ白い花を咲かせたと思ったら、いつの間にかアジサイが花を開き始めた。
 一面に広がる田んぼに目をやると、たおこしが終わっている。やがて水が入り、鏡のように辺りの風景を映している。 しばらくすると、田植えが終わり、黄緑色の苗がきれいに並び、風邪に揺れている。
 田植えが終わり、米農家の方々もホッとされたことだろう。おいしいお米になってね。この田んぼが黄金色に染まる日が楽しみだ。季節の移り変わりに心を躍らせながら、農免道路を今日も楽しく通勤している。
  出水市 山岡淳子 2014/6/30 毎日新聞鹿児島版掲載

「不埒な親だが」 

2014-06-30 09:27:49 | 岩国エッセイサロンより
2014年6月29日 (日)


  岩国市  会 員   沖 義照

  散歩の途中お茶屋さんの前を通りかかると、店の奥さんが脚立の上に立っていた。羽根の生えそろっていない4羽のツバメのヒナに、竹串でエサをやっている。孵化して間もなくメスはやって来なくなり、オスは電線に止まって他人事のようにただ見ているだけ。見かねて親に代わって1時間ごとにエサをやっているという。数日前からオスは違うメスと飛び回っていると笑って話す。身近なツバメの世界にも不倫とか育児放棄などがあるのだろうか。このオスは無責任な奴だと思ったが、人間だって同じようなことをする輩もいる。笑ってばかりおられない。

(2014.06.29毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

山本二三展

2014-06-30 00:57:11 | はがき随筆
 新聞には「野坂昭如をうならせる」とある。何が何でも見てやろうと思い立ったのが山本二三展。アニメ映画の背景画と記事にあったので、野坂がうなったと聞いても半信半疑で、絵に期待するよりも、何が野坂をうならせたのか確認したい気持ちで会場に入る。
 アニメ世代というか若い人が圧倒的に多い。絵の前に立って驚いた。いや参った。ぼくもうなりました。細密で精緻を極めた描写、そこからは時代の空気も漂う。この背景の前で物語を展開させれば、想像力は増すはずだ。いつの間にか感嘆の声の中に自分がいることに気づく。
  志布志市 若宮庸成 2014/6/29 毎日新聞鹿児島版掲載

2014-06-28 16:14:06 | はがき随筆


 夫の友人からたくさんの梅をいただいた。深夜まで奥さまと選別されたという梅は、赤く熟し、孫たちの大好きな砂糖煮に最適だった。感謝しつつ、翌日早朝から台所のこんろと、庭に練炭をおこし2カ所で煮始めた。家の中も外も甘酸っぱい空気に包まれた。
 そんな中、「梅の木が彼にまわってきたのか」と夫がぽつり。それは、彼が学生時代、農作業が大変な両親に、畑に梅の木を植えることを勧めたのだという。定年後、郷里に帰り、親の介護をしながら田畑と向き合い、農業に汗を流されるお二人の姿は、とても尊くまぶしい。
  出水市 塩田きぬ子 2014/6/28 毎日新聞鹿児島版掲載

平和への願い

2014-06-28 15:58:46 | はがき随筆
 鹿児島版の支局長評論「ペン&ペン」で鹿児島観光について、特攻基地の知覧、鹿屋が紹介されていた。私も娘婿が初めて訪れた折、出水海軍航空隊基地跡を案内した。桜並木に囲まれて特攻公園として整備されている。支局長の母上様も話されているように、私の両親の兄弟も戦地で永眠した。平和を語り継ぐには出水の特攻基地も忘れてはならない。「二度と戦争をしてはいかん」。娘婿に慰霊碑文の「雲こそ わが墓標 落暉よ 碑銘をかざれ」を説明した。娘婿は防空壕の中も見たいと入っていった。平和を語れる一人にとその背に願った。

「おうち」

2014-06-26 22:42:51 | 女の気持ち/男の気持ち
 幼稚園から帰ってきた子どもたちを迎えに外に出た。私を見つけたKちゃんは「だっこして」と駆け寄ってきた。Kちゃんを抱き上げ「さあ、おうちに入ろうか」と言うと「おうちじゃないもん。D園だもん」。
 一瞬言葉を失った。たわいないおしゃべりをしながら、腕の中の4歳児の言葉に私はとらわれていた。
 昨年9月からある養護施設でボランティアとしてこどもたちのお世話をしている。近所の暇なおばさんというスタンスで子どもの相手をしているのだが、時々考え込んでしまう子どもの言葉に出くわす。
 昼間は幼稚園や学校で過ごし、おうちに帰る。当たり前のことだと思っていた。ここで暮らしている幼児たちでさえ「おうちで暮らしていない」と認識しているとは、うかつにも気づかなかった。
 「おかえりなさい」と出迎えられ、宿題をしたりビデオを見たり。お風呂に入り、ご飯を食べて寝る。おうちでしていることをD園で子どもたちはしている。だから「D園がおうちだ」と子どもたちは思っているものとばかり思っていた。この脳天気なおばさんも、おうちで暮らせない子どもたちのやりきれなさに気づかされることがたびたびあるようになった。
 「君の笑顔が見たい」という連載が始まった時、こういう養護の方法もあるのだと知った。早く日本でも家庭養護が主流になることを祈るばかりだ。
  出水市 清水昌子 2014/6/26 毎日新聞「の気持ち」欄掲載

田植え

2014-06-26 22:23:38 | はがき随筆


 今年も田植えが始まった。
 田植機が水を満たした田んぼをチャッ、チャッと走っている。
 広い田んぼも、見る間に早苗が植えられ、水田が植田に変わっていく。
 その上を風がスーと吹いて苗が揺れている。
 「ワァーありがとう、大きくなるよ」と一斉に喜んでいるようだ。
 見ていてうれしくなる。 今年は腰を痛めたので、長年続けていた稲作りをやめた。
 昨年までの忙しさを考えると、ゆっくりできる。
 でも、なんだか寂しいなあ。
  出水市 畠中大喜 2014/6/26 毎日新聞鹿児島版掲載

ピアノ演奏

2014-06-26 14:09:40 | はがき随筆






 西村由紀江さんのピアノ演奏を介護施設で聴いた。クラシック、童謡、演歌など、なじみの深い曲の演奏に、入所者たちは静かに聴き入っていた。
 由紀江さんの両親は種子島生まれで、島とは縁が深い。これまでにも中種子や西之表市のホールで演奏会を催しているが、今回は中種子の施設に入っている祖母のお見舞いに来て、その合間に依頼した演奏だった。
 ピアノを弾き始めて40年という由紀江さんだが、私としては彼女が天才少女とうたわれていた頃からのおなじみ。CDも3枚持っており、折に触れ聴いている。
  西之表市 武田静瞭 2014/6/26 毎日新聞鹿児島版掲載

画像は武田さんのブログより

最北のしぶし

2014-06-26 14:02:31 | 受賞作品
 志布志が、全国のどこかにないか常々思っていた。
 先日、北海道岬めぐりツアーに参加した。観光バスで宗谷岬から知床半島に向かう。途中のどこかで、しぶし、という字が見えた気がした。注意していると、次に漢字で、志撫子、が目についた。地図上にはない。
 帰宅後、どうしても気になりパソコンで国道をなぞってみる。あっ、あった。
 サロマ湖畔で。字は違うが呼び名はまさしく「しぶし」だ。アイヌ語で「シュプン・ウシ」(コイ科の魚が多くいる川)に由来するそうで、私にとって偶然の大発見だった。
  志布志市 原田輝明 2014/6/24 毎日新聞鹿児島版掲載

診察室で

2014-06-26 13:28:12 | はがき随筆
 「ええっ、何~?」。一瞬、私は正にキツネにつままれたような表情をしたのだと思う。「私はどこにいるんだ」。時々頭がフワッとすると言って、確か脳神経外科の診察室をノックしたはず。すると、医師が言った。「目を閉じて、その場で足踏みしてみてください」「ふらつくかもしれない、でも落ち着くんだ」。自分に言い聞かせた。「はい、目を開けて」。私は見事に90度左回転して、診察室の別の風景を見ていたのだ。
 「左耳の三半規管の異常でしょう」。してやったりとばかりに、医師が目配せしたと、後で妻から聞いたのだった。
  霧島市 久野茂樹 2014/6/23 毎日新聞鹿児島版掲載

ホタルの思い出遠く

2014-06-26 12:26:44 | 岩国エッセイサロンより
2014年6月26日 (木)

岩国市  会 員   角 智之

薫風を受けて新緑も色濃くなる頃、初夏の風物詩、ホタルたちの出番となる。
 たそがれ時に川辺の草むらに目をやると、鈍い光を放ちながら飛び立つタイミングをうかがっているようだ。初めは思い思いに光っているが、やがて一つのグループとなって乱舞する。 
 子どもの頃、近所の友達と夢中で追い掛けた記憶がある。走りながら狙いを定め、竹ぼうきを振り上げると、いきなり光を消して高く舞い上がる様子が月明かりに見えた。小さな虫でさえ、身を守るすべを心得ているのに驚いた。今では見ない光景となった。
 コンクリート護岸工事で隠れ場となる雑草が少なくなったのと、上流のダム工事で川底に土砂が堆積し餌のカワニナが減少、幼虫の生息の場が狭められた。
 人間の生活を豊かにする河川工事も、自然環境の保全と両立させながら進めるべきではないかと思う。

(2014.05.08 中国新聞「広場」掲載岩国エッセイサロン)より転載

鹿屋市コーラスフェスティバルでした

2014-06-24 11:34:15 | アカショウビンのつぶやき

信愛コーラスは15名で参加しました。
曲は、「マザーテレサ愛のことば」より、3曲。
素晴らしい曲でした。
「私は一本のエンピツ、神の御手による小さなエンピツ♪」
と日本語とラテン語で、歌いました。

マザーの愛をお伝えできたでしょうか…。


私たちの姉妹グループ、フォルティシモさんは
金子みすずの歌を、ユーモラスに歌いました。


今年は16団体の参加でしたが、小学校2校の参加がありました。


古い歴史をもつ、鹿屋市民合唱団。
いつも宗教曲からポップスまで幅広いレパートリーで楽しませてくださいます。


最後は全体合唱で「富士の山」
奇しくも、世界遺産登録の記念日でした。

今年のフェスタは終わりました。
次は、鹿児島県おかあさんコーラスです。
更に磨きをかけて頑張りま-す。

ミツバチの聴聞

2014-06-24 10:59:43 | 岩国エッセイサロンより
2014年6月23日 (月)

    岩国市   会 員    片山 清勝

 地元の寺で5月下旬にあった「親鸞聖人降誕会」。本堂でのお勤めの後、聖人の話を聞いていた。すると、後ろのほうから羽音がした。私の横を通り過ぎて、前の席へと飛んで行った。
 それは1匹のミツバチ。どうして本堂へ入り込んだのかと思っていると、女性がすぐ、「話を聞きに来たんじゃけえ殺生しちゃあいけんよ」と、聴聞の人たちに静かに優しく呼び掛けていた。降誕会の会場にふさわしい声掛けで、心根の優しい方だろうと思った。羽音が近づくと、本堂にいる誰もが優しい手つきで払っていた。
 ミツバチは作物の受粉、蜂蜜の生産と、人間の生活とも深い関わりがある。最近、その減少が著しいという。自然環境の変化で大きな問題になっている。このミツバチもどうしたものかと困り果て、お寺を頼って来たのではないかとも思えた。
 講師は、近年、過疎や高齢化の影響もあって寺へのお参りが減っていると話していた。寂しいことだ。私にとって、お寺は身近で、生きていくヒントを教わることができ、心も安らぐ場所。ミツバチの聴聞をいいヒントに、ふらりと訪ねて見る人が増えれば、お寺が再び活気づくのではないか。

    (2014.06.23  中国新聞「明窓」掲載)岩国エッセイサロンより転載
 

あやかりたい

2014-06-22 21:43:39 | はがき随筆
 今年はキュウリを種から育てたのだが、虫にやられたり、病気で枯れたりして全滅した。94歳のAさんは苗を買って植えたとかで、もう収穫の時を迎えて、緑鮮やかなキュウリを今朝、持って来てくだそった。青々とした、きれいな柔らかい菜っ葉も。農業のベテランにはかななわないなあと感心する。Aさんの作られなかったタマネギなどをお返しする。物々交換である。
 栗の季節には栗を、竹の子の頃には竹の子を何度もくださる。私のいれるお茶をおいしいと飲みつつ、人生の楽しかったこと、苦労したことを話される。あやかりたいお元気さである。
  霧島市 秋峯いくよ 2014/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載

男尊女卑

2014-06-22 21:36:08 | はがき随筆
 子供が通う小学校のPTA仲間が「主人が厳しくて大変」と言う。鹿児島出身のご夫婦で、夫は妻の家事について、親戚一同の前で“駄目出し”し、「主婦としてのスキルを上げろ」と話したそうだ。
 それでいて、妻が話を聞いてほしい時は「疲れているから聞かん」の一言。「イクメン」など、育児や家事に積極的に参加する夫が増えてきた時代、県外出身の私には、同世代とは思えない話で、ショックだった。
 知覧の武家屋敷で見た男玄関、女玄関を思い出し、「これがあの男尊女卑というものか」と思ってしまった。
  鹿児島市 津島友子 2014/6/21 毎日新聞鹿児島版掲載