はがき随筆4月度の入選作品が決まりました。
▽出水市文化町、御領満さん(61)の「人生最良の日」(30日)
▽同市高尾野町柴引、清田文雄さん(69)の「ベナレスに泣く」(26目)
▽伊佐市大□上町、山室恒入さん(62)の「ひょっとこ面」(25日)
の3点です。
年間賞を選ぶためにI年分を読み返してみました。いわゆる常連の方の多いことに驚きました。
「はがき随筆」を書くことが生活の一部になっているようで、喜ばしいことだと思います。文章は、自分の心の中を客観的に見ることができるようになりますし、またうっ屈した心を解放しますので、他のみなさんにも投稿をお勧めします。
御領さん「人生最良の日」は、中学の時、自家水用の井戸ポンプが設置され、それまで20往復していた風呂の水くみから解放された日の記憶です。最良の日というとで平常からプラス状況に変化したことを期待しますが、このように、マイナスから平常になった時の喜びは貴重な体験だと思います。
清田さん「ベナレスに泣く」は、映画「おくりびと」の本木君からの連想で、ベナレス経験とでもいうものを思い出したという内容です。私も、親族の遺体を高山に運び、鳥が食べやすいように頭などを石で砕く「鳥葬」の映像を見て驚いたことがあります。死にまつわる風習や宗教儀式のもつ衝撃は常識の世界を打ち砕きます。
山室さん[ひょっとこ面」は、お孫さんと遊んでいて、いきなりひょっとこ面をつけたら泣き出したという内容です。脅かしたのではない、将来のために「世の中がそんなに単純ではない」ことを教えてやったのだというユーモラスな弁解が効果的です。
以上が入選作です。他にいくつかを紹介します。
武田佐俊さん「善人と悪人」(24日)は、本の中の奥さんの貯金を見つけ、貯金を手伝うかへそくるか迷っているという、軽妙な味の文章です。中島征士さん「ゼロの地点」(27日)は、定年を機会に振り出しに戻ってと決心したが、奥さんへの物言いだけは戻らないという反省です。小幡晋一郎さん「初音」(29日)は、大隅湖のウグイスの初音を、補聴器のボリュームを上げて聞いたら臨
場感があったというものです。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授・石田忠彦)
係から 入選作品のう
ち1編は30日午前8時40分からMBC南日本放送・ラジオで朗読されます。
「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。
2009/5/28 毎日新聞鹿児島版掲載
▽出水市文化町、御領満さん(61)の「人生最良の日」(30日)
▽同市高尾野町柴引、清田文雄さん(69)の「ベナレスに泣く」(26目)
▽伊佐市大□上町、山室恒入さん(62)の「ひょっとこ面」(25日)
の3点です。
年間賞を選ぶためにI年分を読み返してみました。いわゆる常連の方の多いことに驚きました。
「はがき随筆」を書くことが生活の一部になっているようで、喜ばしいことだと思います。文章は、自分の心の中を客観的に見ることができるようになりますし、またうっ屈した心を解放しますので、他のみなさんにも投稿をお勧めします。
御領さん「人生最良の日」は、中学の時、自家水用の井戸ポンプが設置され、それまで20往復していた風呂の水くみから解放された日の記憶です。最良の日というとで平常からプラス状況に変化したことを期待しますが、このように、マイナスから平常になった時の喜びは貴重な体験だと思います。
清田さん「ベナレスに泣く」は、映画「おくりびと」の本木君からの連想で、ベナレス経験とでもいうものを思い出したという内容です。私も、親族の遺体を高山に運び、鳥が食べやすいように頭などを石で砕く「鳥葬」の映像を見て驚いたことがあります。死にまつわる風習や宗教儀式のもつ衝撃は常識の世界を打ち砕きます。
山室さん[ひょっとこ面」は、お孫さんと遊んでいて、いきなりひょっとこ面をつけたら泣き出したという内容です。脅かしたのではない、将来のために「世の中がそんなに単純ではない」ことを教えてやったのだというユーモラスな弁解が効果的です。
以上が入選作です。他にいくつかを紹介します。
武田佐俊さん「善人と悪人」(24日)は、本の中の奥さんの貯金を見つけ、貯金を手伝うかへそくるか迷っているという、軽妙な味の文章です。中島征士さん「ゼロの地点」(27日)は、定年を機会に振り出しに戻ってと決心したが、奥さんへの物言いだけは戻らないという反省です。小幡晋一郎さん「初音」(29日)は、大隅湖のウグイスの初音を、補聴器のボリュームを上げて聞いたら臨
場感があったというものです。
(日本近代文学会評議員、鹿児島大名誉教授・石田忠彦)
係から 入選作品のう
ち1編は30日午前8時40分からMBC南日本放送・ラジオで朗読されます。
「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。
2009/5/28 毎日新聞鹿児島版掲載