はがき随筆の昨年12月度の入賞者は次の皆さんです。(敬称略)
【月間賞】27日「古里の思い」小向井一成(65)=さつま町宮之城屋地
【佳作】10日「思い思われ」清田文雄(74)=出水市高尾野町芝引
▽14日「晩秋のある日」内山陽子(76)=鹿児島市田上
古里の思い 自分の心の原風景を描いた絵が展示されたら、原発事故で鹿児島に転居している少女に、郷愁を感じると褒められた。逆境の中にいる人にとって、一枚の絵でもそれを通しての心の触れあいが、いかに貴重なものか。古里を失い望郷の念の中にいる彼女には、励ましの言葉しかなかった。温かい文章です。
思い思われ スーパーのレジで親切な係の人に出会い、夫婦でファンになり、その人の居る時に買い物をすることにしている。こういう、優しい人が優しい人と労りあうのはいいですね。その場の光景が彷彿とするのも、文章の巧みな構成の効果です。
晩秋のある日 所用の帰路、新しくできた葬祭場を見学し、パンフレットを貰って帰り、自分の葬送の時の娘夫婦の様子を想像したという、少し驚かされる文章です。結びの部分の、死は再生だと自分に言い聞かせるのも、実感があります。誰でも覚悟しないといけないことですが、その覚悟が、晩秋の一日の挿話としてさらりと書かれていて、考えさせられます。
この他の優れたものを紹介します。
川畑千歳さんの「ひげそり」は、高校2年の長男が、父親の電気カミソリでひげをそるようになった。男と子の成長は、父親にとって嬉しいとともに複雑な心境です。大人の男性としてのこれからの対応が大変です。その予感がよく表れています。
津島友子さんの「ですです」は、外部からみたカゴンマベンの不思議さが描かれています。地方紙の投稿欄は、どうしても我がもの褒めになってしまいますので、こういう外からの愛情のある視線は大事です。
有村好一さんの「災難」は、小春の一日、海岸で景色を〝おかず〟に弁当を使っていると、トンビに弁当を攫われました。本当にこういうことがあるのですね。その驚きを、油断大敵の教訓に結びつけた軽妙な結びが、秀逸です。
12月分は優れた投稿が多く選に迷いました。今年も力作をお願いします。
(鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)
【月間賞】27日「古里の思い」小向井一成(65)=さつま町宮之城屋地
【佳作】10日「思い思われ」清田文雄(74)=出水市高尾野町芝引
▽14日「晩秋のある日」内山陽子(76)=鹿児島市田上
古里の思い 自分の心の原風景を描いた絵が展示されたら、原発事故で鹿児島に転居している少女に、郷愁を感じると褒められた。逆境の中にいる人にとって、一枚の絵でもそれを通しての心の触れあいが、いかに貴重なものか。古里を失い望郷の念の中にいる彼女には、励ましの言葉しかなかった。温かい文章です。
思い思われ スーパーのレジで親切な係の人に出会い、夫婦でファンになり、その人の居る時に買い物をすることにしている。こういう、優しい人が優しい人と労りあうのはいいですね。その場の光景が彷彿とするのも、文章の巧みな構成の効果です。
晩秋のある日 所用の帰路、新しくできた葬祭場を見学し、パンフレットを貰って帰り、自分の葬送の時の娘夫婦の様子を想像したという、少し驚かされる文章です。結びの部分の、死は再生だと自分に言い聞かせるのも、実感があります。誰でも覚悟しないといけないことですが、その覚悟が、晩秋の一日の挿話としてさらりと書かれていて、考えさせられます。
この他の優れたものを紹介します。
川畑千歳さんの「ひげそり」は、高校2年の長男が、父親の電気カミソリでひげをそるようになった。男と子の成長は、父親にとって嬉しいとともに複雑な心境です。大人の男性としてのこれからの対応が大変です。その予感がよく表れています。
津島友子さんの「ですです」は、外部からみたカゴンマベンの不思議さが描かれています。地方紙の投稿欄は、どうしても我がもの褒めになってしまいますので、こういう外からの愛情のある視線は大事です。
有村好一さんの「災難」は、小春の一日、海岸で景色を〝おかず〟に弁当を使っていると、トンビに弁当を攫われました。本当にこういうことがあるのですね。その驚きを、油断大敵の教訓に結びつけた軽妙な結びが、秀逸です。
12月分は優れた投稿が多く選に迷いました。今年も力作をお願いします。
(鹿児島大学名誉教授 石田忠彦)