はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ご近所の目

2014-07-28 19:17:03 | ペン&ぺん


 兵庫県の野々村竜太郎前県議(47)=西宮市=による政務活動費の不自然な支出疑惑、通信教育大手ベネッセホールディングス=岡山市=の顧客情報漏えい事件、岡山県倉敷市の小5女児監禁事件――。なぜと憤る事件、疑惑が後を絶たない。 
 政務活動費は公費で税金だ。公人たる県議はその使途を明らかにするのが当然。野々村氏は県民に説明する義務がある。
 人ごとと思っていたら、北九州市の自宅に知らない会社から、我が家に中高生2人の娘がいることを知った上で勧誘の電話があった。娘たちの個人情報はどこから漏れたのか。
 多くの人が心配していた監禁事件は女児が無事に保護され本当によかった。相も変わらず、なぜこんな事件が続くのか。
 私は娘たちに幼稚園から空手を学ばせた。加害者が成人の男なら、女児の空手は気休めかも知れない。それでも、我が身を守ってほしいとの願いを込めた。寸止めなしの流派で、体中に青あざがあったが、心身共にたくましくなった。更に出たばかりのGPS機能付きの携帯電話を持たせ、外出した際、妻がいなければ私が幼い娘を男子トイレに連れて行き、用を済ませていた。
 今回の監禁事件解決の一つには、近所の人がナンバープレートを二重装着した不審者を目撃していたことなどが挙げられる。他にも周辺住民から寄せられた多くの情報が容疑者逮捕につながったようだ。幼い子やお年寄りといった弱者を守る、かつて日本のどこにもあったご近所の目が生きていた。確かに、町内や地元の校区に見なれない車や人が出没すると「おかしい」と思わねばならなくなった悲しいご時世になった。
 夏休みに入った。お子さんやお孫さんに今回の事件を教訓に、川や海の事故なども含め自分の生命を守る手立てを人生の先輩から話してほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/7/22 毎日新聞鹿児島版掲載

ご近所に関心を

2014-06-19 23:30:27 | ペン&ぺん


 赤ん坊や幼児、女子高校生らが犠牲となる悲惨な事件が全国で相次いでいる。栃木県日光市(旧今市市)の小学1年、吉田有希ちゃん(当時7歳)が2005年12月、下校途中に連れ去られ殺害された事件。ご両親の胸中を思うと言葉がない。我が子に食事を与えず、衰弱死させた保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕された父親には言葉がない。なぜ、そんなことができるのか。信じられない。
 「子ども虐待防止ネットワーク会議」で5月、13年度の県内の虐待認定件数が報告された。なんと452件で過去最多主なものは、身体的虐待が79件、ネグレクト(育児放棄)45件、性的虐待7件。
 子どもの頃、私の古里の町内の親子げんかや夫婦の不和、子どもの非行などは“筒抜け”だった。万引きや不純異性交遊で補導されたなども。今や不純異性交遊という言葉は死語か。それだけ、近所付き合いがあったという証しでもある。「そんな事で補導されるなんて」「警察のお世話になるとは……」。昭和の時代は、世間の目や恥の文化もあって非行や犯罪に走らせるのを思いとどまらせていたと思う。
 私が正月や盆に熊本の実家に帰省しても、町内で暮らす人の顔が分からない。竹馬の友は私同様、県外で働き、親も80歳代以上で、既に無くなった人も多い。若い夫婦も共働きが多く、町内会活動への参加はない。だから「お隣さんの様子がおかしい」と感じたり、関心を寄せることもない。県中央児童相談所は「周囲の目が大切」と呼びかけているが、その通りだと思う。
 W杯が始まり、日本代表に3人を送り出し本県も盛り上がっている。ギリシャ戦は20日午前7時、試合開始。遠藤保仁、大迫勇也選手らには幕末の志士のごとく大いに活躍してほしい。鹿児島をサムライブルー一色にして声援を送りたい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/6/18 毎日新聞鹿児島版掲載

今こそ外交力を

2014-06-03 16:21:49 | ペン&ぺん

安倍晋三首相の私的懇談会が5月、集団的自衛権の行使を、憲法解釈を変更して容認するよう求める報告書を提出した。憲法改正によらず解釈で変更するとの考えだ。記者会見で、安倍首相が艦船をイラストに使って邦人救助時の自衛権について持論を展開していたのを、多くの皆さんが覚えておられるだろう。
 私たちは、一部地域・局所の武力衝突や国境紛争が、世界や世界大戦の引き金になることを歴史で学んだ。公海上空の中国軍戦闘機による自衛隊機への異常接近などが憂慮されるが、今こそ「外交」で正常な関係にもっていかねばならない。
 日本と北朝鮮が拉致被害者の再調査で合意したとのニュース。私にも2人の娘がいるのでテレビで横田めぐみさんのご両親を見ると、いたたまれない。日本には、あの北朝鮮を相手に再調査合意にもっていける交渉力がまだあるのだ。
 県内にも1978年に拉致された市川修一さん(当時23歳)ら被害者が複数おられる。家族の高齢化は進むばかりで早期の解決が望まれる。今度こそ、北朝鮮の誠実な対応に期待したい。拉致問題は安倍政権にとって最重要課題の一つ。納得いく解決を図ってほしい。中国の軍事力増強や海洋進出、北朝鮮の核開発など脅威はある。ならば日本が見せた外交力をもって、自衛隊が出ていかなくてもいいようにしてほしい。青臭いだろうか。
 さて、NHK争奪県選抜高校野球大会は見応えがあった。今春のセンバツに本県から出場した神村学園が決勝へ、大島が準決勝へ進んだ。今夏の甲子園出場を占うとされるNHK旗。神村と大島は甲子園への春夏連続出場がかかっており、鹿屋中央もNHK旗初優勝校の実力を見せたい。離島や山村などの高校もハンディを克服し、県予選に挑んでもらい、再び鹿児島を熱くしてほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/6/3 毎日新聞鹿児島版掲載

ASKAあなたもか

2014-05-27 17:01:16 | ペン&ぺん

 覚せい剤取締法違反(所持)容疑で、男性デュオ「CHAG and ASKA」のASKA(本名・宮崎重明)容疑者(56)が逮捕された。昨年、週刊誌で薬物疑惑が報じられたが、名誉毀損で訴えることもなく、反論もなかったので、誰もが「もしや」と思っていた。当初、容疑を否認していたが「覚醒剤を使ったことがある」などと使用を認める供述を始めているという。「ひとり咲き」(1979年)、「万里の河」(80年)から知っていたので、事件が事実なら残念だ。心に残る歌詞で数々のヒット曲を生んだのに、あの警視庁組織犯罪対策5課に逮捕されるとは……。なぜ、覚醒剤に手を出したのだろうか。全てを明らかにしてほしい。
 県警がホームページで県内の薬物事犯(覚醒剤、大麻、麻薬)の検挙状況を公表している。覚醒剤をみると、2011年は51人、押収量66.189㌘▽12年の特徴的傾向について①検挙者の年代別は30.40代が約6割②覚醒剤事犯再犯者の検挙が約8割③覚醒剤事犯では暴力団関係者の検挙が約半数④一般市民層への浸透、地方拡散が進んでいる――と説明している。
 若い頃、警察官から薬物の怖さを教えてもらった。覚醒剤はその名の通り、精神が覚醒し、気分が高揚するらしい。でも薬が切れると、とてつもない脱力感、疲労感に襲われ、幻覚も。薬物を絶つのは難しく、次第に精神も肉体もむしばまれていく。入手するのに高額な金も必要で、生活はすさむ。乳児ら4人が殺害された「深川通り魔殺人事件」(81年6月)を覚えておられるだろう。服役中の受刑者も覚醒剤を使用していたという。
 芸能人、アーティストらが薬物犯罪に陥るのはなぜ。新作、創作へのプレッシャーか。どんな理由があるにせよ、薬の力を借りてできなラブソングなど聴きたくない。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/5/27 毎日新聞鹿児島版掲載

薩摩の志士なら

2014-05-21 14:27:42 | ペン&ぺん
 

4月20日、私立鹿児島高1年、勝みなみ選手が日本女子ゴルフツアー優勝に輝き、最年少記録を塗り替えた。15歳。まさに「時の人」となった。将来が楽しみだ。
 「政治とカネ」を争点に6候補が論戦を繰り広げ、同27日投開票された衆院鹿児島2区補選。安倍晋三首相ら与野党の党首、代表らが相次ぎ来県し、てこ入れした。安倍政権への「信任投票」として捉えられ、全国注視の国政選となった。
 5月10日、桜島が噴火し、噴煙は4500㍍まで上がった。大量の灰が鹿児島市中心部に降った。昨年8月を思い出した。昨夏も今回もこの噴火は全国ニュースとなった。天高く噴煙を上げる10日の桜島を撮った津島史人記者の写真はヤフーでネット配信された。
 6月に開催されるサッカーワールドカップ(W杯)ブラジル大会の日本代表メンバーに県ゆかりの遠藤保仁、伊野波雅彦、大迫勇也の3選手が選ばれた。23人の中からの3人だ。代表選手とは縁のない県もあるだろう。それを思えば3人を輩出したことは「サッカーの鹿児島」を県外にアピールする絶好の機会だ。代表チームが21日から指宿で合宿する。W杯では厚い選手層、練習環境、良好な季候など鹿児島のサッカーへの熱い思いを全国に伝えたい。川内原発の再稼働問題もそうだ。伊藤祐一郎知事の発言も含め、本件は常に注目の的となっている。
 安倍首相は15日、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する方向にかじを切った。皆さんもそれぞれの考えを持っておられるでしょう。毎日新聞を含め各紙をじっくり読み比べてほしい。そもそも、これは私たち有権者(国民)が1票を投じて託した代表が集まる国会で議論するべきではないか。幕末、日本を動かした薩摩の志士たちは150年後をどのように見ているだろうか。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/5/20 毎日新聞鹿児島版掲載

連休で考えた

2014-05-12 19:22:03 | ペン&ぺん


 皆さんは大型連休をどのように過ごされただろうか。新潟県上越市の海岸で5人が亡くなった事故は、何とも痛ましかった。水辺の子どもたちが突然、大波にさらわれたという。親や近くで釣りをしていて助けようとした青年も荒海に飛び込み、犠牲となった。この青年は他人。果たして、私にできたか。事故は海の怖さをまざまざと教えてくれた。
 周囲を海に囲まれている鹿児島。岩場で釣りをしていた人が高波に襲われ、死亡した例を幾度も取材した。現場は事故直前まで穏やかな「凪」。外洋から大波が押し寄せ、急に海面が盛り上がって襲う。磯釣りが好きだった亡父は鹿児島に来て、釣りを楽しんでいた。父からも磯釣りの危険性を聞いていたので、思い出した。これから海の季節が始まる。気をつけたい。
 連休で県外の知人から鹿児島観光について聞かれた。例えば、特攻隊。多くが旧日本陸軍の「知覧」飛行場を念頭に尋ねてくるので「大隅半島には旧海軍の鹿屋航空基地があり、戦争末期はここからも多くの特攻隊が出撃した」と説明する。陸軍の「隼」、海軍の「零戦」から始め、20歳未満の若者も特攻隊として戦死した話などをした。特攻イコール知覧と思っている人が多い。
 3日の憲法記念日。今年は憲法改正や集団的自衛権など憲法解釈で注目された。各地で護憲、改憲派それぞれの行事があり、ニュースを見た母(84)が「あんたが大学生の頃(約30年前)も日本の右傾化を感じ、徴兵制が浮かんだ」と話した。母は16歳で終戦。学徒動員で働いた軍需工場が空襲され、級友らが頭や手足を吹き飛ばされ、亡くなった。いまだに母の記憶から消えてはいない。
 旧高山町出身で日中国交正常化交渉に尽力した二階堂進・自民党元副総裁も「二度と戦争をしてはいかんのです」。生前の言葉が耳に残る。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載

一刻も早い救助を

2014-05-10 14:13:54 | ペン&ぺん


 韓国・珍島沖で起きた旅客船「セウォル号」沈没事故。修学旅行生を乗せたまま、いまだ多くが行方不明。私も中高生の2人の娘がいるので、ニュースで荒れた現場の海や政府関係者に詰め寄る保護者を見ると、いたたまれない。なかなか進展しない救助をもどかしく感じている人も多いはず。一刻も早い救出を祈るばかりだ。
 鹿児島も錦江湾をはじめ、県本土と甑島、奄美群島などがフェリーや高速船で結ばれていて、今回の事故はひとごとではない。
 事故後、本社から支局に「セウォル号はかつて鹿児島で就航していた。調べてほしい」と連絡があった。「エッ! まさか」。早速、支局記者が以前この船を所有していたフェリー会社(本社・奄美市)を訪ねると、担当者がきちんと取材に応じてくれた。東日本大震災後、「想定外」「まさか」という言葉はもう通用しない、言い訳にならない――ことを私たちは学んだ。肝に銘じなければならない。
 それから、海上保安庁や自衛隊が持つ海難救助隊を派遣できないのか。誰もが舌を巻く猛訓練に耐えた隊員たちが海中だろうが、荒れた海上だろうが、救助に向かうシーンをテレビで見た。映画「海猿」では鹿児島で大型フェリーが沈没、隊員が命がけで救助する姿を描いたシーンが記憶に新しい。私たちがひとたび乗船したら海の男、女たちに命を預けるわけだから、今事故を教訓に万全の対策を講じてほしい。
 さて、27日は衆議院鹿児島2区補選の投票日。全国注視の選挙であることは県民の皆さんも充分ご存じのはず。とりわけ農業県の本県は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)を避けて通れず、選挙区は異なるが九州電力川内原発(薩摩川内市)の再稼働問題は全国民の関心事。6候補の考えに耳を傾け、2区の有権者は1票を投じてほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 毎日新聞鹿児島版掲載

センバツと鹿児島

2014-04-08 11:01:28 | ペン&ぺん
 今春、全国から話題を集めたのは、やはり第86回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)に奄美群島から初出場した大島高ではなかっただろうか。選抜発表前から注目され、出場決定の1月24日から4月2日の閉会式まで紙面をにぎやかにしてくれた。応援は全国32高の中から最優秀賞に輝き、まさに大島が日本に〝球春〟を告げ、最後を締めくくった。
 大島は初戦で龍谷大平安(京都)とぶつかって破れたが、11安打を放った。しかも今大会優勝校からである。龍谷大平安ナインの「こんなに強いなんて」と言わしめたほどだ。あの大観衆、対戦校の名前に動じない堂々たるプレーも痛快だった。
 今大会を主催した毎日新聞社の1人としてうれしかったのは大島のセンバツ出場について奄美群島の方々だけでなく、多くの県民の皆さんに喜んでいただいたことだ。高校野球が大好きな薩摩焼宗家十四代、沈寿官さん(87)は「21世紀枠出場に関係なく、甲子園での走攻守にわたる果敢なプレーは奄美群島、鹿児島の高校野球のレベルの高さを証明してくれた。夏が楽しみです」と目を細めた。2回戦で本来の実力を発揮できなかった神村学園も捲土重来に期待したい。
 開・閉会式の鹿児島純心高校と鶴丸高校のアナウンスも見事だった。まるで鹿児島づくしの大会で、私も一生忘れることができない。
 記者コラム「やごろうどん」をお読みになったように山崎太郎、奥田伸一の両記者が1日付で移動となり、新しく柳瀬成一郎(41)、杣谷健太(29)の2記者が仲間入り。柳瀬記者は石川県、杣山記者は三重県出身です。新鮮な視点で鹿児島の話題、問題などを全国に、そして世界に向けて発信してくれるでしょう。私も引き続き鹿児島でお世話になります。よろしくお願いします。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/4/7 毎日新聞鹿児島版掲載

3.11を忘れるな

2014-03-13 16:57:54 | ペン&ぺん
 
今冬、東京をはじめ北国が記録的な大雪に見舞われている。雪で右往左往する首都圏の人たちだが、ひとごとではない。鹿児島県民は灰が降るのには慣れているが、大量の雪ならば、果たしてどうだろうか。
 100年前の1914(大正3年)に起きた桜島大正噴火の死者・行方不明者は58人。昨年8月、桜島の灰が鹿児島市中心部に大量に降ったのは記憶に新しい。もし大正噴火クラスの爆発、地震が起き、灰が降り積もるならば空港や基幹道路、鉄道などの交通網はマヒし、生活が大打撃を受けるのは間違いない。いや、命の危険にさらされる。
 東京電力福島第1原発事故で、原発の安全神話が崩れた。我が家に住めない、戻れないという現実があり、古里を奪われたに等しい。薩摩川内市には川内原発がある。引き続き国や県、市、九州電力などはさまざまな指摘や住民らの声に、真摯に耳を傾けてほしい。
 愛車のブレーキが作動しなかったことがある。ドライブが好きで、安全運転が信条。操作ミスはないと確信していたが、ブレーキの不具合が数回起きた。調べてもらったが、異常はないという。だが「もし人をはねたら、取り返しがつかない」。新車で購入したが、泣く泣く手放した。車が己の意志通りに動かない恐怖。今も忘れられない。
 周囲を海に囲まれる本県はどこが大津波に襲われてもおかしくない。21年前の「8.6水害」は自然災害の恐怖、破壊力、避難の重要性を教えてくれた。更に東日本大震災で「想定外」という概念を学んだ。「まさか」「ここなら大丈夫」の発想を改め、あらゆる事態を考え対処しなければならない。
 「3.11」を機にもう一度、災害時に子供や高齢者ら弱者が犠牲とならぬよう「昭和」にみられた地域の助け合い、困った時はお互い様の精神を思い起こしたい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/3/11 毎日新聞鹿児島版掲載

10代に見習う

2014-02-19 01:49:47 | ペン&ぺん


 ソチ五輪で、連日深夜までテレビ観戦し寝不足の方が多いのでは。私もその一人。今まで男子のフィギュアスケートに関心はなかったが、やはり羽生結弦選手(19)らが気になり、夜更かしが続く。団体戦ではロシアの〝皇帝〟エフゲニー・プルシェンコ選手(31)を上回る圧巻の滑り。個人戦のショートプログラム(SP)でも素晴らしいパフォーマンスを見せ、ついに今五輪で日本に初の金メダルをもたらしてくれた。
 スノーボード男子ハーフパイプでも銀メダルの平野歩夢が15歳、銅メダルの平岡卓が18歳。両選手はあんなに高く舞い上がり、怖くないのか。しかも空中で体を左右にひねって、回転。厳しい条件の技をクリアしなければならぬ。着地に失敗したら、大けがもありえる。あの度胸と平衡感覚は感心するばかり。次の冬期五輪がとても楽しみだ。惰眠をむさぼる私の2人の娘(高2、中2)はどう感じているのか。
 さて3月21日、第86回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)が開幕する。県内からは上村学園と大島の2高が出場、当然部員も在校生も10代。選手たちは大舞台に向けていっそう気を引き締め、アルプススタンドから見守る応援団やブラスバンドの練習にもいっそう力が入る。
 センバツ担当の土田暁彦記者(29)によると、両高の部員や監督らも快く対応してくれ、元気をもらっている。土田記者も元高校球児だから、練習で手を抜けば見抜く。私も小中高校と柔道漬けで大きな大会にも出た。だから世界のトップ選手でも五輪という大舞台にのまれ、実力を出し切れないのは分かる気がする。ソチ五輪でもそんなシーンが幾つもあった。
 球児たちは学校や郷土の期待を一身に受け、重圧もあるだろうが、思いっきりプレーしてきてほしい。きつい練習は、大舞台でうそをつかない。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/2/17 毎日新聞鹿児島版掲載

春はセンバツから

2014-02-03 14:53:20 | ペン&ぺん


 久しぶりに「毎日新聞社に入って良かった」と心から思った。3月21日開幕の第86回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)に、県内から私立上村学園(いちき串木野市)と県立大島高(奄美市)の2校が選ばれたことだ。上村学園は2年ぶり4回目。21世紀枠の大島は初出場で離島校としても初。県内からのダブル出場は21年ぶり。
 発表があった1月24日以降、会合や居酒屋で私の肩書きを知ると、大島高の卒業生が駆け寄ってきて「よくぞ選んでくれました」と握手を求められ、感謝の言葉をいただく。地元支局長に選抜出場の決定権はないが、こちらもうれしい。同校や奄美大島など島出身者は早速、喜びの宴会。多くの県民の皆さんがこの吉報を祝福している。
 選考委員会が選抜するため、支局の私たちは首を長くして待つのみだった。昨秋の九州大会で4強入りした上村学園でもフタを開けるまで分からない。九州の21世紀枠候補の大島だって確証はなかった。転勤の先々で、誰もが太鼓判を押す有力校が選抜から外れるのを何度も見てきた。選抜に関して「絶対大丈夫」とは言い切れないのだ。
 高校野球を担当する土田暁彦記者からは上村学園の厳しい練習や取材時の高校球児らしいさわやかな対応を聞いており、好感を持っていた。大島も高額な交通費や練習相手の不足など離島のハンディがある。島全体が元気になるよう「何とか行かせてあげたい」と念じていた。だから、本社から連絡が入った時、私も思わず「ウルッ」ときた。支局員も手をたたき、握手しあって喜んだ。センバツを何度も経験した私だが、初めて「万歳!」と叫んだ。
 さあ、今度は本番の甲子園だ。選手や部員だけでなく両校の生徒、関係者もグランドで、そして応援席で「ファインプレー」をみせてほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/2/3 毎日新聞鹿児島版掲載

今年も健康第一で

2014-01-22 22:24:07 | ペン&ぺん
 

 浜松市の小学校で起きたノロウイルスの集団食中毒。12~1月が流行のピークで感染力が極めて強く、吐き気や嘔吐、下痢などの症状が出る。高齢者や子供は自分の嘔吐物を吸い込んで、肺炎や窒息を起こすことがあり、油断は禁物だという。
 今月2日、母(84)が早朝から嘔吐と下痢を繰り返した。ベッドの中の母の顔はげっそり。病院へ連れて行こうとすると「大丈夫。寝ていれば治る」と。でも、よほどつらかったみたいで「やっぱり、連れて行って」。
 正月に診察してくれるのは休日当番医。古里は人口10万人の街だが、待合室は大混雑し、診察までの待ち時間は3時間。母を待合室で長時間待たせるわけにもいかず、予約をして再び3時間後に母を連れて病院へ。点滴をし、処方してもらった薬を飲み、安静にしていたら3日ほどで回復した。
 母用のおかゆを作り、市販の消毒剤でトイレや廊下など拭き掃除した。母は「すまないね。でも、あんたがいてくれて良かった」とホッとした様子。でも、私が帰省していなかったらと思うとゾッとした。母は元気になり、通常の生活を送っているが、これが認知症で徘徊したり、病気やけがで寝たきりになったら……。考えただけで眠れなくなる。普段は元気だが、急病で倒れた1人暮らしの高齢者は一体どうしたらいいのか。
 親の介護に直面している働き盛りの同僚、知人がいる。同様の問題を抱えている人たちは増えるばかりだ。優秀な人材なのに高齢の親の面倒をみるため、退職したり、昇進を辞退したりと。
 母の看病で年が明けたのも「健康と親を大切にしろ」と何かの暗示かも。母の件で「1年の計は元旦にあり」ではないが、今年は高齢者や福祉問題を勉強しなければと痛感。皆さんも病の早期発見、予防の徹底で午年を乗りこなしましょう。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 毎日新聞鹿児島版掲載

午年に駆ける

2013-12-28 11:01:57 | ペン&ぺん


 師走に入り、京都市で「餃子の王将」を展開する王将フードサービスの社長が、また北九州市で市漁協組合長が撃たれ、亡くなった。共に銃の扱いに慣れた者の犯行らしい。日本の銃社会もここまで来たのか。
 鹿児島では7月、姶良市の女性が借金を断った男により殺害された。県警は粘り強い捜査で容疑者を逮捕、容疑者は強盗殺人の罪で起訴された。
 17日には鹿児島市三和町で女性が頭部を強打され、21日夜亡くなった。県警は鹿児島中央署に捜査本部を設け、殺人事件として全力で捜査にあたっている。でも世界に冠たる日本警察の捜査力。犯人は早く自主すべきだ。痛ましい事件が県内で起きたが期待の持てる明るい話題もある。
 来春の第86回選抜高校野球(日本高野連、毎日新聞社主催)の「21世紀枠」九州地区候補校に、奄美市にある県立大島高校(屋村優一郎校長)が選ばれた。全国9校の中の1校だ。この中から最終的に3校が決まる。
 本社から届いた候補校の表彰盾を贈るため、県高野連の佃省三理事長と一緒に大島高を訪ねると、終業式後に伝達式を開いていただいた。私が歌やユーモアを交えて祝辞を述べると、生徒たちが瞬時にドッと笑ったくれた。仕事柄、高校やイベントであいさつを頼まれるがポカ~ンされることが多い。校外の奉仕活動や文武両道も評価されただけにさすが、生徒たちの理解力は速かった。甲子園に行けたならと大いに期待している。さて最終的に県内からはどこが選ばれるか、1月24日の発表が楽しみ。
 今年は今回が最後です。ご愛読ありがとうございました。皆さんもつらいこと、腹の立つこと、うれしいことなどそれぞれあったことでしょう。来年のえとは午。天馬のように駆け抜ければと思います。どうぞ良いお年を。2014年もよろしくお願いします。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2013/12/27 毎日新聞鹿児島版掲載

人生いろいろ

2013-12-17 22:03:35 | ペン&ぺん
 2013年も残すところ、あと2週間余り。年末の大掃除や年賀状書きに忙しい毎日を送っておられるだろう。今年の流行語大賞や1年を現す漢字も「輪」と決まった。皆さんの我が家、職場の流行語や漢字はどんなものがあるのだろうか。
 今年は7月の参院選、公金を投入した県職員らの中国・上海研修、桜島の噴火・大量降灰と慌ただしかった。今は医療法人「徳州会」グループによる公職選挙法違反事件が県政界を巻き込み、気が抜けない。いずれもこれらのニュースを鹿児島支局から発信し、全国に伝えている。
 選挙に金がかかるのは想像はつく。でも今も昔ながらの手法が鹿児島で取られていたとするならば、これを機会に一掃すべきだ。組織内で反目し、干された人物が金の流れを示すチャートや名簿、通帳など一切の資料を持って警察や地検に駆け込むのは世の常ではないか。「有らぬ疑い」に迷惑しているなら、まして薩摩の男なら、正々堂々と真実を語ってほしい。
 伯父、叔母が相次いで、がんで逝った。2人は開腹した時は手遅れだった。伯父は戦争末期、小型ボートに爆薬を積み、敵艦に体当たりする訓練を受けていた。貴重な生き証人だったのに、ついに詳しい話を聴けなかった。悔みきれない。
 今年も多くの著名人が鬼籍に入った。「大地の子」で知られる作家の山崎豊子さん、「人生いろいろ」と島倉千代子さん、「恋の季節」「君といつまでも」など数々のヒット曲を世に出した作詞家の岩谷時子さん。島倉さんは他人の多額の借金を背負い、がんを患ったりとまさに波乱万丈の人生だった。
 皆さんもご家族、友人、知人で亡くなられた方がおられるでしょう。きっと天国から見舞ってくれているはずだ。だから、天国のご先祖さまから叱られるような生き方だけはしたくない。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎

事実は小説よりも

2013-12-07 16:49:45 | ペン&ぺん

 事実は小説よりも奇なり──。60年前、生まれた病院で他の赤ちゃんと取り違えられ、別の人生を余儀なくされた男性のニュース。多くの皆さんがご存じだろう。本来なら経済的に恵まれた家庭の長男だったのに……。52歳の私も57歳の姉も病院ではなく、実家で生まれた。助産師に来てもらったが、当時自宅分娩は珍しくなかったという。
 私の長女は1996(平成8)年、旧県立鹿屋病院で生まれた。連絡を受けて駆け付けると生まれたばかりで、顔はしわくちゃ。孫の顔をのぞいた義理の両親は「まあ、(私の妻に)うり二つだね」と喜んだ。次女も大きな病院で生まれたが、今度は私の母が「うわ、あんたかと思った」と驚いた。よほど私に似ていたらしい。娘達は生まれてすぐに腕や足の裏に名前を書かれ、手と足首にネームバンドを巻かれた。2人は高2、中2になったが、妻は今もバンドを大切に持っている。ただ、60年前も病院は細心の注意を払わねばならないことだった。
 医療法人「徳州会」グループの公職選挙法違反事件は全国に飛び火している。猪瀬直樹・東京都知事が「徳州会」グループから多額の資金提供を受けた問題。猪瀬知事は借用証を公開し釈明したが、このご時世に5000万円は変だろう。しかも無利息、無担保、押印なし。記者会見でしどろもどろする姿に、どれだけの人が納得するのか。
 そして鹿児島。伊藤祐一郎知事が「徳州会」グループ所有の軽飛行機を利用していたことが分かった。伊藤知事は「(徳田虎雄・徳州会前理事長)夫人が使う飛行機に便乗させてもらった」と述べ、利用供与にあたらない考えを示している。
 政治家は何事も誤解を受けないよう振る舞い、法に従い文書を作成提出し、管理を怠らぬよう身を律したい。公人なら自ら語り、関係文書を公開する気構えがほしい。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎