私が、磯釣りを始めた頃、1人の名人がいた。誰も釣れないのに不思議とその人だけ釣れる。何でや、まぐれだろう。けどいつもだ。笑って多くは語らない。釣りに対する気持ちが変わった。そのうち釣れるだろうではなく、釣るのだ。潮の流れ、風向き、魚の習性、季節、道具、五感を集中。魚も命懸けだ。体で覚えた四十数年、時々狙い通りの魚や大物が釣れた時はやっとあの名人に近づいたかなあと、心ひそかに思っている。逃げた魚は大きい。違う。自分が下手だから逃げられたのだ。次は見ちょれよ。釣りは奥が深い。
指宿市 有村好一 2014/8/23 毎日新聞鹿児島版掲載
指宿市 有村好一 2014/8/23 毎日新聞鹿児島版掲載