はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

女ですもの

2019-02-15 18:29:49 | はがき随筆
 81歳になる日が目の前まで迫ってきた。傘寿のお祝いをいただいた日から、もう一年近く過ぎてしまった。
 1年ごとに脳も体も、なんと弱くなって行くものかと思う。何かある度に、頭の中の引き出しから、あれこれ引っ張り出さなければならない。
 それでもお出掛けする時は、しわくちゃ顔にファンデをパタパタ。薄い眉毛をブラウン色のペンでスーイスイ。乾いた唇には、無色のリップクリームをグーイグイ。さあできました。
 婆ちゃんだって女ですもの。このくらいはいいんじゃない。
 行ってきまあす。 
 宮崎県串間市 深江光子(80) 2019/2/5 毎日新聞鹿児島版掲載

世代交代

2019-02-15 18:22:24 | はがき随筆
 思わず息を止め、引き込まれてしまう。高橋大輔の滑りに完全にノックアウト。ブランクを感じさせないその妙技。30点以上の点差をつけた宇野昌磨は頼もしい限り。私は氷の上に立つことすらできないから、もう「う、う~ん」。フィギュアスケートも世代交代がみられる。若者が確実に成長している。2019年、新天皇の誕生で年号も変わる。住みやすい穏やかな世になってほしい。
 生活も随分変わった。電車の中では10人中7.8割がスマホ片手に自分だけの世界。昔は良かったとは言わない。どうあるべきかが問われる時代が来る。
 熊本県八代市 鍬本恵子(73) 2019/2/4 毎日新聞鹿児島版掲載

お年玉抽選会

2019-02-15 18:14:06 | はがき随筆
 元旦は、帰省する娘と隣に住む息子家族との食事会が楽しみ。今年は、趣向をこらし大人も参加するお年玉抽選会を計画。
 年末、抽選箱作りは小学1年の孫息子に声をかけると、やる気満々。完成すると、中に何を入れるのかと聞く。「分かった、おやつを入れるんでしょう」「ひ、み、つ」「オモチャ?」「ひ、み、つ」で乗り切り内緒に。
 当日、食事が終わり抽選箱の登場。2回ずつクジを引く。
 いちばん稼いだのは息子家族。お嫁さんは「こんなにいいんですか?」。「必ず自分のために使いなさい」と私。
 鹿児島県垂水市 竹之内政子(68) 2019/2/3 毎日新聞鹿児島版掲載

春よ来い

2019-02-15 18:08:35 | はがき随筆
 3日ばかりカゼをひいて寝ていた。外がとても暖かいので庭に出てみる。
 すると昨年植えた梅の木に小さなつぼみがたくさん着いていた。気がつかなかった。小さいのによくつがってくれたねと、思わず声をかける。
 ブルーベリーにも赤い芽が出ている。チューリップも芽をのぞかせている。皆春が来るのを待っている。
 私もカゼなどひいている場合じゃないと思った。
 今年もスイカを作って、東京の孫たちに送りたい。私の小さな菜園も夢をふくらませて春が来るのを待っている。
 宮崎県延岡市 平山千鶴子(72) 2019/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載

続・猫とピアノ

2019-02-15 18:00:00 | はがき随筆
 独学で始めたピアノも下手なりに何曲か弾けるようになった。帰省した娘が、私のピアノには余裕がないと言う。そう言われても今は音を拾うだけでいっぱいいっぱいです。見かねてレッスンしてくれたが、もとより向上心はないのでなかなか上達しない。そんな私が大事にしていることはピアノは楽しく弾くこと、頑張りすぎないで長く続けることである。さて練習の邪魔をしていた猫のワサビは避難先のコタツから出てこなくなった。練習していても何だか張り合いがなくコタツをのぞいてみると熟睡している。私の下手なピアノも子守歌に昇格?
 熊本県天草市 岡田千代子(69) 2019/2/1 毎日新聞鹿児島版掲載

新聞と父と私

2019-02-15 17:55:21 | はがき随筆
 新聞を小3の頃から読み始め、60年の歳月が過ぎた。父が新聞に携わる仕事で、配達、集金、拡張があり、夜半に出かけて朝の配達を終える。
 私は社会科の勉強が好きで、九州の地図を描いて父に見せると、父は上手に描いたねと疲れのない顔で褒めてくれた。私はうれしくて飛び上がり、父の背をこぶしでたたいた。集金を終えて小銭の計算をしている父の手伝いもした。計算が終わりほっと一息。販売店へ届けた。
 父は新聞の束を丸めてを脇に挟んで配達していた。久遠の空には星二つ亡き父母に感謝の祈りを。
 鹿児島市 堀三代子(74) 2019/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載