はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

熱が出た!

2022-03-13 16:34:52 | はがき随筆
 妙な気分がして検温すると37.2度。コロナ特有の症状はないが、息子に電話相談。明朝、近くの病院に連絡して指示に従うことにした。熟睡できない一夜が明けた。病院の外で待機してくれていた看護師さんの誘導で検査、診察も特別扱いだ、抗原検査で陰性と出た。医師に「人との接触を避け、安静に」と言われ帰宅した。
 ところが、臀部と首に筋肉痛が。昨夜、脱衣場でバランスを崩し、転倒を免れた代わりに、体をひねったのを思い出した。熱はそのせい? 平熱にもどり、臀部の傷みだけが残っている。
 熊本市中央区 渡邊布威(84) 2022.3.13 毎日新聞鹿児島版掲載

原点は古里

2022-03-13 16:24:29 | はがき随筆
 同郷の後輩が、過疎の古里を見つめ直す一役にしたいと編集中の「ふるさとの史跡と伝承」の冊子を持ってきた。思うと、歴史ある村も歩く人がいないことが肌身で分るほど人口減少の一途をたどっている。子どもの頃は両親がいて兄弟がいて、祖父母がいるにぎやかな村の暮らしがあった。だが、世の流れによって若者が離れ、核家族化が急速にひろがり、やがて年寄りだけの過疎の村になってしまった。何もかも便利で物が豊かになるということはこういうことかな、とつくづく考えさせられる。失ったものは大きいが、暮らしの原点は今もここにあ。
 鹿児島県さつま町 小向井一成(73) 2022.3.12 毎日新聞鹿児島版掲載

ばあばの役割

2022-03-13 16:18:00 | はがき随筆
 小学6年生の孫は最近買ってもらったスマホに夢中だ。東京に大雪が降った日、早速雪の写真を送ってきた。お礼を兼ねてかぜやコロナに注意するよう私は返信した。すると「そちらこそ気をつけるんだよ」と私を気遣う返事が戻って来た。思いもかけない言葉にびっくり。
 友人は、冬休み中、忙しい両親に代わって小学1年の孫の宿題をみてあげようと申し出た。ところが「ばあばは分かるんだろうか」と心配する言葉を孫からもらったらしい。
 二人で大笑いしながら孫たちの成長を喜んだ。でも、ちょっぴり切なくて泣きたくなった。
 宮崎市 小金丸潤子(71) 2022.3.12 毎日新聞鹿児島版掲載

コロナ

2022-03-13 16:11:29 | はがき随筆
 コロナ禍で外出がままならず、家の中での生活である。
 認知症にならないように頭の体操をする。なつかしい童謡を口ずさんでみる。歌詞があいまいである。歌の本を開いてみる。1番と2ばんが、ごちゃごちゃになっている。年のせいであろうと悲しくなる。季節は巡り春が来る。桜の花が咲く。
 「さくらさくら のやまもさとも みわたすかぎり かすみかくもか あさひににおう さくらさくら はなざかり」 
 美しい日本の春の姿である。すぐそこに春の足音が聞こえる。コロナの終息を願って、春を待つ。
 熊本県八代市 岩崎敏江(83) 2022.3.12 毎日新聞鹿児島版掲載

黄昏の微吟

2022-03-13 16:04:13 | はがき随筆
 鹿児島に移住して音信が途絶えていた友人に、海外旅行を機に絵はがきを送ったのは10年あまり前。奥さんからの返信は、事故で無くなって1年たつという。遅ればせながら焼香に上京したのが切っ掛けで、便りをやり取りすることになった。先日届いた絵手紙の追伸に、同級生のKさん、Aさんが永眠しましたとある。この衝撃波大きい。そんな年になったかという現実を思い知らされた。月例のゴルフコンペでは5歳と3歳上の先輩と当たり前のように楽しんでいた自分は別次元に住んでいたのか。命のはかなさを知る。忍び寄る寂しさ。合掌。
 鹿児島県志布志市 若宮庸成(82) 2022.3.12 毎日新聞鹿児島版掲載

村上への旅

2022-03-13 15:56:03 | はがき随筆
 全国を旅した私が大好きな場所は、新潟県の村上市です。
 最初は重要伝統建造物保存地区に向けた取り組みを見に行きました。その際に江戸時代から続く酒蔵を案内していただき、蔵の中で蘭引きを見て驚きました。
蘭引きは江戸時代にオランダから伝わった蒸留器で、蘭方医が消毒用アルコールを作っていたものでした。蔵の方もそれが何かを知りませんでした。
 次に訪問した時には、日南よりも1カ月遅い桜に出合い、三度目には三面川を上るサケを見ました。また遊びに行きたいと思っていますが、コロナ禍で行けず大変残念です。
 宮崎県日南市 宮田隆雄(70) 2022.3.12 毎日新聞鹿児島版掲載

公園ボランティア

2022-03-13 15:49:15 | はがき随筆
 校区に待望の公園が出来、3月で10周年を迎える。当初から毎月末の日曜日は、清掃の日だ。地域ボランティアの人二十数人が約1時間の作業。市から春と秋に芝刈りなどの手入れはあるが、草萌える候にもなると、一面草木は伸び放題。利用する皆が楽しめるようにと、それそれ用具を手に汗を流す。戦力になれない私も、志は一緒で、当初から今まで参加できた。清掃後の広々とした公園で、高齢者たちのグラウンドゴルフでの笑い声。幼子たちと一緒に駆け回る両親の笑顔。その光景がいつまでも続きますようにと頑張ろう。
 熊本市中央区 原田初枝(91) 2022.3.12 毎日新聞鹿児島版掲載

梅の歌

2022-03-13 15:42:06 | はがき随筆
 今、どこも梅の花盛りだ。白梅は遠くから見ると寂しげに見えるが、近づいて見ると清らかな美しさがある。そして、思わず胸いっぱい吸い込んでしまう香りがいい。梅の花を見ると「二月三月花盛り」と母が歌っていたのを思い出す。明治生まれの母が尋常小学校2年の時に習った歌らしい。「うぐいす鳴いた春の日の」と続く「うめぼしのうた」。懐かしくなり、検索すると歌詞が出てきた。母が歌っていたのと全く同じだ。母は107歳まで生きたのだが、最後までよく覚えていて、所望するといい声でうれしそうに七五調のこの歌を歌った。
 鹿児島県霧島市 秋峯いくよ(81) 2022.3.12 毎日新聞鹿児島版掲載


子の笑顔は宝

2022-03-13 15:34:31 | はがき随筆
 一瞬にして世の中の生活習慣が様変わりするとは、予想もしていなかった。
 コロナというウイルスにより、生命の誕生から人生の終焉の儀式に至るまで。
 私も次女の子の誕生に付き添えず、電話の先でやきもきした。親の死に際に会えぬ子や、市外の葬儀場で「ここでコロナが出たら責任は」と言われた人もいたと、人づてに聞いた。ただただ悲しみに追い打ちをかけるコロナの無情さに胸が痛む。
 マスクのない子の笑顔が、いつ見られるのだろう。真っ青の空には、笑い転げる子が一番似合う。
 宮崎県串間市 安山らく(70) 2022.3.11 毎日新聞鹿児島版掲載


3月3日

2022-03-13 15:27:29 | はがき随筆
 3日の雛祭り、今年もお雛様におめもじできた。穏やかなお顔に私の顔もほころぶ。幸せなひととき。一方、テレビ画面にウクライナの悲惨な状況が流れ、戦争の記憶をフラッシュバックさせる。昭和20年の熊本大空襲で焼夷弾の降る中を逃げ、新屋敷を流れる大井川に首までつかって一夜を明かした。夜が明け、川から上がると一面焼け野原。我が家も跡形もない。「おとうちゃん、おかあちゃん、死なないで」と泣きじゃくった。当時の自分とウクライナの子どもたちが重なり涙が止まらない。今年は世界の平和に祈りをささげるお雛様のひとなった。
 熊本市東区 川嶋孝子(82) 2022.3.10 毎日新聞鹿児島版掲載

誕生日に

2022-03-13 15:20:00 | はがき随筆
 近くで寮生活を送る高2の孫から私の誕生日を祝う動画がLINEで届いた。男子バスケットボール部の仲間と5人で「おめでとう」と祝ってくれた。1人は虎のかぶり物をして、2人はリズムに乗って踊りながら「また泊まりに行かせてください」。孫は「長生きしてね」と。
 年を重ねるのも悪くないなと思った。時に私が作る食事にだめ出しをするが、「似合うと思ったから」とベージュ色のショルダーバッグをプレゼントに届けてくれた。
 この春卒業した子もいるので、暖かくなったら庭でバーベキューをして送ろう。
 鹿児島県薩摩川内市 馬場園征子(81) 2022.3.9 毎日新聞鹿児島版掲載