はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

普通のヒマワリ

2022-10-16 19:24:37 | はがき随筆
 ヒマワリが咲いたと各地のテレビが知らせる。ウクライナでも見ごろを迎えたとヒマワリ畑が映し出されて安堵した。
 ヒマワリを見ると初めて見た洋画「ひまわり」を思い出す。侵攻が始まってから映画と重なり、また映画を見たいと願った。
 思いが通じてテレビで放映された。同じシーンで同じ感動を受けた。広大な畑一面にヒマワリが咲き揺れる光景は音楽ももの悲しく切なく響き、何かを語りかけているようだ。
 ウクライナの国花ヒマワリは「普通のヒマワリ」の名があると知った。現在の悲劇が終わり普通の平和な国の未来を願う。
 宮崎県串間市 武田ゆきえ(68) 2022.10.2 毎日新聞鹿児島版掲載

古いおもちゃ

2022-10-16 19:17:33 | はがき随筆
 「このおもちゃはもう捨てよう」と部屋の片づけをしていた時、私の15年ほど前のビデオを偶然見つけた。片付けがすすまないことを分かりながら見た。
 それはクリスマスプレゼントでもらった調理台や電子レンジ付きのおままごとセットを、組み立てようとしている動画だった。驚くことに、捨てようと思っていたおもちゃだったのだ。まさかこのタイミングで見つけるとは……。あの頃貼っていたピカピカのシールも古くなり、色落ちしていた。部品もない。
 15年後の私は何をしているのだろう。断腸の思いでお別れしたおもちゃのことは忘れない。
 鹿児島市 豊永未優(21) 2022.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載

夕やけこやけ

2022-10-16 19:09:18 | はがき随筆
 大津街道を阿蘇路に向かってひた走る。途中、ハーレーのツーリング隊に出会ったり、少しずつひんやりと心地よい空気に変わる。夕暮れの中のススキの海は幻想的な美しさで、帰ることを忘れて3人で見入った。帰りの山道では一瞬にして霧に囲まれることもあったが、気丈なチャコは気後れもせずハンドルを切った。10年前、がんで逝くまでの5年間、闘病しながら仕事をこなし、最後まで母と妹のさっちゃんのことだけを心に残した。自慢のお母さんだと言ってくれていたさっちゃんが1月に急逝した。草むしりしか能のない母をひとりぼっちにして。
 熊本市東区 黒田あや子(90) 2022.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載

戦争を知らない

2022-10-16 19:01:35 | はがき随筆
 私は戦争を知らない。体験を話してくれた父母たちもすでにない。毎年8月が来ると過去の戦争について学び平和を願う。今年映画「蟻の兵隊」を見た。戦争は人の身も心も破壊する。男性の無念を思うととてもつらい。やがて日本は戦争を知らない者ばかりになる。私たちは先人の思いを決して忘れず、戦争は絶対にしてはならない。
 コロナや暑さで疲弊している昨今、しかし住む所も食物もある。戦時は全てを失う。ウクライナ状況も終わりが見えない。世界は一触即発の様相、将来を危惧してやまない。取り越し苦労であると信じたい。
 宮崎市 小金丸潤子(72) 2022.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載

宇宙ステーション

2022-10-16 18:54:33 | はがき随筆
 早朝4時起床。空を見上げると満天の星。そのなかで三日月と金星が輝きを放っている。昨日までの不安定な天気がうそのよう。十分期待できそう。
 4時44分。南南西に金星と間違えるほどの輝きが現れた。宇宙ステーションだ。5分後には北東の方向にスーッと消えた。今回は、いろいろな条件が整い十分堪能できた。
 地上400㌔㍍上空に建設された巨大な実験施設。90分で地球を一周するとか。その中で、壮大なプロジェクトの実験や観測が行われていると思うと、ロマンを感じる。
 私の心が潤ったひととき。
 鹿児島県垂水市 竹之内政子(72) 2022.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載

再就職

2022-10-16 18:48:14 | はがき随筆
 デイサービスの仕事に就いた。長年封印していた看護師資格を使う気になったのは、「70代の人も活躍しています。高齢の方々に寄り添っていただくお仕事です」という職場紹介をみて安心したからだった。面接、即採用になった。
 1日4時間の午後のパート。体操やゲーム時の見守り、お茶やおやつ配り、食器洗い、機能訓練や傷の処置。そして掃除。
 「少しずつ慣れていけばいいですよ」。必要以上にがちがちに緊張している私に、若い先輩たちが声をかけてくれた。「頑張って!」利用者さんたちも、応援してくれるのだった。
 宮崎県延岡市 渡辺比呂美(65) 2022.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載

人生舞台

2022-10-16 18:41:03 | はがき随筆
 朝からカーテン越しに朝日が差し込み心地よい朝です。お日様の声が聞こえてきました。「今日は体調はどうかね。もうすぐ今日の舞台の幕が開くよ。準備はいいかね。すてきな舞台にしようね。心の笑顔を忘れずに」。杖は軽く、チャップリンのようにはいかないが、気持ちを頂いて、アラ、本当に軽くなった。調子に乗らないこと。繰り返しの出来ない人生舞台。夕日が沈む頃、お日様が点をつけて下さる。それが楽しみ。感謝をしっかり申し上げ、眠りに就きます。どこからか歌が聞こえてきます。線路は続くどこまでも。明日の人生舞台が楽しみです。
 熊本県八代市 相場和子(95) 2022.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載


ラジオ体操

2022-10-16 18:29:33 | はがき随筆
 ラジオ体操が体にいいことだと分かっていたが、実行にはいたらなかった。近くのグラウンドで数人の方がされているのを横目で見ていたが、1年ほど前思い切って参加した。冬は暗い中、外灯の下2.3人で続けた。夜明けが早い夏場は、5時ごろから散歩をして時間待ちした。仲間は高齢者がほとんどで、90歳の方など相当に元気である。難聴のせいか時々動きが変になるが、ドンマイ、ドンマイ、笑顔だ。ほほえましい。コロナ禍以前は忘年会までしていたと話される。ヒンヤリした風がいい気持ち。今朝も白い月を見上げ、流れる雲を追いかける。
 熊本県八代市 鍬本恵子(76) 2022.10.1 毎日新聞鹿児島版掲載