「お母さん、お昼はトウモロコシを買って来たので」「ありがとう」。今は甘いトウモロコシを食べながら、厳しかった食糧難時代が思い出される。
30代まで過ごした阿蘇南郷谷の農家では、トウキビは食料や家畜の飼料として広大な畑作だった。戦中戦後、食べ物がなかった私たちにとっては貴重な主食。農家から分けてもらい、煮たり焼いたり、干しあがったのを石臼でひき、雑炊のようにして食べた。いまのような甘さはなかったが、命をつないでくれた大事な穀物だった。軒先につるされ、夕日に映える風景は今もありありと。
熊本市中央区 原田初枝(92) 2022.8.20 毎日新聞鹿児島版掲載
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