遠い昔、Gパンにリュックサックを背負って40日間の旅に出た。フランスからギリシャまで足を延ばし、リフレッシュして帰って来た。
その夜、「枕カバーが洗濯してない」と母を責めた。母は朴の花のようにほほ笑んで言った。「もしもの時のために、あなたの匂いを残しておきたくて」と。海外旅行が日常時でなかった頃、戦場へでも送り出す覚悟をして娘を旅立たせた母。「親の心子知らず」。思いも及ばなかった深い親心に絶句した。
今は亡き母と同じ愛を注いで子育てをしただろうか。自らに問う夜がある。
鹿屋市 伊地知咲子 2015/4/2 毎日新聞鹿児島版掲載
その夜、「枕カバーが洗濯してない」と母を責めた。母は朴の花のようにほほ笑んで言った。「もしもの時のために、あなたの匂いを残しておきたくて」と。海外旅行が日常時でなかった頃、戦場へでも送り出す覚悟をして娘を旅立たせた母。「親の心子知らず」。思いも及ばなかった深い親心に絶句した。
今は亡き母と同じ愛を注いで子育てをしただろうか。自らに問う夜がある。
鹿屋市 伊地知咲子 2015/4/2 毎日新聞鹿児島版掲載
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